やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス   作:おーり

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ラザフォードじゃねーよヒルベルトだよ
修正したけれど一度口にしたことは覆らないのが世の真理。これが写植ミス(覆らぬ魂の咆哮)…ッ!

そして前回の感想で己のオタク知識の浅薄さを曝け出してしまったオレガイル
クソッ、このままでは俺が実はISアニメを一切観ていない上に似非モノのシャルロッ党ということがバレてしまう…ッ!
芋づる式にかつて付けられたロリコンのレッテルすらも改めて補填されることは最早時間の問題だ…ッ!
もう駄目だぁ…お終いだぁ…(絶望)


キミが居たキセキ

 

 

 司波マドカ。

 彼女は『四葉』という名声を引き上げる為に製作された、クローン人間の内の1人である。

 『司波』と名乗ってはいるものの、それそのものの戸籍など存在もせず、単純に名を問われた時用に嫌がらせ目的で偽の日本国籍を用意してもらっただけに過ぎない。

 彼女を拾った亡国機業(ファントムタスク)はそれなりに強大且つ歴史のある組織で、古くは第二次世界大戦中にもその存在が見受けられたほど、と彼らを知る者は口にする。それらも主に政治の裏舞台という、実に限定的な井戸端会議の場でしか口にされたことは無い噂ではあるが。

 そんな組織なので、偽の戸籍程度ならば用意できる。何に使うのか、と問われそうではあるが、彼女にしてみれば実際かなり逼迫的に頻繁に必要な代物なのだ。例えば、街中で補導員に詰問されそうな時とか。

 

 ISに備わっている神格とのシンクロシステム(機体起動内顕現仮想神格励起共鳴導回路。覚えなくとも宜しい)の副作用で、一度『専用機』と呼べる程度に機体に慣れてしまうと肉体の成長がその時点で止まってしまう。これは所持する機体を変更しても覆ることは無く、ある意味不老不死にも近しいレベルで彼女らを蝕む呪いに似た効果だ。

 尤も、ISそのものも登場して10年ほどなので、この先どうなるのかまではまだ解明されてはいない。100年先に未だ現役の国家代表がどうなっていようとも、実際デヤンスタール・ヴォバンなんかは300年生きているらしいから、どちらがどのように現役表明していようとも大差も無い話になってきそうではある。

 話が逸れたが。

 それなので、見た目は中学生か小学校高学年程度のまま彼女の成長は止まっており、実は20代後半に片足突っ込みそうな程度生きているのに子ども扱いされるとか、それはもう目が腐るのも無理はないことなのである。

 

 しかし、彼女としては不本意ながらも、この現状を打破しようなどとは露程も思ってはいない。

 何しろ、技術的に『未熟そのものな前世代』に偽造(つく)られたクローン人間だ。経年劣化に細胞分裂限界、臓器衰退に造血能力の低下、更には自律神経の著しい破損等々、致死に至る新陳代謝の低迷は20歳(はたち)手前に訪れることが今までの『同類ら』の例からも判明しており、今の状態から不老化が回復したとしたら数年も無事に生きることも出来なくなってしまう。

 先輩後輩らが死んでいった中、『自分たち』に関する情報が『四葉』の中に既に無い以上、この悔恨を無情のままに墓場まで抱えて行くほどお人好しになったつもりは端から無いのである。

 一泡吹かせて、序でにこんな人生を送らせた世界そのものもそのうち痛い目見せてやろう。

 そんな()情を抱えて、彼女は今日もテロリズムのであった。

 

 

 そしてそんな彼女の同類こそが、比企谷八幡その人だったりする。

 

 

