やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス   作:おーり

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導入だけでも終わらせたいなー、って

追記:若干編集しました


魔法科高校の文系男子だけど、天使がいるから頑張れそう

 

 ――魔法科高校八王子校、上空3000メートル。

 

 

「ふんぬおおおおあわああああああああああああーーーーーっ!?」

 

 

 絶叫し続ける男性が、今もなお地上へ向けて落下してゆく最中であった!

 件の男性はモヒカンに鼻ピアス、という何とも前時代的な世紀末系チンピラファッションなのだが、そのスタイルによる威嚇は今現在何者にも通用しない……っ!

 何故ならば、対者が何処にも居らぬ今となっては、彼唯一の独自の自力のみでしか、この状況を打破する突破口などは存在しないからだっ!

 

 現在上空2000!

 自由落下するにつれてそのスピードは加速度的に上昇し続け、涙と鼻水が顔中をぐっしゃぐしゃに塗れているのだが、意識的でも本人の了承も無い紐無しバンジーをいきなり敢行されたわけだから、そうなってしまうのは仕方のないことでもある!

 実際、顔中の汚れはスピードに晒され続けた結果の、人間としての生物的な自然反応の様でしか無い!

 しかしその様に致死に晒されている状況だからこそ逆説的に、男性はそれらを突き崩せる突破口を見出すことに成功していた!!!

 顔つきは、情けなくも決意を秘めた、覚悟した者の“それ”へと変わっているッ!

 

 ――上空500!

 僅か数秒にも満たないが、男性にとっては悠久とも取れそうな時間の果て!

 ようやく地上が見えてきたことで、男性は唯一己にしか出来ない突破口を実行することにしたッ!

 

 

「て、『鉄丸(てつがん)』ッ!!!」

 

 

 血中へと在る魔法因子の為せる秘儀!

 文字通り自身を『鉄』へと変貌させる“硬化魔法”の究極系!

 彼は、石島土門は実は、それを扱う事の出来る血筋の隔世遺伝魔法師なのであったッッッ!!!

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「……で、何か弁明は?」

「むしゃくしゃしてやった。後悔はしてない」

「せめて反省して頂戴……!」

 

 

 生徒会長が机に突っ伏すように、力無く項垂れる。

 ついさっき別れたばかりだというのに、俺はすぐさま生徒会室へと呼び戻されていた。

 原因は上空3000メートルに転移術で放り投げたモヒカン馬鹿の所為。

 死にこそ至らなかったものの、奴の落下の衝撃で校庭にはどでかいクレーターが本日誕生する羽目となった。

 一つの死が存在しないのに新たな事象がまた一つ誕生する、これって等価交換の摂理に反してねぇかな。キチンと亡くなっておけよフランケン。

 

 なんでそういう対応したかというと奴が妹さんとお付き合いさせてください、などという妄言を口にした所為である。

 俺に罪は無い。

 小町を要求する奴は少なくとも俺に勝ってからにしろ。

 

 

「もう行っていいっすか?奴に止めを刺さなくちゃならん」

「そんなこと言いだす人を放置できると思っているの?」

 

 

 部屋を出ようとすると、生徒会の何某かが行く手を阻む。

 いいだろう、我が妹道を阻むというのならば、まずは貴様から血祭りにあげてやろうか……!

 

 ボクシングでもするかのように拳を構えるその女生徒の先輩に倣って、なんとはなしに荒ぶる大鷲のポーズを取り対抗しようとする俺たちを、「待ちなさい」と会長が止めに入った。

 

 

「反省文は書いたから問題にはしないわ、例え本人にその意思が無くともね。でもこれっきりにしてほしいの、本当に。そういうことをあんまりたくさんされちゃうと真由美困っちゃう」

