千年決戦篇のアニメを観ていて驚きました。
ずっとクインシーレットシュティールだと思っていたものが、クインシーレツトシュティールだったなんて。どちらが正解なのか気になって夜も眠れません。
パン、パン、パンと浦原商店の地下に浦原の渇いた拍手が鳴り響く。
「おめでとさぁーん!死神になれたじゃないスか。お見事、お見事、これでレッスン2はクリアです。いや〜めでたい!」
浦原は手に持った扇子を口元にあてながら軽薄な賞賛を送る。それに対し、抜き身の刀を鞘に仕舞った遊子も軽い調子で答える。
「何回かもうダメだ、死ぬかもって、思いましたけどなんとかなりましたね!」
それを聞いて浦原は一瞬だけ心苦しい様な表情をするが、すぐに気を取り直すと……
「大変だったんスよ〜苦しむ黒崎サン相手に時間を稼ぐのは」
ヘラヘラと笑う浦原だが、いつのまにか近づいてきた夜一に即座に背中を蹴り飛ばされる。
「何が大変じゃ!大変だったのは儂とテッサイで、お主はなにもしとらんだろうがっ!」
「酷いなぁ〜夜一サン、アタシだって準備とか色々大変だったのに……」
浦原は蹴られた腰をさすりながら異議を申し立てている。そこに静かな足音を立てながら鉄裁も遅れながらにやってくる。
「ハッハッハッ、久方ぶりに肝が冷えましたな」
予想外の事態はあったが、当初の目的である黒崎遊子の死神化が無事成功したことに皆が安堵していた。
「あの〜あなたは?」
遊子が、縮こまっているしがない駄菓子屋の店長の上に足を乗せている女性に向かって誰なのか?と、質問を投げかける。
「そうか、この姿を見せるのはお
「儂もお主の面倒を見る事になるやもしれぬ。だから、覚えておくが良い」
夜一の自己紹介に遊子はキラキラとした眼差しを向けていた。
「凄い!あの猫ちゃんの時も可愛かったけど、こんな素敵な女性にもなれるんですね!」
「ほほぅ、儂の美しさだけではなく、猫の姿の良さも分かるとは。遊子と言ったかお主、なかなか見所があるのう」
得意げな顔をする夜一だったが、この空気に水を差す言葉が遊子の耳元で囁かれる。
「気をつけてくださいよ〜あの人はああ見えて、傍若無人なところがありますから振り回されない様に気をつけ──」
「喜助、どうやらまだ蹴られ足りないようじゃのう」
夜一の怒気を孕んだ威圧に浦原は再び萎縮してしまう。
「よ、夜一サン!?これ以上はアタシ足腰立たなくなっちゃいますって!」
夜一の執拗な蹴りに、やめてくれと懇願する浦原。その光景を観て遊子は微笑むと、あらかじめ言おうと思っていた事を口にする。
「皆さん!この度はあたしのワガママに付き合っていただき、本当にありがとうございます!」
遊子の小学生とは思えない丁寧な感謝に、浦原商店のメンバーは目を白黒させていた。
「なぁ〜に言ってんスか、まだスタートラインに立ったばかり、大変なのはここからっスよ」
蹴られた場所が痛むのか、腰を抑えながらもヘラヘラとした表情で浦原は答える。
「それじゃ♪死神になれた景気づけにこのままレッスン3へと参りましょうや!レッスン3はアナタに自身の斬魄刀の名前を知ってもらいます。その為には────」
「あああーっ!」
先へ先へと進めようとする浦原に対し、何かを思い出したかの如く遊子は叫び声をあげる。
「今!何時ですか?」
突然すぎる問いかけに場は一瞬静まる。浦原は説明をやめ、自身が時計を持ってないことを思い出し、時間を知っているであろうジン太に時刻の確認をとる。
「ジン太〜!今は何時だい?」
「そうだな〜お、ちょうど十九時三十分だ」
その答えを聞いた遊子は冷や汗をかくと慌てふためく。
「た、大変だ!家は門限が十九時までなんです!早く帰らないと〜!」
焦っているのかそのままの格好で勉強部屋の出口の方へ走っていく。
「ちょ、ちょっと黒崎サン!?身体!身体!忘れてますよ!霊体のままじゃマズいですって!」
「そ、そっか!」
浦原の言っていることが聞こえたのか、出口まで走っていた遊子は猛スピードで戻ってくると、倒れている自身の身体へと近づき、霊体の身体を重ねる。
「よし、ちゃんと戻れた!」
「黒崎サン、帰る前に少しだけお時間を、アナタにはこれを渡しておこうと思います」
投げ渡されのはSOUL✳︎CANDYと書かれた頭の先がペンギンの形をしているケース。
