ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第70話:脱出劇

 ※※※

 

 

 

「──で、どうするんスか、これから」

「まとめて独房に入れてくれた辺り、ナメられてるんだろーッスね」

「でもどうしよう、おにーさんまだ起きないよ!」

 

 目が覚めると、電子錠のかかった白い部屋にぶち込まれていたことにアルカとノオトは気付いた。

 そこには、頭から流れた血で髪がガビガビに固まったメグルも寝かされていた。

 

「手当はしたッスけど……大丈夫ッスかね、コレ……」

 

(頭は君も大変な事になってるけどね、ノオト)

 

 ノオトは爆弾の所為で、頭がアフロになっていた。

 全身も煤だらけで真っ黒なままである。さながらバッフロンであった。

 

「……ポケモン没収されたら、どうしようもねーッス」

「どうにか拳で破壊出来たりしない? あそこの壁」

「この分厚いコンクリは流石に無理ッス」

「そんなぁ!! サイゴク最強の格闘使いなんでしょ!? ヤだよボク、まだやるべき事が沢山あるのにこんなところで一生過ごすの!」

「オレっちだってイヤッスよ!!」

「……手が無いわけじゃねーよ」

「え?」

 

 声が聞こえてきた。

 薄っすらとだが、メグルは目を開けていた。

 アルカとノオトは彼の顔を覗き込む。まだ声は小さいが、意識はあるようだった。

 

「メグルさん!?」

「おにーさん!? 良かったぁ!!」

「俺さぁ……こないだアルカが捕まった後、ずっと考えてたんだ」

「え?」

「こんな風に捕まったら、どうやったら脱出できるか……さ。お前らが助けに来てくれるってのは勿論理想だけど、現実全員捕まるかもしれねーじゃん」

 

 中学生の頃、学校にテロリストがやってきたらどうやってカッコよく撃退するか妄想をしていたのは伊達ではないである。

 だが現実問題、有り得ないことはない。捕まれば、必ずポケモンと自分達は分断される。

 その時何ができるか、あるいはそれが予見できる段階でどう手を打つか。

 

「だから、そういう時のために色々考えてたんだよ……」

「でも、鍵をピッキングするのは無理ッスよ。アレ電子錠ッスもん。ポケモンの力が無きゃ、出られねーッス」

「そんな時は……頭の良いヤツに任せる事にした」

 

 にぃ、とメグルは笑みを浮かべてみせる。

 

 

 

「……頼むぜ、シャリタツ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ム、ム、ムチャブリ、スシー……」

 

 

 

 ニンフィアが影の防壁でサーフゴーのシャドーボールから身を守っているとき、メグルは単に引き籠っていたわけではなかった。

 この時点でニンフィアでは、サーフゴーに勝つことは出来ない、と判断していたし、ニンフィア本人も薄っすらそれに気付いていた。

 そして、ラティアスをこの場から連れ出すことも現実的ではない。彼女の身体は拘束されてしまっているからだ。

 故にメグルは考えた。頭の良いシャリタツならば、自分が捕まったとしても何とかしてくれるのではないか、と。

 現に、イッコンタウンを出てシャリタツの事を見てきた数日間、時折人間をも上回る知性を彼女は見せていた。 

 そもそも異種族の単語を断片的とはいえ、意味を理解して話すことが出来る時点で、ポケモンの中でもトップクラスに頭が良いのだ、シャリタツは。

 他のドラゴンが「暴」に能力を割いているならば、シャリタツが司るは「知」。見た目はこんなんだが、そもそもが誇り高い竜族なのだ、見た目はこんなんだが。

 大体、弱いものや死骸に擬態して相手の油断を誘って狩りをするスタイルの時点で、生物の進化としてはある種の完成形態とも言えるポケモンなのである。

 

 ──シャリタツ、このボールを持って逃げてくれ!

 

 

 ──スシー!?

 

 

 ──もし俺達がやられたら、助けに来てくれ! 今の俺達じゃ……マリゴルドには勝てない! お前はとっっっても頭が良いから、分かるよな?

 

 

 ──スシ!? スシスシ!?

 

 

 ──大丈夫! こいつと一緒なら、俺の居場所は分かるはずだ。頼むぜ。走れ! 今のうちに!

 

 

 ──スシィィィー!?

