やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス 作:おーり
もう一度言う
これはバレンタイン特別篇では御座いません!!
ラブコメを読み返して把握した、男女の機微について。
漫画知識で申し訳ないが、一般的なラブコメディの定石は、「ある一定の好感度がある男女間」にて執り行われそれらはたいていの場合「ある程度の清潔感を伴う以外は根本的にモブキャラ同士」での遣り取り、である。
例えば「学園のアイドル」、「部活の先輩」、「クラスの委員長」。
例えば「縁の在る転校生」、「幼馴染」、「勉強の出来る秀才」。
そしてそれらと絡むのが、「取り立てて見どころの無い主人公」。
それが二次元上のご都合展開である以上、キャラクターの属性付加や過剰美化・簡略化は半ば必然的な推移であり、読むことに慣れた者にとっては「そうなって然るべき」の
そういった「記号」同士の遣り取りなんて言うものには、それらが絡み合うだけの深い理由なんてものは実はほとんどなく、単純に「互いを認識できた」というだけの距離感が実は一番重要になっていたりもする。
この関係性は、仏教にもある「色即是空」という考え方に依るものもある。
「色」とは己の知り得る認識の全て、「空」とはそれ以外の世界の全て。「色」と「空」とは表裏であり同等のものである、というのは、世界の「見方」が個人で罷り得るものでは無いから、という意図もある。
結局のところ、二次元上の「彼ら」にとってはお互いこそが認識できる最上限の存在であり、それらに執着しているからこそ互いの意思疎通が通じるわけだ。
しかし、そう言ってしまうと「それ以上の異性」が現れれば、其処に惹かれてしまうことが道理と成り得る。
それを抑制するモノこそが、「ラブコメディの定石」なのである。
酷く下世話な話に推移するが、ラブコメディに付き物の要素に「ラッキースケベ」というものが存在する。
「それ」は一時的な肉体の接触で互いの羞恥心を程よく刺激し、その微過剰なスキンシップによってお互いを個別足らしめているATフィールドを取っ払う。
距離の近い者同士ならば許し合えるという、生物的本能に基づいた一種の「さかり」である。
近しい者同士ならばある程度の一次接触は許容範囲であろうが、これは要するに生物としての「求愛行動」の変則的な延長上に倒置される類なのであろう。
そしてそういうお互いを「
――結論から言おう。
リア充とは要するに、動物から脱却できない人種の事だ。
場 所 も 弁 え ず 盛 っ て る ん じ ゃ ね ぇ よ 、 ケダモノどもがぁッッッ!!!
× × × × ×
2月14日。男子の欲望と羨望と絶望が渦を巻いて慟哭を蠢かせる、渦中の決戦とも呼べる聖戦の嘉日。
そう、St.Valentinedayである。
俺、比企谷八幡改め司波八幡もまた男子の一員ではあるが、リア充の祭りに自ずから参加するほど堕落など……ハッ(嘲笑)。決してしていない。
この一年、実に濃い日々を送ってきたわけだが。ほら、俺には奥さんも妹もいるし。今更彼女らの愛を疑うなどという、
えっ? お前人間のつもりなのかよって? いや人間ですよ? いくら魔王と呼ばれようとも、結局のところ人間は人間なんですよ。其処は倫理が絡む最後の一線なんでね、譲れやしない。
まあこれだけ余裕なのは彩加から友チョコなるモノを戴いたからに他ならないのだが、とネタばらし。
天使すぎるぅぅぅ! んぁーーーっ!