「それは
「あたしの為に何から何までありがとうございます!では!また明日ー!」
義魂丸の説明が終わるとすぐさま遊子は出口へと駆け出していく。
「何というか嵐の様な奴じゃったのう」
夜一の呟きに頷きながら、ようやくひと段落ついたと。浦原は肩の荷を下ろす。
「ええ、それにしても長い一日でしたね〜」
✳︎
あたしは家に帰ると真っ先に心配をかけた事を家族に謝った。あたしが門限を破るなんて初めてだから、お兄ちゃんと夏梨ちゃんは凄く心配してたみたいだし、お父さんには泣きながら怒られるという奇妙な体験をさせられた。
あたしが居なかったのでご飯を作る人が居無かったのか、今日は出前をとったみたいだった。残されているお寿司を頬張ると幸せな気持ちになる。たまにはこういう贅沢もいいよね。
今回は「友達の家で遊んでいたら時間を忘れちゃって」と言い訳をしたが、いずれは家族に死神の事や虚の事は話さないまでも、浦原商店と言う名の駄菓子屋でお世話になっている事は話すつもりだ。これからはあたしが家事をできる時間は少なくなるかもしれない、そうなった場合は家族にちゃんと話を通しておかなくちゃいけないよね。
死神関連の事情を知っていて、ああ見えて凄く勘が鋭いお父さんは真っ先に浦原商店に向かうと思うけど、それについては浦原さんの腕の見せ所、うまい言い訳は浦原さんに任せちゃおう!というあたしの
帰った時の振り返りはこのくらいにしておこう。時刻はまもなく真夜中。あたしは今、自室で死神になっている。今のお父さんは霊圧を感じ取れないはずだから少しくらいは部屋で死神になっても問題はないはずだ。
死神化する前にあたしが懸念していた問題がある。もしかしたら死神化した時にあたしの中の素質が凄い霊圧を発してしまうかも〜なんて調子付いて思っていたが、それは杞憂となってしまった。今のあたしの霊圧は余り高い様には思えない。浦原さんとの交渉の時に隊長格の霊圧は受けているのでそこから自分なりに測ってみた。これくらいだと良くて席官の末席って所かな?お兄ちゃんまでとは言わないけど、もうちょっと才能あってもいいんじゃないかな!?あたし!
まあ、こんな事を一々考えていてもしょうがないよね。今は本題に取り掛からないと。浦原さんは言っていた、次のレッスンは斬魄刀の名を知ってもらう事だと。つまりレッスン3の内容は斬魄刀の解放、
あたしは膝の上に斬魄刀を置きながら座禅を組む。この形は
あたしは目を閉じて意識を集中させる。余計な考えはいらない、ただひたすら斬魄刀のみに意識を向ける。始めてから数十分、ようやくあたしの意識は黒崎家から途切れた……
✳︎
目が覚めると辺りを見回す、そこには竹林に囲まれた庭園と大きな屋敷が建っていた。無事にやってきました!あたしの精神世界!まずはあたしの力である少女を探さないと…
「おーい!会いにきたよー!あたしと話し合いしよー!」
すると声が届いたのか、屋敷の襖が勝手に開いて行く。これはこっちに来てって事かな?お話しするなら立ち話よりも中で話す方がいいもんね!ここは素直に招かれるとしよう。
しばらく屋敷を歩いていると、見覚えのある部屋へとたどり着いた。ここはあたしが斬魄刀を受け取った部屋だね、まだ一日も経っていないのにちょっと懐かしく感じる。部屋の中に目を向けるとそこにはあたしの力である不思議な少女が少し呆れた様な顔で座っていた。
「また会えるとは申しましたがまさか、こんなに早く再会するとは思いませんでした……余程、私の名が気になるご様子」
「そうだよ!あなたの事もっと知りたいな〜」
それを聞くと少女は立ち上がり、歩き始めると他の部屋の襖に手を掛ける。
「お茶くらいはお出ししましょう。紅茶と緑茶、どちらが良いですか?」
「えーと、緑茶で!まだあたしは子供なんだからあんまり苦くしちゃダメだよ」
「
頷くと少女は隣の部屋に入って行く。言われたからつい頼んじゃったけど、精神世界なのにお茶とかだせるの!?というか飲めるの!?一人なので大袈裟にではないがあたしは驚く。
あの子は意外と、ここでの暮らしをエンジョイしてたりするのかな?でもこんな大きな屋敷に一人だと少し寂しそうだよね、これからも定期的に寄ってあげようかな?