 

 

 シャリタツは小柄さを生かして部屋から脱出。

 更に、途中何度か警備に出くわしたが──

 

 

 

 ──おーい、何か落ちてるぞ。

 

 

 ──オレスシ……。

 

 

 ──なんだ、野生の寿司か……。

 

 

 ──寿司なら問題ねーよなぁ。

 

 

 持ち前の潜入スキルを活かして、無事潜り抜けてみせる。

 そして、誰も居ない所で、メグルに渡されたモンスターボールのスイッチを押すのだった。

 

「ス、スシー……」

「ガルルルルルルルル……ッ!!」

「スシィィィィィ!?」

 

 中から飛び出したのは、悪魔のような顔で唸り続けているアブソルであった。

 ボールの中からずっと主人の危険を予知していて、気が気でなかったのだろう。

 しかし、此処で漸くシャリタツは主人の意図を完全に理解する。

 戦闘力が高い上に未来視でメグルの居場所を探すことが出来るアブソルと行動を共にすれば、このピンチを脱することが出来るかもしれない、と。

 

「オヌシ……」

「ふるるーる!」

 

 アブソルも同意したのか、頷くと目を瞑る。

 見えるのは──黒服たちに捕まえられて、地下に繋がるエレベーターへ運ばれていくメグル達だった。

 更に、モンスターボールは全て黒服たちがアタッシュケースの中に詰めてしまったのが見える。

 

「ふるるー!」

「スシ!」

 

 そうと決まれば話は早い。

 シャリタツはアブソルに騎乗し、エレベーターの所へ向かうのだった。

 途中、警備が居て辿り着くのが難しかったため、ダクトを通り、そのまま天井裏からエレベーター前まで降りる。

 当然のように、警備が二人、ばんけんポケモンのマフィティフを連れて立っていたが、強硬突破である。

 

「なっ、何だァ!? アブソルが寿司を乗せて走ってくるぞ!!」

「バカ野郎、あんなにデカい寿司があるか!!」

「えっ──!?」

「何で俺がおかしいみたいになってんだァ!! 捕まえろーッ!!」

「フルルルルルルルッ」

 

 ──こちら大エレベーター前! 寿司がアブソルに乗ってやってきました! 応援求む!

 

 アブソルの脳裏に予知が過る。

 男が連絡に使うのは、耳のインカムだ。

 アブソルの目が光り、影の剣が音を立てて宙を舞う。

 そして、男たちのインカムが切り裂かれ、破壊されたのだった。

 

「うおっ、連絡しようとしたらインカムが壊れたァ!?」

「気を付けろ、サイゴクのアブソルは未来が見える!!」

「こ、こいつっ!! マフィティフ、やっちまえ!!」

「ワフッ!! ワフッ!!」

 

 飛び掛かる2匹のマフィティフ。

 アブソル目掛けて、その凶悪な大顎で噛み砕かんと距離を詰める。

 しかし、口を大きく開いたのが運の尽き。

 

【シャリタツの りゅうのはどう!!】

 

 シャリタツがそこにすぐさま”りゅうのはどう”をブチ込むのであった。

 当然、マフィティフの口の中でドラゴンエネルギーは暴発し、煙を上げながら番犬はその場に転がり倒れる。

 

「ああっ、マフィティフ!!」

「クソッ!! 1匹やられた!! じゃれつくだ、マフィティフ!!」

「ワフッ!!」

 

 アブソルに組み付こうとするマフィティフ。

 しかし、すぐさまアブソルは尻尾を向けて、それを鋼のように硬化させる。

 その様はまさに日本刀。それを引き抜くようにして振り払い、マフィティフの身体を斬りつける。

 

【アブソルの せいなるつるぎ!!】

 

【効果は抜群だ!!】

 

「キャインッ」

 

 切り伏せられたマフィティフは悲鳴を上げるとその場に倒れ込むのだった。

 これで残るは、あの男たちだけだ。

 彼らはすぐさま、懐から大きなスタンガンを取り出し、アブソルに向かって迫る。

 だが、そんな事はとっくに未来視で見えている。

 迫る彼らに──影の剣が思いっきり頭に叩きつけられた。

 

【アブソルの みねうち!!】

 

「へぶぅっ!!」

「はぶぅっ!!」

 

 そのまま男たちはその場に昏倒し、倒れ伏せるのだった。

 すぐさまエレベーターのボタンを押そうとするシャリタツ。

 しかし、手が届かない。

 見兼ねたアブソルが後ろ脚で立ちながら、シャリタツを支え、そのままボタンの方まで届かせようとする。

 

「ギ、ギリギリ、スシー……!!」

「ふるるる……ッ!!」

 

 そんな中、アブソルの脳裏に一つの予知が過る。

 

 

 

 ──おーい!! エレベーターの方が騒がしいぞ!! 何があったんだ!?

