やはり魔法科高校の魔王の青春は間違っているストラトス   作:おーり

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キーボードかぁ…
スマン混じった。ぶっちゃけ『けい●ん!』は二期を流し見しかしてないからよく覚えていなかった
原作が連載していた頃も、何が面白いのかよく分からなかった漫画だったし
言い訳っすねハイスンマセン
後書きだけど修正してきますは

あと『めぐりんの一存(略称』で>星を廻せ~ってやった部分
ライオンで掛けたんだけど完全スルーなのが哀愁を誘う
マクロスとかも覚えられていないのかはたまた俺の文章構成力がつまらないからなのか
…詳しく知りたくないので個人的にもスルー推奨で!(赤面

さて29話
タイトルの通り義輝の無双回にする予定。どぞ


義輝のぱーふぇくと小説教室

 

 

 「どういうことでおじゃるか雪ノ下女史ぃぃぃっ!?」

 

 

 生徒会室へ飛び込んで来たその男子生徒をちらりと流し見、知り合いじゃないことを確認するとラノベを読む作業へと舞い戻る。

 というか、入室の仕方からして完全に雪乃さんの客なのだろうから、俺にとっては意識に載せる意義も無く。

 泣きついて来たらしきその指ぬきグローブ黒マントバンダナぽっちゃり系メガネに嫌な顔を見せると、雪乃さんもまた手元の本を読む作業へと戻っていた。

 いや、相手してやれよ。

 

 

 「話を聞いてよゆきえもんぅぅぅううううっ!!」

 

 「不快な名称で呼ぶのは辞めなさい雑魚寝屋敷くん」

 

 

 再び絶叫した太め男子の青狸呼ばわりに、瞬間湯沸かし器の如く即沸点へ到達した雪乃さんは即座に反応して見せた。

 良かった。一見アレな外見であったけれどキチンと知り合いっぽい。ストーカーとかの(たぐい)の人物では無さそうで、普通に安心スルーの俺である。

 壁役みたいな扱いで身の上預かったけれど雪乃さんも一応は部下であるし、会わせらんねぇ人物(仮)でも絡んで来ていない以上は俺が対峙する必要性も無さそうなのである。

 

 ちなみに他の部下扱いである一色やガハマさんはブランデッリ指導の下、一学期の中間考査に向けての試験勉強真っ最中であった。

 少なくとも生徒会預かりである以上、成績の方も上位に居て貰わないと体面的に納まりが悪い。

 まあそう言う俺も大して自慢できる成績でもないのだけれど。国語以外は。

 

 さて。

 雪乃さんがtheなんとかとかいう彼の相手をしてくれている合間に、現状のおさらい。

 

 昨日結成された新規庶務員所謂戦闘員ABCだが、結成されたところでぶっちゃけ仕事が無い。

 会長はと言うと、某西尾系生徒会長の様に生徒のお悩み相談を請け負いたいご様子だが、本当に目安箱を用意されたとしてもこのご時世、実用的とは言い難い。

 要件をメールで済ませるこの時代、ユキガハコンビが奉仕部時代に使っていたという『千葉県横断お悩みメール』なるものを転用した方がずっとスマートに事は済むのだ。

 しかし、奉仕部時代と違って今の所生徒会には『相談を受け入れている』という実績が無く、お蔭で『相談』を送る方も『誰に自分の悩みを知られるかわかったものではない』という要らぬ心労を負うこととなるやもしれない。

 ゆきのん王国なる珍妙な宗教団体が設立された実績から鑑みるに、元奉仕部室に人が居なくなったことが判れば部活自体が解体されたことは労せずして知れ渡ることだろう。今日来たデ太目の彼の様に。

 そこから人材が生徒会へと流れていれば、大して宣伝する必要も無くとも客の入りは達成できそうな気もするが。

 

 さて。……どうやって新装開店するべきかなぁ……。

 と、そこまで考えたところで、長テーブルの隣をちゃっかり陣取っていた一色に、シャーペンの先で突っつかれる。

 読んでいたラノベを指で閉じかけて、視線だけを一色へと傾けた。

 

 

 「先輩ぃー、お話ししましょうよーぉ。勉強飽きましたぁー」

 

 

 どうやら集中力が切れたらしい。

 呆れた目を向けて、しかし一応の部下の言い分と言うことで読みかけのラノベをそのまま閉じる。丁度バールのようなものを携えた這い寄る銀髪アホ毛ヒロインが人外をkillってるところだったのだが、現実の社畜仕様まではkillってくれないご様子だ。