――おっと、愛が溢れた。
そんなこんなで、そわそわと落ち着きのない男子らを尻目に、恒例となった生徒会へと赴く俺。
まさか役員に選抜されようとは、6月の時分にはとても思いはしなかった事態である。
そんな感慨深目に、生徒会室の扉をうぃーっす、と気弛気に開いた。
――やたら高級そうな箱に詰められたチョコを、妙に無感情な目で摘む色黒男子が其処に居た。
っていうか現生徒会長だった。
この人にくれる女子が、この学校に居ただと……!? と、思わず戦慄の表情で慄いてしまう。
「あ。やぁ司波君、お疲れ。ひとつ食べる?」
「あ、はい、いただきます」
うわ、なんだコレ。高いのが見た目だけかと思いきや、絶対に一般人が口に出来そうにない材料とか使われてるぞ。
この一年で義妹の扱う高級食材で舌が肥えた俺に隙は無い。分析なんて楽勝ですわっ。
……つくづくなんでこの人がこんなのを、一体誰から……? と胡乱な目が向けられてしまうのですが……。
努めて平静を装い、先輩に尋ねてみる。
「うめぇっすね、コレ。誰から貰ったんですか?」
「おかゆ元会長」
「っ!?」
ちょ。
……一瞬マジで呼吸が止まった。
七草先輩って、アンタがリコールで会長の座から引き摺り下ろした元ロリ会長じゃないっすか。毒を盛られていたとしても可笑しくないお相手から差し出されたモノを、よくもまあ警戒も無く口に出来るなこの人は。
あと『おかゆ会長』って呼ぶのやめたげてよぉ!
チョコを喉に詰まらせかけた俺に、湯呑がすっと差し出される。
書記の北山だった。
「ん、大丈夫?」
「っ、あー、さんきゅー」
飲んでみて分かったが、ココアか。
……なんて答えればいいんだろうな?
「てってれー、司波君の好感度が5上がった!」
「やった」
「いや、上がってませんから。適当なこと云わんで下さい」
と、まあ新生生徒会となって任期は現在未だ半年。
ついでに言うと会計の光井と中条副会長の出席率がすこぶる悪い、そんな俺たちの日常は最近
全てはこの人を食ったような現会長『烏丸イソラ』こそが諸悪の根源である、と俺は視るね。
× × × × ×
IS学園での騒動に端を発する、魔法科高校内での一連のごたごた。これを鎮めたのは2年E組の『烏丸イソラ』、要するに2科生でありながら強者の座に収まってしまった色黒の彼のお方。二つ名を『はいとるこんとん』。
最初会ったときは正直目を疑った。
いや、まつろわぬニャルラトホテプだった、とかそういうオチなのでは無く、使っている魔法がどう見ても『
その正体は『相手の心を捩じ伏せる』。要するに、心をポッキー感覚でぽっきりへし折る類の精神干渉系魔法で、この先輩が独自に開発した『実体を持つ幻』である。
PSYRENの雨宮の使っていた大鎌と同等のモノだと思って戴ければ判りやすいか。魔法って元々はそういう超能力系列から派生したらしいから、再現出来ても可笑しくは無い。実際、彩加の扱う波導球とかは、最近なんだか『
いや、劣化版みたいなものだけどね? 球状から平面系とか射線系的な変形はしないけどね? 狙ったところにぶち込めるみたいだし、触れた魔法を掻き消せるとか普通に凄くね?
話を戻そう。
あの先輩の凄いところは、俺と同じような文系人間だというのに『魔法』を独自に組み立てたところだ。
魔法科高校に通う癖に魔術的素養が強かったのか、本来魔法師が行使するべき『演算すること』を放り出し、計測では無く思考にての『理論』を
完成した魔法式は一点特化型でありながら、万能型の1科生を縦横無尽に
魔法師本人を“傷一つなく”叩き折ったその『結果』が、弱者の
今更すぎる話かもしれないが、一般的に魔法の構成は科学的な演算が必須とされ、そういった計測や計算が出来るか出来ないかが魔法的な才能の有無に直結する。其処には個人の資質以上に『演算の入力速度』が重要視される技術的な部分があるのも否定は出来ない。
だが、技術と科学は相互干渉に通ずるもの。どちらにしても分析も理論も分野の違う所謂『文系』の高校生に理解させるには、少しばかり荷が重いのが現実だ。
そうでなくとも、一芸特化型が多分にある2科生には、『学校』が指定した選別基準に到達するにはやや敷居が高い。
知ってる? 現状での3年に『生き残っている』2科生って、一クラス構築するのに人数が足りてないんだってよ?
