反撃の転生者―エレン―   作:KEIWORD

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今回は一字一句しっかりと読んで頂きたいです。

面倒かもですがなかなか大事なので。


10―何か―

 

 

 

どこからか、待機任務の兵士らの耳には奪還作戦の話が届いていた。

そして当然、文句の無い者などほとんど皆無であり、不満の声があちこちから上がる。

 

「トロスト区奪還作戦だと!?」

 

「これからか!?」

 

「嘘だろ!? 扉に空いた穴を塞ぐ技術なんか無いのに・・・!?」

 

「上は何考えてんだ!?もうトロスト区に入ったって無駄死にだろ!? 穴を塞げない以上ローゼの扉を死守するしかないのに・・・」

 

「チクショウ・・・ そんなに手柄が欲しいのかよ・・・」

 

そしてその不満は当然、104期訓練兵団内にもあった。

 

「またあの地獄に!?

いやだ!!死にたくねえ!!家族に会わせてくれ!!」

 

「ダズ!! 声が大きいぞ!!」

 

ダズが周りに充分聞こえる大きさで不満をもらすと、それを聞こえなかったふりにはできない駐屯兵団の上官がツカツカと兵士たちの間をかき分けて進んでくる。

 

「聞こえたぞそこのお前!!

任務を放棄する気か!?」

 

「ええそうです!この無意味な集団自殺にはなんの価値もありません。奪還作戦なんて成功する訳が無い!!」

 

「貴様人類を・・・規律をなんだと思ってるんだ!!私にはお前をここで死刑にする権限があるんだぞ!!」

 

「願ったり叶ったりですよ・・・!!巨人に食い殺されるより何百倍もいいことか・・・」

 

「!?」

 

 

 

 

そしてそのやりとりは、少し離れたところまで届いていた。

 

「おい・・・聞いたか・・・?」

 

「ああ この状況なら無理もねえよ。死ねって言われてる様なもんだからな」

 

「実際そうじゃない・・・ ねえ、こっちにも反逆者でないかな・・・ そしたら便乗して逃げ出せるのに・・・」

 

「私だって死に方ぐらい選びたい・・・」

 

「おい!」

 

つぶやく程度の声で不満をもらした女子兵士に駐屯兵団の黒髪の男が女子兵士に視線を合わせる。

 

「い、今のは冗談で・・・ その・・・」

 

「やれ!できるだけ派手にやれ!

私は・・・娘に会いにいく・・・ 人類最後の時を娘と過ごす!」

 

「え・・・?」

 

 

 

 

 

 

―――なんなんだろこの頭の中に出てきたやつ。誰かの記憶?思いか?

 

エレンは指揮に向かうピクシスの後ろを歩いていた。

少し前までは無かったが、今は何故か頭の中にある「何か」が何なのかと考えていたエレンに、ピクシスが話しかける。

 

「かつて巨人の現れる前、人類は種族や考えの違う者同士で果の無い争いを続けていたと言われている。そして誰か言ったそうな。もし人間以外に強大な敵が現れたら、人類は争いをやめ、一丸となって戦うだろう、と。お主はどう思うかの?」

 

「そんな言い伝えかあるんですか。それはまた随分と呑気な話ですね。アクビが出ます」

 

それを聞いたピクシスはホッホッホと笑い声を上げる。

 

「お主もわしと同じで品性がねじ曲がっておるの」

 

「はあ・・・ その強大な敵にここまで追い詰められた今でも、1つになったとは言い難い状況ですので」

 

「ああ・・・そろそろ一つにならんと戦うことも難しいじゃろうてな。

・・・無駄話はここまでじゃ。お主はそこに立っとれ」

 

「ハッ」

 

ピクシスは壁の下に向かい、息を吸い込む。

 

「注もおおおおおおおく!!」

 

駐屯兵団最高司令のよく通る声は、ザワザワとどよめいていた下にいた兵士たちの視線を一瞬で集めた。

 

