駒王学園。
それは現在は共学となっている元女子校で、幼稚園〜大学までの一貫校でもある進学校。
そして、聖書における天使、堕天使に並ぶ三大勢力、悪魔の名門グレモリーの所有物だ。
そんな学園のオカルト研究部に一本の電話が入ったことで、物語は動き出す。
電話の呼び出し音が静謐な空間に鳴り響く。
やがて、シャワーから出た赤髪の女が慣れた様子で受話器を持ち上げ耳に当てる。
「はい、こちらオカルト研究部…」
「あら久しぶりね」
「…っ!?」
電話口から聞こえてくるのは落ち着きのある優しい声色。
しかし、電話をとった生徒はその声の主を察した瞬間から冷や汗が止まらなかった。
「お…お久しぶりです…先輩…」
普段の優雅なお姉様と言った様子からは打って変わり、まるで相手の機嫌を伺うような、様子を探るような声へと変わる。
「そう緊張しなくてもいいのよ。今回電話したのは本当にちょっとしたことなんだから」
「えっ…えぇ…それで、ご用件というのは…」
心持ち、声が震えているような気がするが、当の本人はそんなことを気にしていられる程の精神的余裕は無い。
現に、いつものようにお茶を淹れてくれる彼女の親友は心配そうに彼女を見ていた。
やがて十分か、十五分か、或いはもっと長かったかもしれない時間を世間話と近況の知らせ合いで過ごした彼女は実年齢よりも若干老けて見える。
「それで…先輩のご用件というのは以上でよろしいでしょうか…?」
「ええまぁ、そうね」
ああやっと終わる…そう思った矢先、特大の爆弾が落とされた。
「それじゃ、そっち行った時寄らせてもらうから。居候と一緒に」
「えっちょ、先輩!?」
プツッ…ツー…ツー…ツー…。
「…………………」
受話器をもった腕から力が抜ける。
放心。
赤髪の美少女は真っ白になって立ち尽くしている。
「どっ…どうしたんですの!?リアス!?」
その様子にただなるぬものを感じたのか、黒髪の美女が慌てた様子で彼女に近づく。
リアスと呼ばれた少女はぷるぷると子羊のように震え、或いは油を差し忘れた機械のようにギギギ…とそちらを向く。
「朱乃……」
「リアス!!一体何があったの!?」
朱乃と呼ばれた少女の普段の敬語が鳴りをひそめる。
よほど怖い思いをしたのだろうと分かったからだ。
「先輩が…」
「先輩?在校生で私達より上の学年なんて…」
「違うのよ。在学生じゃなくて卒業生。外部受験のね」
リアスはフルフルと首を横に振りつつそう答える。
「卒ぎょっ…」
リアスの様子、先輩、卒業生、そして外部受験……。
いくつかのピースが答えを導く。
「まさか…」
そして、答えを知った朱乃もまたサッと顔色を変える。
「ええ、ちょっと立ち寄るって…」
「一体…どなたがですの…?」
動悸が止まらない。
頼む。人違いであって欲しい。
そんな淡い期待を込めて朱乃はリアスの次の言葉を待つ。
が、しかし…。
「ゆりね先輩が」
瞬間、旧校舎に悲鳴がこだました。