 

 

 

「ふるるる! ふるるるる!」

「スシー!?」

 

 急がなければ追手が来る、という災難を彼女は察知したのだ。

 シャリタツは必死にボタンに手を伸ばし──ぽちり。

 腕が伸びきってしまいそうになったが、辛うじてエレベーターの「降りる」ボタンに手が届いたのだった。

 すぐさま、エレベーターは開き。

 そこから──

 

「──おい聞いたかよー、クロミさんとシロイさんデキてるらしいぜー、でもシロイさんには妻子居るんだってよ」

「なぁーにぃーっ!? 聞いちまったなァ!?」

「フルルルルッ!!」

「スシーッ!!」

「ほぎゃー!? アブソルと寿司ーッ!?」

 

 ──取り合えず知らない奴らが出てきたが、すぐさま二匹でボコし、エレベーターの外へ追い出す。

 

「寿司がぁー1匹……うーん」

「寿司がぁー2匹……うーん」

「ふるるるる! ふるる!」

「スシー……!」

 

 アブソルの未来視に従い、シャリタツはエレベーターの一番下のボタンを押す。

 俵のように抱えられていたメグル達は、一番下の階に行ったという。

 そして、その途中で黒服たちは分かれ、片方は没収したモンスターボールを持って別室へ運んでいったという。

 通路へ飛び出し、再びアブソルの身体に掴まったシャリタツは急いでその部屋へと向かう。しかし──

 

「侵入者だァーッ!!」

「アブソルの上に、寿司が乗ってるぞッ!!」

「アレ寿司なの?」

「寿司じゃね?」

「ス、シィ……!」

「ふるるる……!」

 

 通路に待ち受けているのは、警備の黒服たち。

 そこには双頭の唐辛子ポケモン・スコヴィラン、全身が岩塩で出来た巨体のポケモン・キョジオーン、そしてバッタのようなポケモン・エクスレッグが立ちはだかる。

 更に、2匹。後ろからブロロロームに、マフィティフ、ヘルガーが迫ってくる。

 完全に囲まれてしまった。

 

「ッ……ガルルルルルルッ!!」

「スシー……!!」

 

 

 

 

「──ふぃーッッッ!!」

 

 

 

 その時だった。

 甲高い爆音が轟き、通路の一室がブチ壊される。

 そこから現れたのは──満身創痍でふらふらのニンフィアだ。

 ぜぇぜぇ、と息をしているものの、最後の力を振り絞って”ハイパーボイス”を撃ち放ったのだろう。

 

「お、おい!! どうしたんだ!?」

「こ、このニンフィア、凶暴過ぎて、勝手にボールから、出てきて……!」

 

 しかし、そこで終わりだ。 

 元々体力が限界近くだった彼女はぱたり、と床に倒れてしまう。

 そしてそれを咥えて背中に乗せるのは──オドシシだ。

 更に続けて、ごろごろとボールが転がり、その中からバサギリが勇ましく飛び出して来る。

 

「あ、あわわわ、ボールから次々にポケモンが……!!」

「捕まえ直せ!! 全員捕えろ!! 逃がす──ごぶぇっ!?」

 

 指示を出した黒服の腹に、バサギリが強烈な蹴りを見舞う。

 更に、後ろから襲って来たヘルガーとマフィティフに向かって”がんせきアックス”の回し斬りが炸裂。

 そのまま叩きのめしてしまうのだった。

 

「ジォォォォン……ッ!!」

 

 しかし、それを押しとどめるべく、キョジオーンがバサギリを押さえつける。

 その身体からは常に岩塩が溢れ出しており、そのままバサギリを塩漬けにしていき、蝕んでいく。

 

「グラッシュ……ッ!!」

 