 彼の血の繋がらない妹、比企谷小町からすれば曾祖父に当たる人物なのだが、その人物を基盤としたクローンが自分たちの素体であるらしい。

 どうにも件の彼、魔法師的にも魔術師的にも表沙汰にならない時代に於いても、希少且つ有用な資質を保持していたらしい。

 曰く『白祭(しらまつり)の巫女』等と呼ばれていたその資質は、『神や悪魔を身体に宿して顕現できる』という劣化版神格剥奪者(カンピオーネ)みたいな資質であったとか。

 確かにそれらを再現出来れば、当時から研究されていた『魔法』に関する事情は一挙に解明できたのであろう。

 しかし結果は散々で。

 生まれたクローン体は皆女性ばかり、一目見て資質を発現できたともクローニングが成功したとも思えずに彼女らは10にも届かぬうちに次々と『廃棄』された。

 最終的に人工的な調整を施された『八幡』は男性として生を受けるものの、資質的に『白祭』の発現は見受けられなかった。むしろ魔法師として必要な資質の想子受容体の発現が見受けられたので、同時進行で行われていた想子量多量保持資質実験の為に、生まれるはずだった『深雪』を第一優先するための近親縁戚の近接化を『同じ胎から生まれさせる』ことで再現させるに至り、結果として当初の予定であった『白祭再現計画』は破棄されることとなる。

 

 だが、それも結局のところ『四葉』の埒外で、彼らの思惑からは大きく外れた。

 

 資質を計測する手段がそもそも見当たらず、『曾祖父』と同じように『男性である』という第一条件を既定することを優先させていた彼らの指標がそうそう達成させられるはずも無いのだが、そもそもが成功していたのか失敗していたのかを測定することも難しい。

 しかし、『八幡』は四葉の与り知らぬ戦場で『竜殺し』をやってのけ、結果として初期ロットを大きく覆す存在へと昇華した。して、しまった。

 まるで、失敗続き且つ不正と看做され研究所を追い出された後に全く与り知らぬ別の処で全く同じ性質の研究結果が成功だと褒めそやされることを目撃してしまった、四葉としては、そんな某女性研究員のような心境かも知れない。誰とは言わないが。

 

 

 

 尚、件の曾祖父殿は相当の伊達男だったらしく、当時の彼を知る者たちからすると数々の浮名が蔓延っていたとのこと。

 そもそも神威を剥奪したとしても発現する権能は個人で限定される事情からも鑑みるに、サタナキアという女性支配型の権能を発現させている時点では、『曾祖父』の資質的特徴を『八幡』は実に的確に再現させているのではなかろうか。

 序でに『機業』が得た情報に依ればISの中の人も『女性』であることには変わりないと聞くし、彼が当初より乗り回すことが出来たのもある意味納得できる事象なのでは……?

 と、司波マドカは心中で独り言ちるのであった。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

「いや、ちょっとそれは可笑しくねーか?」

 

 

 今からオールドワン復活するかも、と宣うマリヤさんにちょいと待ったをかけた。

 序でに膝枕を所望し続けた妹モドキを小町モドキへと当て替えて、弾丸で論破な方向へと己の思考を傾けるべく、何処か巫女巫女しい彼女と向き直る。

 放逐された妹モドキは初めは目で不興を訴えてはいたが、小町モドキな彼女が暫く優しく頭を撫でていると次第に大人しくなって逝き瞑目するに至る。恐らくは彼女も姉型人間なのだろう。下に弟妹が居たりすると資質も変動するよね。ソースは俺。

 ところでこの小町モドキな女子は一体何処のどちら様なのだろうか。ISを所持しているってことは学園の生徒な可能性も微レ存だが。

 

 

「可笑しい、とは?」

 

 

 傾けようとしたのに明後日の方向へと向かっていた思考が、巫女巫女な彼女の声で我に返る。

 なんで彼女にそういうイメージが湧いたのかは俺にも不明だが、憶測でモノを言うならば彼女の言葉遣いが第一印象だったと思う。あとは所作とか。それ以外で? そうなるともうお手上げだ。はちまんよくわかんない。

 

 

「クトゥルフ神話群は近年になって形作られたコズミックホラーが原典だ。型式こそ太古から存在しているように見えるけれど、その実質は『個人の妄想』を他者が面白おかしく脚色したに過ぎない。中身が本物かどうかはまあこの際置いといて、それから派生した『神』が実在するとなると……ちょっと歴史的に辻褄も合わなくなるだろ。それこそカンピオーネとかも存在しなくてもいいくらいのレベルだぞ、あそこの神様たち」

