ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第58話:稽古開始

 ※※※

 

 

 

「さっきも言った通り、ポケモンにとって最も重要なのは……経験ッス!」

「そりゃ分かるけど、これって」

「ぶつかり稽古!! おやしろのトレーナーのラッシュを前に、何分持つか……それを二人で競うッスよ!」

「つまり、共闘はするけど先に倒れた方が負けって事か」

 

 成程な、とメグルは感心する。

 背中合わせになるアルカとメグルの前には、何人ものおやしろのトレーナー。

 そして、彼らが繰り出したポケモン達が集っているのだった。

 

「で、でも、いきなりこれって無茶じゃない!?」

「テング団がお利巧さんに1対1で戦ってくれるような連中なら俺もそう言ったかもしれねえ。足引っ張んじゃねーぞアルカ」

「んなっ、何て言い草! おにーさんこそ足引っ張らないで下さいよ!」

「そう来なくっちゃな!」

 

 二人はボールを構え、ニンフィアとカブトが戦場に降り立つ。

 

「勝った方には、産地直送・バラ寿司を奢るッスよ!」

「バラ寿司ィ!? 絶対勝つ! ボクが勝ーつ!」

「ゲンキンなやっちゃなー……」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ふっつーに俺が先に全滅した……」

 

 

 

 忘れていては困るが、そもそもトレーナー歴もポケモンのレベルも高いのはアルカの方だ。

 先日のノオトとの共闘も、ノオトに助けられていた部分が大きいのだろう、と改めてメグルは感じる。

 アルカと言えばかなり上機嫌で「バラ寿司! バラ寿司!」と連呼しながらメグルを煽るのだった。

 

「喜んでるところ悪いッスけど、アルカさんもまだまだッスよ」

「うぐっ……」

「30分は持つようにしたいッスよね。アルカさん、10分でアウトだったじゃないッスか」

「だって、途中からヒメノちゃんとノオトも加わってたじゃん! ズルだよアレは!」

「三羽烏のレベルは、キャプテンと同格。このくらいで音を上げて貰っては困るのですよー♪」

 

 ヒメノがにこにことした笑顔で圧を掛けて来る。

 まるで反論の余地が無い。

 ハズシもヒメノも、メガシンカを発動して漸く三羽烏のエースポケモンと対等に戦えたのだ。

 標的であるアップリュー(ないし恐らくいるであろうタルップル)よりもむしろ、彼らの捕獲を妨害してくる三羽烏の方がよっぽど脅威と言えるだろう。

 

「メグル様に足りないのは……ズバリ技」

「技? 確かに威力が足らない技がまだ多いからな、ウチの連中は」

「そうッス。だから、そのための修行もしてもらうッスよ」

「技マシンで習得するのだけが技ではないのですよ」

 

 次のメグルとアルカが訪れたのは、修練場と呼ばれる場所だった。

 そこには、カバルドンを模したカラクリがガコンガコンと音を鳴らして動いている。

 最も、実物とは違って緑色に塗装されており、まるで河童のような様相だった。

 

(これモ〇ハンで見たな……似たようなヤツ)

 

「てか何で緑なんだコレ。カバは黄色か灰色だろ」

「何でなんスかねー? 昔の人のやることは分かんねーッス」

「絵巻にあったカバルドンの絵を元に作ったんだとかなのですよー。クワゾメの方には昔からカバルドンが生息していると言いますしー?」

「へーえ、そうなんだぁ。んで? このカバのカラクリで何をするんだ一体」

「メグルさんのニンフィアには、必殺技を覚えてもらうッス。カバルドンマシンは、そのための的。技の練習に持ってこいッス」

「必殺技?」

「そうッス。うちでは教え技もやってるんスよ。それで少しでも、レベル不足を補うッス!」

「……どんな技なんだ」

「まさに秘伝の奥義ッス。ニンフィアにピッタリな技ッス」

 

 拳を突き出したノオトは叫んだ。

 

 

 

「押忍──その名も秘儀・ハイパーボイス! フェアリースキンとは相性抜群っしょ!」

 

(めっちゃ知ってる技だァァァーッ!?)