どう考えても差別意識から排出されていった先輩方です。本当にお疲れ様でした。
ちなみに、「魔法は科学的であり技術の有無は関係ない。むしろ出来ないのは理論的におかしいだろ」等と暴言を吐く1科生に対して、「じゃあ固定砲台つけて射線計測して発射角度補強して弾丸備え付けて並んで撃てばむしろキミたちが要らないよね。そういうのが『科学的な姿勢』ってやつなんだと思うよ?」というのがとつペディアさんの弁。未だ発展途上な『魔法』に対しての
以前にも述べたかも知れないが、
魔法開発以前より存在する、限られた資質を持つ者のみに扱える『神秘』の下位互換。性能としては世界的にはそのような認識だが、その実情は人の手で扱う為に儀式を介して簡略化された別種の『学術』だ。
歴史的な文化発展の流れによって宗教により簒奪されはしたが、喪失した理論を補填するために近代理論で補強された『趣味の悪いオカルト』は、
それは、ひょっとしたら『魔法』で躓いた彼らにとっては、光明に見えたのかもしれない。
かといって、それを補強するための学識が一般には備わっていないのだ。
魔術師には秘匿気質がある。確かに歴史的に棄却され簒奪された背景が『彼ら』を現在の鋳型へと押し込めた経緯はあるものの、まるで“大勢に知られては困る”ように人数制限みたいな口伝が多いのも資料の少ない実情の要因ではある。
故に、温故知新が程よく流布されない、『近代魔術』と読んで然るべき『オカルト』が蔓延り、それに素養のある『知恵者』が『染め』られたりもする。
感情や信仰、共感に繋がる感受性等、人の心を主軸に分析出来得る可能性は、確かに素晴らしい資質だろう。心理学もまた文系と言えるカテゴリなので、その発想に至ることも不思議では無い。
だが、その果てが『心を折る魔法式』というのは、あまりにも救いが無いのではないかな。と少なからず思う。
さて。
無双を果たした烏丸先輩だが、それが弱者の立場からの下剋上であった以上、行きつく先が何処に向かうのかはむしろ必然的なことであった。
周囲の流れというものもあったのだろうが、6月の時分、当時頭角を顕わにしてきた2科生2年が学校中に蔓延った例の、風紀委員長所謂『ヤンキーの乱』。もっとマシなネーミングは無いものかと、今でも思う。
飛ぶ鳥を落とす勢いでバトルロワイヤルに発展していた実力者の総当たり戦に、1科生も参入することで事態の収拾を図ったのかもしれない。しかしそれは前述した通りに、烏丸イソラの手によって悉くが
参入した者たちの“知名度”も相俟っていたのかもしれない。
そういった事態に突き動かされたのは、たいていが1科生という現状を鼻にかけ2科生を下に見る者たちだ。そういった者らは風紀委員長や部活連会長なんかの実力者とは違い、これといった特徴が無い。
言ってしまえば、『モブキャラの皆様』。
圧し折れるのは容易かったことだろう。
そんな流れで、俺に代わって2科生からの後押しとそれなりの署名をいつの間にか集
スローガンは「魔法師の必要性の無さを全身全霊をもって提唱するために、この学校から
……アレですか。『エリートは皆殺しにすればいいぜ』的なご本家をリスペクトしたスローガンなのですか。負けず劣らず凄まじいですよね。
貼り付けたような笑みを浮かべる本家『負完全』球磨川禊とは違うものの、猛禽を彷彿とさせる凄惨な笑顔は思わず惚れ惚れとしてしまいました。
まあ、そんな4つに組んだら負けなタイプの先輩を俺もまた全力で応援するために、こうして生徒会庶務という立場に収まった俺なのである。自分より下がいるのって、すっごく安心するよね!
