ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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同時上映と言いますか、これを書いてる時点では五章の途中だったのですが、あまりメグルと手持ちの絡みが書けてないので書きました。


番外編:ニンフィアと愉快なフレンズによる緊急会議

「ふるーる? ふるるー♪」

 

 

 

 ──甘え上手の常か。

 トレーナーのメグルから溺愛されるようになるのも、時間の問題であった。

 二人っきりになると、アブソルはお腹を見せて服従のポーズをするのである。

 いいよー、おいで運命の人ー♪ と言わんばかりに前脚を広げて誘惑するのだ。

 どんなに高潔なトレーナーであっても、もふもふには敵わないのである。

 すぐさま彼はアブソルのお腹に顔を突っ込み、思いっきり抱き締めるのだった。

 アブソルの方も嬉しそうに脚全部でメグルの身体をがっちりとホールド。

 いつも良いシャンプーで洗ってあげているからだが、とてもいい匂いが鼻腔から突き抜ける。犬吸いだなんて言葉があるが、いざ享受できる立場に立つと、二度と離れたくなくなる極楽だ。

 

「ふるるー♪」

「あああああああ、至福のひと時!! ニンフィアは絶対にさせてくれねえからな……」

「ふるるるー♪」

 

 アブソルも全く嫌がる素振りを見せないどころか、ウェルカモ──ではなかったウェルカム状態。

 運命の人・メグルにされて嫌な事など一つもないのである。

 

「ふるーる♪ ふるるるー♪」

「これこれ愛いヤツめ、愛いヤツめ!」

 

 ぐりぐり、と頭を擦りつけると、アブソル側もメグルの頭に自らの顔を擦りつける。

 完全にラブラブ。誰にも付け入るスキはない。そんな幸せな光景を遠巻きから、悪魔のような形相で見つめる影があった。

 

「フィッキュルルルィィィィ……!!」

 

 ニンフィアは激怒した。必ず、泥棒犬(犬かは微妙なライン)を除かねばならぬと決意した。

 彼女はキィィィンと音を立ててハイパーボイスの充填に掛かる。正妻は私。浮気相手の泥棒犬は滅すべし。ついでに浮気者の主人も滅すべし。

 こんなに嫉妬している彼女だが、そうは言っても進化してからは好意をストレートに示すようになったので、メグルからはかなり構って貰っている方である。

 だが、それでも、彼がアブソルを可愛がっているのは納得が行かないのである。とんだワガママお姫様であった。

 それを止めようとするのは何時もバサギリ、オドシシの古参勢。こんな所でぶっ放せば、部屋が全壊しかねない。その威力を身を以て知っている二匹は彼女を全力で部屋から引き剥がす。

 

「ブルルルゥ!! ブルルルゥ!!」

「グラッシュ!! グラッシャーッ!!」

「フィーッ!! フィッキュルルルルィィィィ!!」

 

 最後まで喚くニンフィア。

 彼女はそのまま二匹に連行されていくのだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

※便宜上、此処からポケモンの会話(意訳)が始まります。

 

 

 

「──緊急会議を始めますッ!!」

 

 

 

 キャンプの最中、アルカやノオトのポケモン達が遊びに行く中、ニンフィアは他の手持ちを皆揃えて目の前に並べさせる。

 彼女は激しく後ろ脚でスタンピングしながら、全員の顔を見た。メグルのスタメンたちがそこには並んでいる。

 

「ケッ、また姫様がよく分からんことを言い出したぜ。下らねえ議題だったら帰るぞ俺ァ」

 

 ──荒くれものの用心棒・バサギリ。

 

「まあまあ、姫にとっては重要なことですので……此処は一つ、お付き合い願いますぞバサギリ様」

 

 ──みんなの忠臣・オドシシ。

 

「姫様の事だ、どうせまた大親分の事なんだろう? 巻き込まれるオレ達の身にもなっとくれよ」

 

 ──偽竜の怪”知”担当にしてオレ系姉御・シャリタツ。

 

「オデェ、難しいことはわがんねぇけど、お姫様が良からぬこと企んでるのは分かるべ、どうせ大親分とアブソルの事だべ」

「シッ!! 黙っておきなラッシャ。姫様の()()で瞬殺されても知らないよ。今はもっとアホのフリしときな!!」

「オデ ハラヘッタ」

「そこ全部聞こえてんのよ!!」

 

 ──偽竜の怪”暴”担当にして子分・ヘイラッシャ。

 

 

 

「題は、メグルがあたしを構ってくれない問題!! 最近あいつ、アブソルばっか吸ってるんだよ!? あたしのことを吸ってくれてもいいじゃん!! あたしの何がダメなの!?」

 

 

 

 そして──凶暴リボンお姫様・ニンフィア。

 