 

 

 

 ハイパーボイス。大声で相手を攻撃するノーマルタイプの高威力な特殊技だ。

 そこにフェアリースキンの補正が乗っかかれば、恐ろしい威力を叩きだすのだという。

 サイゴクでは技マシンにハイパーボイスは無く、教え技なのだという。

 しかし、教え技はゲームのようにパッと覚えられるわけではないらしく。

 巨大なカバルドンマシンの前で、ニンフィアは声を張り上げて鳴き声を上げるが、

 

「ふぃー! ……ふぃーッ!!」

 

【カバルドンマシンの 攻撃が下がった!】

 

 せいぜい、”なきごえ”判定しかされないのであった。

 

「ダメっす、ダメダメ! もっと腹から声出すッス!」

フィッキュルルルィィィ

「ほぎゃーっ!?」

 

【ニンフィアの スピードスター!】

 

 どごん、と音を立ててカバルドンマシンの首が沈む。ついでに、ノオトも吹き飛ばされた。

 毛を逆立てて苛立ちを隠せないニンフィア。これでは先が思いやられる。

 

「と、とまあこんな感じで……数日間声出しやってもらうッス」

「何処が!? 無理だよコイツに技覚えさせるのなんて! おにーさんもそう思うでしょ!?」

 

 「ふぃーあ?」と可愛く誤魔化そうとしているが、もう遅い。

 彼女の凶暴性は此処にいる全員が知っている。

 

「なあ、この極悪リボンがブチ切れるのと、ハイボ覚えるのどっちが先だと思う?」

「ブチ切れるのが先ッスね」

「だよなー、ハハハハ……はぁ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──そして鍛えるのはポケモンだけではない。

 

「で、何で俺も筋トレしねーといけねーんだよ!!」

「そりゃトレーナーも基礎トレが大事ッスよ」

「おあああああ!! 腕立てとか、高校生以来やったことねーよ!!」

 

 ナメクジのように腕を震わせるメグル。

 貧弱極まる彼の腕では、1分間続けて腕立てするのも至難の技である。

 

「あっははは、おにーさん震えてるー♪」

「アルカさんもやるんスよ」

「え”っ」

 

 ──腕立てに始まり、トレーナーの基礎練はその後も続いた。

 トレーナーがポケモンの動きについていかなければいけない場面も多々あるだろう、とのことだ。

 既に山の中の行軍で、引き籠り時代に比べればそれなりに鍛えられていたメグルの身体だったが、ちゃんとしたトレーニングを積むのは初めて。

 ひたすら、部活の基礎練習のような筋トレをさせられ続けるのである。

 無論、アルカも一緒に、だ。

 内容は走り込み。腕立て──更に格闘技の練習。

 

受け身はァ!! 柔術の基本の基ィ!!

「ほぎゃあああ!! 身体がキィキィ鳴ってるキキキのキィ!!」

「ほらー、ちゃんと受け身を取らないと痛いのですよー♪」

「す、すごい、一気にひっくり返されちゃった……」

 

 華奢なヒメノもしっかりとその辺りの心得は叩き込まれているようだった。

 

「ポケモンがやられたら無言で殺されるんスかあんたァ!! 自分の力でも戦えるようにしとくんスよ!!」

「何処まで通用するんだ人間のフィジカルって!?」

諸説!!

