時を遡ること数時間前、ここ駒王町には新たな二人の客が来ていた。
「この町も久しぶりね」
「イリナの生まれ故郷か…何事もなく聖剣が見つかれば良いのだが」
方や栗毛のツインテール。
方や青髪に緑のメッシュという特徴的な外見。
更には双方とも修道服に身を包んでいることから修道女…シスターであることが分かる。
「聖剣の回収任務…無事こなさねば」
そして現在。
二人は地べたに力無く座り、物乞いの真似事をする羽目になってしまっていた。
「何がどうしてこんなことに…」
「アンタがそんな絵にポンとお金出しちゃうから…」
「いやしかし、ペトロ様のイコンを買うか買わないかで言えば買うだろう。信徒的に」
「アンタねぇ…!!」
一触即発。
そもそもお互いに宗派の違いから嫌悪感もあるのも手伝って、空気は悪くなるばかり。
両者とも、頭ではこんな公の場で暴れるわけにはいかないことがわかってはいても、若さゆえかそれとも空腹に耐えかねてか、徐々に互いの言葉に含まれるトゲは増える一方。
不毛な喧嘩がいよいよ持って佳境を迎えそうになったそんな時だった。
「貴女達…見ない顔だけど、こんなとこでどうしたの?」
ハッとなって顔を上げると、ゴシックロリータの服装に加え、片目に医療用眼帯をつけた自分達と同じか、少し歳上くらいの女性がこちらを見ていた。
「いっ、いえ…お構いなく…」
流石に見苦しい喧嘩を見られたのに恥じたのか、ツインテールの方が遠慮がちにそういう。
と、同時に…。
ぐううぅぅぅぅ………!!
特大の腹の虫が二つほど鳴り出し、恥じらいからか咄嗟に腹部を押さえる。
女性は何かを察したようにアゴに手を当てる。
「お腹が空いてるのね?」
くすりと笑う女性に、何やら顔を赤くする。
「実は、ハイ…恥ずかしながら…」
「うむ…良ければ何か食事を恵んでもらえると嬉しい」
この上更に恥の上塗りをするのは重々承知のうえで、敢えてそう言う二人。
「そう…それじゃあついて来て」
そうして案内されたのは某有名ファミレスチェーン店。
二人は我を忘れたように出されたメニューを食らい、何とかひとごこちつく。
「助かった。感謝する」
「ありがとうございました」
食後のアイスコーヒーをちゅーちゅーと飲みつつ、感謝の意を伝える二人。
「別にいいわよ。困った時はお互い様でしょ?えぇと…なんて呼べばいいのかしら?」
二人は自己紹介していなかったことを思い出す。
「私はゼノヴィア」
「紫藤イリナです。イリナって呼んでください」
「そう…でもシスターだなんて珍しいわね。駒王町にはどうして来たの?」
「うむ。我々は聖剣を…」
「あぁ〜っと!!仕事!!仕事です!!」
満腹になってすっかり上機嫌になったからか、うっかり本来の目的を口走りそうになったゼノヴィアの口をもがっと塞ぐ。
「ふぅん…そう」
さして興味もなさそうな反応にひとまず安堵するイリナ。
「そ、それで…お姉さんはなんてお名前なんですか?」
「私?あ〜、言ってなかったわね」
そう言えば、と軽い感じでそう返す女性は
「私は花園ゆりねっていうの。よろしくね」
そう言って、微笑みながらへ?と困惑するイリナに片手を差し出したのだった。