「これよりトロスト区奪還作戦について説明する!!! この作戦の目的は破壊された扉の穴を塞ぐ!!ことである!!!」

 

 

「ふ、塞ぐって一体・・・」

 

「どうやって?」

 

縦8mの穴を塞ぐ技術などないことは、防衛戦に出陣した兵士なら誰もが知っているので、そんな声が聞こえるのは当然のことだった。

 

「穴を塞ぐ手段だが!!まず彼から紹介しよう!!訓練兵団所属、エレン・イェーガーじゃ!」

 

横で敬礼をするエレンにピクシスは目を向ける。

 

「彼は我々が極秘に研究してきた人体巨人化生体実験の成功者である!彼は巨人の体を精製し意のままに操ることが可能である!この奪還作戦は、彼が巨人になり、岩を持ち上げ、穴を塞ぐことである!!!」

 

 

「つ、ついに人類は巨人を支配したのか・・・?」

 

 

「そして、諸君らにはトロスト区内の巨人を街の隅におびき寄せてもらう。戦う必要はない!おびき寄せるだけじゃ

!」

 

 

「そんな訳の分らん作戦に命をかけてたまるか!!俺たちは使い捨ての刃じゃねえんだぞ!」

 

「人間兵器だとよ」

 

「そんなまやかし真に受けるやつが何割いるって見積もってんだろうな・・・・・・馬鹿にしやがって」

 

 

列を成していた兵士の一部が、後ろを向いて歩き出した。それを見て、また多くの者が後ろを向き、それが連鎖していく。

 

「ま、まずいぞ・・・ このままじゃ秩序が無くなる・・・」

 

(ま。まずい・・・)

 

キッツは秩序が崩れていくことを感じ、自分の手を汚すことを決意し、刃を抜く。

 

「覚悟はいいな反逆者ども!!ここでたたっ斬る!!」

 

「わしが命ずる!!!」

 

「!?」

 

壁の下の混乱を読み取ったピクシスが叫ぶ。後ろを向いて歩いていた者も、刃を抜いていた者も、壁の上に注目する。

 

「わしが許可しよう!この場から立ち去る者の罪を免除する!!」

 

「な!?」

 

「司令は何を・・・」

 

思っても見なかった司令の言葉に驚愕する兵士たち。そして、免罪符を得た兵士らは再び背を向けて歩き出す。

ピクシスは淡々と続ける。

 

「一度巨人の恐怖を味わった者は二度と巨人には立ち向かえん!巨人の恐ろしさを味わった者はここから去るがいい!!」

 

「・・・」

 

兵士たちの頭には目の前で仲間が巨人に食われれている光景が浮かんでいた。その中で仲間の復讐を果たそうなどと思う兵士はほとんどいなかった。

 

「そして!家族や恋人、愛する者にも巨人の恐怖を味わわせたい者もここから去るがいい!!」

 

「っ!?」

 

壁に背を向けて歩いていた兵士たちは足を止めた。その脳裏には自分の妻や妹、子供が巨人に襲われ、泣き叫ぶ光景があった。

 

「それだけは・・・ それだけはダメだ・・・ 娘は私の・・・ 最後の希望なのだから・・・」

 

壁の下では必死に運命と戦う仲間と兵士が葛藤している中で、エレンは責任を強く感じていた。

 

―――巨人化つったってオレには出来るか分からない。なったのは1度だけだしその記憶も定かじゃない。

ただ唯一、この街が陥落してから、どこから来たか分からない「何か」がしっかりと頭の中にはめ込まれてる。その記憶がオレに語りかけてくる。使命を全うせよと。仲間の無念を果たせと。これは一体何なんだ・・・ 誰のどこの記憶なんだ・・・

まあその記憶の言うには自傷行為で巨人になれるらしいけど、確証はまだ無い。やるしかねえが。

・・・とにかくいくら考えたってオレのやらなければならないことは決まってる。この街を奪還する。

それはオレのこの手に全て託されている。オレは皆の希望にならないといけないんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なんとか巨人の大部分を街の済に引き寄せることに成功しましたが、なるべく戦闘を避けたにも関わらず、約2割の兵を失いました・・・」