「大体あんた達は悔しくないの!? もっとメグルに甘えたりしなさいよ!」

「俺があいつに? やめろ、身の毛がよだつ!」

「私はいつもご主人様を乗せていますので、その時にブラシも掛けてもらいますな」

「オレはよく、一仕事した後にオヤツ貰うけど……ラッシャが居れば別に何も不足はないな」

「オデェごしごし身体洗ってもらうの好きだべ」

「こいつら……」

「あんたが大親分の事好きすぎなだけだよ、どう考えても」

「メグルはあたしのモノなんだもんっ!!」

「オメーのモンじゃねえよ」

「そして姫……申し訳ないのですが、アブソル様に水をあけられているのは残念でもないし当然かと」

 

 早速物申すのは忠臣・オドシシ。

 主人のメグルの足代わりであり、ニンフィアにも忠誠を誓う物腰柔らかな古顔である。

 そんな彼だからこそニンフィアの敗因はきちんと理解していた。

 

「──姫は、聊かお転婆が過ぎるかと」

「はぁ!? 何でこのあたしが!? あたしはメグルのパートナーなんだよ!?」

「……うっかり変な所を触ったら殺されると御主人から思われているのでございます」

「何でよ!!」

「日頃の行いだろオメー」

「日頃の行いでございますな」

 

 

 

【ニンフィアのハイパーボイス!!】

 

【バサギリとオドシシは倒れた!!】

 

 

 

 ──屍が転がっていた。姫の前で余計な事を言いすぎたのである。只でさえ暴君だったニンフィアは、ハイパーボイスを身に着けたことで、バサギリでも下手をすると返り討ちに遭うようになってしまったのだ。

 

「さーて次は誰が喋るのかしら♪」

「大親分、飯くれるし、オデ大親分が好き」

「あんたに聞いてもムダそうね、ヘイラッシャ」

 

 いつも通りぼんやりした顔をしているヘイラッシャ。

 その口の中に入っているシャリタツが、ズバリとニンフィアに突きつける。

 

「──そりゃあアンタ、やっぱ媚び媚びに媚びるしかないだろ」

「媚びる!? 今でも結構媚びてるのよ!? どうすればいいの!?」

「……そりゃあ、アブソルみたいにすれば──」

「嫌よ! あいつの真似をするなんて! それにメグルは、アブソルのモフモフが好きなんだもん!!」

 

 ニンフィアは思い出す。

 イーブイの頃は、よく首元のモフモフをメグルが触ってくれたことを。

 

「進化してから、あたしの魅力、無くなっちゃった……あたし、このままメグルに構って貰えないんだ……」

「さあ、メグル様は時間が空けば我々共に構っているように見受けられますが」

 

 ハイボから復活したオドシシが言った。なかなか1匹1匹に構う時間が無い分、時間がある時メグルは全員をボールから出し、時にポケモンの飼育本を片手に彼らのブラッシングやシャワーをしてやるのだった。

 特にヘイラッシャは、専用のブラシをポケモンセンターから貸してもらい、わざわざ水を掛けながら洗ってやっているくらいである。ユイにトレーナーの基礎を叩きこまれただけあって、メグルは基本に忠実だった。

 

「それじゃあ足りないよ! あたしが一番だもん!」

「じゃあ一番になれる努力をしな、お姫様。一番ってのはねぇ、駄々こねて掴める程簡単なモンじゃないよ!」

「シャリタツ……」

「オレだってね、コイツを捕まえるまで時間が掛かってね。なんせコイツ、他のシャリタツとオレを見分けられないから……」

 

 ニンフィアは顔を顰める。

 それはこの2匹の関係性に大分疑問が生じる発言であったことは否めない。

 

「……あんたひょっとしてシャリタツなら誰でも良いの? ヘイラッシャ」

「オデェ、親分が一番だべ」

「今は見ての通りだよ! こないだ間違えてミガルーサを口ン中に突っ込んでたけど!!」

「間違え方がダイナミック過ぎるのよ!! 多分それあんたの顔覚えてないわよコイツ!!」

「うまかったべ」

「食ったの!?」

 

 尚、ミガルーサは切り身を残して逃亡したので無事である。犠牲者は居なかった。

 

(ダメだわ……全くと言って良い程参考にならない……!)

 

 パーティ内で唯一カップルとも言えるヘイシャリ。しかし、如何せんヘイラッシャがなかなかぼんやりしているので、彼からシャリタツへの矢印の向き方が迷子なのだった。

 このままでは、アブソルに勝つ方法など思い浮かぶはずもなかった。そんな矢先。

 

 

 

 

「ねーねー、皆何の話してるのぉー?」

 

 

 

 甘ったるい声が響き渡り、皆は振り返る。メグルの手持ちで、唯一この会議に参加していないポケモンが居た。

 

 

 

「私もぉ、混ぜて混ぜてー♪」

 

 

 

 ──皆の妹にして暫定エース格・アブソルであった。

 彼女は無邪気に笑いかけると、ニンフィアの方にたたっ、と駆け寄り、顔を擦りつける。

 まさに宿敵とも言える存在であるアブソルだが、いざ対面すると邪険に出来ないニンフィアであった。

 