 だが、バサギリも負けてはいない。

 その場で勢いよく回転すると、そのままキョジオーンを部屋の中に押し込んでしまうのだった。

 雪崩れ込むように2体は部屋の中でぶつかり合う。

 斬撃を叩きこみ続けるバサギリ。それを巨体で押し潰そうとするキョジオーン。 

 

「クソッ……あのバサギリ、強い……!!」

「怯むな!! 相手はトレーナーの居ないポケモンだぞ!! エクスレッグ、”とびかかる”攻撃!!」

 

 エクスレッグが地面を蹴り、天井に張り付く。

 そのまま狙いを定めると、ニンフィアを背負ったオドシシ目掛けて飛び掛かる。

 だが、オドシシもそれを見るなり周囲にバリアを展開し、エクスレッグを弾き返す。

 

「ギゴゴゴ……ッ!!」

「何やってんだエクスレッグ!! オドシシなんぞに苦戦してるんじゃあない!! ”かかとおとし”!!」

 

 地面に叩き落とされたエクスレッグだったが、すぐさま折り畳んだ脚で起き上がり、標的をオドシシに定めて襲い掛かる。

 しかし、直線的な動きが仇となった。オドシシの角を直に見てしまったのである。

 オドシシの目が妖しく光ると、そのまま昏倒して今度こそ地面に叩き落とされてしまう。

 それを見てしまった黒服たちも次々に倒れてしまう。

 

「あ、ああ、やられ──お、俺も眠くぅ……ずごぉ」

「──何やってるんだ! くそっ、スコヴィラン!! 火炎放射とタネばくだんで同時攻撃だ!!」

 

 双頭の唐辛子・スコヴィランがレッドヘッドから炎を吹きかける。

 しかし、それをシャリタツが”みずのはどう”で受け止め、アブソルが尻尾で打ち返し──スコヴィランのレッドヘッドにタネが激突し爆発した。

 それに怒ったのか、スコヴィランの2つの頭は途端に喧嘩を始めてしまう。

 

「おいっ、ケンカするんじゃね──」

 

 仲裁に入った黒服だったが、スコヴィランに両方の頭から火炎放射を吐かれ黒焦げになってしまうのだった。哀れ。

 そうこうしているうちに、アブソルとシャリタツは、モンスターボールのある部屋に駆け込んだ。

 そこには、耳から血を流し、泡を吹いて倒れている黒服たち、そして乱暴に開いたアタッシュケースからはモンスターボールが転がっている。

 

「ラッシャー!」

 

 すぐさまシャリタツはヘイラッシャの入ったモンスターボールを見つけ、愛おしそうに抱き締める。

 しかし、辺りを見回すが、今此処で出してしまうと戦っているポケモン達をまとめて巻き込んでしまいかねない。

 他に何かないか、と部屋を探していると、今度は別のアタッシュケースを見つけた。

 

「ふるるっ!!」

 

 すぐさまアブソルはアタッシュケースの鍵を壊す。

 ぱちんと音を立てて開いたそこには、まだモンスターボールが入っているのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ジオオオオオッ!!」

「グラッシュ……!!」

 

 

 

 取っ組み合うバサギリとキョジオーン。

 しかし、メグルの指示なしで戦うのは、やはりバサギリにも多少なりとも隙を生んでいた。

 そもそも相性自体はあまり良くない相手だ。キョジオーンの放つ岩技を叩きこまれる度に、バサギリの身体は傷ついていく。

 

「へっへ、良い調子だキョジオーンだ!! そのままバサギリを──」

 

 腕を振り上げるキョジオーン。

 しかしその時、轟音を立ててその巨体が傾く。

 バサギリが目を向けると、そこにはジャラランガが構えながら次の”きあいだま”を装填しているのだった。

 それを見て、バサギリはチッと舌打ちをすると、傾いたキョジオーンの巨体に向かって強烈な乱打を斧で叩きこんでいく。

 

【バサギリの インファイト!!】

 

 効果抜群の格闘技を何発も叩き込まれ、巨体が仰向けに倒れ、崩れ落ちるキョジオーン。

 腕を力無く振り上げようとするが、目の光が消えると、そのまま動かなくなってしまうのだった。

 

「そ、そんな馬鹿な、くそっこうなったら──ぐぎぎぎ」

 

