やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス 作:おーり
そんな声がやたらと聴こえたのですが、私はどちらかといえばシャルロッ党です
あと亡国何某に関して若干のオリジナルが入りますが、ご了承ください
「えー、先ほど入った情報によりますと、国際テロ組織『亡国機業(ファントム・タスク)』が本日の合同授業に紛れ込んでいる、とのことです。何かお気づきの点などがございましたら、ご報告をお願いいたします」
昼休み、臨時に行われた職員会議にて。
IS学園学園長・轡木十蔵がそんな注意事項を全教師に向けて言い放っていた。
一部の冷静な者らを除いて、俄かに騒然としだす職員室。
その冷静な一部である僕シャルロット=デュノアは、今入った情報を吟味しつつ、漠然と思った。
……その報告、遅いんじゃないかなぁ。と。
「何分相手は秘密組織の一端なわけですから、今に至るまで動向を把握することに遅れてしまったことについては認めざるを得ません。しかし、内部より攻撃されたとしても生徒には専用機持ちが大勢いらっしゃることも事実です。
急襲の際には各自の判断で適時対応できるように、注意を心がけて戴きたい」
そうして生徒のサポートに入れるように、専用機持ちや実力者である教師陣にはISの緊急時使用許可が下ろされ、魔法科高校の生徒らには政治的配慮か安全面か「午後は一カ所にて講義を受けるように」との通達も伝令役且つ警備役の先生方に卸される。
かく言う僕も、午前に中途で終わっていた魔王様のIS操縦についての訓練も下ろされて、他の生徒の警備役へと回される。
まあ、専用機持ちであるのだし、そうなるのも納得はするけれど。
そう思っていたところ、織斑先生が学園長に名乗りを上げた。
「学園長、午前の授業に連れて行かれた司波と言う男子の行き先が不明なのですが、彼についての資料などはありますか?」
どうやら魔王様を疑っているらしい。
確かに、事情を知らされずに自分の受持ちから外された生徒がいれば、気になるのも当然だとは思う。
「ああ、彼についてはデュノアくんとオルコットくんに一任してありますので。織斑先生はお気になさらず」
「2人に……? そうですか……。いえ、午前中姿を見なかったので、てっきり件の『機業』の工作員なのかと邪推しました」
正直だなぁ。
そういう点は『責任を持つ人』としては好感は持てるけれど、他人の人生の一部を預かって『教育や指揮をする人』としては難点でもあったりする。
腹芸の一つも出来ないからか、過去のラウラの教育にも若干の失敗が入ったように見えるのも無きにしも非ず。
……だがまあ、彼女の場合は最終的に『一番信頼できそうな男性(7人目のカンピオーネ)』の傍に今居るらしいから、そこは幸運だったのだと思っておこう。
至るまでが紆余曲折在りそうに見えたけれど、結果良ければ全て良しと言うことで。
……個人としては決して羨ましくは無いけど。
だって、いくら最重要人物の傍だからと言って、相手が魔王様じゃあ何時何を要求されるかわかったモノでもないし。
それに年下の男の子に下に見られるとか、普通なら考えられないし。
それはさておき、今は織斑先生の事だ。
社会において正直すぎるということは、決して美徳足り得ない。
それは、情報には機密性が付きまとうモノもあるからに外ならず、高潔な人間だから優秀である、というイコールが成立せず、時にはデメリットにも発展してしまうからだ。
先生にはカリスマ性が無駄に在るために、暗躍や隠密には性格的に向いてない。
だから魔王様の事も教えられなかった。
公然の秘密として政府は魔王様の居場所を隠しているけれど、それを公式に伝達されていない時点で、先生の立ち位置はまだ魔王様との対立には時期が及んでいないということなのだろう。
織斑先生の役割は、所謂“勇者”と言っても過言では無い“看板”だ。
『人類最大の敵』を退治するのに、これ以上のカリスマ性は存在しないほどの。
……実際、日本政府側には魔王様の討伐も視野に入れられていた筈だ。
その際の筆頭戦力には、当然ながら織斑先生が挙げられて。
が、それもヴォバン侯爵の討伐失敗で流れて行った。
情報を与えられていない織斑先生には悪いけれど、“そう”なってくれて、僕やセシリアにとっては非常にありがたい。
今のうちに、なんとか魔王様に目を掛けてもらって、公式に庇護の対象とでもしてもらえれば一番いいのだけれど……。
……ところで、セシリアは本気で彼に感謝をしているのだろうか?
対峙する前は、あんなに彼の事を毛嫌いしていたように見えたのだけれど?