 

 

 「始まったばかりじゃなかったか? もう少し本気出せよ。お前ならやれるってイケルイケル」

 

 「うーわ、ここまで心に響かない応援初めてですよー。それと一応はもう15分くらいやってますから、気分一新にカワイイ後輩の事を愛でてくれてもイインデスヨ?」

 

 「何処の輿水だオマエハ」

 

 

 と、ドヤ顔上目遣いの一色にボクっ娘JCアイドルを幻視し、言の端が思わず片言に替わる。

 ウザカワイくて腹パンしてしまいそうになるな(暴論。

 

 

 「火鉢くん、一色さんといちゃついている暇があるのならこちらのお相手をお願いするわ」

 

 

 対処がひと段落ついたのか、バールのようなものを抱えて勇み奇声を上げ躍り出た世紀末系ゆきのんが相手取った(錯覚)太め……デブ男子の相手という御鉢をこちらへと(たらい)回しにしてきた。火鉢だから鉢回しってか、上手くねーな。

 

 

 「ザラキくん、こちら火鉢槇也くん。今私たち元奉仕部の身柄を預かっているのは彼だから、今後の方針は彼に一任されているわ」

 

 「さらりと即死呪文を唱えないでくださりますか雪ノ下女史よ。我、確かに剣豪将軍でおじゃるが『剣八』ではござらぬから」

 

 「……?」

 

 

 更木の言い分(ネタ)が理解できなかったのか、小首を傾げる雪乃さん。

 彼の言葉も気になったところだが、其れより何より突っ込むべき部分があるので、先に彼女へと(げん)を飛ばす。

 

 

 「おい、(てい)の良いこと言ってさらりと俺に全責任を押し付けんじゃねぇ。仕事をする以上その責任は全員に平等に分配するからな。勝手に一蓮托生にされた以上、只の中間管理職なんぞやってられるか」

 

 「あら、それは“結果を正しく導き出せる自信が無い”と、そういうことかしら?」

 

 「単騎暴走しそうな部下の首まで面倒みねぇ、って言ってんだよ」

 

 

 「あ?」「は?」とお互いにメンチを切り合う、ぼくらはとってもなかよし(棒読み。

 会話するようになってまだ短いが、ほんとこの娘一歩も引かねぇな。カンピオーネ相手にこの度胸はちょっと稀有なので、少しだけ楽しくなってきたオレガイタ。

 

 

 『……あの、由比ヶ浜先輩、雪ノ下先輩とせんぱいって仲悪いんですか?』

 

 『え、えーと、まあ、いろいろあるんだよあのふたりはー』

 

 『何故棒読み。……何か隠してません?』

 

 『あ、あはははー』

 

 

 背後で何やら姦しいが、其れより先にデブが口を開く。

 

 

 「モハハハハ! なるほど! お主が雪ノ下女史をかどわかした噂の(おのこ)か! 我こそは『剣豪将軍』材木座義輝! 新たなる盟主として名を馳せようならば、その実力を我に示して見せるがよいッ!」

 

 

 ――生徒会室を、しばしの静寂が包み込んだ。

 

 誰もが何と対応していいのか迷っているのだろう。

 その空気の中、おずおずと、静寂を壊さぬように口火を切ったのはブランデッリだった。

 

 

 「……あの、ユイ? 誰なの、あの人?」

 

 「えーと、一応、奉仕部のときの唯一の常連さん。名前は……ちゅーに?」

 

 「いえ、名乗ってましたよね。確か、けんごうなんちゃらって」

 

 

 一色がツッコミを入れたところで、暫く(ポカンと)様子を見ていた俺が椅子から立ち上がり、それの前に立った。

 

 

 「へぇ、まさかこんな普通の高校に二つ名持ちが居るとは。まあ野良の魔術師が居るのだし、そういう奴の1人や2人居ても可笑しくないか。魔力の流れが一見して判らないってことは、要するにかなりの実力者ってことか? なんだかワクワクして来たなぁ、ちょっと何が出来るか見せてくれよ」

 

 

 自分でも驚いたが、未知の相手(認識できなかった存在)を一目見てふつふつと好奇心が湧いてきていた。

 きっとこれこそがカンピオーネの本能のようなものなのだろう。これには流石の公爵やおにねーさんだって逆らえないのだろう、と予測できる。

 ココロオドルwkwkが俺を待ってる!

