やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス 作:おーり
せっかく鈴とかあーしさんとか平塚先生とかに色々スポットを当てたのに感想では葉山の嵐
なんだ、そんなにみんな葉山をフルボッコにしたかったのか
むしろこっちはフルボッコの方がマシだったルートだから
というか葉山にばかりスポット当ててられないのよね。主役は八幡だし?
所詮奴は総武校屑四天王の最弱よ…
そういう意味と違う?そうかな?
ちなみに前回の副題の意味合いは八幡が飛び回ってましたよ、という暗喩
それこそ縦横無尽に、
詳しく書かれてある前回の真のあとがきは4月10日更新分の活動報告に記載されている模様
一番下までよく読んでください御願いするます
では28話目
アンチ系だからゆきのんが酷い目に絶対遭う、って
※ あらすじとタグを若干変更いたしました
放課後の廊下をがやがやと、賑やかに程よくそれぞれの目的へと足を進める先輩方の声が響く。
この一週間ですっかり慣れてしまったが、そういえば私は役員じゃなかったっけ、と今更ながらに自身の順応能力の高さを褒め称えてやりたくなった。
とは言っても、さっきも思った通りにこの状況を楽しんでいる自分が居るのも事実なので、言う程策をしたためている意図もそれほどないのだけれど。
「いろはちゃん、すっかり馴染みましたね。もう彼女を新役員に抜擢した方がいいんじゃないですか?」
と、書記であるメガネの不二屋先輩が朗らかに言う。
いやいや、そうなってしまうと狙い目の先輩との接点が無くなってしまいますから。正式採用の件は謹んでお断りさせてくださいお願いします。というか働き出してわずか一週間でそんな評価を戴くとか、どれだけ人手が無いんですかこの生徒会。
しかし私がそう言うまでも無く、もう一人の役員が待ったをかけた。
「ペコ、それは庶務を一色に任せるという意味合いか?」
「ええまあ。一年生だし、其処が妥当ですよね?」
「イカンな。ボクは反対だぞ、庶務には火鉢くんと言う人材が既に納まって居るのだからな」
と、メガネを光らせて不二屋先輩の言い分を却下する。
限られた役員のイスを決して空けようとはしない、そこに痺れて憧れる!
……あ、いえ、この人は狙っている人じゃないですよ?なんですか勘違いしましたかごめんなさい無理ですまだとかそんな意味合いも無く普通に無理です。
というか、そうやって『あの人』を庇ってくれる部分は尊敬できますけどねー。
ちなみにペコと呼ばれた不二屋先輩は、そう留めてくれた副会長からやや顔を背けて、「ちっ」と舌打ちしていた。
そしてこちらの副会長メガネさんは獣王院先輩。
不二屋先輩の事を何故かペコと呼ぶ、やや癖の有りそうなお人だ。
癖は有りそうだけど人を見る目は確かだ。
実際、件の先輩に目を付けている子は私の周りには今の所は1人も居ないのに、この副会長は彼の有用性をしっかりと認識したうえで、常に擁護する立場へと回ろうとする。
というか、心酔しているって言った方が正確なのかもしれない。
火鉢先輩の事好き過ぎるでしょ、獣王院先輩ェ……。
実際、役員選抜の絶対数がどうなっているのかはよくわからないが、現状5人で構成されている生徒会役員の名称付き役職を下手に弄る必要はないと思う。
ホラ、ドコぞで噂の碧陽学園も箱庭学園も5人そろって生徒会、みたいな戦隊モノのお約束的構成力が説得力を醸し出している気がするわけだし。
だからこそ不二屋先輩は火鉢先輩の事を生徒会役員からふるい落としたいのかもしれないなぁ……。
「ペコ、何故キミはそう火鉢くんのことを毛嫌いするんだ? 実際、この前の予算会議で彼が根回ししてくれたおかげであそこまでスムーズに事態は進行したじゃないか」
「その代償が運動系部活連の活動収縮ですけどね。まあ、以前から問題行為が伏せられていたからこその結果なのは仕様が無いのでしょうが、それにしたってそこを采配した僕たちが生徒の大半から恨まれる結果になったのには言い訳されても許容できませんね。まさか庶務がすべてやりました、とも言ったところで聞き入れる筈が無いでしょうし」
いくさとは始まる前から終わっているモノだよ、と感慨深い副会長に、ガトリング張りに一掃することを下準備とはいいませんよ、と嘆息するペコ書記長改め不二屋先輩。
あぁ……、庶務って立場的には一番下っ端ですもんねぇ……。
原則として生徒会は所詮『生徒の集まり』で『生徒側からの代表者』であるわけですから、立場として明確な上下関係なんてあるはずが無いのに、決定権と責任が上になるにつれて権威も出っ張るのは『集団』の成り往く正しい形ですし? 『そういう集まり』だと大多数に認識されちゃっている以上は、立場が上の人が平等を謳っても信用度が低いのも明白ってなモノです。
え? 私がなんか頭良さそう?