 

 

 なんせ顕現するだけで『呼び声』が暴発する。全世界のSAN値がピンチだ。

 縦しんば乗り越えたとしても、次点にニャル様とかに出張ってこられでもしたら目も当てられない。

 最悪、芋づる式に原初の炎(クトゥグァ)さんを目覚めさせないことには立ち向かうことも無理だろうし、そうなれば地球オワタで閉幕である。どうしろってのさ。

 つーか検証してみて改めて理解したけど、ガチでクトゥルフ神話持ち出してこられたら本気で対応できんことが身をもって思い知らされたな。

 某おっぱいドラゴンラノベでも持ち出さない筈だよ。神話ちゃんぽんなのに出て来ないのはずっと疑問だったけれどさ。

 

 

「し、しかしですね、元正史編纂委員会より補填した情報に依りますと、件の邪教を崇拝していた集団がこの地に居たことは確実です。それを追い出して学園を設立したのはIS委員会なのですが、土地自体に相応の因果が眠っているのは間違え様が無いのですよ? 私の『目』で確認してみたところ、海洋に属する悪神がその顕現を待ち望んでいるのは明らかですし……」

 

 

 何してくれてんだIS委員会。

 事が終わったら絶対に補償を要求することを心に誓いつつ、彼女の発言に思考を巡らせる。

 目で見てわかるって、……要するにラウラみたいな厨二Eye持ち? 自称我が家の幼な妻のは片目な上に人工物系らしいけど、この娘さっきからの発言と相俟って考えるとそういう出自らしいから、……天然モノかなぁ。

 

 

「それ、もうちょっと詳細に探れないか? 全容が視えたら教えてもらえれば、俺が何とかする」

「え゛……」

 

 

 こういうときに矢面に立たないで何が神殺しか。

 と、そんな心情で男気を見せようと思っての発言だったのだが、何故か若干身を引くような姿勢の彼女。なんでさ。

 

 

「いや、こういうのは役割分担だろ? やれるっていうなら手段は探るべきだ。殴って済めばそれに越したことはないけどさ」

 

 

 最終的に男が力仕事を請け負うのは当然の配慮だろ。

 女尊男卑社会であるからこそなのか、男性は至極当然にそういう位置に追い遣られる。

 そんな感情抱いて居たら、自然と采配を請け負ってしまっていた。

 長年の指標基準が中々抜けないのか、しかし、というか個人的にはどのようになったとしてもそう大した不慮を負うことも無いんじゃないか?と感じている部分が無きにしも非ず。

 ホラ、俺今現在人間の上位種だし。俺がやろうと思えば覆せる立場だ、ということを弁えている奴らが相手ならば、それなりに抵抗を意思表示しなくとも対処を相応以上に間違う奴も早々居ないんじゃないかな、なんて楽観視中だ。

 それ以上に、この娘が俺に対して何らかの負い目を抱いている、っていうのは見て取れたので。仕事を割り振って蟠りを自然消滅させよう、みたいな思惑からもそう仕組んだ意図はあるけれど。

 

 というわけで、辛い仕事は男子に任せな(キリッ、が発動した俺であったのですが。

 小学校でイジメられる以前ぐらいには抱いていた『女子の前ではカッコつけたい症候群』、要するに思春期男子特有の病気が思考と共に発動してしまった部分も微塵程度はあるわけで。

 ……今更だけど、俺の一次性徴期の芽生え、ひょっとして他の男子よりやや早くねぇか……? そう考えなくては、しのののさん(仮)相手にイイカッコした思惑に理屈が追い付かん。

 

 だがしかし。

 より以上に俺から距離を取る巫女巫女マリヤさん。

 女尊男卑社会で女性が優位に立った、って世の男性が嘆くけれど、其処で派生した性差の嗜好はより同性型へとシフトしているよね。具体的に言うと男よりも男らしい女性例えばブリュンヒルデさんとかが女性にモテるようになったりとか。そんな関係のなさそうな思考をしながらも、彼女が離れた理由に思い至りが無いはちまんくん。

