ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第66話:道無き道

「これじゃあ、何処が出口か分からねーよ……!」

「ブルルルルゥ……!」

 

 

 

 森林エリアは、段差が激しく、険しいアスレチックとなっている。

 ライドポケモンを使えば進めないこともないが、周囲からは野生ポケモンの気配すら感じられる。

 入り口が広かったこともあって他のプレイヤーとも早速はぐれてしまうのだった。

 

「第2ステージは迷路・森林エリアだにゃーんっ♪ 抜け出すのは至難の技、此処で何人脱落するかにゃーん♪」

 

 それと、と彼女は付け加える。

 

「──忘れちゃいけないのが、このレース最大のルール。手持ちが1匹でも瀕死になったら、ゲームオーバー! 脱落だにゃーん!」

 

 道が狭く、鬱蒼としており、オドシシのジャンプでは登れない段差もあり、オドシシで駆け抜けるには心許ない。

 というのも、巨大な木の根が隆起して地形のようになっているのである。

 此処から先は自分の身1つで進まなければならないか、とメグルはオドシシから降りた。

 幸い、段差付近は手で掴めば登れそうだ。

 

「一旦戻っててくれ、オドシシ。……こういう時は──アブソル、お前の出番だ!」

「ふるるるーる♪ ふるるー♪」

「どわぁ、飛びつくな!」

 

 出て来るなりアブソルはぺろぺろ、とメグルの顔を舐め回し、地面に押し倒してしまった。

 今こんな事をしている場合ではないので、無理矢理退けると──「遊ばないの?」と言わんばかりの切なそうな顔で、彼女は地面に寝転がり、腹を無防備に曝け出して服従のポーズ。

 甘えたような声で「ふるる?」と鳴いてみせると首を傾げるのだった。

 メグルの中でよくないものが目覚めそうになったが必死に抑えた。

 

「後でたっぷり甘やかしてやるから……お前の力で、何処が安全な道か教えてくれ!」

「ふるーる!」

 

 ご用命とあらば、とアブソルは起き上がり、刃のように鋭く歪曲した角を光らせた。

 未来視で危険を察知する力に優れたアブソルの出番だ。

 進むのに邪魔な低木や叢を切り払いながら、安全な道を進むことが出来る。

 これも事前にノオトやアルカと一緒に考えていた作戦である。

 角を光らせながら、アブソルは安全なルートを逆探知し、先行していき、更に邪魔な木々を切り払っていく。

 彼女を見失わないように、メグルも急いで走るのだった。

 これまでの過酷な旅と、よあけのおやしろでの特訓が功を奏したのか、これだけ険しい道でもなかなか息切れしない。

 

「アブソル! この方角を進めば良いんだな!?」

「ふるーる♪ ……ルッ!!」

 

 その時だった。

 アブソルは突如険しい顔を浮かべて後ろに飛び退いたのだった。

 激しく敵意を剥き出しにした唸り声は、別の生き物の如く。

 主人への害意をいち早く察知し、庇うように腰を低く構える。

 

「……ガルルルルルル……ッ!!」

「ど、どうしたアブソル!? どわぁ!?」

 

 遅れて、地面に向かって何かが飛び降りて来る。

 現れたのは──マッハポケモンのガブリアス。

 両腕が鋭利な羽根のように進化した、鮫のようなドラゴンだ。

 更に遅れて、ひっくり返したイカのようなポケモン・カラマネロが現れる。

 当然のように、その横にはトレーナー達が付いている。

 ガブリアスを従えているのは、海賊のようなコスチュームの女。

 一方、カラマネロを従えているのは、白衣を身に纏った神経質そうな男だった。

 

「こういうステージで何をするか分かるかいボウヤ? ……出会った他のプレイヤーを片っ端から脱落させるんだよ!」

「手持ちの交換は自由ですが、手持ちが1匹でも瀕死になった瞬間、その時点で脱落ですからね。実に合理的です」

「じゃあお前らで勝手に潰し合ってろ! 俺は先に進むぜ!」

 

(カラマネロはタイプ相性的にアブソルは辛いが何とかならないこともない……問題はガブリアスだ、種族値の暴力で押される……!)

