隣室より謎の悲鳴が聞こえなくなってすぐのこと。
「ふぅ…待たせたわね。あ、コレお土産のヘビ肉よ」
「あ、ありがとうございます…」
緑の鱗に、まるでついさっき調達したかのような新鮮さ、温かさ。
少し肉や骨にこびり付いている血がなんとも生々しい。
そういえば先ほど一緒に隣の空き教室に行った邪神ちゃんとやらがまだ来ていないが、それについて質問できるほどリアス達は肝が据わってはいなかった。
「それじゃ、朱乃とリアスは知ってるだろうけど改めて」
ゆりねは自己紹介のため他部員達の方へ向き直る。
視線が向いた刹那、一瞬全員がビクッ…となったのはきっと気のせいだろう。
「私は花園ゆりね。一応あなた達の先輩…ってことになるわね。今はお茶の水にあるキメラ大学に通っているわ。短い間だけどよろしく」
ん?今日で帰るんじゃないのか?
オカルト研究部員全員の頭上に『?』が浮かぶ。
「あの…先輩…」
「何かしら?」
おずおずと言った様子でリアスは質問をする。
「ゆりね先輩はその…この駒王町にしばらく滞在なさるんですか?」
「ええ。幸い大学の単位は足りているし、何より
ゆりねは持参していた肩掛けカバンをゴソゴソとすると、その中から一つの封筒を取り出す。
血のような赤い蜜蝋によって封をされているのは真っ黒な封筒。
差出人の名は…サーゼクス・ルシファー。
バアル家から受け継いだ『滅びの力』を持つことで知られ、それによる高い実力を持ち、家族思いで知られるものの、同時にシスコン気味で嫁であるグレイフィアの尻に敷かれていると言う四大魔王の一人だ。
「お、お兄様が…」
「えぇ。念のため肉壁んっんん…邪神ちゃんを連れてきたはいいけど…開幕粗相をしたからね…」
「その…大丈夫なんですか?」
「うん?ああ、邪神ちゃんのこと?なら問題無いわよ。一時間もあれば戻るから」
戻る?とゆりねを除く一同は首をひねる。
どう考えても彼女は人間ではないためそう言う類の神器では無く彼女自身の能力か。いずれにせよ普段のリアスならば羨ましいと感じるだろう。
とは言え、そんなことを思う暇など今の彼女には無く……。
「な…なぜ兄が先輩に…」
「知らないわよ。書いてあったのは学園へ赴いて妹の手助けをしてやってほしいってことだけ。細かい説明やらもありやしない。相変わらず勝手なヤツよね…っと、身内の前でするような話じゃないわね。ごめんなさい」
「いえ…」
リアスと朱乃の顔色が若干悪いのは気のせいだろうか。
とは言え、本当に様子見するだけならば問題はない、
気を取り直してリアスは質問する。
「そ、それで先輩の宿泊先などは決まって?」
「ええ。駅前のホテルに部屋をとっているから、心配しなくても大丈夫よ」
「そ…そうですか…」
一段と落ち着きがなくなるリアスだが…
「…で、私がいなくなった後、はぐれ悪魔の出現具合はどうなったの?」
ズバッと切り出される本題。
しかし、言えない。
ゆりねがこの町を離れてから、はぐれ悪魔が露骨に増えていたなんて。
(とは言え、ゆりねの強さが規格外というのは置いておいて)リアスにはとても言えなかった。
シリアス展開にはたぶんならない。