 あれですか。彼女的にもやっぱり男に靡くよりもマリヤ様が見守っている程度の百合百合な性情況の方が惹かれるとかって、そんな嗜好なわけですか。名前的にもネタ的にも? と若干失礼な思考へとシフトするのも仕方のないことかと思われますが。

 つーか、不満があるならば口にしてくれよ。

 

 

「……なんで離れてるかなぁ」

「ぁうっ!? いっ、いえいえ! そんな魔王様に於かれましては恐れ多くも私などに趣意を抱くとは弁えても居られずっ」

「スマン、日本語で頼む」

「日本語ですよ!?」

 

 

 何故かよりテンパった彼女に、何をどう心情を汲み取ってやればいいのかも理解が追い付かない。

 助けてよ小町ぃ。

 

 

「……、ふと気になったのだけれど万里谷ちゃんさぁ、神の情報を探るのってやっぱり魔術?」

 

 

 この場に居ないディアマイシスターアンドエンジェルに脳内で救援を求めたら、小町モドキさんが助け舟らしき配慮を挟んで来てくれた。

 助かったわ。つーかこの娘やっぱ比企谷の関係者なんじゃねーのか? 最初見た時は目の腐り具合が半端なさ過ぎて絶対他人の空似だと思っていたけど。生き別れの小町の姉だとしても、納得のゆくレベルで細やかな気配り。初対面じゃなかったら仲良くなれていたかもしれんね。俺、今日以降IS学園に来る予定は一切無いけど。

 

 そんな感情に安堵の嘆息が吐かれているのだが、マリヤさんは小町モドキさんを若干警戒している模様。さっきから思っていたけど、何故?

 

 

「……そうですけれど、」

「ああ、詳しく教えてくれなくてもいいから。で、探った情報はどうやって魔王様に説明する気なの?」

 

 

 ――ん? どういうこと?

 

 モドキさんの意図が読めず、小首を捻りつつマリヤさんの次の言葉に傾聴した。

 

 

「……それはやはり、“伝達”の魔術を使用することになるかと思われますね。断片とはいえ、“神”の真髄を語ることは人の言語では齟齬が出ます。漏らさずに伝える為には、必要な行為になってしまうのかと……」

 

 

 ふむん? 詳しくは良く分からんが、何故か件の魔術を躊躇っている節が彼女にはある。

 なんかこの場には用意できない準備とか、扱えない条件とかが関与している、のか?

 

 疑問が解消されないまま、ボーっと彼女を眺めていたのだが、その視線に何を思ったのか、マリヤさんは身を抱くように、

 

 

「し、しかし、魔王様がお望みと在らばどのようなこと(行為)だとしても甘んじて受け入れる準備は整っております。なので、ど、どうか、優しく……」

「あー、待ちなさいっての。そういうの以前に、“伝達”とやらがどういう行為で実行される魔術なのかの説明から入りなさいって」

 

 

 声が震えている彼女に、モドキさんが静止の言葉を投げかける。

 正直助かった。なんか俺が凌辱する宣言した、みたいな反応されたら男子としてもどう対処していいのか判別つかんわ。

 

 

「……スです」

「ん?」

「なんだって?」

 

 

 良く聴こえなかったので、思わず難聴系みたいな反応で聞き返す。

 すると、

 

 

「だから、キス、です! 口づけを媒介として個人の持つ情報を齟齬なく伝えるのが、“伝達”の魔術の必要最低限の行為です!」

 

 

 顔を真っ赤にした彼女が、半ば逆切れのようにそう言い切った。

 

 なーるほどー、それなら恥ずかしいのも納得だわー。

 

 

「……よし。マリヤさんは待機な。全部俺が片づけるわ」

「えっ」

 

 

 無理に働かせることもないし。

 つーかそれを聞くだけなのにすげぇ疲れたよ。コイツ巫女の癖に処女かよ。めんどくせぇなぁ。

 

 アガリアレプトの権能を発動し、一先ず目の前のショゴスっぽい奴を媒介にその深奥までぐいぐい覗く。

 なんか後ろでおろおろ狼狽えている女子が居る気がするけど、関係ねー。

 

 うぉ、瘴気濃いな。腐っても邪神の名を冠しているだけはあるのか?

