ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第71話:まやかし

「それにしてもラティアス……このデイドリームは……外からお前が入ってきても分かるように、ドーム周囲には生体センサーを仕掛けていたんだ」

 

 ──なにが いいたいの

 

「いやぁ、簡単な話サ。どうやって、生体センサーを潜り抜けたのか……是非とも話が聞きたくってネェ」

 

 ──そんなの わたしにかかれば かんたんだわ

 

 ラティアスはマリゴルドを強く睨み付ける。

 確かにエスパータイプの彼女ならば、生体センサーを通り抜けることは容易いかもしれない。

 しかし──マリゴルドは畳みかけるように、1枚の写真をラティアスに見せたのだった。

 

「この写真が……全ての始まりだったんだヨォ。ラティアス」

 

 ──それは なんで そんなっ

 

「……これを見てもまだ分からないのかい? いや、分からなかったのかい? ラティアス」

 

 ラティアスは目を見開き、そして絶望したように檻に寄りかかる。

 わなわなと瞳の焦点は合わず、身体は震えている。

 その姿を見て、余計にマリゴルドの口角はつり上がるのだった。

 

 

「……俺が何で、君も欲しがっていたのか……分かったんじゃないかナァ」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「で、助けに来いとは言ったけど……」

「大挙してきたね……」

「愛されてるッスねー」

 

 

 独房の扉がぶっ壊され、そこに居たのは──手持ちのポケモン達全員だった。

 残るボールの入ったアタッシュケースはアブソルが口に咥えている。思いっきり撫でてやると、機嫌が良さそうに喉を鳴らすのだった。

 そしてシャリタツはと言えばヘイラッシャの口の中に入り、満足そうにしている。

 

「サンキュー、シャリタツ。無茶なお願いしちゃって悪かったな」

「スシー♪」

 

 しかし──問題はニンフィアだった。オドシシの背中で横たわり、肩で息をしている状態が続いている。

 

「オドシシありがとう、ニンフィアを運んでくれて」

「ブルルルゥ」

「ボール、全部ある! 手持ちが皆戻って来たよっ!」

「ふるる!」

 

 アブソルがメグルに向かって吼える。

 飛び出した先は──黒服たちが泡を吹いて気絶している部屋だった。

 そこには金庫が置かれており、アブソルによって破壊されている。

 

「この部屋、俺達の荷物も全部あるじゃねーか!」

「全部ここに保管してたんだ! ボールもあるよ!」

「あっ、オージュエルと錆びた刀まで! これ無くなってたらどうしようって思ってたんスよ! 姉貴に怒られるじゃ済まねえッス!」

「一先ずはニンフィアを回復させる……!」

 

 メグルが自分の鞄から、金平糖のような大きな飴を取り出した。

 

「……げんきのかたまりだ、食べてくれニンフィア……!」

「ふぃ……」

 

 そして、それをニンフィアの口元に持ってくると、彼女はそれを強く噛み砕き、飲み込んだ。

 どくんっ!!

 脈打つような音が聞こえた。

 そうして、しばらくすると──ぱちり、と彼女は目を開ける。

 

「ニンフィア!」

「……ふぃー? ふぃるふぃーあっ!」

 

 すっかり回復したのか、彼女はふわり、とメグルにのしかかり、リボンでぎゅーっと抱き締める。

 それを見てか、アブソルも真似してメグルに飛び掛かるのだった。

 

「うわっ、重い重いって──アブソルも、よく頑張った! 皆を助けてくれてありがとな!」

「ふるーる!」

「ふぃるふぃーっ!」

 

 嫉妬したのか、腹を立てたニンフィアがリボンの力を更に強く締めて来る。

 「もっと私を見てよ!」と言わんばかりに。

 だが、わざわざ重症の状態でボールから出てきた時点で、彼女が皆を助けるために行動したであろうことはメグルにも分かっていた。

 

「わぁーってる、どーせお前が大暴れしてくれたんだろ? 無茶するぜ、全く……最高の相棒だ!」

「ふぃっ!?」

 

 不意を突かれたように彼女はそっぽを向いてしまう。

 意外と押されると弱いタイプなのだ。

 それを見てか、普段の姿とのギャップに思わずアルカはおかしくなった。

 凶悪リボンも照れるときは照れるのだ。

 