「そうかぁ!!」

 

 その次はボール投擲の修行。

 メグルにとっては改善されつつあったものの、最も苦手意識の強い分野だ。

 

「じゃあ次は、このパモの頭に括りつけたリンゴにボールをぶつけるッスよ。リンゴじゃなくってパモにぶつかったら、パモがボールに入るッスから……失敗ってすぐ分かるッスね」

「ぱも」

 

 手を上げるのは、黄色いネズミのようなポケモンだった。

 大きさ僅か30cmのか弱いネズミだが、キュッと「押忍」のポーズをしている。

 

「こんなに小さい的にボールなんて当たるワケねえだろ!? 動いてるし!!」

「うるっせぇ!! さっさとやるんスよ!!」

「ひぃん!! 押忍!!」

「こんなのボクでも当たらないんだけど!」

「つべこべ言わずに投げるのですよー♪」

 

 尚、メグルどころかアルカも結局、リンゴにボールをぶつけられなかったのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──それから二週間ほど経っただろうか。

 朝の6時に叩き起こされ、暗くなるまで特訓が続いた。

 体力は一朝一夕で付くものではない。だが、それでも最初よりはましになってきた。メグルも打てば響くのか、徐々に基礎練のスコアも上がってくるのだった。

 ぶつかり稽古も、タイムスコアでアルカに勝つことこそ出来ないものの、それでも数をこなすうちに手持ちの力は増していった。

 メグル自身も移り変わる戦局の中で指示を出すのが早くなっていったが、これは何より目で戦場を見る事に慣れたのが大きい。

 敵に取り囲まれた状態から、包囲網を脱する機会がこれまで以上に増えていったのだった。

 一方、ニンフィアのハイパーボイスの習得は彼女の気性の荒さもあって想像以上に難航し(曰く、通常は一週間かかるらしい)、彼女のストレスはたまるばかりであった。

 

「お疲れ様ッスよ、メグルさん。プロテイン、飲んでおくッス」

「押忍……」

 

 流し込むようにドロドロのプロテインを飲み干すと、それが身体に染みわたるようだった。

 ノオトはトレーニングの心得があるのか、メグル達への肉体的な訓練は決して無茶なものではない。

 それでも、運動し慣れていないメグルにとっては地獄のような2週間ではあったが。

 

「どうっスか? 今の所、手応えは」

「……クッソきっちぃ……早く来ねーかなテング団の奴ら」

「何言ってるんスか。今のままじゃ、あいつらには勝てねえッスよ」

「……分かってる分かってる。でも、元・ひきこもりに運動はキツいんだって」

 

 ぶつくさ言うメグルに──ノオトは語る。

 

「──あのヌシ様も、かつては鍛錬に励んだ、と聞いているッスよ」

「え?」

「かつてヌシ様──アケノヤイバは、その地でも恐れられる凶悪なポケモンだったんス。一説によると、他所で迫害されたアブソルの怨念を身に受けたから、変異したんじゃないかと」

「成程な……」

 

 ()()()()()()()()()()、人間に憎悪を抱き、襲い掛かる獣。

 それがアケノヤイバという名前のアブソルだったという。

 しかし、当然そのようなポケモンに対して討伐令が下った。

 そしておやしろの守り人──即ち、当時のキャプテンに当たる人物が直接アケノヤイバと戦ったのだという。

 だが、アケノヤイバはゴーストタイプ。その者の拳は通用しなかった。

 

「ポケモン無しで戦ったのか!?」

「そうッス。だけど、回を重ねていくうちに、守り人の拳は恐れを知らず、霊をも殴るものとなっていき──最終的に、その拳でヌシ様を捻じ伏せたんス」

「……っす、すげぇ」

「特性・きもったまってヤツッスね」

「……人間なんだよな? その守り人って」

「んで、それからヌシ様は守り人に付き従うようになったッス。そして自ら技を磨いて、己を捻じ伏せた人々に敬意を払い、格闘の技を己の力で扱えるようになったんス」

「……待て。アケノヤイバは格闘タイプじゃねーのか?」

 

 ノオトの言葉にメグルは違和感を持つ。

 アケノヤイバが他のサイゴクアブソルと同じなら、ゴースト・格闘タイプのはず。

 にも拘らず彼は、あたかもアケノヤイバが後天的に格闘技を身に着けたような言い方だったからだ。

 

