ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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今回大分ガバいところ多かったんですが、現時点では凡そ修正していると思います。多分。


第42話:晴れオバヒで大体のポケモンがトぶらしい

 ※※※

 

 

 

「何が──起こった?」

 

 

 

 ──ハズシとイヌハギの戦いは、意外なほどにあっさりと決した。

 残るのは、黒焦げになって倒れたルカリオ。

 そして、根元から消し飛んだ木々。

 イヌハギ本人はすんでの所で危機を察知し、躱したものの、避けていなければ彼の身体も消し飛んでいた。

 

(”むげんほうよう”が決まれば勝っていたはず──何処から、これだけの火力を──!?)

 

「その姿は何だ!! オーライズとは違う……!!」

「メガリザードンY……と言っても分からないでしょうね。もっと噛み砕いて言えば、リザードンちゃんは()()()()()()()のよ」

「何だと!?」

 

 イヌハギの視線は──翼を広げ、咆哮するリザードンに向く。

 その姿は、先程までとは様変わりしていた。

 炎のように揺らめく翼。

 そして、両腕に付いた飛膜。

 頭部から雄々しく生えた一本の角。

 その頭上には、太陽に代わって赤々と周囲を照らす火の球が打ちあがっている。

 

 

 

「言ってしまえば……ポケモンの真価を解き放つ、進化を超えた進化、かしら?」

「ばぎゅおおおおおおおおおん!!」

 

 

 

 メガシンカは使い手の心がキーストーンを、ポケモンの心がメガストーンをそれぞれ反応させ、互いの石を通して共鳴することで起こる進化を超越した進化である。

 これによって覚醒したポケモンの力は、伝説のポケモンすら凌駕すると言われており、種族値は勿論の事、特性も強力なものに上書きされる。

 メガリザードンYの特性は”ひでり”。

 メガシンカした瞬間、周囲は強い陽の光に照らされ、リザードンの炎技の威力を引き上げ、逆に水技である”むげんほうよう”の水ブレスを弱めたのだ。

 結果、ルカリオは技同士のぶつかり合いに押し負けて、そのまま敗北を喫することになったのである。

 しかしリザードンの技”オーバーヒート”は強力な威力と引き換えに、反動で特殊攻撃力が低下するというデメリットが存在する。

 

「そのような力を今の今まで、ずっと隠し持っていたのか?」

「隠し持っていた? 失礼ね。タイミングを見極めていたに決まってるじゃない。」

「ッ……!」

「確実に貴方を倒すには、オオワザを使う瞬間まで待つ必要があったのよ。あんたがシャワーズちゃんから奪った、紛い物のオオワザを使うまで、ね」

「……某はまんまと誘い込まれたわけか」

「オオワザなんか使わずに、さんたいへんかを駆使して戦ってくれた方が苦しかったまであるわ。最も、貴方達は奪ったものを見せつけなきゃ気が済まないタチでしょうから、無理だったでしょうけどね」

 

(そうでなくともメガリザードンYは火力と引き換えに消耗が大きいメガシンカ……ここぞという時に一撃必殺出来なければ後が苦しかったわね)

 

 ルカリオを瓢箪に吸い込ませ、イヌハギは嘆息する。

 そして両の手を上げるのだった。降参のポーズだ。

 

「……この地を少々侮っていたようだ」

 

(と言っても、ワタシもリザードンちゃんもボロボロ。尋問は長い事出来そうにないわね)

 

 砕かれた肩の骨がずきずきと痛む。

 リザードンも、オーバーヒートとメガシンカによる消耗が激しいのか、疲弊しきっているようだった。

 メガストーンに手を当て、リザードンのメガシンカを解除する。

 このデメリットが大きい事もあって、ハズシはあまりメガシンカを使いたがらない。

 

(ワタシもまだまだ未熟って事ね……旦那のメガシンカはとても安定しているもの)

 

 つかつか、とイヌハギに近付くと──ハズシは問う。

 目下最大の脅威である”爆弾”について、だ。

 

「さぁて、散々邪魔してくれたじゃない。爆弾は何処? 解除法は?」

「あのパラセクトだ」

「……何か秘密があるのね」

「繁殖期になると自爆して胞子を広範囲にばら撒き、他の生物に寄生させる。だが、ポケモンの放つ湿気で簡単に胞子諸共死活する。故に、水ポケモンの居ない火山帯でしか繁殖出来ない」

 

(ッ……ならまだやりようはあるわね……)

 