「キャラがブレてますよ会長……。

 あー、司波君と言ったか? 一回目だし、キミ自身が直接暴力を振るったわけでは無いし、今回のは注意に留めておくけど、会長の言う通りあんまりはっちゃけられると相応の責任が付いて回るということも覚えておいてほしいんだ。あと一応この学園は原則魔法使用厳禁だから、それだけはきっちりと覚えておいてほしい」

 

 

 生徒会全員が全員七面倒くさい性質ではないご様子で、生徒会長を諌めた男子の先輩が柔らかめの対応で俺に注意を促してくる。

 そうそう、こういう普通な対応があって一安心ですよ。

 

 

「うす。注意します」

「ああ、本当頼むよ(……なんだ、要注意人物とか聞いていたけど、話してみれば普通に会話も成立するじゃないか。会長も大げさだなぁ……)」

 

 

 ちなみに彼の心中は俺の妄想であるけど、その緩み切った表情を視れば権能を使わずとも容易く読み取れる。

 俺ってばマジメンタリスト(棒)。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「……副会長、珍しいな、キミが二科生を下に見ないなんて……」

「………………………………誰も完成させた事の無い超長距離の転移魔法をアクション無しで発動できる奴相手に、何か出来ると思うのですか……?」

 

 

 八幡の居なくなった生徒会室でそう語る、その男子生徒の膝の震えは、一向に止まることは無かった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「八幡っ、学校来たんだねっ」

「戸塚ぁ!」

 

 

 生徒会室を出たところで天使と遭遇。多分レベルは25~30くらい。力天使(ヴァーチャー)かな。

 初期ステータスじゃ到底敵わねぇ、もっと物理アタッカーとして成長しないと! ……雪の女王のタイムアタックはホント鬼畜仕様だよな……。

 

 

「久しぶりだなぁ、元気にしてたかっ?」

「そういうことを聞くくらいなら学校にもっと来なよ……」

 

 

 アカン、気分高揚してフランクに語り掛けたら若干引かれてる。

 クールだ八幡……、Koolになるんだ……。

 

 

「まあ、俺もそこそこ忙しかったからさ。これからはキチンと通うことにするさ」

「もう、寂しかったんだからね」

 

 

 やべぇ。

 この子本当に男子か? ぷぅ、とふくれっ面で拗ねたご様子がマジで俺のツボなのですが。

 折角落ち着かせた心拍数がまた急上昇する……!

 ――ハッ! 落ち着け! これは孔明の罠だ! それも扇持った方じゃなくって天才軍師の癖に“はわわ”とか言いまくる方の!

 

 

「と、ところで、わざわざ此処まで迎えに来てくれたのか? 教室で待っていてくれても良かったんだが……」

「それでも良かったかなぁ……。でも、次は多分一緒になるだろうから、八幡と一緒に行こうかなって」

 

 

 ……あ、なんだかいい匂いがふわっと薫る。

 シャンプーとか何使ってんのかなぁ、髪の毛とかもいわゆる天使のわっかが出来るくらいにキューティクルだし。

 頭一つ分低い戸塚にそんな感想を抱きつつ、ドキドキな心拍数のままに続きを促す。

 

 

「つ、次?」

「うんっ、次の授業は魔法実習だったから!」

 

 

 ――花の綻ぶような笑顔で、そろそろ我慢がなりません。

 もう、男でもいいよね……?

 

 

「とつ、「ヒャッハァーーー! ようやく来やがったなぁ司波ぁ!」

 

 

 ………………誰だよ。

 予想だにしない何某かのご登場にて己の精神が思いのほかトーンダウンしたのはまあ許そう。危うく一線を越えるところだったからな、よほど俺は精神的に追い詰められていたらしい。

 しかしだ、ライオンヘアーの眼帯男に呼び捨てにされるほど、近しい人物に変化した記憶は更々無い。

 一体何処の何方様だ。

 

 

「誰だよ……」

「あ、そういえば八幡は久しぶりだからわかんないよね。須藤くんだよ、前の授業で八幡と組んでた」

「………………………………は?」

 

 

 ……え、待って。あの男子、こんな出落ち系色物キャラじゃ無かったろ。

 お前に何があったし……。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 死ぬかと思った。死ぬかと思った。死ぬかと思ったぁぁぁぁ!!!