織斑先生があまり納得していなさそうに職員室を出て行き、他の先生方も、セシリアも相応の場所へと配置につくべく消えてゆく。
そんな中、僕は学園長に近づいて、疑問に浮かんだことを尋ねることにした。
「学園長、いっそ魔王様にも協力を仰ぎませんか? 魔王様の権能には知覚型のものがあるみたいですし、校内に侵入したテロリストたちの居場所をすぐに把握できるのでは?」
「それはいけません」
我乍ら案外いい案だと思ったのだけど、学園長は口調こそ穏やかなものの、何処か焦ったようにその案を否定する。
「日本政府が魔王様の居場所を開示しないのは、魔王様の目的に沿っている為です。彼の目的とは何だと思いますか?」
「え、えーっと……?」
……改めて言われると、想像がつかない。
欲しいものも、必要な人材も、“魔王様の要求”という前提さえあれば何でも用意できそうだし……?
「これは私の推測ですが、彼の目的は『平穏な生活』です」
答えに詰まっていると、学園長が静かに告げた。
「過去6人のカンピオーネには皆、金銭欲や顕示欲といった露悪的な部分が見当たりませんでした。かのヴォバン侯爵でさえ、悪戯に人を脅かしこそすれ、自分から要求を求めることは無かったと聞いています。もちろん『例外』はあったみたいですが。
しかし、例内のカンピオーネらは多聞にその例に漏れなかったので、それはそれで魔王としての性質の可能性も考えられます。だが、『比企谷くん』は年頃の高校生男子です。それも元来はごく平凡な、一般庶民の一人です。あれくらいの年ごろの男子ならば、相応に何某かの欲望をさらけ出していても可笑しくない筈なのですよ」
「は、はぁ……」
「しかし彼は、強大な実力と権力を得られているにも拘らず、彼本人はそれを笠に着ようとしたことが無い。恐らくは非常に珍しいことに何某かの『芯』がある男性である、という比較的日本政府側にとっても有り難い性質を備えた少年だということとなります」
「芯、ですか?」
「無論、その芯が何か、どういうものか、等は把握することは不可能でしょう。しかし、何某かの守るべき領域を抱えている人間と言うモノは、非常に強かで、厳命です。第一に、己に」
……学園長の言いたいことが遠回り過ぎて判りづらいが、要するに、どういうことなのだろうか?
「――失礼。婉曲的に過ぎましたね。
要するに、彼の目的を妨げるような動き方は、我々はするべきでは無い。ということです。
侵入したテロリストだけで『亡国機業』の全貌では無い筈なのです。此処で彼の存在が暴露され、彼の居場所が『機業』に知られれば、彼を支持する日本政府側にもIS学園そのものが債務を負うこととなり兼ねません。
申し訳ありませんが、先ほど告げたようにキミたちの訓練は取りやめ、午後は他の魔法科生と行動を共にしていただきたい。くれぐれも、彼にはこちらの事情はご内密に」
「わかりました。では、魔王様にはその旨を伝え、僕もそちらの警備に移動いたします」
そうして職員室を出、時間帯的には既に戻っているのであろう、さっきまで訓練に使用していた第二演習場へと足を運ぶ。
午後の予定は伝えていなかったし、魔王様も戻ってきているであろう、と当たりをつけて。
そして――、
――白く濁った粘液と、蠢く触手に捕らわれて、あっという間に拘束された。
× × × × ×
「愛宕、そっちに行ったわよ」
「はいはーい。愛宕、いっきまーす♪」
――気が付いたら目の前で、猫ほどの大きさの蟲みたいな名状し難き生き物を追い立てる、ビスマルクと愛宕がスカートと艦砲を翻していた。
………………あれ? これガイル系二次だよな? 艦コレじゃねーよな?
「ふぁいやぁー♪」
「ぬるいわ。消えなさいっ」
呆気に取られて受信しちゃいけないタイプの電波が脳に響いた気がしたけど、そんなことはお構いなしに駆逐を繰り返す金髪の美少女2人。どこぞの年齢不詳金髪教師×2とは比べるべくも無く少女らだった。
いや……、お前ら気づいて?
現状を認識するのに困っている提督が此処に居ますよ?
って、俺確かに提督だけど、ついでにプロデューサーでラブライバーだけど、現実じゃ只の魔王だから。あーいうのはソシャゲのみの称号だから。
あと名状し難きって、蟲って言っちゃってんじゃん。大きさ的に完全にエイリアンの幼虫みたいだけどさ。
つーか、本当になんでこうなっているんだ?