そんな事を考えていると襖が開き、湯呑み茶碗が乗ったおぼんを持ちながら少女が入って来る。
「どうぞ、今回は私が栽培した茶葉を主軸に『抹茶らて』なるものを作ってみました。遊子でも飲みやすいかと……」
「あ、ありがとう」
差し出された茶碗を手にあたしは抹茶ラテを口に含む。お、美味しい!キレのある香りに渋みを全て打ち消さない程度の甘さがあたしの口いっぱいに広がる。良いね!高得点!
でもこの子、生まれてから余り時間が経ってないんじゃなかった?それなのに茶葉の栽培なんてやってるの?いけない、いけない、一々疑問が出てしまうのはあたしの悪い癖かな。今は本題があるし美味しいからまあいいや。まずはお茶を褒めてあげよう、お茶に関しては詳しくないからなんて言ったら良いんだろ、確かこういう時は……
「大変美味しゅうございましたー」
あたしは緊張しながらも少女に向かって頭を下げる。すると少女も微笑みながら静かに頭を下げる。これも斬魄刀との対話になるのかな?必要な事かもしれないし、しっかりとやっていこう。
「
「あたしの素質?」
「ええ、貴女は今、自身の霊圧に対して疑問を抱いているのではありませんか?」
疑問って言う程でもないかな。ただ、お兄ちゃんと比べて自分の才能が小さく見えてしまっただけだ。同じ血を引いているからどうしても比べてしまうけど、比べる相手が悪いよね、お兄ちゃんはBLEACH界きってのサラブレッドなんだから。最初から席官の末端クラスでも十分に異例だよね!これから、これから!
「遊子、貴女は兄の黒崎一護に勝るとも劣らない素質を持っています。ですが、今は不安定で
「ほんと!?良かった〜じゃあ鍛錬を積んでいけばいつかは、隊長格もなんのその!みたいになれたりするのかな〜?」
「それは分かりかねますが、一つ覚えておいてほしい事柄があります」
少女はお茶を一口飲むと、遊子の瞳を見つめながら言葉を口にする。
「どうやら貴女の霊圧は、感情によって大きく浮き沈みするようです」
感情?それって結構当たり前の事なんじゃ?
「よくある怒りによって力が爆発的に上がる!とか、哀しみを知ることであたしは強くなる!みたいな感じかな?」
それを聞くと少女は首を横に振る。ありゃ、どうやら違うみたい。
「少し違います、怒りや哀しみは貴女の中では大きな存在ではありません。喜怒哀楽で言うのなら喜びと楽しみ、それが貴女の霊圧や霊力に大きく関与しています」
「喜びと楽しみか〜」
まるであたしに怒りと哀しみが無いみたいに言うけどそんな事はないからね!あたしだって家族が理由も無しに傷つくのなら怒るし、誰かが亡くなったら哀しい。でも、家族や目の前の人が死んでしまう。ってならない限りは大抵は見逃すかもしれない、こればっかりは実際に体験してみないと自分がどう行動するかは分からないけど。
「霊圧、霊力の高さは私を使う上でも重要となるでしょう。ですのでどうか覚えておいて下さいませ」
「分かった!頭の片隅に入れておくよ!」
感情なんて考えてコントロールできる物じゃないからね。これについては余り考えない様にしよう。
少女が茶を飲む仕草をしたのであたしも釣られてお茶を飲む。しばらく静かな時間が経つと、少女が質問をしてくる。