 何だったんだよあの兄貴、マジでこえぇぇえ! 転移魔法とか完成されてない筈なのに、スカイダイビングみたいな高度に放り投げられるとかPSYRENもビックリだろ!

 

 いくら一目ぼれしたからと言って、いきなり外堀から攻めるのはやはり駄目だったか……。

 しかしあの美少女っぷりには普通に惚れた! 同じクラスじゃないから接点なんて基本無いし、他の奴らがアプローチをかけないとも限らない。そう思って、前に同じ授業を受けていたよしみでE組に行ってみたんだけどな……。思いのほか溢れ出た己の愛が、まさかあんな結末を呼び起こすとは……。

 ノストラダムスでさえも予測できない、とんでもない展開だったぜ……。

 

 

「――で、前回の授業を受けたすぐ後には、もうああなっちゃってて」

「確実に俺の一撃が脳的な部分の致命傷なんじゃねぇか……。やべぇどうしよう」

「気にしなくってもいいと思うよ? 須藤くんは“ああ”なってから、より魔法の扱いが上手くなっているみたいだし」

「あらやだこの子意外とドライ」

 

 

 思い掛けない朝の身の成り様に打ち震えていれば、件の“接点”が誰かとの会話をしながら実習室へとやって来たようだ。

 E組でありながらも一科生の俺と組んでくれた良い奴過ぎるショタ、その名も戸塚。

 ぶっちゃけ、一科生と二科生の違いは血筋か単一かでしかないわけだが、戸塚は単一化故の未熟者であるはずなのに、一芸特化型として洗練されたアイツ独自の魔法組成は実に優秀。魔法師としての腕前は一科生にも劣らないだろう。

 『実習組』の中では上位に位置づけられても可笑しくない腕前だ。

 一科生の中には二科生を家柄のみで下に見ている奴らが多いのだが、アイツは俺自身の成長の為にも組んで損は無い。今日の実習でも他の奴に先手を取られる前に、先に挨拶でもしておいた方が得策だろう。

 あと普通に良い奴だしな。

 

 

「よぉーすとつk――」

 

「――…………あ゛?」

 

 

 ………………………………認識されて0.1秒でメンチ切られた……。

 思わず口と鼻からつぅっ、と滴る我が赤血球。

 今朝のダメージが、地味に内臓系へと響いておられるご様子ですたい……。

 

 ――つーかなんであの兄貴が戸塚と並んでおるのですか!?

 や、やべぇ。お兄様の目線が怖すぎて武者震いが止まらない……っ! 声を掛けようと思ったけど今日は日が最悪過ぎる! 此処は一時撤退――、

 

 

「あっ、石島くん。今日も組んでくれるの?」

 

 

 ――ほぁわっ!?

 戸塚さん空気読んでェ!?

 

 

「知り合いか、戸塚?」

「うんっ、一科生の人だけど、毎回僕と組んでくれるんだ。いい人だよ」

「ほほぉ、それは是非とも紹介してもらいたいなァー……」

 

 

 ――あ、俺、今日此処で死ぬんだ……。

 

 魔王様からは逃げられない。

 そんなメッセージが、何故か脳内に響いていた……。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「――えー、HRで聞いていたかもしれないが、先立ってIS学園との合同授業が行われることとなった。

 が、参加者は厳選されることになる。何故ならば合同先は向こうの学園であり、基本的に部外者の立ち入りを禁止されている地域だからである。

 二年三年のA組も選抜には含まれているので、一年は更に人数が制限されるであろう。

 なので、A組の上位半数は当然として、我らが実習授業生よりも実力者を上位5人、厳選することにする」

 

 