しかし、
「……改めて思えば、そういう反面教師的な顔を見せれば、
可笑しいな、声が震えるや(白目)。
この半年で起こったことと言えば、体育祭や文化祭に部活動費用の予算配分会議。
生徒会が総出で事態を取り仕切るイベントがそこそこあったのだが、其処で会長の無能っぷりを推せば良かったモノを、周囲のメンバーの有能性に加えて、知りたくなかった己の社畜っぷりを如何無く発揮してしまった俺とかの『全力』は、奇しくも
……いや、だって会長の出してくる案が悉く酷くて、つい。なんだっけ? 体育祭のゲストにふ●っしーを招待しようぜ、とか言ってましたよね? 俺としてはむしろチー●くんを推薦したかったのだが。ってそういう話じゃねーよ、そもそも此処八王子だよ。
お蔭様で、測り直したら支持率0%だったはずなのに、来期も生徒会長を続投である。しっかりしろ魔法科校生。
「うん。まあ、生徒会役員を募集した時キミが最初に来たのは予想外だったんだけど、なんていうのかな、キミダークヒーローっぽいよね。おかゆ会長も其処を見越していたような感触が、」
「……ってまさか、そのチョコ」
「……うん」
摘みながら、また勝てなかったみたいだ、と自嘲する烏丸先輩。
後から聞いた話なのだが、七草元会長は2科生と1科生の差別意識の垣根をどうにかしようとしていたらしく、リコールで卸されたものの2科生の先輩が会長に収まったので、結果的に彼女は目的を達成したことに繋がるわけである。
自分が傷を負ってでも目的を達成する、という部分には好感は持てる。が、そのお返しとして寄越したのであろうこのチョコレイトで烏丸先輩のSAN値がピンチ。
正直、追い打ち感がしないでもない。鬼っすか、アイシクルショット先輩。
「ま、まぁねー。今後用意されるであろう第二第三の魔法科高校を廃絶させて全国展開を押し留めようとする俺の計画が丸つぶれだよ。ま、虚仮の1年岩をも通す、って言うし、来年こそ全力で臨むけど」
「会長。ぶっちゃけ目を離すとすぐ負けてる貴方がどう頑張ったところでまた勝てないのでは?」
やや声が震えてはいたものの、気を取り直して嘯く会長に北山が問い直す。
でもなんだかんだで彼女の言う通り、周囲の執り成しで結果的に『良い学校』が出来上がるような気がする。
あと今のことわざ、なんか発音可笑しくなかったっすか?
「さて、おふざけはこのくらいにして。ちょっと真面目な話をしようか」
空気を切り替える意気込みだろうか、会長がパン、と手を打つ。
負け続きの会長の、精一杯の強がりに見えなくもない。
「司波君、キミちょっと一年くらい転校してきなさい」
「いやなんでっすか」
追い出すおつもりですか。普段から完全に見下しているのは謝りますから、彩加と離されるのだけは勘弁してください!
「んー、お偉方の意向もあるんだけどね」
「ああ、納得」
「納得するんだ……」
北山がなんか呟くが、まあ、言いたいことは判るんだ。
魔法科高校は教育委員会からの直轄とは言い難く、どちらかというと軍需用御用達の匂いが仄めかされる。
当初
そいつらが何を思っているのか、と言うことには興味は無い。事実、言う事さえ聞いておけば脳味噌なんだか糞味噌なんだか中身の見通せない大人が何を企もうとこちらの立つ瀬は抑えられるのだ。
この現状で手を出してくるのなら、むしろ“好き勝手に”出来る良い『材料』になる。
……ていうか、甘粕さん曰く改善されたらしき現状の政府とはどう違うんだ? そっちはむしろ俺に声をかけてこないのか?