 ハズシはすぐさま考えを巡らせる。

 ボックスから特性”しめりけ”のポケモンを持って来れば、パラセクトの自爆は止められる。

 だがそれ以上に嫌気が差したのは──ポケモンを兵器のように運用するテング団であった。

 

「……だけどポケモンを兵器の代わりにするなんて、随分と時代錯誤なのね。愛が無いわ」

「やはりこの世界は聊か平和過ぎるな」

 

 イヌハギが怒気を込めて言った。

 

「忘れるな。貴様等”オヤシロの民”の平和は、某達の犠牲の下で成り立っている事を」

「ッ……何ですって? 犠牲ってどういう事よ。ワタシ達が貴方達に何かしたっていうの?」

「500年前の事だ。我ら”ヒャッキの民”は──秘宝”赤い月”をお前達異界の”オヤシロの民”に奪われたことで、荒廃し、少ない資源を奪い合って争いが続いている」

 

 ハズシの額に汗が伝う。

 脳裏に過ったのは、サイゴクで頻発するあの怪現象であった。

 月が赤く染まり、野生ポケモンが凶暴化する天災だ。

 

「赤い月……それってどんな秘宝なの!?」

「知らないのか。やはり時が経って失伝したか……無理もないな。貴様等は某達のように資源や領土を争いで奪い合う必要が無い程恵まれている」

「……貴方達は何処から来たの?」

「この世界とは異なる世界、とでも言っておこう」

 

 イヌハギの背後に──突如、穴が開く。

 ハズシは目を見開いた。ウルトラホールのそれとは違うが、まさに空間と空間を繋ぐ穴だ。

 

「待ちなさい!! オヤシロと赤い月に一体何の関係が──!」

「教えて堪るものか。少しは自分の頭で考えるんだな。……自らの祖先が犯した罪を、精々恨め」

 

 そう言って、イヌハギの身体は消え失せた。

 ハズシの手は届かなかった。

 

(……何てこと……秘宝ですって……!?)

 

 もし、イヌハギの話が全て本当ならば。

 おやしろはかつて、大きな罪を犯したことになる。

 異なる世界の話も、メグルの件やウルトラホールの件でハズシにとっては疑いようのない話だ。

 つぅ、と冷や汗が背に伝った。

 

(ワタシ達の祖先の罪……知らなかったでは済まされない……でも秘宝は今、何処に? どうすれば……!!)

 

 

 

「──ぎゅららららら」

 

 

 

 ふと、その場に鳴き声が響いた。

 ハズシは振り返る。

 そこには──溶岩のように赤い体毛のポケモンが立っていた。

 その目を見れば吸い込まれてしまいそうになってしまう。

 思い出せば、自分をキャプテンに選んだ時も、こんな目だった──とハズシは追想する。

 恩人だった先代が亡くなった事を知り、一人で泣きじゃくっていた時。

 このポケモンは突如、彼の下に現れた。

 

「……ワタシが迷ったら、貴方はいつも灯火となって照らしてくれるのね」

「ぎゅらら」

「此処にいるって事は……火山の麓はもう無事なのね。()()()

「ぎゅらららら」

 

 世話が焼ける、と言わんばかりにヌシは頷いた。

 

「全く……こんな所で迷ってる場合じゃなかったわね」

 

 ハズシは左手で自らの頬を叩く。

 イヌハギとの戦いで随分と時間が経ってしまった。上の方では、今も尚メグルがパラセクトと戦っている。

 大人として、彼に全てを背負わせるわけにはいかない、と最後の力を振り絞る。

 ライドギアに乗り込み、動く左手でハンドルを強く握った。

 

 

 

「飛ばして、リザードンちゃん!!」

 

(過去がどうとか今は良い……ワタシは、キャプテンとして……ベニシティに生きる全ての命を守る……!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──メグルが山頂に辿り着いて数十分後。

 火口のド真ん中で堂々と自爆の準備のため、パラセクトがじっとしていた。

 その巨大なキノコの中では今も尚、爆発に必要なガスとエネルギーが生成され続けており、それが最大限まで貯まる夜明け頃に──パラセクトは爆ぜる。 

 まさに世紀の大繁殖を決行すべく、パラセクトは半ば休眠状態でその時を待ち続けていた。

 が、しかし。それが黙って見逃されるはずもなかった。

 突如空から大量のスピードスター、そして電撃が降り注ぐ。

 キノコが攻撃を受けたことでパラセクトは起き上がり、火の球が揺れる虚ろな両の目をしつこい外敵に向けるのであった。

 