 さーて、鬼が出るか蛇が出るか。出来ることなら何も出ないで欲しいっす。なーんて。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 生粋の神職に携わる者として、魔法科高校の1科生として在学中の万里谷祐理に届いたのは、且つて彼女を脅かした魔王の一報であった。

 彼女はかつて、最古の魔王デヤンスタール・ヴォバン公爵にまつろわぬ神を顕現させるための『道具』としてかどわかされた経緯を持つ。件の魔王が再び己を手にしたい、と動き出したとの話が上がれば、『次』もまた別のカンピオーネに救われることがあるとは、到底楽観視出来そうにも無かったのだ。

 そのことは既に解体された正史編纂委員会も承知しており、彼らが居れば日本政府側にも政治的な配慮を促すことが出来る可能性も多少は遺されていた筈なのである。

 

 しかし、かつての魔術師補助組合は現政権の手によって解体されており、情報こそなんとか行き交うモノの、その遅延さは目に余るのが良く分かる。

 ヴォバン公爵が再び動き出したことも、彼の逆鱗にEU連盟のIS部隊が触れたことも、そして、その公爵を日本に上陸させる前に比企谷八幡が阻止したことも。

 遅ればせながら彼女の下に情報が出揃ったのは、全ての事態が終了してからなのであった。

 

 

 

 彼女が与り知らぬ内に、彼女の尊厳を命をそして感情を、全てを守護しきり事態を収めた彼に対しては、男性にそういった感情を抱いたことのない彼女でも、流石に期待を抱かざるを得なかった。

 彼に関する情報は当初こそ錯綜したものの、何の情報規制が入ったのか今ではすっかり下火となってしまっている。

 自らの国に神殺しが現れた、ということで、祐理としても彼に関する情報を集めてみようと伝手を辿ってみたくらいだ。

 

 最近ではいんたーねっとなるモノで検索出来る、とも言われたのだが、彼女本人としてはそれで出てくる情報には確実に齟齬が混じることを理解している。要するに又聞きの噂話と大差ない情報なのだ、と。

 それでは意味が無いのだ。

 何せ当初は新たな魔王ということで神経質なまでに恐怖を抱いていた祐理だ、彼に関する情報に齟齬があっては、改めて対峙した時に確実に対応する心構えが変わってきてしまう。

 決して機械系に疎いために食指を動かしようにも無かった、とか、そんな情けない理由では断じて無い。

 

 しかし、現状で彼に関する情報を集めようとする目的だけは、当初とは完全に一転していた。

 何しろ『自分に危機が及ぶ』よりも前に総ての事態を収めた人物だ。緊急事態に対応する見事な采配、そしてそれを行いながらも祐理には一切の要求をしてこないのだ。

 八幡の情報を探る祐理の中では彼の正体が不明であることと相俟って、まるで一種のヒーローを夢見ているかのような心地で彼の真意を探ることに奔走していた。

 その本人は公爵を撃退した後ものほほんと同じ高校に通っていたのだから、やや間抜けな話になってきそうではあるが。

 

 

 

 そんな彼をようやく見つけられたのは、今日の事態が佳境に入ったつい先ほどであった。

 まつろわぬ神の顕現が今かという火急の事態になって、颯爽と登場した彼の抱いている『神格』を直視したことでようやく彼が何処に居たのかを理解した。

 その上で、彼の力になりたい。彼に恩義を報いたい。

 その一心で、心象が悪くならないようにと礼儀を弁えつつ事情を説明したのである。

 

 その果てに、役立たずと判断されて放置とされるとは、とてもではないが想像もしていなかった。

 

 