なーに言ってるんですかぁ~♪ これくらいの判別能力が無くっちゃイマドキ女子高生なんて名乗れませんよ? キャハッ☆
「元々政治を取り仕切るモノは世間の嫌われ者だ。受け入れ給えよ」
「僕らは政治屋ではなく教師の下請けです」
「為れば緩衝材としてしっかり仕事をするべきだな」
「……そもそもうちの教師陣がしっかりと仕事をすればこんなことには……ッ!」
「うむ。聞かなかったことにしておこうか」
そうですね。
いろはちゃんは なにもきいてませんでした !
暇になってしまったので改めて、私がここにいる理由と言うか経過と言うか。
そんなことをつらりつらりと思い返してみようかと思う。
なんだかダブルミーニングだけど、書類整理をやっていると思考が一部暇になるんですよねー。
そもそも私は運動部系のマネージャーとしてサッカー部への扉を叩いたのが始まりだ。
それも友人たちとの話題の成り行き上、という大して興味も無い事柄だったのだけれど。
ホラ、私可愛いから。自然と人目を集めちゃう性分に収まっているというか。
それに人付き合いも重ねるとなると、その場のノリには乗り遅れないわけにはいかないわけで。
そんなノリの成果でサッカー部に、体験入部と言う形で逃げ道を残して置いたのが功を奏した。
いやー、部費を徴収される、とかいう話になってきたら、流石に居座るのも気が気でないというか。
女子は払わなくても良い、とは葉山先輩は言っていたけれど、そこに胡坐を掻いていれば女子としての『可愛さ』が失われる。
図太さは生き汚さで女子力にも匹敵するけれど、女子力が高いからと言って愛されコーデに繋がるほど男女の機微は単純では無い。
例えるなら、宝塚は凄いけど男子にモテるか? と問われると微妙、みたいな話。
友達らは葉山先輩の『カッコ良さ』に目が眩んでマネージャーを志望していたのだが、私はそれに連れ立った程度だ。
確かに彼氏にすればステータスとしては最上級にも見えたけど、ああやって周囲に群がれば有象無象の一部として処理されて終わる。
私はそんな『その他大勢』みたいに見られるのは、ぶっちゃけ嫌だ。
少なくとも、本気で好きな人が出来たらキチンと見てもらいたい。
――と、少女漫画願望系のそういう本音もあるけども、女子としてのステータス向上、要するに
そもそも、高校生で個人間でのお金の遣り取りは流石にカンベンだし、サッカー部に居辛い空気を作ってくれたのは乗り気に船、っていうやつであった。あれ? なんか違う?
そしてサッカー部を自ら自主退部させていただき、その流れのままにまだ誰も目を付けていない筈の狙い目で価値高めな『火鉢先輩』を狙ってのスニーキングミッション。
まだご本人には出会ったことは無いですけどねー、実は部活紹介時、見ちゃったんですよねー。
――国際教養科のエリカ・ブランデッリ先輩が、どこかの国の言葉で話していることに、平然と受け応えていたところ。
メガネですけど、よく見ると実はカッコいい見た目をしてますし。
転校生だというのに生徒会役員として既に実力も発揮しているところとか、影の参謀っぽくてミステリアスな雰囲気ですし!
この先絶対値が上がる株を青田買いするみたいな感じで、こうして先行投資を働いておりますっ!
ふふふー、ただの運動系イケメンにキャーキャー言っているそこらの小娘とは狙いが違うのですよー?
これからの時代はインテリ系が来る!
火鉢先輩のファン第一号は他の何者でもない! この一色いろはのモノだぁーーー!
なんちゃって!