 

「あたい達、このステージを抜けるまでは結託することにしたんだよ。迷子になっちまってねぇ……陸海賊と呼ばれたこのあたしが情けない」

「陸海賊って何だよ陸サーファーの海賊版?」

「だから優勝してキーストーンを売っぱらって船を買うのさ! これで晴れて海賊さ! アホーイ!」

「アホが露呈してんだよ!! ガブリアスのメガシンカに使ってあげろ!!」

「僕達は手を組むことにしたのですよ。迷子になったら心細いですからね……二人で居れば取り合えず安心……実に合理的です」

「眼鏡くいくいってしながら言うことじゃねーんだよ、二度と知性派キャラぶるなオメー」

 

 とはいえ、二対一は不利だ。じりじり、と引き下がるメグル。

 弱点が一貫しているのはフェアリータイプだ。

 だが、物理技が強力なガブリアスとカラマネロが相手では、ニンフィアも分が悪い。

 先手でフェアリー弱点技を撃たれた日には即リタイアだ。

 故に彼が選ぶ選択肢は──

 

「アブソル悪い、一旦引っ込んでてくれ!」

「ガルルルルル……ッ!!」

「大丈夫、コイツも特盛級に強いからな!」

 

 低く唸り続けるアブソルをボールに戻し、メグルがそれを繰り出した途端、ガブリアスとカラマネロを質量で弾き飛ばした。

 

 

 

「ラッシャーセーッ!!」

 

 

 

 森に特大級の咆哮が響き渡る。

 不意打ちを受けたガブリアスは引き下がり、爪を地面に突き立ててブレーキを掛ける。

 メグルの次番はヘイラッシャだ。

 

「んなっ……何だい!? そのデカブツはぁ!? ナマズンのリージョンフォームかい!?」

 

 違います。

 

「……何ですかあのバケモノ……サイゴクにはあのような怪物が!?」

「ヘイラッシャ──アクアブレイクだ!!」

 

 巨体を思いっきりカラマネロにぶつけにかかるヘイラッシャ。

 しかし、それをカラマネロはそれを10本の脚で受け止め、向こうの木に投げ飛ばしてしまう。

 

「──危ない危ない。良い”ばかぢから”ですよ、カラマネロ」

「おいおいあんた! ”ばかぢから”なんて使ったら、力が弱くなるんじゃないのかい!?」

「ご心配なく。カラマネロの特性は”あまのじゃく”。能力が下がれば上がり、上がれば下がる!」

 

 つまり、カラマネロの身体は”ばかぢから”を使えば使う程に屈強にビルドアップしていくのである。

 

「そうかい! それなら、あたいも思いっきり行くぜッ! ガブリアス、”つるぎのまい”!」

「ッ……能力を一気に上げてきた……!」

「さあて、ブチ込むよ! ガブリアス、ドラゴンダイブッ!!」

 

 ガブリアスが大きく飛び上がり、ヘイラッシャ目掛けて突っ込む。

 しかし──その身体は、ヘイラッシャの厚い脂肪に跳ね返されてしまうのだった。

 

「んな効いてないッ……!?」

「そんなはずは──」

「ヘイラッシャ、アクアブレイク!!」

 

 尻尾で地面を叩き、一気にヘイラッシャはカラマネロに突撃する。

 あまのじゃくによって強化された肉体で受け止めようとするカラマネロだったが、想像以上に重かったのか、そのまま地面に叩き伏せられてしまうのだった。

 

「んなっ……バカな! こっちは能力を上げているんだぞ……!?」

「どうして効いていないんだい!?」

「じゃあ一生気付かないまま、お前らが此処で脱落しろ!」

 

 ──ヘイラッシャの特性は”てんねん”。相手の能力変化を無視するというものだ。

 そのため、幾らガブリアスとカラマネロが能力を上げようが、ヘイラッシャの前では全て無効化されてしまうのである。

 そして、物理防御力が極めて高いヘイラッシャに、カラマネロとガブリアスの技は然程効かないのだ。

 

「……ならばカラマネロ”さいみんじゅつ”です」

「何!?」

 

 カラマネロの目が妖しく光る。

 そして、次の瞬間には──ヘイラッシャは昏倒し、地面に転がってしまった。

 

「しまっ──ヘイラッシャ!」

「よくやったよ、アンタ! あたいが優勝したらクルーにしてあげる! ガブリアス、”すなじごく”!!」

 