 

ピクシスに報告する兵士の声は弱々しく、仲間の戦死が辛いことが言葉からも表情からも読み取れた。

 

「兵は失ったのではないぞ。勝手に死んだのでもない。わしの命により死なせたのじゃ。わしは人類が生き長らえる為なら、殺戮者と呼ばれよう」

 

 

 

 

 

「ここが岩への最短ルートだ!行くぞっ!!」

 

壁の上を走っていたエレンたちは一斉にトロスト区内に飛び降り、立体機動にうつる。エレン以外は、刃を装着して立体機動する。奪還作戦班はエレンとミカサを先頭にして、岩にどんどん近づいていく。それそれか、それぞれの思いと決意を胸に駆け抜けていく。

 

―――必ず・・・ この作戦を果たさねばならない・・・ 命懸けになる・・・!

 

強い覚悟があったイアンは自分の命を捧げることも頭に入れていた。

 

 

―――くそっ、頭が2つに割れてるみたいだ・・・・こんな大事な時に! ダメだ引き裂かれるっ!

 

立体機動の途中でエレンは強い頭痛を感じ、なんとか耐えようとするも訳のわからない「何か」にエレンの体は飲み込まれた。

そしてその「何か」はエレンの体を支配し、肉体を操作する。岩を壊してしまわないよう、岩からは少し距離をとって エレンは手の甲の肉を噛み切った。そしてエレンの血が飛び散った瞬間、黄色い光がトロスト区を包み、その光が消えるとそこにエレンの姿は無く、地面に倒れている巨大な巨人の姿があった。

 

「おお・・・・・・」

 

「半信半疑だったが・・・」

 

大型巨人はすぐに立ち上がると、空に向かって雄叫びを上げた。

 

「さあ頼むぞ・・・ 人類の希望!」

 

―――人間の比率で考えると、1.7mの人間が20~30cm程の岩を持ち上げるだけと同じ比率だから、そこまで困難ではない。エレンには人を導く力がある・・・

 

すると大型巨人は街の真ん中の方へ歩き出した。

 

「おいおいどこ行くんだよ!?」

 

「そっちは岩と反対だぞ!?」

 

精鋭たちとミカサが少し様子を見ていると、大型巨人は急に走り出した。

 

「!?」

 

「どうしたって言うんだ!?」

 

ミカサたちは訳のわからぬまま、念のためエレンを追いかけるが、追いつけるスピードではない。

 

「イアン!!これは作戦失敗か!?」

 

「まだだ!!もう少し様子を見るぞ!!こんなでかけりゃピクシス司令のとこからも見える!!煙弾ほまだ撃つな!!」

 

すると、ミカサはあることに気づいた。

 

―――エレンの進行方向に巨人一体・・・もしかしてエレン・・・!

 

大型巨人の走る先には一体の巨人がゆらりと大型巨人に向かって歩く姿があった。

そしてエレンはミカサの予想通り、巨人に走った勢いのまま殴りかかった。首が吹き飛んだその巨人は激しく転がり、止まる前には蒸気が上がっていた。

 

「おい見ろッ!巨人どもがエレンに群がって行きやがるぞ!?」

 

「全部奇行種なのか!?」

 

街の隅に引き寄せていた巨人の15分の1程が壁に背を向けて走り出した。その先には大型巨人が佇んでいる。

 

―――なんて数だ・・・あの数はまず過ぎる!