「ッ……ア、アブソル」

「ねーねー、ニンフィアちゃんー! 遊んで遊んでぇー♪」

 

 アブソルが少し力を加えると、ニンフィアはすぐ地面に押さえつけられてしまう。

 想像以上に彼女の力が強い事に軽い恐怖を覚えながらも、ニンフィアは必死の抵抗を試みる。

 だが、可愛い妹分に甘えられて満更でもなく、結局良いようにされてしまうのだった。

 

「ば、ばかぁっ、いきなり押し倒すな! あんた、最近あたしよりデカくなってきてない……!?」

「成長期ですからな」

「ケケッ、お姫様もアブソルの前じゃあ形無しだな。これじゃあいつまで経っても勝てそうにねーぜ」

「うるさい、うるさーい! かてるもん!」

「何? 私と勝負したいのぉ、ニンフィアちゃん」

「やめときなアブソル、流石に()()で一発だよ」

「何言ってんのシャリタツ! アブソルに、ハイパーボイスなんて使える訳ないじゃない!」

「俺達には平気で使うのにな!!」

「仲の良い事は善いことでございます」

 

 この時点で敗北確定である。

 

「……アッサリ諦めろお姫様。お前生きてる限り絶対そいつにゃ勝てねえ」

「むぐぐ……!」

「好き好きー♪ 皆も大好きだよー♪」

 

 ニンフィアから離れると、順々に他のポケモンにも甘えていくアブソル。

 あのバサギリでさえ彼女を邪険にせず背中に乗せている辺り、天性の魔性なのだろう。

 誰もアブソルに勝つことが出来ないのである。

 

「……ねー、アブソル。一つ聞いて良い?」

「なぁーに?」

「何でそんなにメグルの事が好きなの?」

「──夢で見たからだよっ」

 

 あっさりとアブソルは言い切った。

 

「運命の人の事も、皆の事も♪ とっても優しくて、強くて、カッコいい皆と出会うんだって、ずっと楽しみにしてたんだぁ」

「あたし……あんたら(サイゴクアブソル)の、夢だとか予言だとかを重く見る所だけはよく分からないわ……あたし、予知使えないから」

 

 言わば、刷り込みのようなものであった。

 これは彼女に限らず、サイゴクのアブソル全体に言えることだが、時期によっては生まれてすぐのうちに”運命の相手”を予知夢で見るのだという(ノオトは”一目惚れ”と推測していたが、ハズレである)。

 だがもし、未来予知が使えたとして。あのやさぐれた研究所の生活で、メグルとの出会いを予知できたとして。彼の事が此処まで好きになれたか、と言われればニンフィアは間違いなく首を横に振るだろう。

 

(分からないから面白いことだってあるのよ、アブソル。未来が全部分かってたら、あの時の出会いはあんなに鮮烈に頭に焼き付いたりしないもの)

 

 ニンフィアは思い返す。最初のトレーナーに怖がられ、研究所に突き返され、その後不貞腐れながら過ごしていた研究所での日々の事を。

 

 

 

(ねえメグル。()()()あたしを抱き締めた貴方が……あたしにとってどんなに輝いて見えたか、きっと貴方には分かりっこないんでしょうね)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ふぃるふぃー」

 

 

   

 ごろん、とベッドに寝転がり、服従のポーズ。

 結局──ニンフィアは可愛い妹分のやり方に倣うことにした。

 身体を全部曝け出し、何をされても許すと言わんばかりに。恥ずかしいので彼から顔を反らしてしまったが──メグルは、すぐさま食いついた。

 

「……もしかして、すっごく甘えたい気分?」

「ふぃー……」

 

 分かってるならさっさと来なさいよ、とニンフィアは体全部を投げ出したまま前脚を伸ばす。

 すぐさまメグルもベッドに寝転がり──彼女を抱きしめたのだった。

 アブソルのように長い体毛ではないが、きめ細やかでガラスのような短い体毛が安らぎをメグルに与える。

 こちらを見つめる宝石のような目は、見ているだけで吸い込まれそうだ。

 

「進化してから……本当に綺麗になったなニンフィア」

「ふぃっ!? フィー……!!」

 

 褒められるとむず痒い。自分が彼の一番のパートナーであることを、自覚させられる。

 

「ほんと、こうして大人しくしてると作り物みたいだ……妖精だから当然か」

「ふぃ?」

「お前といると、すっげー落ち着く……」

「ふぃきゅるるる」

 

 思わずニンフィアは、メグルの身体をリボンで包み込む。

 それだけで、足りない足りないと飢えていたハートは満たされていく。

 

(こんなんじゃ許さない。許さないんだから、メグル……♪)

 

 ぎゅう、と抱き寄せる力は自然と強くなる。

 結局──何事も素直が一番なのだ、と学んだニンフィアであった。

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