 ヘイラッシャの周囲で砂の竜巻が巻き起こる。

 草木が吹き荒れて、ヘイラッシャの身体を傷つけていく。

 更に、この状態ではヘイラッシャを引っ込める事すら出来ない。

 

「バインド……!」

「残念だったねェ。後はあたい達が一方的に叩きのめしてオシマイ、さ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ッ……やべーッスよ、メグルさん!! バインドされたッス!!」

「引っ込められないってこと!?」

「クソッ、プレイヤー間の結託・裏切り、その中での即興連携もバトルレースの醍醐味ッスからね……!」

 

 手に汗を握りながら二人はモニターを見つめ続ける。

 ヘイラッシャが倒れた時点でメグルは脱落となってしまう。

 だが、眠っている上にバインドとなれば、絶望的だ。

 一方的にヘイラッシャは体力を削られ続けてしまう。

 

「おにーさんッ……!」

「あれっ……!? 監視カメラ、映らなくなったッス!!」

「ええ!?」

 

 周囲は騒然とする。

 モニターの画面が砂嵐と化したのだ。

 思わずアルカは祈るように両の手を握り締める。

 

 

 

(……おにーさんッ……!!)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ッ……くそっ、起きろ! 起きてくれ、ヘイラッシャ!」

「そのままバインドお願いしますよ。カラマネロ、”サイコキネシス”!!」

 

 念動力を発動するべく、カラマネロの目が青く光り輝いたその時だった。

 

 

 

「──クエスパトラ、マジカルシャインッ!」

 

 

 

 その時だった。

 カラマネロ、そしてガブリアスの二匹を突如、まばゆい閃光が包み込む。

 そして、その場に乱入するようにしてダチョウのようなポケモンが現れる。

 その上には白い丸帽子を被った少女が跨っていた。

 

「クエックエッ」

「……気に入らないわ。寄って集ってって性根が」

「何だい何だい! これは、ルール無用のバトルレースだよ! 助太刀して粋がってんじゃないよ!」

「そうね。……でも、大勢で1人を虐めるなんて、私のポリシーが許さないわ」

 

 ガブリアスが態勢を崩したことで、ヘイラッシャのバインドも解除される。

 目を覚ましたヘイラッシャはすぐさま起き上がり、その巨体でガブリアスを押し潰す。”のしかかり”だ。

 

「そっちの鮫をお願いするわ」

 

(な、何だろう。冷たい目だ──だけど今は、この子を信じるしかない!)

 

「ああ分かった! ヘイラッシャ、”ゆきなだれ”でトドメを刺せ!!」

「ラッシャーセーッ!!」

 

 押さえつけたガブリアスに、ヘイラッシャは大量の雪を降らせる。

 氷タイプが弱点のガブリアスにとっては致命傷そのもの。

 頭から冷たい雪の塊を浴びせられ、砂鮫は悲鳴を上げた後──沈黙するのだった。

 

【効果は抜群だ!! ガブリアスは倒れた!!】

 

「クエスパトラ、もう1回マジカルシャイン!!」

 

 強く、更に強く地面を踏み鳴らし、クエスパトラはカラマネロに急接近したかと思えばその目を強く輝かせる。

 カラマネロは反撃することも出来ず、そのまま仰向けになって倒れるのだった。

 

「あ、ああああ!! こんなの合理的じゃなぃぃぃ……!」

「チッ……ルールはルールだ。あたい達の負けだね」

 

 手持ちを倒されたトレーナーは失格。

 二人は大人しく手を上げるのだった。

 監視カメラを搭載したドローンが現れ、二人の失格をアナウンスする。

 

「ありがとう! 君のおかげで助かったよ」

「ッ……勘違いしないで頂戴。弱いヤツを見ると、腹が立つのよ」

「えっ……」

「多勢で無勢をいたぶる……弱いヤツを見ると、ね」

「何だぁ、そう言う事かぁ。いや、俺もまだまだトレーナーは修行中なんだけどさ」

「君の戦いは悪くなかった。だけど……弱いと、何も守れないわ」

 

 少女は冷たくメグルを流し見すると、再びクエスパトラに跨り──駆け出したのだった。

 

「……弱いと、何も守れない……か」

「何呆けてるんだい! さっさとあたいらの分まで走りな!!」

「優勝者はゴールテープを最初に切った人なんですよ!」

「げっ、そりゃそうだ! 戻れヘイラッシャ!」

 