 

 

 「……あの、ちょっと火鉢くん?」

 

 「ああ、了解だ雪ノ下。コイツが望むのなら実力でも何でも見せてやるさ。お前もそのつもりで俺に話を振ったんだろ? いざ――」

 

 「落ち着きなさい!」

 

 「――にゅえいっ!?」

 

 

 突然脇腹を後ろからぁ!?

 痛くは無いが、抉る様な一撃にこそばゆくて変な声が出た俺である。何をするか。

 

 

 「何しやがる……!?」

 

 「とりあえず、彼は只の中二病よ。貴方が思う様な意味深な存在ではないわ」

 

 「……そなの?」

 

 「そうなの。一応、以前からのウチの常連よ」

 

 

 咄嗟に振り返り問い詰めたが、思いもよらぬ返事に俺呆然。

 そして再び振り返り、俺から漏れ出た殺気に充てられて武者震い(推測)が止まらない彼を眺めつつ、

 

 

 「…………え。じゃああの剣豪将軍とかって『二つ名』は……?」

 

 「少なくとも、そう呼ばれている姿は見たことないわよ?」

 

 「え……!?」

 

 

 と、酷く申し訳のない存在を発見した面持ちにさせられたという。どっとはらい。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 二つ名、とは。

 自らが名乗るモノでは無く、誰かに呼ばれ、自然と『そういう風』に形作られてゆく二度目につけられる名前。要するに『通り名』の事である。

 例えるならば常に赤色が付き纏う始末人・哀川潤の『人類最強の赤』とか、宇宙を又に駆ける某変身型金髪幼女の『金色の闇』、更には大召喚以降の関西復興の立役者・喧嘩屋少女上池田美奈歩の『浪花天使』に、警察組織に復讐心を向ける元秘密警察犬のボス・通称『黒い牙』と呼ばれた霊長類人狼科38歳(+30歳)匂いフェチのカリスマ親父・因幡聡明なんかが例に挙げられる。

 これらは所謂、“周りが勝手にそう呼んでいるのであって、多少アレでも本人にはまったく過失はない”という、逆に自ら名乗るのならば呼ぶ方も呼ばれる方も赤面モノの『そういう代物だ』というわけである。

 以上、プリティ☆ベルより抜粋・加筆の上で例文交えて解説をお送りいたしました。

 

 二次元を除けば、魔法科高校は『そういう奴ら』の巣窟だ。

 ドライアイスを銃弾代わりに打ち込む魔法を扱っていたので『アイシクルショット』などと呼ばれた元生徒会長とか、魔法はともかく行動と思想と圧倒的な支持率の無さと節々から滲み出る怖気と吐き気と邪悪さから『はいよるこんとん』と呼ばれた烏丸さんとか。『腐乱犬』と呼ばれる石島とか、『レオ様』とか呼ばれる須藤とか、『テニヌの王子様』と呼ばれる彩加とか。

 おい彩加は美少女だろうが。紛う事なき美少女だろうが。異論反論挟む余地のない完全無欠の美少女だろうが。誰だ『王子』なんて名付けた奴、ちょっと俺の前まで(ツラ)貸せや。

 話が逸れたが、石島や須藤はまあ渾名の類だとしても、その他は大抵実力に伴っての命名が多かった。

 そしてその名付ける道理には、畏怖や揶揄もまた携わることも。

 そんな『二つ名』を、まさか世間で普通に使っている奴がいるとは、正史編纂委員会でもわかるまい。

 

 ……というか、今の社会背景は結構魔法や魔術に寛容ではあるけれど、だからこそ『厨二病』に罹患するのは少ないと思っていたんだけどな。本物が存在すればこそ、そこに変質した憧憬を抱くような少年こそ減ってゆくんじゃないかなー、と。

 まあ、現実は二次元の方が間口が広く、下手に高質な魔法を作ればファンが『祭りを始める』みたいな現状だけど。烏丸さんの『螺子』とか。

 

 そんな知識を下敷きに、改めて更木義輝とかいう太めのデブもとい彼を見遣る。

 

 

 「モハハハハ! どうでおじゃるか我の新作は! パクリだというならば初めから二次創作へ手を伸ばせば良いだけのこと! 文の練習にもなるし、目を引く書き方も練習できけり! そしてファンの心をがっちりキャッチ! これぞまさに一挙両得の故実賞嘆!」