「ああ、アケノヤイバ様のタイプはゴースト・悪。他の地方のアブソルと同じ、悪タイプなんス」

 

【アケノヤイバ みょうじょうポケモン タイプ:ゴースト/悪】

 

【只のアブソルにはたどり着けない境地。生きているか死んでいるかすら曖昧。影を自在に操り、分身を作り出す。】

 

「そうだったのか!? でも、格闘技ばっか使ってたぞアイツ」

「ヌシ様が悪技使ってるところ、あんまり見た事無いッスね。特性の”あけのみょうじょう”……って呼ばれてるんスけど、あれで格闘技の威力を強化してるんスよ」

「おみとおしだって言ってたじゃねえか、サイゴクのアブソルの特性は」

「ヌシ様は色々トクベツなんスよ。他のアブソルが出来る事なら当たり前のように出来るんしょ」

 

(よくそんなヤツを撤退させられたな俺……いや、あれは向こうが敢えて引いてくれただけなんだろな)

 

「そんで! こうやって鍛えたヌシ様だからこそ、後の時代にサイゴクを襲った災禍を追い払えたって言われてるんスよ」

「え。待ってくれ! その災禍って何なんだ!?」

「イッコンに伝わる昔話では……百鬼夜行って呼ばれてるッス」

 

 百鬼夜行。

 鬼とは即ち、災禍。

 夜行とは即ち、夜の闇を己の道の如く罷り通る行進。

 ノオトがスマホロトムに保存していた絵巻には、角の生えた鬼達に加え、異形のポケモンらしき生き物たちが沢山描かれている。

 

(これって、ダーテングにオニドリル、フーディン、パラセクト……!? かなり歪められて描かれてるけど……!)

 

「今思えば、この百鬼夜行が……500年前の戦争の事だったんスね。これまでに確認されたヒャッキのポケモンっぽい絵がちらほら」

「ッ……戦争はやっぱり本当にあったのか。もっと詳しいことは描かれてないのか!?」

「詳しい事は残ってねーんスけど……空から来たる鬼達。その終わりに来たるは、赤い災禍の月。それをヌシ様は、当時のキャプテンと共に止めたという伝説が残ってるッス」

 

 ノオトが画像をスライドすると、最後には──赤く禍々しく光る月が映り、それと対峙するアケノヤイバらしきポケモンが描かれていた。

 だから、とノオトは続けた。

 

「赤い月がヒャッキを救う秘宝ってのが、どうもオレっちには眉唾なんスよね……」

「……赤い月は今、何処にあるんだ……?」

「さあ、分からんス。でも、この話から言えるのは──ヌシ様ですら特訓したんス。己を鍛えることを忘れちゃダメッスよ」

「気になるんだが!? 巻物の話が!」

「今度見せてやるッスよ、実物を。でも、おやしろの者達が宝庫を探してるッスけど、なかなかめぼしい資料は出てきてねーッスよ」

「……そうかぁ」

 

(凄く強いヌシも、自分を鍛えて今の力を手に入れたのか。じゃあ鍛えなきゃ、俺達がそれに対抗できるわけもない、か)

 

 にわかにやる気が湧いて来たメグルは、起き上がる。

 こうはしていられない。明日も特訓があるのだ。

 飯を食い、そして寝る。また明日、今日よりも強くなっている、と願って。

 

 

「よいしょ──っと」

 

(ん?)