「では次の問いへと参ります」
「うん、何かな?」
「貴女の戦う理由についてです、貴女はなぜ、力を求めるのですか?」
シンプルながら難しい質問がきたー!これはあたしが力を使って何をしたいかっていう意味だよね。あたしはどうして力が欲しいのか?を、頭の中で思い返し考えてみる。
そうだなーあたしが力を欲するのは単純に必要だから。お兄ちゃんとこの世界を観察して楽しむ為にも、自分の身を守る為にも力が必要!それがあたしの答えだ。
でも、聞きたいのはこれじゃないよね?あたしが力を手にしてどうしたいか?だ。あたしはお兄ちゃんみたいに山ほどの人を守りたいなんて考えがある訳じゃないし、藍染さんみたいに自身が天にとって代わり、世界を変えたい(藍染さんの目的は明確には分からないけど)なんて壮大な野望がある訳でもない。
じゃあ、原作の知識を活かして全ての人を助ける?うーん、これは難しいと思う。その理由は単純で今は原作から三年前、手遅れな事があまりにも多すぎるからだ。それに知識がいくらあっても力が
あたしの中にある一つの想いとして、あたしは家族に幸せになってもらいたいと思っている。これから傷つく事があるだろうけど、あたしが死んだら家族は幸せになれないだろうから死ぬつもりはないし、お兄ちゃんや夏梨ちゃん、お父さんだって死なせるつもりは無い。夏梨ちゃんはあまり死神の事情に関わってこないから多分、危険は少ないだろうし。お父さんも今は力が無いけど、将来的には力が戻るから大丈夫だよね。問題はやっぱりお兄ちゃん。
あたしが関わる事でこれからどう変化していくのかは分からないが、お兄ちゃんの力は心配していない、
お兄ちゃんはよくメンタルが弱いと思われがちだけど、その精神はかなり立派だ。高校生にしてはという注釈がつくけど、それでも強い心を持つとあたしは思っている。
だけどお兄ちゃんの精神が一番危なかった場面がある。それはあたしが思うに、死神代行消失篇で月島さんがお兄ちゃんの友達や、
あの時点で、お兄ちゃんのそばに銀城さんが居なくてお兄ちゃんだけが異端として扱われ続けてたらどうなっていたんだろう?月島さんを殺す為に奔走する?月島さんはあの甘々なお兄ちゃんが『殺す』とまで言った人だ、そういこともあるだろう。でも、自分がいる事によって皆んなが傷ついてしまう、壊れてしまうと考えたのなら?挟み込まれたチャドさんと織姫ちゃんは記憶との矛盾から精神崩壊が起きようとしていた。そんな皆んなを見たらお兄ちゃんはどう思う?これはあたしの勝手な想像でしかない。だけど、自分が居る事で皆んなが壊れてしまうとあの優しい高校生が知ったのなら……
お兄ちゃんは自ら命を絶つだろう……
誰かを護る為なら後先考えずに突っ込んで行ってしまうのはお兄ちゃんの良いところだ。だけど危ういところでもある。斬月のおっさんやホワイトお兄ちゃんも気にしていたけど、お兄ちゃんは自分の命を軽く見る傾向がある。それで命を落としたのならあたしがいくら頑張っても、あたしの、家族に幸せになって欲しいという想いは
よし決めた!あたしのもう一つの目標!それは誰かを表立って護るでも、敵を討ち倒し蹂躙するでもない。“お兄ちゃんが自分の事も大切に考えられる様な精神にする”これだ!