「そもそも、なんで彼は一週間も無断欠勤しているんですか。まあ、仕事の方はいろはちゃんが来てくれていたから問題ないとしても、せめて連絡くらい寄越すべきでしょう」
「会長が基本ゆるふわだからなぁ。其処は曖昧でもいいんじゃないかね?」
「……獣王院先輩は彼に甘すぎませんか?」
「先立って成果を上げてくれたから文句なんて言いようも無いだろう? そもそも、明確に給与が支払われる世の中の労働とは違って生徒会活動自体が学生生活の延長線上のボランティアみたいなものだし、個人の采配で執り成される活動をどうこう言うのは筋違いだろう」
「あれ、さっきと言ってること違いません?」
不二屋先輩が煙に巻かれ始めた頃、部屋の外からざわめき、とはまた違う多数の人の気配がする。
扉の所に集まってきているような、通り過ぎる他の生徒とは違う、明確にこの部屋に用事のありそうな人たちの気配だ。
そのことに疑問を持つまでもなく、部屋の扉はガラリと開け放たれた。
「――ありゃ、お邪魔でした?」
「――いいや。キミもこの部屋の一員なんだ、好きに使ったらいい」
そう、獣王院副会長がにやりと、
これでこの部屋のメガネ率が7割を超過したー! 数の暴力によりメガネは正義!
――じゃ、なくて!
ひ、ひひひ火鉢先輩じゃないですか本物じゃないですか心構え出来てませんよ今日来る予定だったんですか副会長ぉ!?
「っ、一週間の遅刻ですよ火鉢くん」
「あー、スマンね不二屋さん。ちょいと突貫且つ外せない個人的な用事が重なっちゃたモノで。
そんなことは良いから部屋使わせてもらうぜ」
「許可取る前に入ってきてるじゃないですか」
「副会長には許可貰ったし良いじゃないかよ」
そんな遣り取りをしつつ、引き連れてきたのはいつものブランデッリ先輩に、……国際教養科の雪ノ下先輩? あと名前を知らないけど巨乳系のピンク女子先輩。
え。なんですかそれ、ハーレムですか?
驚きの女子率の急上昇化に唖然としていると、火鉢先輩はようやくこちらに気づいた様子で首を傾げた。
「……ん? どちらさま?」
……あざといっ!
× × × × ×
久しぶりに生徒会室へと顔を出すと、相も変わらず辛辣な不二屋さんから遠回しに解雇申請宣言をされる。
この人、相変わらず俺のこと嫌い過ぎるでしょ。今の処、ツン:デレの比率は10:0のままだぞ。デレ要素が一切見当たらないとか、逆に新し過ぎて会話するのが楽しくなってきているオレガイル。
え? M男? 舐めんなドSだよ。嫌がる顔を見たいという欲求からくる選択だよ。
そんな新キャラとの会話もそこそこに、見慣れぬ顔が加わっていることに気づく俺。
何処のどちら様かと問いかけてみれば、一年生の『一色いろは』だとRPGならばおそらく太字で強調される。
なんでもこの一週間、俺の居なかった手間を埋める手伝いをしてくれていたとか、無駄に造り上げられた営業スマイルでキャハッ☆とウサミン星人張りに自己紹介。後輩らしいが、その譬えだと年齢詐称しているみたいで若干不穏だよな。いや、例えたの俺ですけどね。
そんな新キャラたちをオミットし、さて予定していた雪乃さんとの会談開始。
弊社を希望した動機は何ですか?と、圧迫面接張りの姿勢で問い質すのである。
「……極めて事務的に問うのね。こんな美少女に勧誘されたのだから、素直に入部しようとは思えないの?」
「自分で言うなよ……。美少女なら間に合ってますんで」
「自称しても問題は無いと思うのだけれど」
ミスドイツのロリ嫁と千葉№1妹系美少女と
とは口にしないけれど。
ねぇ知ってるぅ? 国家代表って国の看板として選別されるから、容姿を最大限度まで注視されるんだってぇ(豆柴。
そして八王子№1は戸塚。異論は認めない。
「おふざけはいいから、その腹に据えている暗躍計画を吐き出してから勧誘しろよ」
「(スルーされた……)暗躍と言うほどでも無いけれど……。というか、私にそんな風に楯突いて平気なのかしら?」
「……言っておくけど、切り札を切る時は前提と相手をしっかりと見据えろよ? 切ってから後悔しました、じゃ全部遅いぞ」
「口の利き方を改めないのなら、遠慮なく、」
「――ちなみに」
さっそく伏せていた
最低限度のコウショウ=ジツは把握しているのかこちらの返答をしっかりと待つ雪乃さんに、
「俺の手札はお前の切り札も無効化できる。ついでに言うと、こっちは切り札でも何でもない」
と、正直お前なんか眼中にねーんだよ、と見下しついでに鼻で嗤ってみた。
「……え」
掠れたような声で呆然とする雪乃さん。激昂しないだけマシかなー。
……同じ土俵に立つには、アンタじゃ役不足すぎるんだよ。誤訳的な意味でな。
「“俺に出来ること”を忘れたのか? 敵には容赦しないぞ。で、お前は俺の敵か?」
弱点突こうとしたら逆鱗でした、なんてのはどこぞのイケイケボディコン霊媒師の助手である煩悩高校生くらいで充分な話だろうに。
そんな内心を晒さぬように、外様の観覧者も居る中で迂闊な言葉は漏らさない。
が、俺が実際に何をやったのか、は学内限定でこの場の誰もが既に知ることだ。
俺の正体を知っているかどうかで覆される言質では無いので、空気は既に味方だったりする。
その証拠に、見学していた一色なんかが「うわぁ……」とドン引きの貌でこちらを見ていたりするし。
……き、傷ついてなんかいないんだからっ!