 次の手持ちを繰り出そうとした黒服だったが、速攻でジャラランガが押さえつけてしまい、そのまま気絶してしまうのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ヴィルルルルル!!」

 

 

 

 主人を黒焦げにしても尚、暴れ続けるスコヴィラン。

 ニンフィアを背負ったオドシシを狙い、執拗に炎を吐いて追跡し続ける。

 こんなに暴れている相手に”あやしいひかり”を撃ったのがよろしくなかった。

 余計にスコヴィランは見境なく周囲に炎や種を吐き出し続け、部屋の扉や黒服たち、そして通路を破壊し続ける。

 

「ブルルルルゥ……!!」

 

 己の判断ミスを悔やむが、背に引っ掛けている()()()だけは絶対に主人の元に送り届けねばなるまい。

 だが、スコヴィランの動きは想像以上に速かった。一気にオドシシに距離を詰め、赤い頭から炎を吐き出さそうとする。

 しかし、突然その頭がへしゃげる。

 岩が上から降ってきたのである。悶絶したスコヴィランは絶叫しながら床を転がり回り、自分が火をつけた場所を自分で消していくのだった。

 

「ブルルルゥ……!?」

 

 オドシシが目を丸くしていると、下手人の影が明らかになる。アルカの相棒・カブトだ。

 普段こそマスコットのように彼女の背中に張り付いているが、主人の危機とあらば自ら身体を張ることも厭わない。

 起き上がったスコヴィランだったが、そのまま起き上がり様に再びカブトが岩の砲撃を大量に浴びせる。

 

【カブトの ロックブラスト!!】

 

 それぞれの頭に仲良く、均等に岩の礫はぶつけられ、スコヴィランは今度こそ断末魔の叫びを上げて床に倒れるのだった。

 

「……ブルルルルゥ」

「ぴぎー」

 

 姿形と仕える相手は違うが、主人への忠誠度は同じ。

 相も変わらずカブトには表情というものが無い上に、”ぴぎー”だけでは何を伝えようとしているのかさっぱり分からない。

 しかし、オドシシは、小さな戦友と何故か心が通い合った気がしたのだった。

 横の部屋を見やるとキョジオーンがジャラランガとバサギリによって倒されたのが見える。

 だが、エレベーターの方から騒ぎを聞きつけてきた増援が更にやってくる。

 思わず身構えるポケモン達だったが、前に出てくるのはシャリタツ。

 そこには、ヘイラッシャが入っているモンスターボールが握られていた。

 

「ラッシャーッ!!」

「ラッシャーセーッ!!」

 

 ぽいっ、とそれを放り投げたが最後。

 全長12メートルの質量爆弾が、大挙してきた黒服たちをまとめて押し潰してしまうのだった。

 

「ぐ、ぐおお、で、デカい、デカすぎるぞコイツ……!!」

「きゅう……」

「ラッシャー♡」

「ラッシャーセー♡」

 

 こうして、シャリタツとヘイラッシャは感動の再会を果たすのだった。

 

 ─HAPPY END──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──あなたっ……!

 

 

 

 電気の檻に捕らえられたラティアスは、漸く──竜骸と対面することになった。

 それは既に、デイドリームの最深部にある炉心の中にケースに入れられて、コードに繋がれている。

 涙が止まらなかった。

 変わり果ててしまった愛する相手を前にして。

 

「……泣くなよ、ラティアス。もうじき竜骸が、あそこにもう1つ増えるんだからサ」

 

 ──ああ こんな こんなこと……!

 

「ラティオスの出力だけじゃ足りない。だからお前を大展示会で釣り出したんだ、ラティアス。お前が伴侶の骸を探しているのは知ってたからな」

 

 ──ゆるせない……! かえして……! かれを かえして……!!

 

 ガン、ガン、と身体をぶつけ続けるラティアス。

 しかし、既に檻を破壊するだけの力は無くなっていた。

 ポケモンからの攻撃を受けたことで、彼女はすっかり弱り切っていたのである。

 

「その檻は生体に反応して電気を放つんだけどネェ。反応しないくらい、弱っているのかナァ、ラティアス」

 

 ──うっ、ぐっ……。

 

「だけど先ずは……その前準備。この島の人間皆を、デイドリームの力で眠らせてやるヨ!!」

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