 あのフランケンめ、戸塚に色目を使うとは人造人間の分際で生意気な。

 転移では確実では無かったのならば、今度こそ確実に殺す。確殺する。

 なぁに、幸いにも今からの授業は魔法実習。不慮の事故が起こるケースも珍しくない。

 チャンスはこれから充分にあるんだ……くくく……。

 

 

「最近は草食系だのなんだのと、自分からがっつくのが格好悪いことだとでも思っているのか、意欲の無い男子が多すぎる。

 向こうが女子高で、女の園だからと言って、浮かれている者らには到底届きそうもないハードルだが……。

 俺はそういう出会いを阻害するつもりこそ毛頭ない。

 むしろ実力が足りない生徒を送り込む方がよっぽどの恥だとも思う。

 選抜されたければ一心に腕を磨け。そうすれば得られる名誉もあるのだと、お前たちは先ず知っておくべきだ。

 女性優位社会筆頭株主からのお誘いだ、野獣の本能を見せてやれ」

 

 

 広域拡散型の『フルーレティ』で行くか?

 いや、確実性に欠ける。

 やはり腕だけを竜化しての炎系で焼き払うのが正解か。

 火と煙で逃げ道を塞いで、アサシンのように明確な一撃を狙う。

 逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ逃がしちゃダメだ。

 

 

「さて、肝心の選抜方法だが……。

 ん~、お前ら、殴り合うか?」

 

 

 くくく、血が滾るぜェ……!

 

 

「バトルロワイヤルで総当たり戦。

 生き延びた5人だけを選抜とする。

 ――では、実習開始!」

 

「――死ぃぃぃぃねぇぇぇぇええええええッ!!!」

 

 

 汚物は焼却だァアアアア!!!

 ヒィャァッハァーッッッ!!!

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「――と、いうようなことがあって、いつの間にかIS学園へと入っていたでござる。解せぬ」

「むしろなんでアレで無意識だったんだよ……」

 

 

 なんだかんだであのバトロワを生き残った石島が、脇で力無い様子で呻いていた。

 焼いても焼いても周囲の男子を延焼させるだけで、ご本人はそこそこぴんぴんしていたんだよな。

 ところで実習授業の男子率が何気に100%だったのは何故なのか。あれか、やはり『魔法で戦う』という厨二心を擽るシチュエーションに惹かれる気持ちは女子には理解し難いということだったのか。

 

 とはいうものの、俺自身はISには微塵も興味が湧かない。

 基本的には男子には扱えない代物であるし、根本的にIS搭乗者って言う存在が肌に合わないと思われる。

 担当の鉄人もどきみたいな先生に辞退をそれとなく促してみたところ、

「実のところ、ウチから実力者を排出するのには魔法科校としてもメリットがある」

 とそんな厳かに滔々と理屈を説明される。

 曰く、ISが最強の武器であることは微塵も揺るがない事実であることは確か。

 だが、魔法科高校の生徒らは其処へ到達しない実力しか兼ね備えていないのに天狗になり過ぎている傾向がある。

 云われてみれば確かに、一科生だか二科生だかで高々学園内の事だというのに差別思想が植えつけられている実情を鑑みれば、先生方が普通は頭を悩ませるのも納得である。

 ではそんな状態で、“実力者だけ”をIS学園との合同授業に合わせる理由とは何か?

「『上には上がいる』。そのことを、お前には言っても意味がないかもしれんが、他の生徒には其処を体験しておいてもらいたいわけだ」

 俺だって一応は認識はしているのである。失礼な。

 

 しかし、そんな中でE組から2人も出てくるというのはどうなのだろうか。

 バトロワで波動弾とかのテニヌ魔法を披露していた戸塚は、IS学園の女子の恰好に顔を赤くしながら今隣であわあわとしている。

 正直こっちの方が俺的には可愛くて心癒されます。おもちかえりぃーーーっ! 駄目か。

 

 それにしたって、最近の女子高生にしては俺たちのことを注目しすぎじゃねーっすか?