一週間前に脅迫の材料として晒してきたカードは、俺の権能ならば彼女の尊厳毎踏み潰すことも容易かったりする。
目測三寸で首の皮が繋がっている状態なのが彼女の現状なのだけど、それを理解していないのだろうかー(棒。
俺の宣言からしっかり2分ほど。
適当に三通りくらい、権力と権能と力技で変更された前提すらも覆せる手段を検討していると、ようやく観念したのかぐぬぬっていた彼女が口火を切る。
使わなくて良かったなー(棒。ほんとそうだよなー(便乗。
「……実は、貴方に護衛を務めてもらいたいのよ……」
――しどろもどろながらに語られた内容を掻い摘むと。
ゆきのん王国というスレッドを発見→王国民の崇拝具合に頭痛が痛くなる→あれ、こいつらその気になったらストーカーにも発展しそうじゃね……? →壁役に適当な男を彼氏候補として立たせよう。解決じゃないけど。
そんな話。
ツッコミ処しかなくって頭痛が痛くなる(過重表現。
「使えそうだったアレに頼もうと思ったら停学処分を食らうし、この一週間気が気じゃなかったわ……」
「アレってなんだよ」
「……葉山君よ」
ん? 幼馴染じゃなかったっけ?
アレ、其れ、で済ますのが真の幼馴染の遣り取りなのか……?(驚愕。
「え。葉山先輩、停学になってたんですか?」
「知り合いか」
「わたし、元々サッカー部のマネージャーとして入ろうとしてたんですよ。仮入部でしたけど」
横の方で話を聞いていたのか、一色が口を挟んで来た。
適度に返事をし、ほー、とあしらいつつ、気になることを反対側へと問いかける。
「で、なんでエリカは一切語らんのよ」
「ん。まあ話はある程度聞いていたしね。ユキノが自分で曝け出せるか、ってところを見たかったからちょっと口を挟まなかったの」
と、クラスメイトの人間力を測っていた発言でお茶を濁すブランデッリ。
何かこちらも腹に一物据えているような気がしないでもないが、今の所はスルー推奨(放置感。
俺の視線は、そのまま雪乃さんの隣のガハマさんへと向けられた。
「そっちも同じ理由か」
「あははー、うん。ヒッキーを勧誘する理屈は前から聞いていたし、責任の一端を担っているモノとしては何とも言いようがないと言いますか……」
不正が漏れた政治家みたいな言い訳で目を逸らすガハマさん。
つーか、お前らの部活って毎日スレ立て出来るくらいに暇なの?