 

 

 わぁ、こんなに生き生きとした厨二病初めて見た。

 まあ、社会背景がどうこうっていうのは政治屋とかが意識的に仕向けたいから報道関係で弄った所謂『ヤラセ』の理屈だけどな。情報取得がテレビだけだった時代ならまだしも、今の世の中他にもソース(情報源)は存在する。世論操作は一方的に弄れるほど容易くはなっていない、ってことだ。

 そもそも、俺だってそういうものに憧れた少年時代はあったことだし。

 ……まあ俺の場合は周囲の否定が多数過ぎて早々に撤退したけどな。好きな漫画の話が出来た唯一の友人は中国に行っちゃったしー(闇笑。

 

 ところで最後の言い分コイツなんか可笑しくね? 故実って確か、『昔の法例や儀式の規定・慣例』のことを指すんじゃなかったっけ。それに家と付けて『こじ付け(故実家)』っていう単語が出来ているというトリビア。へぇ、へぇ。

 

 そんなことはともかく。

 彼改めデブが言うには、実力を見せろ、というのは要するにこちらからのお願いを聞け、という遠回しな依頼であったらしい。

 どこぞの頭巾被ったウサギでもないトトロに『お願い(はぁと』されるのは非情に苦痛だが、依頼者第一号ということで『抱えてきた紙の束』を流し読み。脳内BGMにすきすきす~と流れたのはきっと幻聴にちまいない。

 

 

 「うむ。奉仕部に人が居らなくて少々焦ったが、このような新たな読者層を新規開拓してくれるとは。雪ノ下女史もやるではないか! まあそのお相手がイケメンとは……? 一瞬焦燥に駆られたが、こうして我の依頼も聞き入ってくれているご様子であるしな! 水に流そうではないか!」

 

 「上から目線で居られる立場じゃないでしょう貴方は。あとさっきも言ったけれど誰もかどわかされてなんていないわ、人聞きの悪い」

 

 「イケメンに騙された女子(おなご)はみんなそういうでおじゃる! 我のクラスでも葉山葉山と……! キィィ!」

 

 

 絶好調だなぁコイツ。

 この社会で己を邁進できる感性はすげぇと思うが、全然羨ましくない。

 だって雪乃さん、養豚場に出荷される豚を見るような目でコイツの事を終始眺めているし。

 あと焦り過ぎ。どんだけ読み手の接点が無いんだよ。こういうのを書くならそういうサイトへ上げればよくね?

 

 

 「せんぱーい、もうちょっとゆっくり読んでくださいよー。ページめくるの早すぎですよぉ」

 

 「自分のペースで読めば良いだろ。後ろから覗き見るんじゃねーよ」

 

 「あー? 照れてますかぁ? 彼氏がされるみたいなことされたから恥ずかしがっちゃったんですかぁー? 先輩が良いなら、わたし……っ」

 

 「はいはい、あざといあざとい」

 

 

 暇を持て余した一色いろはに、俺と同じく依頼を熟す意味合いか更木の持ってきていた紙の束を読むために肩口から抗議された。

 年下または妹系カテゴリは身内で結構お腹いっぱいなので適当にあしらいつつ、読み終えた紙の束を順繰りにリレーする。

 出会ってまだ一日だが、一色(コイツ)の立ち位置がもう決定づけられたかのような。そんな錯覚。

 

 一見すればその仕草から、城廻会長みたいなパーソナルスペースの狭い子なのか、と間違えそうになるが、彼女の場合は恐らく天然では無く狙ってやっているタイプだ。

 目標(男子)センター(射程圏内)に入れてスイッチ(ぶりっ子)

 大体がコレで勘違いしてしまうのだろう。

 不二屋さんも落とされたクチか。ふっ、惰弱め。

 

 かと言って俺を同じように狙っても既に立ち位置は決定づけられた。

 残念だったな、貴様のちやほやしてもらいたい系の願望なんぞ、すべてまるっとお見通しだ!(仲間由●恵風。

 

 

 「さて。感想、いいか?」

 

 「む? おお! もう読んだのか! いいぞ、どんとこいだ!」

 

 

 読み終えたので残りの紙の束を一色へと渡し、更木へと向き直る。

 キャラクターぶれっぶれじゃねぇか。もう少し統一しろよ。

 

 

 「とりあえず、総合として100点満点中58点、悪くは無いんじゃないか?」

 

 「おお……おお! マジっすか!?」

 