えーと、回想回想……。
確か、ツインテに進化(幼さとしては退化の恐れも在り)してしまった某幼馴染と駄弁るにも限界が来て(俺が)、遅刻していることを自覚しつつ第二演習場に舞い戻ったんだよな。
何故か、訓練なら自分が教える、って幼馴染も一緒に。
そうして扉を開けてみれば、白濁液をぶっかけられて触手に雁字搦めになっているシャルロットさんと、それに群がるビデオカメラ等を構えた男らの姿が。
一瞬何のプレイかと思いかけたけど、魔法科生でもない男が居ること自体が可笑しいってことにいち早く気付いたツインテがISを装備して突貫。
そこに白濁液をぶっかけようとした男らが。
回避を繰り返して、難なく鎮圧完了したところ、鼬の最後っ屁みたいに白濁液。
オマエラどんだけ白濁液好きなんだよ。
しかしまあ、それを予防できる立ち位置に偶然いた俺が阻止し、
……そこから記憶が無いのだが。
いや、でも愛宕さんがいるってことは、此処はひょっとしてまたもやISの内部世界か?
ていうかなんでビスマルク。
其処は高雄さんじゃねーのかよ。
キャストに若干の理不尽さを感じていると、件の金髪娘がこちらに気が付いたようだった。
「――あら、気づいたのね。ちょっと待ってなさい、今コイツらを駆逐したらすぐにフォーマットが完了するわ」
何処か高圧的な態度で、こちらが魔王であるにも拘らず平然と話しかけてきた。
……こーいう、相手の立場も考えずに発言するから、AIとかって結構好きだわ。
下手(へた)に下手(しもて)に出ようとした態度をやる生きた人間よりもずっとマシだよな……。
そこまで考えて、思い返す。
――いかん、サルバトーレ病に陥りかけている。
あの人も態度が横柄というか、魔王と言うことを分かった上で考慮せずに対等に見るような人材に飢えているんだよな。
このままでは件の戦闘狂と同類になってしまいそう。
傾きかけた思考を廃して、努めて冷静に疑問を2人へと投げかけることに。
「それ、何やってんだ?」
「ウイルスよ」
ウイルス? と小首を傾げれば、端的に説明したビスマルクと違い、金髪おっとり巨乳美人の愛宕さんが詳細を語ってくれた。
「剥離剤(リムーバー)と呼ばれるIS専用の、緊急剥奪プログラムの侵入を許してしまったみたいでー。対抗するために排除作業を繰り返しているところなのよー?」
「……そういうのって、AIが自動で執り行える代物なのか?」
「他のIS(専用機)だと無理だろうけれど。貴方は運がいいわ。私がいるからね」
出てきた答えに、あああの白濁液って要するにそういう、と納得すると同時に、シャルロットさんもアレを受けてああなっていたのか、とも理解。
決してR-18な展開に陥ったわけでは無い筈だ、とタグに悩む可能性を脳裏から追い出してゆく。消えろ煩悩!
そうして思考して0.5秒後には、浮かんだ疑問を口にしていた。
それに応えたのは、駆逐を終了させたビスマルク。
高圧的であった彼女は、ふぅ、と息を吐くと、何処からか取り出した軍帽らしきものを被り直していた。
……どうでもいいけどその高圧的な態度が誰かさんを思い出すな。誰だっけ……ゆ、ゆきの……ん?
「まだ時間がありそうだから説明してあげるけど、わたし達は一般的に言う人工知能(AI)とは若干違う代物よ。ISが対神秘用に装帯した仮想神格、それがわたし達の正体」
「……神の一角、だとか抜かすわけじゃあるまいな?」
「それに匹敵するために用意されたプロトコル(儀礼崇拝)よ。貴方、『アイドルマスター』って知ってる?」
……何故、その単語が此処で出てくるのか。
「それは知っている貌ね。別に軽蔑したりはしないわ、アレが雛型だもの」
「それから始まりソーシャルネットワーキングゲームへと舞台を移し、アイドル(偶像崇拝)を簡略化したのよー。束博士が」
篠ノ之束すげぇ!?
今度から敬意を込めよう。
「要するに、だ。偶像崇拝っていう手順でもって神格化を促されたソシャゲが艦コレで、それの成れの果てがアンタら、ってことでいいのか?」
「「そのとおり」」
理解が早いわね、ともビスマルクは付け加えた。
なんじゃそりゃあ!?と驚くだけならば一端の提督でも出来ること。
魔王化している俺ならば理解は早い。
……だってそれ、サタナキアの権能に若干近いもんな?
つーか、予め2人装備されてんの?
全部のISに艦娘が隠れてんの?
伊19とかだったら大歓迎だったのだけど。
スク水で元気いっぱいに抱き着いてくる(巨乳)、そんな妄想をしていたらドイツっ子にジト目で見られていた。
なんすか。
「……欲望が漏れているわよ」
「そこは察するなよ。良いだろ、妹分が最近足りねーんだよ」
「……え?」
……その疑惑の視線は俺の周囲の状況を理解しているから向けているのか。
ロリっ子が多いだろ、って?
