「それにしても残念だ」
ルコラは悟飯の顔をじっと見ている。
「な、なにが……?」
「孫悟飯は黒髪黒目だし、それなりに戦闘力があるだろ?これで尻尾が有ればなあ」
「……仮にそうだったとしても、僕は君とは結婚しないと思う」
「安心しろ!私もサイヤ人以外と結婚するつもりはない」
バシバシと悟飯の背を叩く手にはそれなりに力がこもっている。万が一にも尻尾が再び生えてきませんようにと悟飯は祈った。
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ルコラと別れ帰路に着く悟飯だったが、心中は穏やかではなかった。金色の戦士のことだ。もうその正体が悟飯であることはルコラにバレてしまっている。このまま超サイヤ人の姿で活動すれば、彼女が余計に話を広めてしまうかもしれない。いくらルコラが周りに信用されていないといえども、活動回数が増えれば別の話だ。
なにか別の方法で正体を隠さなければならなかった。
「ブルマさんに相談してみよう」
筋斗雲に話しかけると、悟飯は進路を西の都へと変えた。
正義の行動を止める気は悟飯にはなかった。彼は目の前の悪を見過ごせる人間ではなかったからだ。
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「あるわよ、方法」
「本当ですか!」
「見た目で悟飯くんってわからなきゃいいんでしょ?要するに変身スーツをカプセルのように粒子にして装着できるようにすればいいのよ、簡単だわ」
相談をすると、ブルマはあっさりと言い切ってくれた。
「ぜひお願いしたいんですが……」
「作ってあげるけど、ちょっと時間がかかるからそれまで待ってくれる?そうね……2時間くらい」
「ありがとうございます!あの、ベジータさんっていますか?待ってる間にちょっとお話ししたいことがあって」
「ベジータに?」
ブルマは不思議そうにした。思えば悟飯は今まで自分からベジータに絡みにいったことはなかったかもしれない。珍しがられるのも無理はない。
「ちょっと学校で妙なひとに会っちゃって……」
ブルマにルコラとのことをかいつまんで伝えると、彼女は笑い出してしまった。
「あははは!何よその子、面白いじゃない……ふふふ、確かにそれはベジータに聞くしかないかもね……」
「笑い事じゃないですよ」
「そう怒んないでよ。ベジータなら重力室でトランクスをしごいてると思うからいってらっしゃいな」
ブルマはそう言って重力室のある方を指差す。それに従って悟飯は退室するが、背後で笑うブルマの声を聞き逃さなかった。
「なんだかなあ……」
重力室はどこだったか。
ブルマの差した方向へ歩いてきたのはいいが、具体的な場所を悟飯は覚えていなかった。
そうやってカプセルコーポレーションの中を歩いていると、トランクスがやってきた。
「あ!悟飯さん」
駆け寄ってきたトランクスは汗でびっしょりと濡れており、タオルを首にかけていた。
「やあトランクス。お父さんと修業してたんだって?」
「まあね。悟飯さんはいつきたの?」
「ついさっきだよ。お母さんに用事があったんだ」
トランクスと出会ってからややあって、ベジータがやってくる。ベジータは悟飯を一瞥するとまた歩を進めようとした。
「あ、ベジータさん……おじゃましてます」
「ふん。体が鈍っているぞ。鍛えておけ」
「はい!あ、いやそうじゃなくて。ちょっと待ってください!お話しがあるんです」
ベジータを呼び止めると、不機嫌そうに振り向いた。
「貴様がオレに用だと?珍しいな」
「はは……でも結構重大でして」
「なんだ、言ってみろ」
悟飯はベジータを見据えると、ひと呼吸おいた。
「学校にサイヤ人を名乗る子がいて……髪の毛は黒じゃないんですけど、尻尾まであったんですよ」
「サイヤ人?貴様以外にか」
「はい」
ベジータは疑いの目で悟飯を見る。
悟飯は負けじと見つめ返した。
「惑星ベジータが滅びたとき死ななかったサイヤがオレが把握している以外にいないとは正直言い切れない。オレも全員の顔と名前を知っていたわけじゃないからな」
「じゃあやっぱり本物なんでしょうか」
「可能性はあるというだけだ。コスプレか何かの方があり得るんじゃないのか」
「他にもサイヤ人がいるの?ボクにも会わせてよ!」
話を聞いていたトランクスが興味津々といった様子で混じってくる。場所を伝えれば今にも飛び出していきそうな勢いだ。
「やめた方がいいよ。あの子トランクスくんがサイヤ人だって知ったら求婚してくるよ」
「きゅうこん?」
「結婚してほしいってこと」
するとトランクスは表情を変えた。やってしまったとかそういう感情が含まれていそうだ。
「やだなあ、悟飯さんと同い年ってことはおばさんじゃん!やーめた!」
「おば……」
ルコラをおばさん扱いするということは悟飯をおじさん扱いしているということと同じだ。そのことに気づいた悟飯はショックを受けた。
「トランクス!僕は君とは10歳くらいしか違わないの!おじさんじゃなくてお兄さんだろ!」
「えへへ。悟飯おじさーん!」
駆け出すトランクスを悟飯は追いかける。楽しそうに走り去ったトランクスと後を追う悟飯を見送ったベジータは一人取り残された。
「ガキどもめ……」
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二時間後、ブルマから変身のための装置を受け取った悟飯はサタンシティ上空にいた。背中のマントが風でひるがえる。
「やっぱりカッコいいや、この変身装置。ブルマさんは天才だ!」
オレンジのヘルメットに緑の装束と赤いマント。黒いインナーが全体を引き締めている。どこをとっても“カッコいい”スーツに悟飯は感動していた。
「町は平和かな?」
眼下の町を見下ろす。おおむね平穏な町に見える情景だが、悟飯の目はひとつの異常を見逃さなかった。暴走車両だ。一台の車が道路の上をジグザグと危険な運転をしていた。スピードもかなり出ている。
「よーし!さっそく出動だ!」
悟飯はこの暴走車両とのやりとりで名を聞かれ、咄嗟に『グレートサイヤマン』と名乗った。もちろんグレートサイヤマンは立派に暴走車両を制圧し、正義の味方の役目を果たした。しかし悟飯は忘れていたのだ。この町で『サイヤ』と名乗ってしまうことの意味を……。
第二話です!
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