 

 だから、キャラ……ああ、もういいや。

 が、それに待ったをかけたのは、他ならぬ雪乃さん。

 呆れたような目でこちらを見、

 

 

 「……火鉢くん、貴方、目が腐っているのではないの……? 正直、この人の小説って独り善がりで読み辛くて知識の偏りが酷くてどう見ても一般受けするようには見えなかったわよ?」

 

 

 と酷い評価をされており、今迄指摘されていたのであろう問題点を明確に突き付けられたのか、更木は今の一瞬で血反吐の沼に身を鎮めていた(幻覚。

 あと腐っているのは自前だ。メガネで隠れているのを知っているからと言って余計なヒントをこの部屋に持ち込まないでもらえますか?

 

 

 「一般の小説ならまあ無理だろうけどな。聞くに、ラノベ系の視点で読んで欲しいんだろ? それならそれで目線は変わるのさ。小説読むけどテレビ小説が嫌な奴とか、ドラマは視るけど原作嫌いな奴とか、視点は色々あるだろうが」

 

 「それは、そうだけど……」

 

 「そもそも、小説を好き好んで読む奴を一般とは言わねぇよ。Onlyで読み書きを楽しむ奴は、陰険か独善か斜に構えたコミュ障と相場が決まっているんだ」

 

 「それはそれで酷い偏見だと思うわ」

 

 

 思わず漏れた言の端にゆきのんの鋭いツッコミがさくれつした。

 こうかは いまひとつのようだ。

 

 

 「まあ待て。今から問題点と注意点とプラス評価をきっちりと説明するから」

 

 「ぐほ、よろしく、頼む……」

 

 

 既に満身創痍な気もするが、復活して来た更木が身を整える間、後ろ隣りの一色が紙の束をパラパラと捲る様子を眺める。

 今一つ身が入っていないような読み方を見て、やっぱり文を読むということは一般的じゃないんじゃないかな、とぼんやり思う。

 

 

 「さて。

  まず、キャラが甘い。二次創作なら原作キャラクターの把握は必須だし、そういう場合でないのならきっちりと自分の中で『こういうキャラクターだ』程度の方向性は整えるべきだ。読者に原作知識有りという前提で読ませるには、漫画の絵と作者の書くキャラが釣り合わないとどうしたって違和感が出る。二次創作の弊害つうか、自分なりのキャラクターを動かしたいんならオリジナルでやれと言わざるを得ないな」

 

 「ぐっはぁあ!?」

 

 「次に、場面の説明が追い付かない。台詞が唐突に出てくると誰が喋っているのかわからないことがあるし、次の段落で出てくる場面説明じゃやっぱり読み直しを強要されているみたいで読者も疲れる。目が滑る、と漫画なら言うのかもしれないけど、コレはラノベとはいえ小説、文章の(てい)だ。勢いを付けたかったら『(伸ばし棒)』や『(ビックリマーク)』に頼らずに『引き込ませる文体』に成るように下地を付けるのが第一だ。下準備も無くて商業作品作れるとか思ってんじゃねぇよ」

 

 「ほぼむぅっ!?」

 

 「そして何より視点変化が判りづらい。せめて一章の間は視点変更を入れないとか、主人公の視点ならそのまま推し進めるとか、何処かで明確な区切りを挟むとか、そういう心配りも無くって読んで欲しいとか、何様のつもりなの? 太字で書くとか顔文字入れるとか文列三つくらい使うとか、そういう変則技法が通用するのは売れている奴だけの特権だからな? ポエムだけでやれるのは前例持って面の皮が厚い売れる実績のあるやつだけだからな? 文字数だけで小説って呼ぶほど読者は優しくねーからな?」

 

 「ぐふぅっ!」

 

 「かと言って文字数ばかり増えるのもどうかと思うけど、最低限度は守れよ。書けるから書いた、じゃ読む方だってダレるんだよ。読者が欲している部分と作者が語りたい部分が的確に一致するはずが無いんだし、ある程度は独り善がりでも問題は無いけど、書く途上で説明の足りなさが浮き出るのは……どうかと思うぞ? いや、くどくど乳ばかり説明されるのもアレだけどさ、読者層って何処狙ってんの?って言いたくなるわ。一つの説明にどんだけ文章必要なんだよ。もっと省略しろよ。逆に略さなくていい方を略するのは……経験の無さだろうなぁ。いや、経験ないなら想像で補えば良いんだろうけど、そこも補完が足りないのはちょっと……。ネタ以外でキンクリされると逆に冷めるって」