「おうおうおうおう!! 此処で会ったが100年目!! 今度こそ白黒付けようぜ、パラセクト!!」

「ノットリィィィィ……!!」

 

 そして、彼が引き連れた凶暴バカ3匹。

 イーブイ、オドシシ、ストライクがざっと目の前に躍り出る。全員、やる気十分と言った様子だ。

 

「……手筈通りに行くぞ。イーブイ!! 穴を掘るでヤツの足元を崩せ!! オドシシは”あやしいひかり”で援護!! 」

 

 パラセクトは足が非常に遅い。

 故に、こちらの初撃に反応することが出来ない。

 すぐさま土煙がパラセクトの足元から上がり、その後ろ脚が地面に沈んだ。

 更に怪しい光がパラセクトの視界を惑わせる。

 

「ストライク!! ……思いっきり、暴れて来い!!」

 

 地面を蹴ったストライクが回転し、パラセクトの頭部に斬撃を喰らわせる。

 ”れんぞくぎり”だ。

 鎌のように鋭利な前脚で反撃しようとするパラセクトだが、速度で完全に上回られているからか、一方的にストライクの攻撃を受けるのみである。

 

「ストライク、つばめ返し! イーブイとオドシシは援護しろ!」

 

 続けさまに斬撃を浴びせるストライク。

 更に巨大なキノコに、スピードスターと念動力が浴びせられ、爆音が鳴り響く。

 だが──そもそも、一方的に殴られるだけのデカブツならば、此処に来るまでにメグルは苦戦していないのである。

 現に、イーブイとオドシシの援護射撃も、ストライクの斬撃すらも。

 今の所、全く決定打になっているように見えない。

 

(やっぱり、上のキノコが無事な限り……あっちに致命的な有効打が与えられない限り、パラセクトは倒せない……!)

 

 だが、キノコにダメージを与えるには、あまりにもそれが肥大化し過ぎた。

 分厚い脂肪のように膨れ上がった子嚢は、文字通り肉の壁として攻撃を阻んでいる。

 

「ノットリィィィ……!」

 

 お返しと言わんばかりにパラセクトのキノコから巨大な火球が浮かび上がる。

 エネルギー弾に胞子を混ぜて拡散する──今までよりも数倍大きな”キノコばくだん”だ。

 もし着弾すれば、周囲にダメージを与えるだけではなく、あの毒キノコが生えてくるおまけつきである。

 ぽん!! ぽん!! と音を立ててそれは、パラセクトのキノコから花火のように撃ちだされたのだった。

 

 

 

 ──尤も、無事に着弾出来れば、の話であるが。

 

 

 

 

【しかし うまく決まらなかった!】

 

 

 

 

 ぽん、と打ち出されたキノコばくだんは地面に落ちても爆発しなかったのである。

 

「──!?」

 

 事の異常さに、パラセクトも何かがおかしいと気付いたのだろう。

 きょろきょろと辺りを見回すばかりだ。尤も”あやしいひかり”に中てられている所為で、永遠にパラセクトが答えに気付くことは無いだろう。

 

「ッ……し、成功だ!!」

 

 爆発物は湿っていれば爆発しない。

 この世界では、少なくとも”しめりけ”と呼ばれる特性の前では、その理屈が罷り通る。

 無論、イーブイもオドシシもストライクも、パラセクトの爆発を止めるような力は持ち合わせていない。

 この火口の戦場を取り囲む3つの岩陰。そこに、それぞれポケモンが隠れていた。

 

 ──あひるポケモンのコダック。

 

 ──おたまポケモンのニョロゾ。

 

 ──みずうおポケモンのヌオー。

 

 彼らの特性はいずれも”しめりけ”である。

 そして、この3匹の放つ湿気により──パラセクトのキノコばくだんは勿論、最後の大爆発すら封じられたのであった。

 

 

 

(ま、勿論……俺一人じゃ、此処に辿り着くことなんて出来なかったんだけどな)

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「イデア博士!! そっちに特性・しめりけのポケモンっている!?」

 

 

 

 ──数十分前。

 メグルは先ず、イデア博士に電話を掛ける。

 しばらく出なかったので何度も掛けてやると、漸く珍しく焦った様子の博士が出て来るのだった。

 

「何だい何だい! ボクは忙しいんだけどね!? 今何が起こってるか知ってる!? ひのたまじまに爆弾が仕掛けられたとかで大騒ぎさ! しかも変なキノコが生えたポケモンが胞子をばら撒いてるとかで、ボクはそれのデータの解析を──」