 いや、男の娘とフランケンとライオンヘアーと眼鏡が並んでいたら注目するのも仕方ないかもしれんけど。

 

 

「すまんな魔法科高校の諸君。男子が居ることが物珍しい奴らばかりなんだ。注目を集めるのは仕方のないことだと思って諦めてくれ」

 

 

 と、パリッとした女もののスーツ姿でご登場致したのは、何処に目を向けたらいいのか理解し難い学園内でも特に目立ちそうな凛とした美人女教師。

 こ、この人はもしや……!?

 

 

「本日諸君らを監督する、織斑千冬だ。

 正式な教師だと思い、節度のある行動を執るようにしてもらうと助かる」

 

 

 ぶ、ブリュンヒルデだあああッ!

 三十路のブリュンヒルデが出たぞォォォッ!!!

 

 

「――おい、今私言ったよな?節度ある行動取れと言ったよな?」

 

 

 拳を溜め込んで衝撃のファース●ブリットを撃つ体制に移行している三十路が其処に(ry。

 って、俺口に出してねーっすよ? なんでわかったの? 心読まれ過ぎじゃね?

 

 でも若々しいっすよ! 大丈夫大丈夫! 女子大生でも通用するって!

 そんなことを心中で弁明したお蔭なのだろうか、初撃を白刃止めした程度で済ませてもらえてラッキーです。

 そんな三十路改め千冬先生は一つ嘆息し、俺を名指しで指名して見せた。

 

 

「とりあえず司波八幡だったか。何でか知らんが、キミは直接指導したいと言う講師が居てな。彼女らの待つ第二演習場へ先に向かっていてほしい」

 

 

 千冬先生だけじゃ手が足りないんですよね、わかります。

 しかし何処だよ、第二演習場。

 初見の学生に無茶振りをなさる。

 

 

「篠ノ之、引率を頼む」

「ッ! わかりました!」

 

 

 名指しされた、しののの?というポニテの女子が何故か驚きの表情で応え、しかし素直に列から離れ、俺はその後をついてゆくのであった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 長身且つスタイル抜群、しかし愛想はほぼ無し。

 そんな剣道女子ッ、って感じのしのののさんはあんまり今時っぽくない女子である。

 加えて美人。

 なんか千冬先生と似通っている気がするのは、親戚か何かか?

 そんなしのののさんに連れられて、やって来たのは、

 

 ――屋上だった。

 

 え? 演習場は?

 なんなの、なんで連れてこられたの? 俺今からカツアゲ食らっちゃうの?

 

 

「――久しぶり、だな」

 

 

 困惑している俺を他所に、しのののさんがぽつりと口を開く。

 

 ………………いや、続きは?

 

 何と答えていいのか判りかねる、そんなコミュニケーション練度の足りない俺が無言で待っていると、しのののさんは振り向いて、

 

 

「……せめて何か応えてくれると助かるのだが……」

 

 

 赤い顔で、どうやら彼女もいっぱいいっぱいのご様子であった。

 こいつもコミュ障かよ……。

 

 とりあえず、

 とりあえず、だ。

 会話をしないと物事は進まないのである。

 

 

「ひ、久しぶりと言われても、俺はお前を知らんぞ……」

 

 

 やっべ、ちょい口ごもった。

 でもいきなり会話しようとするとよくあるよね。あれ、俺だけ?