 

 「ひぎぃっ!」

 

 「あとは、文章の幼稚さはまあそれも持ち味だ、って言えるかもしれないし、そういう風潮が蔓延っているから読む側もあんまり堅苦しいのは嫌だって言うのもあるだろうし、第一ライトなノベルだし。其処は突っ込まないけど。

  問題は主人公が何を考えているのかが判らないってことだな。主人公視点になっても、たまーに目的が見透せないのがやきもきするな。俺ツエーを先行しすぎてるんじゃね? 此処まで独り善がりが過ぎると、読者側からも感情移入し辛くって、只の自慢話を聞かされているみたいで読む側も離れるだろ。能力云々よりまずは性格の把握と確立から主軸を作れよ。この『ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた』っていう奴」

 

 「おぼろろろろろ……」

 

 

 既に死に体の更木は、床に崩れ落ちて痙攣していた。

 集まる視線に周囲を見渡せば、何故かこちらへ向けられる「う、わぁ……」という感じの貌、顔、貌……。

 

 生徒会室が静まり返る中、ビクンビクンと汚い痙攣を繰り返す彼に一つ頷き、

 

 

 「――で、このどこかからパクってきたっぽい設定についてなんだけど、」

 

 『もう止めて! 彼のライフはとっくにゼロ!』

 

 

 教室中からの唱和が俺の言葉を遮った。

 

 

 ――あと作者も限界です――

 

 

 誰だ今の。

 一瞬何処からか届いた電波な聲。まるで椎名何某の1コマに謎の落雷が落ちたかのような錯覚を覚えていると、それでも立ち上がる更木が目に入った。

 

 

 「ぷ、プラス査定を……」

 

 「ん?」

 

 「それでも、良い点はあったのだろう……? せめて、それをひと声聞くまでは、死なぬ……ッ」

 

 

 掠れた声で、震える身体で、床を這い上がり手を伸ばす彼に、その意気や良し、と頷く。

 

 

 「プリントアウトしてきたことかな」

 

 

 再び、室内が静寂で満ちた。

 

 

 「――…………へ?」

 

 「いや、だから。こうやって紙にして持ってきたこと?

  ぶっちゃけ、これで電子書籍とかだったらマイナス50点は行ってた」

 

 

 と、その説明にとうとう最後の気力すら絞り落ちた彼は、そのまま床へと撃沈した。

 「鬼ですか……」と震えた声で呟く一色が、やたらと印象に残った初仕事であった。

 

 ――いや、だって、電子書籍だとページを捲るのも流し読みしても時間がかかるし、そもそも電力の無駄にならないか?

 まあ、紙でも資源の無駄っぽかったけど。

 

 

 

     ×     ×     ×     ×     ×

 

 

 

 「火鉢殿ー! 火鉢師匠ぉー!」

 

 

 誰だよ統一しろよ。

 翌日、他のクラスとの体育の合同授業中、大手を振って縋り寄る材木座(覚えた。ドヤァ)に胡乱な目を向ける。

 

 先日は言葉のフルボッコを敢行してしまったのだが、再生した彼奴(きゃつ)は「また、読んでくれるか……?」と懲りてない発言で帰って行った。

 可笑しいな。あそこまで言われたら流石にメンタル鋼でも二度と起き上がれないと思うのだけど。むしろ似たような仕事したくないから二度と復活しないレベルを目標にフルスイング噛ましたんだけど。

 ――なんで元気なの、アイツ?

 

 

 「火鉢スース! 我と組んでくれぬか!? 悲しいことにペアを組んでくれる友が居らぬのだー!」

 

 「あ、そういうの間に合ってますんで。他のとこ行ってください」

 

 「友達が出来る道具を出してよ火鉢えもんぅぅぅ!」

 

 「うるっせぇよ。そういうのあったら俺が欲しいよ」

 

 

 なんだか石島みたいな奴だ。

 と、無駄な強度に辟易しつつ、うちのクラスもいつの間にか俺があぶれたらしいので、渋々ペアを組む。

 こっちじゃ友人を作るつもりなんてほぼ無かったのだが、ひょっとしたらコイツがこの学校での同性の友人第一号になるのかもしれない。

 ……なんか()だな。

 

 

 「ところでお前声だけは良いな。アレか? ひょっとしてニコニコする動画サイトとかで歌い手とかやってんの?」

 