 メグルはヘイラッシャをボールに戻す。

 そして、アブソルを再び繰り出す。

 その後、森林エリアはアブソルの力もあってか、すぐにメグルは抜け出すことが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ちょっとカメラのトラブルが起きたけど、皆さん安心してほしいにゃーん! そしてなーんと、此処まで脱落者が更に5人!! 残るプレイヤーは5人だにゃーん!!」

 

 

 

 ──第3ステージは湖。

 水タイプのポケモンが生息している、巨大な水上ビオトープだ。

 

「へっへ!! 一番乗りやでぇ!! こりゃウチとフローゼルが優勝しちまうかもなー!!」

「きゅわわわわわーっ!」

「ちなみにこの湖には危険なポケモンが山ほどいるのにゃー。油断したが最後──」

 

 海イタチポケモン・フローゼルの背中に掴まって”なみのり”していたプレイヤーの耳に、ザザザと水を切る音が聞こえてくる。

 そして波しぶきを立てて四方八方から剣のように鋭利なポケモンが突っ込んでくるのだった。

 

「ぎゃあああ!? ミガルーサの群れェェェェーッ!?」

「きゅわわわわわわーッ!?」

 

 そのポケモンにブレーキというものは存在しない。

 自らのぜい肉を切り離すことで異次元の速度を叩きだす、生物として何かが間違っているポケモン──それがミガルーサだ。

 獲物を見つけるなり彼らは標的目掛けて一直線で突貫し──鋭いヒレでトドメを刺す。

 

「助けてくれェェェーッ!!」

「今回放流されてるミガルーサはよく訓練されてるから、命は獲られはしないのにゃーん♪ ま、手持ちポケモンは瀕死だけどにゃー♪」

「きゅっ、きゅわわわわわー……」

 

 こうして早速一人がミガルーサの群れに襲われて脱落するのだった。

 尚、トレーナーとポケモンはそのまま、ミガルーサ達によって陸地まで運ばれていく。

 そして、ミガルーサ達は再び、爆速で持ち場へとUターンするのだった。

 

「さあ、これで残るは4人!! この地獄の湖エリアを超えられるのは誰かにゃーんっ!」

「この僕だァァァァーッ!!」

 

 湖を突っ切っていくのは、花のようなポケモンに掴まるナルシスト・ピカラだ。

 

「さあ、僕を輝かせてくれキラフロル! キラキラキラル、キラフロルッ!!」

「おーっとピカラ選手が湖の踏破に選んだのは浮遊できるキラフロルだにゃーん! でもキラフロルって確か毒があったような──」

「毒を浴びているボクも──輝いてるッ!! 最愛のキラフロルの毒なら、苦じゃないね! コッ☆」

「こいつ頭がおかしいのにゃーん!?」

 

【キラフロル こうせきポケモン タイプ:岩/毒】

 

 だが、現に迫ってくるミガルーサ達はキラフロルのパワージェムによって次々に撃沈させられている。

 ふざけているように見えて、キラフロル自体の実力がそれをカバーしているのである。

 とはいえこれでは湖に着く前にピカラの体力が尽き果てそうな気もするが──

 

 

 

(そこは──僕自身の輝きでカバー!!)

 

 

 

 

 ──バカは風邪を引かない。毒も効かないのかもしれない。多分。

 

 

 

「一着は、俺達だァァァーッ!!」

 

 

 

 一方、その後ろから追い上げるのはミガルーサ達を撥ね飛ばしながら水を進んでいくメグルだ。

 地上では鈍重そのもののヘイラッシャだが、本来のテリトリーである水上ならば話が別。

 ミガルーサ等、本来はヘイラッシャが捕食する側のポケモンである。

 どうしてパルデア地方のオージャの湖でヘイラッシャがヌシを張れていたのか──それは、このポケモンこそが湖の生態系の頂点に立っていたからだ。

 

「くっ、貴様ァ!! この僕よりも輝こうというのか!!」

「うるせーうるせー!! 顔色悪いぞ、さっさとキラキラルの毒で落ちやがれ!!」

「キラフロルだ、二度と間違えるな!!」

 

 逃げるキラフロル。

 追うヘイラッシャ。

 湖での死闘が始まった。

 

 

 

「残るは4人!! そして始まったメグル選手VSピカラ選手! 勝つのはどっちにゃ──ッ!?」

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