お兄ちゃんには自分の命を優先的に考えて欲しい。誰かの不幸を救うだけではなく、『自分も幸せになりたいんだ』と心から願う様になって欲しい。でもこれは簡単じゃないよね、お兄ちゃん頑固だし!その為には色々影で手を回すことがあるかもしれない、力はその手段。手札は多い方がいいからね。
あたしの考えは皆んなから称賛される立派な物ではないし、エゴだと言われたらそれは正解だ。それでもあたしはお兄ちゃんに理想を押し付ける、何故か?と、問われれば決まっている。お兄ちゃんはもう他人じゃない、あたしの家族だから……
随分と長く考え事をしちゃった、あの子も待ちくたびれているだろうね。あたしが力を求める理由、それを一言で表すなら……
「自分の為……かな」
あたしは様々な感情が入った瞳で少女を見据える。
「自分の為、ですか……随分と勝手な人ですね」
言葉は厳しい、だけど少女の顔は笑っていた。
「そうだよ、あたしは勝手なの!楽しい景色だって観ていたいし、お兄ちゃんの曇る顔だって観たい!でも最後には皆んなが、笑って暮らせる様な世界であって欲しい!だから……」
遊子は立ち上がると少女に向かって手を伸ばす。
「あたしの為にあなたの力を貸して!」
古風な和室に訪れる沈黙。それを破ったのは遊子ではなかった……
「私は、遊子に傷ついて欲しくない、戦いから遠ざけたい、という想いを持っています。ですがそれは私の
「もう
少女は穏やかな表情のまま、差し出された手を強く握る。
「協力しましょう、あなたが見せる素晴らしき景色の為に」
なんだ、結局はそういうことか。要は彼女もこの世界が大好きで、これからどうなっていくのかを観察したいという訳だ。
「あたし達、似た者同志なんだね……」
「貴女の力なのだから当然でしょう?」
あたし達はしばらくの間、静かに笑い合っていた。
「今ならあなたの名前、聞かせてもらえるのかな?」
「良いでしょう、私の名は──」
この静かな和室で、あたしはようやく自分の斬魄刀の名前を知ることが出来たんだ……
「庭園に出なさい、鍛錬を始めます」
「え、今から?」
「当然でしょう。よもや私の扱い方を知らぬまま、浦原とかいう人物の鍛錬に臨む訳ではありませんね?」
「それはそうだけど……」
「何か
「うぅ、あたしの睡眠時間よ、さようなら……」
✳︎
次の日、遊子は学校が終わるなり、眠い気持ちを抑えながら一直線に浦原商店へと向かう。浦原商店に着くなり鉄裁の案内で浦原と夜一が待つ地下の勉強部屋へと向かった。流石に二日間の特別休業はマズイ様でジン太とウルルは店番の為に店の前に残る事になった。
勉強部屋に着くなり遊子は死神化し、浦原の前へと立つ。ここに居るのは浦原、夜一、 鉄裁と、どれも尸魂界で重役についていた者ばかり。その為か、表面上はおちゃらけていながらも空気は少しばかり重たいものであった。
「いやぁ〜黒崎サン♪昨日の今日だって言うのに死神の姿が様になってるっスね〜」
「そうですか?少し照れちゃいますよ……」
浦原は疑問に思っていた、昨日感じた重くのしかかる様な霊圧が今の彼女には無い。もう霊力をコントロールする方法を身につけたのか?それとも、あれは彼女の素質には間違いないが自由に引き出す事はできないのか?それもこれから分かっていくだろう。
「それでは早速!レッスン3の内容なんですけども♪」
浦原は嬉々として説明を始めるが、それに対し遊子は
「その必要はありません」
遊子は右手で鞘から浅打を抜き、それを横に構えると刃に左手を添える。
「今からお見せます。あたしの斬魄刀を……」
「なんじゃと!?」
遊子の言葉を聞いて、浦原は表情を変えず、夜一は驚き、鉄裁は
「しっかり見てて下さい、これがあたしの斬魄刀……」
遊子は目を閉じ、集中すると。自身の斬魄刀の名を呼ぶ。
──
『
遊子の手に持つ斬魄刀が青白い光に包まれ、やがてその姿を現す。刀の形状自体に変化はないが、色と
その刀身は白く、
少女が手にする斬魄刀の姿は基本的な形をしていながらも、とても美しく見えた。
「凄いっスね〜まさか、たった一晩で始解を会得してくるとは♪」
軽口を叩く浦原の顔には余裕が見て取れる。
「ならばよろしい!続いてレッスン4です!レッスン4の時間は無制限!その斬魄刀を使って、アタシの頭にある帽子を落とせたらク──」
瞬間!いつの間にか浦原の目の前に遊子が立っており、そのまま斬魄刀で下から上へと切り上げる!
刀の鋒は確実に浦原の帽子を捉え、緑と白色の帽子が空高く宙に舞う。その光景に夜一と鉄裁は目を見開いて驚く……
「──へぇ…」
静寂が訪れた勉強部屋には浦原の感心したような呟きと、帽子がヒラリと地面に落ちる音だけが響いた……
新月の鍔の部分は星十字騎士団が星章化する時に使うメダリオンや、リルトットが被っている帽子についてあるマークを見てもらえると分かりやすいと思います。
と言うかまんまそれです。