「あっははは、ニンフィア可愛いっ。褒められたのが嬉しかったのかな」

フィッキュルルルルィィィ

「ごめんって!! そんなに凄まなくても!!」

「あー、手持ちとイチャイチャしてるところわりーんスけど、目的、忘れてねーッスよね」

「分かってるよ! 荷物もボールも全部取り返したんだ。後やることは一つだろ!」

 

 3人は、残るモンスターボールを全て腰のポケットに挿した。

 助けねばならないのはラティアスだけだ。

 問題の場所への行き先は、アブソルが示してくれる。未来予知で見た通りの通路を進めば、間違いがない。

 辿り着いた先には、如何にもな巨大な鉄扉が行方を阻んでいたが、それもヘイラッシャが尾を振りぬいて壊してしまうのだった。

 

「よし行くぜ──」

「あっ、ところでメグルさん」

「何だよ、今いいところだっただろが!」

 

 ずっこけそうになるメグル。

 見ると、ノオトの手には──キーストーンが握られていた。

 

「ッ……これって」

「ルカリオの奴が持ってて……あいつらがラティアスから回収したんじゃないかと」

「そうか……でも、メガストーンねえんだよな。お前が持っておけよ」

「オレっちもねーッス」

「じゃあ俺が持っておくわ」

 

 メグルは──ポケットの中にキーストーンを入れる。

 そして、鉄扉の先へと歩を進めるのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「デイドリーム起動まで残り3時間切りました!!」

「クックック……ッ!! 良い調子だヨォ。ラティアスは?」

「すっかり大人しくなってしまって……」

「構わんヨォ。もうじき、愛する人と同じ場所に行けるんだからサ」

 

 マリゴルドの眼前には、完全にデイドリームの炉心と化した竜骸が妖しく輝いていた。

 それをラティアスは、光の無くなった目でずっと見つめている。

 

「それにしても良かったんですかあ? マリゴルド様。あの錆びた刀とオージュエルとやら、研究部に回さなくて」

「バカ言え! あの刀はきっと、”よあけのおやしろ”の秘宝サ! 下手に使えば、イレギュラーが起きかねないヨォ。一目見た時に”コイツはヤバい”って思っちゃったのサ」

「そうですか……」

「それに、オーライズとやらが無くったって、俺のサーフゴーは強いんだからネェ」

「報告しますッ!! 例のトレーナー達、皆脱走しました!! このまま、地下セクターに皆やってきます!!」

「構わんヨォ──って、ええええええ!? 何やってんノォ!? 警備は何やってたノォ!?」

「上の警備は、何も異常は無かったと言ってますね……落ちてる寿司以外は

「バカしかいねーのかヨォ!!」

 

 狼狽するマリゴルドを他所に、爆音が上の方から聞こえてくる。

 急いでシェルターを飛び出した彼は、目の当たりにすることになった。

 多くのポケモン達と暴れて警備の黒服たちを跳ね飛ばしながら、最深部を目指して下へ下へと下っていくメグル達を監視カメラで確認しながら、マリゴルドはゴージャスボールを握り締めるのだった。

 入口を見ると、巨大なヘイラッシャが後からやってくる増援を次々に返り討ちにしている。口の中にはシャリタツが入っており、その能力はかなり凶悪なものへと変化している。

 更に、下を警備していた黒服には、オドシシとバサギリが共同で立ち向かっており、繰り出されたポケモンは次々に混乱で同士討ち、そこをバサギリが勢いよく切り刻む。

 

「まぁ良いヨォ。厳しい現実ってヤツを思い知らせてやるには良い機会じゃナイ?」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 花が爆弾となってメグル達の足元に降り注ぎ、一気に起爆する。

 第三フロア。足場の上に立ち、待ち構えるのはクロミとマスカーニャだ。

 

「ふにゃぁぁぁーん」

「……はにゃはにゃはにゃーん♪ 悪いけど、マリゴルド様の邪魔はさせないのにゃーん♪」

「メグルさん、アルカさん。此処はオレっちが」

 

 前に進み出るのは──ノオト。

 先の雪辱を晴らすべく再びルカリオを繰り出す。

 その場に緊張感が漂い、どちらが先に動くかの駆け引きが始まった。

 

「ノオト、後は頼んだからねっ!!」

「ロミジュリったら許さねーからな!!」

「安心するッスよ、お二人とも。こういう時くらい、真面目に決めるッスから」

 

 グローブを嵌め直し、ノオトは拳を構えて真っ直ぐにクロミを見据える。

 