「まあ話は最後までお聞きよ。そのお偉方、の中にはIS委員会のリークもあってね」
「は? なんでそんなところから?」
……まさか、IS学園に転校する準備が整ったからお迎えに上がり居ました、とかそんなオチじゃなかろうな。
嫌だぞ、『アレ』以来もっぴーがメールでウザったかったのに、わざわざ火種を寄越すのなんて。
「ん、その前に、キミ国家代表候補生にはどの程度の権限があると理解してる?」
「……ちょい待ってください」
「日本の社会性が“それ”を推すのはまあ当然なんだけど、他国でもある処にはあるのが『女尊男卑』だからね。それらが特に顕著に表出している国だと、彼女らの顕現は何気にウナギ登りだ」
「待って、お願いストップ」
「……特に中国なんかは、『ご本人の意向』があれば、交換留学の次第に踏み込める、って意気込むだろうね。魔法科高校は日本の“これから”の産出技術足り得るだろうし」
「やっぱりかよぉぉぉ……!」
嫌な予感が的中した。
「来年から、国家代表候補生の
もう何も言えねぇ。
× × × × ×
もうアレから8か月になるのか、それともまだ1年経ってないと言うべきか。
旧亡国機業の襲撃とクトゥルフもどきの顕現を阻止したIS学園でのごたごたの後に、どうやってなのか俺への連絡先を知ったIS学園女子からのメール攻撃が程よくぶちかまされた。
最初はスパムかと思ったくらいに、なんだかリア充を推奨してくる肉食系共の押しの強さに辟易していた頃、見知った名前がその中にあったのをよく覚えている。
具体的に言うならば鈴とか鈴とか箒とか。
流出したのは主に鈴が下手人であったらしい。ああ、アイツ昔っからそういうところあったよな……。と感慨に耽るのも束の間、不幸の手紙も画やといった勢いで下手人のメールも埋もれて行く始末。
どこそこにデートに行きませんかー? とか、結婚を前提にお付き合いください! とか、どう考えてもハニートラップです本当にありがとうございました。
面倒臭くなった俺がラウラとのツーショット写真に『結婚しました』のデコメで送り返したのは悪くない。
ちなみに一斉送信にしていたらしく、近所の喫茶店で働くスコールたんから疑問のメールが返ってきたのはいい思い出。序でに言うとIS学園を首になったシャルロット先生も其処でウェイトレスとして労働しているだとか。世間は狭いね。
……以後、織斑先生からのお手紙から「なんだか病んだ篠ノ之が自室に籠ってお前の名前を呟き続けているらしいのだが」等と怖い報告があったりしたのだが、もっぴーは委員会や日本政府の干渉を避けるために学園により保護されている立場なので放置でも問題は無かった。おいそれと出て来れる立場じゃないからね。仕方ないよね。
問題は鈴の方だ。
「……やべぇ。アイツ、俺がロリコンだって勘違いしちゃってんじゃねーの?」
そうでなきゃ、わざわざ転校までしてくる理由が思いつかない。
あれか、ラウラが自分に似た体型だから、ワンチャンあると錯覚したか?
ねーよ。
ちなみに、俺の一斉送信で暴発した更なるお返し送信でメール圧縮された
まあ彼女のブロックで無用メール大元である彼女らのケータイ端末なんかは、ハッキングついでにデータ破損とか高額請求とか変形合体飛翔とか、様々な“お返し”が成ったのは俺との秘密だ!
「え、違うの?」
「違います」
「でもシスコンだよね?」
「まあそれは否定しないですけど」
「否定しないんだ……」
呆れたような目で北山が俺たちの遣り取りに反応する。
なんだよ、家族を愛するのは当然の事だろ?