「ビンゴ博士! 俺今まさにここにいるんだけど」

 

 すぐさまメールで目の前のパラセクトの画像を送ってやると、ガコン!! と椅子が倒れた音が聞こえた。

 そしてしばらくして「いたたたた」という声と共に、がっつかんばかりの勢いで博士が叫ぶ。

 

「何やってんの君ィ!? まさかの当事者ァ!? ユーは何しに火山へ!?」

「成り行きッス」

「嫌な予感はしてたけどね!? え、何それ。パラセクト? パラセクトだよね? デカくない!?」

「こいつが爆発したら、ひのたまじま中に胞子がばら撒かれて大変な事になるんだ! 止めたいんだけど」

「……ば、爆発ゥ!?」

 

 事情を話す。

 一応アルカの名前は伏せて、テング団から聞きだしたという体で。

 博士はパラセクトが爆弾であることを納得したように唸ると、彼なりの推論を話すのだった。

 

「何となくそんな気はしてたんだよねえ……解析しているキノコが強力な熱エネルギーを生み出しているからさ。でも、爆発して胞子を飛ばすっていう習性からして……特性”しめりけ”に弱いのは確かだね。あの特性を持ってるポケモンが放つ加湿効果は絶大だ」

「具体的には?」

「マルマインですら爆発出来なくなるし、気温が高い時は地獄みたいな環境になるよ。サイゴクの真夏はいっつもそんな感じだけど」

「良かった……」

「安心するのは早いかな。そもそもそいつが”だいばくはつ”したところでひのたまじま全域に胞子を拡散できるとは思えないんだよね」

「それって、どういう──」

「そもそも”だいばくはつ”や”じばく”が使えるならとっくに使っててもおかしくないし。そうじゃないから、今此処でエネルギーを溜めてるんじゃないかな」

 

 火口でじっとしているパラセクトの写真を見ながら、博士はそう推測する。

 

「じゃあ”だいばくはつ”よりももっとヤバい爆発……オオワザって事かぁ!?」

「って事も考えられる。普通の爆発でないなら、しめりけのポケモン1匹だけじゃ不安だ。僕の仮説が正しければ、それで胞子は死活する」

 

 そもそも、戦闘に巻き込まれてウパーが倒れてしまう可能性も考える必要がある。

 そのため”しめりけ”持ちのポケモンは1匹だけでは不安だ。

 

「しめりけ持ちのポケモンを持っているトレーナーの協力を仰ぐんだ。いるでしょ? 頼れる子が」

 

 ──こうして。

 メグルは手持ちのポケモン1匹とウパーを博士に交換してもらった。

 そして、考えうる中で事情をすぐに話せばポケモンをすぐに交換してくれそうなトレーナーは1人しかいない。

 

「どうしたのよ、今こっちも大変なのよ。ひのたまじまがテング団に襲われてるから向かってるんだけど、とてもじゃないけど間に合わない!」

 

 ユイである。

 仮にも一度、おやしろまいりを成し遂げているのだ。

 幾ら電気タイプ使いと言えど、その道中で多数のポケモンを捕まえているはずである。

 事情を話すと彼女の仰天した声が飛んできた。

 

「ハァ!? 爆弾はポケモンで、爆発したら島全部が殺人キノコ塗れになるってぇ!? しかもあんた、まーた厄介事の渦中ド真ん中じゃない!」

「いやー、それほどでもー」

「褒めてない!!」

「一刻を争うんだ、送って貰えないか」

「”しめりけ”……ね。多分それだけ大きなポケモンなら、1匹だけじゃ足りないんだから。戦闘に巻き込まれて瀕死になる可能性も考えると、何匹も必要ね」

「イデア博士から1匹は貰ったんだ、後2匹は要るな」

「今ボックスアプリを見てみたけど、コダックが居た! そっちも適当なポケモンを送って!」

「サンキュー、流石キャプテン代理様は違うぜ!」

「代理は余計なんだから! ほんっとに……世話が焼けるわね! 後1匹は……友達に頼んでみるから待ってて!」

 

 ──こうして。

 特性”しめりけ”を持つ3匹の爆破阻止要員が揃ったのである。

 彼らを適当な岩陰に隠しておき、パラセクトが爆発出来ないようにしたうえで──メグルは正面からパラセクトに挑むことにしたのだった。




【TIPS】
サイゴクのキャプテンは全員、キーストーンとメガストーンを持っている。尚、某代理はまだどちらも持っていない。
「代理言うな」
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