「それで、どうかしら。入部して、くれるかしら?」
上目遣いで弱性ハニートラップを仕掛けてくる雪乃さん。
仕草は可愛さを引き立てるようではあるが、寸劇の裏側を知る者からすれば答えは自ずと導き出されるものである。
「だが断る」
ですよねー。という目で、一色が納得の表情を浮かべていた。
× × × × ×
「――え、人間性の向上? それがなんで部活動でスケットダンスごっこやる羽目になるんだよ。――は? 違う? 魚を与えるのではなく捕る方法を授ける? 何? ギャグで言ってんの? 水は低きに流れるモノだっていう理屈を知らんのかよ。労するよりも楽な方法を覚えたらすぐに流れるだろ、人の意志に期待を抱きすぎだぜ雪ノ下さん。――ほう、個人を変えてゆくことで世界を変える第一歩とな? だーかーらー“人”に期待しすぎだってーの。空気が違えば個人の資質なんて変動するっつうの。森を変えたければ全体視から始めろ、一本一本植林し直して間に合う筈がねーだろうがよ。つーか、そういうことならなんで生徒会に入らんかったん? ぶっちゃけ俺は校内環境の改善化を目指して手を出した口だけど。……おい、なんだよその顔は」
部の創設理由の追及から始まって、ユキノシタユキノの目標の一端を斬り払い、マシンガンみたいにツッコミがさく裂して最終的にぐうの音も出なくなって往く彼女を眺めながら、魔王様の真意の一部を垣間見る。
最初、極東の普通のハイスクールに通いだす、という情報を受けた時はどういう意図があったのかと悩んだモノだが、此処に来てようやくその心積りに触れられた気がする。
彼の目標が“権能を必要としない環境の変化”だと理解した時、流石は稀代の血統である、と感心を抱いた。
実家のメイドも日本人の血が4分の1は流れていると聞いたが、状況に対して己を変えることはともかく、個人の思う様に周囲を変えようという思考回路を抱いているようには思えない。八幡様の持つその思考回路は、『日本人だから』と理由付けるには余りにも異質だ。
ユキノシタもそういう思考を抱いているようだが、其処には彼女自身の『主観』が入り込み過ぎていて『現状』に対しての柔軟性が足りない。
それ以上に経験が足りないのだが、『誰かの下に就く』。今この場で喩えるならば生徒会の役員として参入することに繋がる、そういう『下積み』を計算も妥協も出来ない性格の彼女に、『他者へ変化を促すに足るほどの能力』が備わっているとはとてもではないが伺えなかった。
そもそも本来ならば『カンピオーネは』そういう努力をしようとはしない。
周囲の人間など、彼らにとっては『駒』が上等。悪ければ目にもつけられない程度の、蟻か豆かといった認識であるのだ。それを自ら調整して臨む方向へ矯正しようなどと、中国の羅濠教主くらいしか居やしないだろう。
より良き社会を作るのならば、取捨選択し従う者だけを自分の傘下にすればずっと話は早い。
それをせずに、件の『目標』を果たそうとする此のお方を、私たち魔術師は、少なくとも私は尊敬、否崇拝していると言っても過言では無い。
その権能を使えば魔術師にとっても不倶戴天のISを楽に制圧できる筈な彼がそれをしないのは、明確に慈悲を与えているのだ、と私たちの中では共通事項となっている。
一手で国を作り、二手目には現代の社会背景も覆せる彼なのだが、“それ”をしないことは彼自身の優しさが前提にあるからだ、と私たち魔術師は感服していた。
実はこちらとしては、彼がいつ世界征服に乗り出しても受諾する体制はバッチリだ。
スペックだけなら現存する他のカンピオーネを凌駕することも可能な資質に、何より権能が既に現社会を覆すほどの性能を秘めている。
想定しきれる『世界の総て』が敵対したとしても、八幡様ならば“そうなっても納得できる”だけの方であるのだ。少なくとも彼に付き従う総ての者は彼を支援し、今迄の世界よりもずっとより良き形を構築してくれるはずである。
「世の中モノを言うのは結局『大多数』だ。数の暴力、ってよく言うだろ。マイノリティが淘汰されるのは自然の摂理だが、少数派を強いられて虐げられることを良しとしない奴が『大多数』であることも事実なんだ。個々が踏ん張ったところで、弱者はより弱い弱者を獲物にする。生物としての本能だから、そこはそうそう変えようも無いんだよな。――いやだから、変革を促す部分を『個の意識』から『全体の意識』に
気付ば八幡様の事業の一端が彼自身の口から漏れ出ていた。
沈んでいたユキノシタに、副会長もまた聞き入り、その先を促している。
彼の語るそれは、実は耳触りの良い『みんな仲良く』みたいな話である。
それは『排斥される者』が居なければ、確かに理想的だと呼べる目標だ。
群れで生きることを第一に進化して来た農耕民族の思想ならば、敵が少なく実入りを多めに穫れる生活が出来るほうが、ずっと有益な事だろう。
だがその過程は、とてもではないが道程が程遠い。
