目覚め
「……うん?」
ここは何処だろう?何も見えない暗闇の世界。
自分は誰だったか何も分からない。
何か騒がしい気がする、なんだろう誰かを呼ぶ声が…
「おい!どうした?大丈夫か!?目を開けろって!」
そう言われて目を薄く開けてみると一人の少年が映った。
まず目を惹いたのは髪の色、鮮やかなオレンジ色だ。
次に瞳の色、ブラウンの瞳は不安で揺れ動いている。
「待ってろ!今親父の所に連れて行ってやるからな!」
そう言って小さな自分の体を背負うと雨の中しっかりとした足取りで歩いていく。
「死なせねぇ、死なしてたまるかよっ!もうお袋の時のような思いは二度とゴメンだ!」
この少年は誰なのか?何処かで見た事がある気もするが、ぼんやりとした頭ではまともに考えられず自分は意識を落とした。
✳︎
「親父!大変だ!遊子が…遊子が突然気を失って倒れちまって!」
「なんだと!?すぐにベッドに寝かせろ!」
それを聞いた少年は急いで医務用のベッドに少女を乗せる。
そこに大柄な男がやってきて少年に言う。
「ここまで良く連れて来たな、後は俺が見ておくからオメーはさっさと風呂にでも入ってこい風邪引くぞ」
「おい、親父大丈夫なのか…」
「大丈夫だ、絶対にどうにかする、だから自分の心配をしてろ、大体家をびしょびしょにすんじゃねぇ」
「分かったよ」
そう渋々頷くと、少年は少女が寝ている部屋から出て行った。
✳︎
意識が戻って最初に目にしたのは大柄な男。
その次に部屋、どうやら病室のようだった。
そして自分を見てみると8歳くらいの少女に見える。
周りの様子を確認して起き上がった瞬間大柄な男が抱きついてくる。
「ゆ〜ず〜良かった、うぅ…目が覚めてホントに良かった。もし何かあったら父さんは…父さんはぁぁぁぁ〜!!」
ハイテンションで抱きついてくる大柄な男、何やらウザったいが心配をかけてしまったようだ。
すると扉の方からドタバタと音が聞こえ激しく扉が開かれる。
「大丈夫か!良かった目が覚めたんだな!」
「一兄から聞いて急いできたけど目が覚めたんだ、痛い所とか無い?大丈夫?」
入って来たのはオレンジの髪をした少年と黒髪の少女、少女の方は自分と同じ歳くらいに見える。
すると自分から離れて男の方が二人の少年少女に言う。
「まあまあお前ら、気になる事はあるだろうが遊子も目が覚めたばっかりだ、俺が検査して異常がなければ今日一日は安静に寝てもらう。だからお前らも一旦部屋から出てけ」
それを聞くと少女の方が
「まあ目が覚めたのは分かったし、お父さんの邪魔しちゃ悪いもんね。ほら、さっさといくよ一兄」
「わーったよ、なんか今日は追い出されてばっかりだな」
そう言うと二人は渋々だが出て行く。
✳︎
「身体に異常は無いみたいだな、ひとまずは安心だ。俺が不甲斐ないせいで家事も結構任せてたし疲れが溜まってたのかもな、今日の所はしっかり寝てるんだぞ〜」
「じゃあ俺は出ていくから何かあったら呼んでね〜」
そう言うと男は部屋から出ていき、部屋には自分一人がポツンと残った。
自分はベッドに横になり目を閉じ状況を整理する。
自分自身に関する記憶は無いどんな人物だったのか
何を思って生きていたのか…
だがこの場所、今の自分の姿、そして先程の人達に関する自分の記憶はあった。
【BLEACH】
少年ジャンプに掲載されていた大人気少年漫画だ。
幽霊の見える少年が一人の死神と出会い死神代行となる事で戦いに巻き込まれて行くバトル漫画。
やれオサレだの空気主人公だの言われているが、少年漫画に有るまじき凄まじいセンスで多くの読者に色々な形で愛されている。
自分にはBLEACHと言う作品の記憶と、それを読んでいた時の感情や想いが残っているようだった。ふと先程の人物を思い返し自分の中で当てはめてみる。
大柄な男は『黒崎一心』主人公の父親で元は死神。
普段はふざけているようだが決める時は決め家族思い、力を取り戻した後は主人公の事を陰ながら見守りつつ助ける。
物語の核にも迫っており主人公的にも、作品的にもかなり重要な人物と言える。
黒髪の少女は『黒崎夏梨』主人公の妹で結構強気な性格。
主人公と同じ幽霊が見える体質で序盤の方は結構出番があった。
しかし普通の人間なので主人公が死神と本格的に戦い始める
そしてオレンジ髪の少年はBLEACHの主人公『黒崎一護』幽霊が見える高校生で、ある日死神『朽木ルキア』と出会った事により死神代行に。そこから死神代行として人間の魂を喰らう存在、
更にそこから力をくれた朽木ルキアが尸魂界に連行された事により死神達と。
同級生の『井上織姫』が拐われた事により虚の上位種である
読者からの評判は安定しないが、性格は基本的に好青年で髪の色故に不良だと思われているが、相手を思いやれる優しい心の持ち主であり自分もかなり好きだった。
先程の人物達について考えていると自分の姿が気になり部屋にある鏡の前まで移動し鏡を覗き込んでみる。
鏡に映ったのは幼い少女だった。身長はかなり低く130㎝程しかない。
香色の髪を短く切り揃え、幼いながらも可愛いらしい印象の顔立ちだ。
「こ、この人物は…」
知っている。名前は『黒崎遊子』黒崎一護の妹であり黒崎夏梨の双子の姉である人物だ。作中では兄や妹と違い特段強い霊力は持たず幽霊もぼんやりと見える程度。戦闘能力は無いに等しく死神も見えない。なので、作中でもあまり目立つキャラではなくどちらかと言うと妹の夏梨のほうが注目されたりする。しかし黒崎家を支える人物であり黒崎家のほとんどの家事を行う。家族を大切に思っており特に兄に対しての想いが強く兄離れが出来てない妹と言った所だろうか…
と遊子もとい自分に対しての評価を下した所で一つの結論が導き出される。
「ここは漫画BLEACHの世界…そして自分はその登場人物である黒崎遊子になってしまっている!」
今はお堅い文章ですが徐々に遊子成分を出していくつもりです!