 

 

「!? 何っ? 忘れたのか!? 幼馴染を忘れるとか、どういう神経をしているんだ!」

「ハァッ!?」

 

 

 唐突に憤った彼女につられて、思わず声が荒ぶってしまった。

 

 が、落ち着け八幡、coolになるんだ。

 少なくとも、俺に女子の幼馴染なんていう奇特な人物は存在しない。

 何故ならば友達自体が存在しないからだ。

 つまり、こいつは新種のハニトラ。

 それもオタク系を狙った、ギャルゲー型ヒロインを地で逝く腹積もりだと見た。

 

 この間僅か0.5秒。ボッチを極めればクロックアップも夢じゃない。

 そんな駄言はともかく、そう判断すれば、後は選択肢を見誤らなければ問題は無い。

 攻略を目指すのではない、非攻略を目指すギャルゲーだ。

 相手を怒らせる選択肢を狙ってゆけ、八幡!

 

 

「――ハッ! 覚えが無いな。生憎お前みたいな美人と知り合った記憶なんて更々ねーよ。誰かと間違えているんじゃないのか?」

 

 

 Lesson1、イマドキ系でない女子には軽口は問題外です。

 絶対に止めましょう。

 ポーズを決める為に目線を合わせないのも駄目です。

 むしろ死ねばいいでしょう。

 

 

「び、美人って……///。ま、間違えてはいないぞ! お前は『比企谷八幡』だろう! 小学生のころ、確かに同じクラスだった!」

 

 

 ……え、本名知ってるの?

 この眼鏡をしているときは決して見破れなかった隠形を、ナニモノ……!?

 ところで欧米人みたいに“やれやれだぜ”なポーズを決めていたからか、冒頭の口ごもったところ聴こえなかった。

 なんか言ってた? この美人さん?

 

 

「っってああああああああ!!!」

「っ、な、なんだよ……?」

 

 

 突然叫ぶから、思わず引き気味で身構える。

 思春期にボッチを極めていた俺にとっては、女子の行動の総てが恐ろし過ぎて、この身にしっかりと経験が刻まれているらしい。

 今さらだね。

 

 

「そうだ! そうだった! 当時の私は要人保護プログラムの所為で偽名を名乗っていたんだ! お前が覚えていないのも無理はない!」

 

 

 ……え、それ、現実に存在する法案だったの?

 てっきり都市伝説の類だとばかり……。

 右京さんも馬鹿に出来ねぇな。

 

 テ●朝の現実再現度に驚愕していると、ぺこりと頭を下げて、しのののさんは謝罪の意を、

 

 

「――スマン、改めて、名乗らせてくれ。

 私の名前は篠ノ之箒、当時は、“篠崎愛衣”と名乗っていたんだ。

 ……久しぶりだな、比企谷八幡」

 

 

 と、なんだかしんみりとこれまでの会話を都合よくリセットされているようですが……、

 

 ――……しのざきぃ?

 

 碌でもない名前を久しぶりに聞かされて、辛酸苦汁の胃液が逆流しそうな絶賛死に体の俺が居た。

 

 

 




~メンタリスト
 プロのコンシェルジュは心をも見通す
 なんだかんだでもう10巻目に行きそうなプラチナム

~雪の女王のタイムアタック
 俺レベル上げだけで時間食って期限5分前で攻略不可能のまま終わってる
 どうやったら攻略できるんだよペ●ソナぁ…

~須藤
 レオ様ー!
 下の名前は達也だっけ?

~三十(ry
 ISショックの時代背景的に軽く見積もってもそれくらいになるちふゆん
 原作の代表候補性が成人過ぎてるからね。仕方ないね
 ちなみに独身

~幼馴j
 もっぴー知ってるよ!
 次回はメインヒロインの独壇場だって!
 もっぴー知ってるよ!

~要人保護プログラム(修正)
 女尊男卑社会の所為で完全に秘匿されている法案
 優先されるのは女性だけ
 男性が絡んでいるだけで起用されないこともしばしば



よし、導入終わった!
無理矢理詰め込んだけどやりたいところまでは書き終えた感
ちなみにもっぴーの偽名に意図はございません!
下の名前も一文字じゃないし、ファンの方に怒られる心配も無い筈!
2人の共通点とかを探そうとしないようにね!関係ないからね!

次回こそ章題を回収する

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