「……さっきは負けたッスけど……今度はそうはいかねーッス。クロミさん……あんたを悪の道から引き戻すッス

「はにゃ? 一体何言って」

「オレっち、初めて見た時から貴女の事が好きでし──」

 

【マスカーニャの トリックフラワー!!】

 

 爆発音が後ろから聞こえてくる。

 メグルとアルカは振り返り、思わず遠い目。

 

「ダメそーだな……」

「うん……」

 

 再び煤塗れになって倒れたノオトに、トドメを刺さんと言わんばかりにクロミは近付いていく。

 かつん、かつん、と冷たいハイヒールの音を立てて。

 

「……悪いけど、彼氏は間に合ってるにゃーん♪ 10年経ってから出直してくるにゃーん♪」

「分かってたッスよ、ンな事は」

「ッ……!?」

 

 マスカーニャとクロミは周囲を見回す。

 ルカリオの姿が無い。

 主が爆破された一瞬の間に姿を消したのだ。

 大の字になって寝転がったまま──ノオトは笑みを浮かべていた。

 

「だからこっからは……本気で喧嘩してやるっつってるんスよ。この……”よあけのおやしろ”のキャプテンがなァ!!」

「──ガオンッ!!」

 

 マスカーニャの背後を取ったルカリオは、その背中に拳を思いっきり叩き込む。

 不意を突かれたマスカーニャの身体は壁まで吹き飛んでしまう。

 

「勝てねェ訳ねーだろが。あんたのマスカーニャの動きは、見切った。生憎、ルカリオは二度も同じ敵にやられるような育て方してねーんスよ」

「さっきと動きのキレが違う!? どうなってるにゃん!?」

「後は……格闘技が効かなかったカラクリを確かめるだけッス。お覚悟、良いッスか?」

「……ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──第四フロア。

 ようやく、動力炉が見えて来る。 

 その先きっとマリゴルドは居ると確信しているのか、アブソルは迷わずにメグル達に先行した。

 だが、嫌な予感がしたのか、そこで立ち止まり、すぐさま後退する。

 

「ちょい待ちぃや!!」

 

 ──そこにウェーニバルが現れ、足場に穴が開く程の勢いで蹴りが叩き込まれるのだった。

 幸い、影に溶け込んだことでそれを回避することが出来た彼女だったが、目の前には第二の刺客が立っている。

 GSグループの社員・シロイだ。

 

「うぇぱっぱらぱらり!!」

「さあさあ、一緒に踊ったろか? 誰から手ェ取ったろうかな?」

「……上等だ。そのケツの羽根全部むしり取ってやるよ!!」

「待っておにーさん!」

 

 間に割って入るのは──アルカ。

 そして、彼女もまた先程の雪辱を晴らすべく、ヘラクロスを繰り出す。

 ウェーニバル、そしてヘラクロスが互いに睨み合った。

 

「此処は、ボクに任せてください!」

「なんや、なんや。さっきと同じか? 冗談やったらおもろないで」

「本気だよ。今度こそ、あんたに勝つ」

「言うたやろが。冗談おもんないでってなァ!!」

 

 すぐさまウェーニバルがステップルを刻み、ヘラクロスに次々に蹴りを叩きこんでいく。

 しかし今度は、最初に放たれた一発目で、ヘラクロスが思いっきりウェーニバルの脚を掴んで、投げ飛ばす。

 

「はっ、ぁっ……!? な、何やねん、その馬鹿力……どっから湧いてきたんや!?」

「ウチの子の特性はこんじょう。そんでもって……()()()()()、かな!」

「プピファーッ!!」

 

 森の王者は咆哮し、ウェーニバルに詰め寄る。

 すぐさま態勢を整え直したウェーニバルは再びステップとリズムを刻みながら、ヘラクロスへの攻撃のタイミングを伺うが、

 

「”タネマシンガン”!!」

 

 ヘラクロスの口からマシンガン状にタネが次々に放たれ、ウェーニバルの足元を爆撃していく。

 さっきの戦いで、ウェーニバルの戦い方は分かった。

 ステップを踏みながら、勢いをつける事でウェーニバルはあの高速乱打を可能にしている。

 つまり、その前にそもそもステップを踏ませずに攻撃を叩きこめば勝てる。

 昨今はスマホロトムのボックスアプリで簡単にポケモンの技をビルド出来るので、早速アルカは対ウェーニバル用に技を入れ替えていたのだ。

 

「”アクアステップ”!! ギアを1つ上げてくで!!」

「じゃあこっちは”くさわけ”だ!!」

 