そうですけど、そうじゃない。
アイツらは獲物を狙う猛禽だ……っ!(震え声)
「話を戻すけど、わたし達が2人備わっているから、件のウイルスへの対策が執れたのよ。侵入を阻止しながらプログラムを破砕する、なんてデュアルタスクが出来るほど、万能じゃないわ。片方が本体を守り、もう片方がウイルスへの対応、それでようやく一様の防御形態が完成するわけ。本来ならもっと手数が欲しかったところだわ」
なんつーか、お疲れ様です。
……つか、2人いる説明になってない。
「それと、わたし達が2体備わっていることについて、なんだけど」
あ、キチンと話してくれるのね。
時間はまだ大丈夫なのかなー。
「……本来なら、わたし達っていう仮想神格は、対神秘に対抗するために搭乗者との同一化を図るのよ」
はい?
「でも、提督はー」
「あ、八幡で構わないっす」
「そーお? ハチくんはー、いつまで経ってもわたし達に心を開いてくれませんでしたー」
「お蔭で第一形態(ファーストシフト)もままならないままで、その上ほとんどわたし達を使おうともしないし……。貴方IS舐めてるの!?」
知らねーよ。
「適性値は最低レベル! シンクロ率はマイナスを突破! それでどうやって動かしているのよ!? 本来なら会話もままならない筈のわたし達が流暢に会話できるとか、その時点で異常事態をオーバーフローしているわっ!!」
……知らねーよ……。
「つうか、本来なら会話も出来ないって何? 他の乗り手の前にも顕れたりしねーの?」
「……同一化を図るって言ったでしょ。強度はともかく、神秘に対抗できる状態に導くために、搭乗者とのシンクロがプログラムされているのよ」
ジト目で睨まれ乍ら、説明される。
そんな目で見られましても、俺に応えられることなんて何もないです。
「一人の搭乗者に付き一柱の仮想神格。わたし(・・・)は本来なら前の娘の専用プログラムよ。それが残っていたお蔭で、こうして2体備わった特殊なISが貴方の手にあるのよ。感謝しなさい」
なるほど。
つまり、愛宕さんは俺専用。
愛宕=仇児、ってか?
ハハハ、ウケるー。
……いや笑えねーよ。
若干の自虐ネタに納得のいかない気持ちになっていると、何かに気づいたようにビスマルクは貌を傾げた。
それは、何処か何かを惜しむような、そんな表情。
「――そろそろ、お別れの時間みたいね。特別サービスと言ったらなんだけど、“わたし”も目が覚めちゃったから、ちょとしたお土産を用意しておいたわ。精々手放さないように、ね」
「っ、なあ!」
――そうだ。まだ聞きたいことがあったんだ。
そう気づいて、掠れて行く視界に呑まれないように、声を張る。
「なんで俺の手にあることを受け入れてるんだっ? 本当なら、お前だって用意された専用機だったはずだろっ」
彼女らは、一度たりとて、俺に使われることを嫌そうにはしていなかった。
見た目だけかもしれないが、プログラムだとも自白した彼女らが内情を隠す必要もないし、意味も無い。
何故ならば、ありのままを曝け出している彼女らには、恥ずかしい、という感情は備わっていない。その筈だからだ。
推測かも知れないが、それは論理的な説明にもなる。
だから疑問が湧いた。
何故、と。
その疑問に、
「え、だってわたし達も一応女の子だから。相方は同性よりも異性の方がテンション上がるでしょ?」
「むしろ前の搭乗者より貴方の方がいいわね。わたしも、百合っ気は無いし」
と、軽く返答してくれた。
「――なんっじゃそりゃあっっっ!!?」
今度こそ、絶叫せずにはいられなかった。
~白濁液
剥離剤の形式を勝手に変更
ISスーツがスク水ニーソな世界観なのだし、そういう遊び心が技術者にあっても可笑しくないと思いました(白目)
~勇者おりむらちふゆ
日本政府が想定していた頃はヴォバン討伐戦前
ISが神秘に通じることを知って、権能さえなんとか出来れば対処できると思い上がっていた彼らの判断力は実に滑稽だったのだぜ…
~触手
全ては魔術師の仕業なんだ
~艦娘
提督でプロデューサーでラブライバーな八幡(公式設定)
この世界線でソシャゲの暴走に止めを刺したのは束さん
~愛宕=仇児
いわゆるカグツチの仇名
色々趣味に走った16話
初めは八幡不在のままシャルロット凌辱展開に発展するところだったのを何とか回避
お前本当にシャルロッ党?そんな疑問を右から左へ受け流す