Sideセイヤ
帝国の暗殺者刺客からサバティーニさん達を守って数日が経ち、俺は劇団を脱退する事を決めた。
アムーリャさんやナタリアさんには引き留められたのだが自分が此処に居続けていたら劇団の皆に迷惑がかかるのではないかと言い聞かせて後にした。
そして
「このエリアか」
立ち寄ったある村でとある帝国貴族に嵌められてその冤罪で捕まってしまった娘が数日前に当の貴族が亡くなった事で釈放される筈であるのに未だに帰って来ないという話を耳にしたので俺は詳しく話をその娘の両親から聞いて依頼を受け持つ事にした。
「この辺りは危険種も多いが…」
村からのルートを辿って件の少女を探し回ってみたものの一向に見つけ出せずにいた。
「真逆!?…」
俺は嫌な予感を感じてそういえばこの先に洞窟があったなと思い出して急いで向かった。
「やはり侵入者を拒む罠が!…こんなもの数日前迄はなかった筈…」
洞窟の前まで向かうと見覚えの無いトラップが仕掛けられていた。
俺は即座にトラップを搔い潜り洞窟の奥へと足を踏み入れた瞬間…
ドゴン!洞窟の壁が勢い良く崩落したかの様な音が響き渡ってきた。
「ああ!?…」
「間に合え!」
見ると件の少女が劇団の時にも居たあの大男に襲われそうになっていた。
俺は即座に駆け出してなんとか少女を抱え込んで救出する事に成功する。
「大丈夫か?」
「え、ええ!…」
「早く帰るといい!君の両親が待っている」
「あ、ありがとうございます!」
少女の無事を確認し脱出したのを確認して俺は大男に向き直る。
「標的が!?…て、テメエは!…」
「よう、また会うとはな大男」
奴も俺に気が付いて驚く。
「オイテメエ…標的とか言ったようだがあの少女に何をしようとしていたあ?!」
「そ、そんなもん決まってんだろ!あの女は犯罪者だからこの俺様が処分してやる所だったんだよ!」
大男はそう答える。
だが
「ふざけるなあ!あの子は冤罪の濡れ衣を被せられたむしろ被害者だったんだよ!そんな事もロクに知ろうとせずにテメエはその手にかけようとしていたのかあ!?」
「!?嘘だな…お、俺様を騙そうとしたってそうはいかないぞ!」
「聞く耳持たないか…」
俺の怒号に大男は僅かばかり動揺するがむしろ俺の事を悪者にしてこようとする。
只腐れ切ったお上に命令されるがままに罪無き少女の命を奪おうとしていたのだ。
「テメエにはサバティーニ団員の件もある。
きっちりその罪も償ってもらおうか!」
「ば、馬鹿にしやがってえー!」
逆切レを起こした大男は此方へ突っ込んでくる。
あのスーツの能力が厄介だ。
ここは北斗の奥義ではなく南斗聖拳の奥義で対応するしかないな。
「喰らえー!」
「とああーー!」
大男と俺の拳が交差する。
「へへっ、どうだ?!…!?がああああー!?…」
技が決まったと大男は確信したようだがそれは大きな間違いであった。
男の両腕から鮮血が勢い良く溢れ出し激痛に悶える。
「南斗鳳凰拳奥義<極星十字拳>!!あの人達から学んだ奥義の数々、テメエ如きに見切れる程甘くはないぞ!」
「く、糞っ!?…コレならどうだ?!」
奴は悪足掻きに土壁を生成して突っ込んでくる。
「ほーわぁっったったあー!」
「ぐああああ!?」
俺はカウンターで拳の連撃を土壁を貫通して喰らわせた。
「うぐっ!?…」
「北斗神拳奥義<有情猛翔波>…本当なら更に重い一撃を与えてやりたい所だがテメエも腐敗した帝国の被害者の一人であるという事には違い無い…残り少ない命で犯してきた罪と向き合うが良い…」
「う…親父…コルネリア…皆……」
拳を喰らってボロボロになった大男に俺はそう言い放ち洞窟を後にした。
Sideガイ
「俺は…」
セイヤの拳の連撃でボロボロになった大男、ガイは涙を流す。
本当の親の顔も知らぬまま、ゴズキに拾われ暗殺部隊の一員として育てられ彼を本当の父親の様に慕って仕える国の為にも言われるがままに己の拳を振るってきた。
仕える国そのものが実はかなり悪質であった事になど一切気付けずにただ反乱分子だから…親父に命令されたからという理由だけで多くの命を奪っていた事を今更ながら深く懺悔した。
今回はサバティーニ劇団襲撃の際にあった謎の青年と偶然鉢合わせし再び戦うもあっさり返り討ちを喰らってこのザマである…只命令されたままに戦っていた自分と真に守るべきものの為に戦っている青年とではその拳の重さが違ったのだ。
最後にそんな彼に対し罪無き少女の命を奪い更に己が罪を重ねようとしていた自分を止めてくれてありがとうと謝罪と感謝の言葉を呟きながら静かにその命の散らせたのだった。
クロメ組強化する?
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強化しない
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強化する(門下生の奥義等で)