 ウェーニバルにヘラクロス。

 互いに譲れない高速戦闘が始まった。

 それを横目で見て、メグルは先に進むのだった。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「──これが……動力炉……!!」

 

 

 

 メグルが辿り着いたのは、巨大なホール。

 そして、それを貫く巨大な柱だ。

 しかし──その中のガラスケースには、竜の骸が妖しく光っている。

 見ただけで彼は寒気を感じた。絶望。悲哀。そのような負の感情が流れ込んで来る。

 

「待てェェェーッ!! ヤツを動力室に入れるなァァァーッ!!」

 

 だが、浸っている場合ではない。

 後ろからは黒服たちがポケモンを引き連れて走ってくる。

 しかし、それを食い止めるべく立ちはだかったのはニンフィアだ。

 すぐさま彼女が爆音を放つと──黒服たちの耳から血が流れ、そのまま泡を吹いて倒れていく。

 ポケモン達も、衝撃波だけで吹き飛んでしまうのが見えた。その姿を見ているだけで、きっと大丈夫だ、と思えた。

 相棒に背を預け、メグルは中に入り込む。

 周囲は鉄色。明かりは薄暗く、よく見えない。

 だがそれでも──竜骸の位置とは丁度離れた場所に、ラティアスの入っているケージが見える。

 しかし、その中に入っている彼女の顔は虚ろだった。

 全ての希望を失ったかのように、頭を垂れ、目からは光が失われている。

 

「……ラティアス!! 返事をしてくれラティアス!!」

「そんなにこの子が大事なのかネ? メグルくぅん?」

 

 部屋の奥から──マリゴルドが現れる。

 その傍らには、黄金のポケモン・サーフゴーの姿もあった。

 

「……ラティアスに、何をしたッ!!」

「何も? ちょっとだけ真実を教えてあげただけサ。そうしたらこの通りだヨォ」

「ガルルルルルッ!!」

「……テメェは、許さねえ!!」

「許すも許さないも俺が決めることサァ!!」

 

 サーフゴーの身体から無数の黄金が溢れ出す。

 しかし、アブソルは地面を蹴り、一気にサーフゴーへと喰らいついた。

 この手の遠隔技は、放たれた弾に対応するのではなく、本体を直接叩くのが手っ取り早いのである。

 

「”ふいうち”!!」

 

 影によって作られた剣がサーフゴーを切り裂く。

 しかし、1000枚のコインで構成された身体はバラバラになると、再び元の人型へと再生してしまうのだった。

 サーフゴーの身体は決して朽ちず、決して錆びない黄金のコインによって作られている。

 それらをバラバラにしたところで、霊力で繋がったコインは再び元の通りに繋ぎ合わされていくのだ。

 

「ッ……」

「今度はこっちから行くよォ!! シャドーボール!!」

 

 サーフゴーの身体からコインが浮かび上がり、そこに次々に霊力が込められていく。

 コインを核としたシャドーボールは、素早いアブソルを狙って、追尾するようにして追いかけていく。

 

「ハッハ!! サーフゴーにゴーストタイプをぶつけるなんて、バカだネェ!! 弱点を突かれりゃ、ポケモンなんて簡単に倒れちゃうんだからサァ! チョロいもんだよネェ!!」

「……そいつぁどうかな」

「ッ……!?」

 

 メグルは懐から錆びた刀を取り出し、アブソルに向かって投げ付ける。 

 それを彼女は口でキャッチし、メグルの方を見やった。

 

「──言っただろが!! 絶対に痛い目見せてやる、ってな!!」

「やってみろヨォ、オーライズ。さっきと同じなら、サーフゴーに勝てやしないんだからナァ!」

「……オーライズ? ちげぇよ。ギガオーライズだッ!!」

 

 オージュエルを取り出したメグルは、それに右手を翳す。

 そして、アブソルの咥えた錆びた刀がオーラとなって分解され、彼女の身体に纏わりついていく。

 

 

 

「──何だ!? さっきとは違う!? これは──」

「──ギガオーライズ。”アケノヤイバ”!!」

 

 

 

 オーラの翼がアブソルから勢いよく生えた。

 そして、頭には霊魂の炎が浮かび上がり、最後にアケノヤイバの姿がオーバーラップして消えた。

 

 

 

【アブソル<ギガオーライズ> ざんれつポケモン タイプ:悪/ゴースト】

 

【特性:あけのみょうじょう】

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