人にはそれぞれ個がある。話の噛み合わない者同士では仲違いもあるだろうし、だからこそ理解し合える者同士で集い、『国』という枠決めが存在することも事実なのだ。
その垣根を破壊するということは、個々の諍いを、競争を、対立を、その果てにあるかもしれない共生を否定する、ということへ繋がる。
実現することは難しく、夢物語のようで、それこそ『選別』した方がずっと楽に出来上がる目標。それは即ち
それらを磨り合せるには、民を平等に、益を均等に、思想を平坦に、意志を正当に、全てを“
それを成功させるには、絶対的な『支配者』が必要なのだ。
つまり、八幡様こそがそこに相応しい人材である。と、『私たち』は解釈する。
それが漠然とした目標と理想だけで『みんな仲が良い方が良い』とか
だが、それを語るのは他ならぬ八幡様だ。
何処で学んできたのかは知らないが、前提と結果と過程を見据えて物事を推し進められるキャパシティを備えている、人としてのより良き形を形成している
当然のことながら、今もこうして雌伏の時を過ごしているそれもまた支配の為の一環なのだろう。
ならば、私はその意に沿って行動するまでだ。
「――つまり必要なのは学業じゃなくって『教育』そのものなんだよ。幼いうちに思想そのものの根幹をしっかりと兼ね備えていれば、そうそう簡単に『中庸だと思っている』人材になんかは
× × × × ×
「はい、というわけでー、今日から火鉢くんの下に就きます。雪ノ下雪乃さんと由比ヶ浜結衣さん一色いろはちゃんでーす、戦隊モノみたいだねぇー。みんな仲良くしてねぇー」
「イーっ」
「いーっ」
「い、いー」
「ち ょ っ と 待 て」
翌日の放課後の事である。
城廻会長に紹介されて、上から一色・ガハマ・雪乃さんが順繰りに戦闘員みたいなリアクションを取った。
あと雪乃さん、恥ずかしいならやらなければいいんじゃないの?
「戦隊モノと言うなら其処は戦闘員じゃなくてもっと別のリアクションがああいやそれはいいとして。
どういうことっすか城廻会長。そっちの一色はともかく、こっちのふたりは奉仕部とかいうニッチな部活をしていたのではなかったんすか?」
「誰が隙間産業よ……」
俺の言いたい意味をそれこそ隙間なく理解したらしい、雪乃さんがぼそりと呟いたが放置。
昨日のマシンガントークで俺はアンタらに付き合うつもりは無い、って懇切丁寧に適当交えて雪乃さんの掲げる目標を否定した上でお断り入れたよな? それがどうして『俺の下に就く』なんて話になって返ってくるのかが理解できない。好感度爆下げする勢いでdisってやったはずなのに。雪乃さんってドMなの? こんなん
あとnicheって壁の窪み的な意味合いと、後世に名を遺すって意味もあるから、業績不振な奉仕活動をやっていたこの人なら意味合い的には間違ってないんじゃないっすかね。
って、
「その活動が問題なんだよねぇー。ホラ、奉仕部にやってくる依頼ってぇ、個人のお悩みが中心じゃないー?」
「それは、そう聞いてますけど……」
「そうなると個人情報を問うわけにもいかないからぁ、奉仕部の活動を把握する材料にならないのー。そうするとぉ、火鉢くんが提案した『実績を為した部に相応の部費』っていう等価査定が行き届かないからぁ、奉仕部はそのまま廃部になっちゃうのよぉー」
「そうなると、私の様な才能ある人材をただ無為に野に放つことになってしまうわ。それに、」
「それに、雪ノ下さんはストーカーに悩んでいるんでしょー? こうやってたくさんの人たちで守ってあげるのが、一番安心できるんじゃないかなーってぇ」
ストーカー被害とまでは行ってませんよ。
その可能性がある、そういう新興宗教が出来上がっていた、というだけっす。
……あれ、これそっちの方が社会情勢的には問題だな。
あと雪乃さんの自己評価が天元突破しすぎて草生える。
つーか、己の首を己で締めてた感。
そもそも件の部活自体、同好会扱いな上に部員不足が第一に滞り過ぎてて部費を促される必要性も無いって言う……。
い、一応聞いておこう。既に詰んでいる空気もあるけど(震え。
「それでなんで俺の下なんすか。ぶっちゃけ書類整理は一通り終わってるんで、新しく出て来ない限りは庶務を増やすほど仕事は有りませんよ?」
「うん。だからねぇ、“そういう考え方”を持っている火鉢くんが一番適任かなぁ、ってみんなで話し合ったのぉ」
「……みんな?」
見渡してみれば、はい、はい、はい、はい、と俺以外の生徒会室内の全員が挙手していた。
ブランデッリも、である。
あれか、昨日ぶっちゃけすぎたのが尾を引いているってことか。
マ ジ か よorz。
「あとねぇ、生徒の悩みを聞くのも、生徒会長のおしごとだよねぇ」
「……異論は、ありませんが……」
「わたしねぇ、め●かちゃんみたいなすっごい生徒会長になるのが目標だったのぉ~」
そういうのはフィクションだけの話にしてくださいッ!