 「やっておらぬわ! アレも最低限容姿が良くなければ売れぬではないか! 誰だ! 豚が飛んだとかコメントしたのは!?」

 

 「声だけならイケメンなんだけどなあ。まるでデスゲームなMMOに放り込まれて最初のボスのラストアタック取りに行って無駄死にする噛ませキャラみたいで」

 

 「ディア●ルはんのことかぁぁぁあああ!!?」

 

 

 その台詞だとお前がもやっとボールになっちゃうじゃんかよ。

 

 ――この後メチャクチャ準備運動した。

 

 





~バールのようなものを(略
 烏丸「いつもにこにこあなたの隣に這い寄る混沌! にゃるらと(略


~端々から滲み出る八幡の本音
 途中デブって言っちゃったよね


~覚醒八幡
 喧嘩を売られたら買い取ります
 多分バイ●王とかよりも高価買取


~上池田美奈歩
 「夢神中学1年4組!」
 当時に暴力団をたった1人で壊滅させたのは記憶に新しいそうで


~因幡聡明
 黒い牙(そうめい)の活躍は絶賛発売中のキューティクル探偵因幡最新刊にも載ってるよ!


~一色いろは
 キャラが可笑しい?仕様です
 あざとさが足りない?そんなことねーよ
 ガチ狙いじゃないですかやだー。全ては鈍感を装っている火鉢って奴の所為なんだ


~58点(実質8点)
 客観的に見た点数。プラス点? 使われたネタが面白くて不覚にも笑っちゃったからだそーよ?


~突然落雷が落ちる1コマ
 椎名は3流から脱せない、と発言した横島がだな…


~メチャクチャ準備運動した
 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
 「ほぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
 大気が震え、大地が鳴動し、荒ぶる二人の気に充てられた岩盤が捲れて次々と浮かび上がる……!
 片や黄金色に輝きを発し、片や赤銅色の闘気を発し、両者ともにそれらが焔の様に立ち上がる様を、総ての者たちが幻視していた。次の瞬間!
 「ずぁっ!」
 咆哮に似た剣気のそれが、叩き付けられるような錯覚と共に太めの男子を弾き飛ばす!
 だがそれを安穏と受け取る彼では無い! 腕を交差させ、上からの衝撃を受け止める姿勢になり、その焔のような気が倍以上に膨れ上がったッッッ!!!
 「がぁッ!」
 弾き返された!
 そう認識した次の間には、太めの彼が重機のように突貫してくる!
 「火ァッ!」
 「邪ァッ!」
 二者の放ち合う気がぶつかり合い! 互いの熱気と質量と膂圧が! 同位の放射を円状に放ち合い! 周囲の総てを薙ぎ払って逝くッ!
 「「ウォォォォォォォォ……ッッッ!」」
 競合し合う『気』に耐えられる者など居ない! ただ、総ての者は大地へ這い蹲り、二つの嵐が過ぎ去るのを見届けるのみ……っ!
 「「ハァッ!!!」」
 そして、ついにその瞬間は訪れるッ!
 同質量の『熱』となったその衝撃波は、一瞬の邂逅の後に爆発に似た暴虐を噴き荒ばせ、二者以外の者を全て排除した!
 「…………!」
 「…………!」
 ジリ、ジリ、と総てが排他された男たちの、否、漢たちの高揚は止まる事を知らぬ……!
 機を狙う彼らに、天啓の様な其れが遂に齎された……ッ!

 厚木「――お前ら、体育をしろ」



と、いうわけでお待たせしました
マオガイルですよー
え?やだな、泣いてないですよ?ちょっとだけ客観的に言われただけですし、言ってること間違ってないですもんねw
アハハ(乾いた声

他の人の作品ではそもそも出番が無かったりすることが多い材木座くんですが、この作品ではとりあえずこんな立ち位置です
作中のアレを本当に書いたかどうかは、まあ別の話にしておきましょう。きっと誰も得をしないので。代弁とかそういうパラレルな理屈を通す。通すったら通す!
フルボッコさせてごめんよ…
でも俺も痛かったから御相子だよね!(暴論
まったく…、ウチの八幡は触れるモノ皆ナイフみたいに傷つけやがるゼ(責任転嫁

ちなみに後書き部分は大体がお遊びですので、本気にしないように。イイネ?

次回は川なんとかさんを出したい
では

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