「それなら問題は無くない? ほら、キミの下の妹さん再来年には受験だよね? うちを受けるのなら問題は無いけど、キミ的にはそういうつもりはないんだよね?」
この人がやたら詳しいのは、ここ半年で活動している合間に駄弁る都合がそれなりにあった所為である。
まるで何某の一存の如く、遊んでいる生徒会等と揶揄されることも少なくないのが、現生徒会役員2名の出席率の悪さにも直結している気がしないでもない。
「まあ、このまま此処に入学しても要するに開発とかが控えてますからね。そもそも因子なんて持って無かった筈ですから、実家から程よく近い学校に進学するはずですけど」
魔法使いとして発覚するには因子が必要不可欠。
もう何度も言った気がするけど、先祖に魔法使いでも居ない限りは兄妹でも魔法師として覚醒するには許容量不足だ。
……ないよね?
「問題は流れで進学できる高校が底辺っぽいとこ、っていうのが……。学歴云々以前に、俺の知り合いが数多く進学したらしき私立に放り込まれるとか、正直成ってほしくは無いっすわ」
今の小町の学歴のままだと、精々が海浜総合か? 中学時代の『同級生』の大多数が其処に進学するって聞いたから、俺は総武校に進路を決めたんだよな。まあ親からの「学費を抑えろ」というお願いがあったのも関係しているけれど。
小町が入学する頃には俺を知る奴らは卒業してるだろうけど、もしかすれば留年するような奴も中に残る可能性も無きにしも非ず。そしてそういう奴に限って碌な奴じゃねーんだよな。統計的にだが、強ち間違ってないように思えるのは俺の妄想か?
「そんなキミの為とは言わないけど、妹さんの通える学校を改善させるための下準備ぐらい、キミにも出来るだろ? 半年だけとはいえ見事に生徒会をやり切ったんだからさ」
「ああ、環境を変えるには先ずは掃除から、ってことですか? でも俺のことを知っている奴らの巣窟にわざわざ踏み込むほど、俺は図太くないんですけど」
「だから、キミのことを知らない人たちに揉まれてくればいい。序でに妹さんの勉強も見てやってさ」
あ、転校先は海浜じゃないってことですね。
ちなみに小町の勉強はきちんと見ますよ? 数学以外はな!
「知らない人……。いますかね、日本に?」
「見た目は
と、手渡される『戸籍謄本』。
マジか。新しい戸籍まで既に用意するとか、準備良すぎじゃね。一体何処からのご指示何ですかねぇ?
「え。結局転校するの? 司波君?」
遣り取りを呆然と見ていたであろう、北山がようやく声をあげた。
そういえば居たわこの娘。
偶に、こちらの事情を知っているであろう烏丸先輩の不遜且つ軽快な物言いに忘れそうになるが、俺がどういう立場にあるのかを知っている学友なんてのはE組以外には実は居ない。
それでも、こうして踏み込むべきでない部分にはしっかりと距離を置いてくれていたのだから、北山にはいつも感謝しているのだが。
「そんな……。来年の文化祭では一緒にライブをやろうと思っていたのに」
「スマンな、それはまたの機会にしてくれ」
ていうか出来るかそんなん。
楽器を扱ったこともないのに、そんな真似が出来るのはリア充くらいしかいない。
そして俺はリア充ではにぃ。はい論破。
「わたしの好感度を上げておけば文化祭でライブが出来たのに。会場を総立ちで湧かせることも可能だったのに。頭に手を当て腰を振りうっうーうまうm「ストーーーップ!!! それ駄目だから! 主に権利団体的なところで口にしちゃ駄目なことだから!!!」
あっぶねぇ!!
危うく歌詞転載でログを潰されるところだったよ!
あと好感度とかって何年前のゲームシステムだよ! お前ギャルゲーの攻略キャラかよぉ!