 

 起き上がるとき、メグルは足に違和感と痛みを覚えた。

 思わず右の足首を摩る。

 そして、その仕草をノオトは見逃さなかった。

 

「メグルさん。足! 足!」

「あ? いや、平気だって。ちょっとさっきの走り込みの途中でぐねっただけで」

「ダメッス!! 見せるッス──」

 

 言った彼はメグルの靴を脱がせて、靴下もほっぽり投げて、眉を顰めた。

 足首は赤く腫れていたのである。捻挫だ。

 

「うわ、腫れてるじゃねーッスか!! 動かしちゃダメッス!!」

「え、えーと」

「冷却してテーピング!! んでもって、明日は休みを前倒しにするッスから!!」

「捻挫だろ? そんな大事じゃねえよ。ガキの頃捻挫したけどすぐ治ったし。痛かったけどガマン出来るし」

「大人になるにつれて捻挫は治りにくくなるッス。こういうのは初動が大事ッスよ! 何でもっと早く言わなかったんスか!」

「は、はええ……すいません」

 

 すぐさまノオトはおやしろの方から救護キットを取ってきて、メグルの足の手当を始めた。

 その手慣れた姿を見て、思わずメグルは息を漏らす。

 彼は自分よりも遥かに年下のはずなのに、とてもしっかりしていて、情けなくなるのだった。

 

「姉貴もよくやるから、慣れてるんスよ。捻挫。何も無い石段でコケて……1ヵ月歩けなかった時があるんス」

「……わりーな。手当までしてもらって。お前は立派なキャプテンだよ。ヒメノと比べる必要なんか無いくらいに」

「そうッスか? ……ま、バトルは未だに姉貴に勝てねーんスけど」

 

 今朝もボコボコにされたッス、とノオトは零しながら──ボールを投げ込む。

 

「……パーモット! 出て来るッス!」

「ぱもぱも」

 

 現れたのは二足歩行の黄色いネズミのようなポケモンだった。ふさふさとした前髪と、愛くるしい顔が目を引く。

 体格の割には腕が大きく、掌には小粒な発電器官と思しき肉球が青く光っている。

 その姿から、パモの進化した姿であることはすぐに分かった。

 

(パモの進化形か! 本当ならゲームの中で見たかったな……)

 

【パーモット てあてポケモン タイプ:電気/格闘】

 

「後は、こいつの電気ショック治療を3日間受けるッス。足も安静にして……それで元通りッスよ」

「で、電気!? 痛くねえのそれ」

「痛くねーッスよ。ちょっとパチパチするだけッス」

 

 言った矢先から、パーモットがメグルの足首に電気を軽く放つ。

 少しだけパチパチはしたが、不快な痛みは感じなかった。

 

「お、おお、心なしかよくなった気がするような」

「無茶はダメっすから! 良いッスね!」

「お、押忍!」

 

 

 

  

 

 ※※※

 

 

 

「休み、か……」

 

 

 

 ──その日の晩である。

 一気に、やることが無くなってしまったからだ。

 娯楽になりそうなものはスマホロトムくらいしか無い。ゲームも、一日中やると飽きてしまうし、ポケモンの世話もあるのであまり嵌まり込めない。

 

(オマケにムラっとするんだよな……じっとしてると……男の悲しいサガ)

 

 スマホロトムで()()()()()()()()に興じようとするとロトムに見られているような気分になって萎えてしまう上に、ボールから勝手に出て来る手持ちの所為でプライベートもへったくれもない。

 寝・食・住は何とかなる。だがどうしても人間の三大欲求の最後──性欲はどうしようもならないのだった。

 特に思い出されるのは、直近のアルカの柔らかい感触。ジャケットの所為で今まで分かりにくかったが、相当着やせするタイプだったようである。

 こんな事をアルカに知られては失望されかねないことなど分かっていたが、本能には抗えない。

 

(やっべ……思い出すと、余計に……)

 

 疲労感と記憶でムラムラはピーク。此処最近忙しかったので猶更である。

 だが、彼に休みなどない。

 コンコン、と扉からノック音が聞こえてくる。

 メグルは急いで駆け寄った。……若干前かがみになりながら。

 出来るだけ片足で立ちながら、負担をかけないようにする。

 

「はーい! どなた──」

 

 ──扉を開ける。

 そこには、見覚えのある顔が立っていた。

 

 

 

「おにーさん……!! 助けて下さい……!!」

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