「ねぇ今どんな気持ち? 憧れの魔王様にお前要らねって突き放されたの、どんな気持ち? ねぇねぇどんな気持ち?」

 

 

 ついでに言うと、さっきまで織斑先生と敵対していた筈の少女が頗るウザい。

 というか、彼女は完全にこの事態を引き起こした原因の一つではないのか。

 

 

「……そう云う貴女は楽しそうですね……?」

「まぁね。安穏と日々を送れて居た肥えた豚が絶望の淵に落とされているのを見ると、すっごく捗るわ」

 

 

 腐った眼で、実にイイ笑顔でそんなことを宣った、司波マドカとかいう彼女。

 実に最低な女である。

 というか、誰が豚だ。

 

 

「ぜ、絶望? そんなこと私が感じているとでも?」

「声震えているわよ。無理しなくてもいーわよ。きっと初恋だったのでしょう? 簡単に切り捨てられたわねー。うーふふふ、たのしぃ」

 

 

 酷ぇ。もう一度言うが、酷ぇ。

 恍惚、とした微笑みでそんなことを、舌なめずりしながら囁く。

 祐理には与り知らぬことであるが、きっとこれこそが『いともたやすく行われるえげつない行為』という奴なのであろう。

 

 一般的に、恋とは幻想と理想に焦がれるモノだ、と云われる。

 男性遍歴が一切無く、世の中から見ても優位な立場で、『選別する側』であったことを社会的に位置づけられていた彼女にとっては、恋というモノを知る機会など今まで無かった。

 ならば、八幡のことを知りたいと錯綜していた、その時こそが彼女の恋い焦がれていた瞬間だったのではなかろうか。

 それを突きつけられて、同時にそれを切り破られた。

 

 別に悲しい、とは思っても居ない。

 だが、現状を鑑みれば、確かに惨めだ、と感じる心もまた沸々と湧いてくるのである。

 それは横に居る彼女(マドカ)が、ニヤニヤと厭らしく嗤っている、という状況が誘発する錯覚なのかも知れないけれども。しかし。

 

 

「~~~っ」

「あら、泣くの? 悔しくて涙を流すの? いぃわぁ、女の子の泣き顔ってそそるわよねぇ」

「泣きっ、泣きませんよ、ええ泣きませんともっ。泣いている暇なんてないですし、そもそも私は魔王様にそのような感情なんて抱いておりませんしぃっ」

「無理せず泣いちゃいなさいな。ほらほら」

 

 

 グイグイ来る。

 いかん、本当に泣きそう。

 と、祐理の視界が若干の滲みを見せ始めたところで、

 

 

「――あ……?」

 

 

 ぽつり、と八幡が声を漏らしたことに、彼女らの注意はそちらへと赴く。

 彼はそれには気づいていないのか、困惑した様子のままに、

 

 

「……ケトゥス……?」

 

 

 と、彼女らに与り知らぬ、何某かの名を呟いていた。

 

 




〜八幡設定
 曾祖父はカンピより引用。クローンはISでよく聞くから。そしてすべての元凶は四葉
 多分もう少しだけ闇(笑)が残ってる
 白祭云々はZippyから引用。覚えている人いるかなー
 そして全て悪いのはISの所為。イズルがガチでワンサマにクローン設定持ち出して来たら原作買うけどさ

〜某女性研究員
「STAP細胞はアリマァス!」
注意※この物語はフィクションです★

〜発端はそもそも
 IS委員会が学園建てようとしなければこんなことにはry
 何らかの邪教集団があったのは確実。それを知った八幡が補償を要求するのも時間の問題
 委員会オワタ

〜巫女
 大体が神主に食い散らかされている(八幡による偏見)
 実際どうだかは知らんけれど、発足当初は春を売っていたのも事実な歴史を持つ神職(笑)
 あ、祐理は生粋の処女でs

〜司波マドカ
 キャラ崩壊注意



おや・・・? おーり は かつどうほうこく に ネタ を ほうちく したようだ !

ツッコミは随時受け付け中です

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