× × × × ×
「
思わず棒読みで名乗りを上げた。
それにしても恐るべきは烏丸先輩の手腕である。背後に魔法開発を支援する
普段は鷹の爪を隠しているってことか、無駄に能あるスペックを発揮しおるわ。何時の間に俺の通う筈だった学校を調べ上げたんだよ……。
あの生徒会会議からひと月半。
場所は本来ならば俺が通う筈であった『総武高校』、今日から転校生として生活することとなったわけで。
ちなみにややカッコいい俺の名前は、ヒキガヤハチマンのアナグラムだとか。“勘”がどっかいったぞ?
政府関係者って意外と厨二病患っている方が多いのかな……。そういえばISの名称とかも色々とアレだし……。
ご家庭の都合で云々、とややアラサーっぽい美女教師に紹介される俺。
平塚と言ったその先生は、なんだかブリュンヒルデに似てなくもない。結婚出来無さそうなところとか。
「何か言ったか火鉢?」
「いえ、なんにも」
勘の鋭いところとかね! 俺の名前から零れた部分がこの人に備え付けられちゃってんじゃねーの?と疑いたくなるレベル。
事前に調査を進めていたらしい先輩の伝手で手に入った、この学校の全校生徒の履歴書からはブラックな匂いなんて微塵も無かった。正直、プライバシーとか何処に行ったの?と問い質したい気持ちもあるが、俺の学歴に微塵も掠らなかった部分や、何処かの秘密組織や政府関係者のハニトラだとかいう疑いもコレで解消出来たのは有り難い。
疑心暗鬼が過ぎれば、最終的にはアガリアレプトがupを始めたようです、とログが読み込まれることになるし。
そういうブリジストンを叩いて渡る真似をさせなかったと言う辺り、先輩としては本当に気晴らしの意味合いも兼ねてのプレゼントにも思えなくもない。
まるでオールフィクション! 本家に負けてないじゃないっすか。
「それじゃあ火鉢は其処の空いた席に座るように。みんな、仲良くしてやってくれ」
気の無い返事や囁き……詠唱……念じろ……! ――おおっと! なんてlostが揺れ動く教室内を、人目を気にせず闊歩できる幸福……。って、灰になっちゃってんじゃん。お前ヴォバンの爺さんかよぉ! いや、アレは塩か。
等と、脳内でツッコミが追い付かないくらいHighになっている時間を楽しむオレガイル。
空席へと歩を進め、隣の娘へヨロシクすると、彼女は立ち上がって慄いた。――慄いた?
「――なっ、なんでヒッキーが此処にいるのッ!?」
………………おい、先輩のオールフィクションを台無しにしやがったぞ、コイツ。ひょっとして先輩以上のマイナスですか?
~ キ ン グ ク リ ム ゾ ン !
過程は省略され、世界には結果のみが残される……!
ぶっちゃけ、劣等生との二次とかは色んな人が書いているから、俺が補完しなくともいいんじゃないかなっておもいました
あれ? そう考えるともうこれが最終回でよくね?
~
友 情 出 演
スタンド使いというわけでも言葉遣いというわけでも、転生オリ主というわけでもない。パラレルな魔法科男子高校生。ネコミミに非ず
喋り方が若干マイルドなのは“あちら”と違って味方が非常に少なかった所為。トラウマイスタに匹敵するレベルでブラックな人生送ってきていた地黒少年。せやかて工藤、と一度ネタを振った際、現副会長に冷たい目で見下されたログが八幡にある
見事なまでに一発屋。正直出オチ感満載な為に、この人を出す経緯を敢えて文章に興さなかった、という計算がなくもない
~生徒会メンバー
副会長『中条あずさ』、会計『光井ほのか』、書記『北山雫』。2年に上がるより半年早くに結成された新生生徒会
雫との絡みが見たいって言うから…(震え声
原作との相違点がでっかく居るのが多分最大の問題点。ちなみに深雪は原作とは違うコミュ能力の高さを持て囃されて風紀委員長に就任
何はともあれ、お疲れ様でしたアイシクルショット会長!
以下この半年の間に起こったことを捏造するスレ
雑談、可