クソッ! 沢庵みたいな口調を素で使いやがってッッッ!!!
そんなわけで、生徒会傘下に奉仕部改め美少女戦闘員の配備が決定されたのであった……。
……あれぇ、俺いつの間に烏丸さんの英霊が乗り移ったんだろぉ……?
~一色いろは
フライング気味に参戦したあざとい系一年生。イメージではウサミンだけどそう喩えたらウサミン星人から何をされるかわかったモノじゃないぞ八幡。年齢詐称且つブラックだという噂は風評被害、イイネ?
~獣王院タクヤ
テンパ・メガネ・白衣が標準装備の生徒会副会長。先輩などと呼ばれているが、実際は留年生の為に2年生。女子
そうそう屑ばっかじゃないよ総武校計画の一環として他籍より拝借した戸塚の代わりの清涼剤。ボクっ子
某スクエニ系月刊誌が今の分厚さになった時に掲載された高河ゆんの主人公。其処からGの付くあっちに移籍したと思ったら打ち切りだよふざけんなよ
~不二屋ツグミ
ストレート・メガネ・美少年の礼儀正しい獣王院先輩信者。男子
清涼剤その2。コイツonlyでも違う漫画が始められそうな程度にはビバ少女漫画系男子所謂オトメン。愛称はペコちゃん
実は原作者さんが「この人絶対掲載誌間違えているよねと呼ばれ続けて既に10年」の人と結婚していたって最近知りました。クロニクル2巻、お待ちしております
~イケイケ系ボディコン霊媒師の助手
所謂元祖煩悩高校生。小竜姫との修業偏とか、覚えている子は果たしているのだろうか
??「極楽にイカせてあげるわ(裏声」
~エリカさん語る
なんかもう完全に洗脳決まっているようにしか見えない
八幡は責任取らなきゃなー(棒読み
~巨針蟻の小娘
理解不能。理解不能。
~沢庵
キーボードの娘のこと沢庵って言うの止めろよ!
お待たせしたのに話が進まなくてマジごめんなさい
逆に考えるんだ。これでようやくチュートリアルを語り終えたんだって
いつも長くてまことにスマンね
めんどくさい、とか、つまらない、とか云われるのも納得の出来だよ
でも八幡を超絶美化とか、自己投影しすぎとか云われるのはすごい不本意なの
意図してねーの
何処読んでるのおめー?って問い質したくなるの
4作品主人公混じった子なんだから、最低限度強化されるのは当たり前なの
ラノベキャラでも相応に成長できる土壌に晒されれば変化してゆくのは当然なの
そもそもこの作品始まった段階で弱者という立場に居続けられるような性能備えてねーの
加えて反面教師になるような先輩が途中参加すればキチンと学修するだけのスペックくらい原作でも備えていると解釈させてもらっているの
それで成長できなかったら本物の屑なの
そんなのは初期の球磨川先輩くらいで充分なの
あと自己投影してたらとっくの昔にどいつもこいつも廃人確定なの
と、既に読んでいないんだろうなぁ、という低評価下さった方へ愚痴をぶっこんで見ましたスンマセン
評価を低くつけるのは構わないけど、せめて読んでから推してくれ
俺をdisるのも原作をdisるのも構わない!せめてキチンと読んでからにしてくれ!
そんな魂の咆哮が漏れ出てしまいました
こう、なのは調で
星を砕くんですね、わかりかねます
次回、剣豪将軍を再び出したい
というかそろそろ八幡と邂逅させたい
つーか本編開始みたいな空気を醸したい
そんな次回。ではまた