 

「総員エレンから距離を取れ!!」

 

「・・・・・・!?」

 

指示に納得のいかないミカサはイアンを睨む。イアンは落ち着けとミカサをなだめる。

 

「あいつは並の巨人よりも格段に強い。俺たちがいたところで一緒だ。むしろ距離を取っていた方がエレンは気にせず戦える。なぜこんなことになってるのかは知らんがな」

 

「わかったなミカサ?命令だ従え」

 

「・・・・・・はい」

 

ミカサはエレンから距離を取り、様子を見守る。もちろん安全な場所でだ。

 

『ウオオオオオオーーー!!!!』

 

大型巨人は雄叫びをあげながら巨人の大群へと突っ込んで行った。そして片っ端から大量の巨人に向かって蹴り、殴り、踏みつける。大型巨人に群がる巨人の数は、殺しても殺してもどんどん寄ってきていたので、常に20体前後が大型巨人に噛み付こうとしていた。

群がり続け、流れ続ける巨人の血や、衰えを見せない大型巨人の終りの見えない地獄絵図にイアンは判断に迫った。

 

「・・・・・・リコ、煙弾を撃て。コイツは今、恐らく本能だけで動いている。もうきっと作戦のことなんて頭に入って無いだろう。まあ煙弾なんて撃たなくてもこんなにでかけりゃこんな異常事態は伝わってるとは思うがな」

 

「了解だイアン」

 

発砲音と共に赤い煙弾が上がり、作戦に深刻な影響が出たことを伝える。その情報はすぐにピクシスの元に届く。

 

 

「赤い煙弾を確認・・・任務に深刻な影響が出た様です・・・」

 

望遠鏡で赤い煙弾を確認したピクシス直属の部下がピクシスに報告する。するとそれを聞いた先程約2割の兵を失った旨の報告をした駐屯兵は泣き出してしまった。

 

「く・・・ 仲間が・・・ 仲間が無駄死にじゃないですか・・・」

 

「・・・司令、今すぐ扉の防護体制に戻すべきです。よろしいですか?」

 

「ならん」

 

「精鋭班に撤退の命令を・・・」

 

「いらん」

 

「司令?何を・・・」

 

「簡単に負けを認めることは許さぬぞ。死んでくれた兵を無駄死ににせんためにわしらができることは・・・ 生ある限り足掻き通すことじゃ」

 

 

 

壁の上で大型巨人の方を目を凝らしながら見ていたアルミンは赤い煙弾を見て、異常事態を確認する。

 

「赤い煙弾・・・?」

 

「作戦が失敗したのか・・・?」

 

―――エレン・・・一体どうしたんだ!?

 

アルミンは背負っていたガスの補給缶を地面に置き、壁の上を走り出した。

 

「アルミン!?」

 

 

 

 

 

 

 

煙弾を撃った精鋭班は司令の指示があるまでは待機、すなわち大型巨人を見守るしかなかった。

そして大型巨人が暴れ始めてから30分が経とうとしていた。

 

「ミカサ!」

 

後ろから自分の名前を呼ばれたことに気づくき、ミカサが振り返ると、アルミンが立体機動で飛んできていた。

 

「アルミン!どうしてここに!?」

 

「ミカサ!作戦は!?」

 

「失敗した!エレンはおそらく意識が無いまま戦っている!」

 

「そうか・・・」

 

アルミンは考えを巡らす。エレンの状況では、近づくすらできない。

しかし5分程見ていると、アルミンはあることに気づき、そこから沸き立ついくつもの仮説を作っては消したり改ため、ひとつの道を導き出した。

 

―――この考えは不可能じゃない。ただ・・・・・・

 

アルミンはちらっとこの作戦の実行班の人達やミカサを見た。

 

―――かなりの力量を持った兵士が少なくとも2人は必要だ。そしてその上で犠牲を覚悟で戦う兵士が大勢・・・

あまりに非現実的過ぎる・・・1人はミカサがいるけど、エレンの回復力とかも考えると、どうしても後1人は必要だ・・・

 

するとふと上を見た精鋭班の1人が上空にあるべきでない姿を見つけ、周囲に知らせる。

 

「おい!上を見ろ!人が降ってきてるぞ!」

 

「は!?」

 

「緑の・・・マント・・・?」

 

見上げた50mほど上には、太陽と重なって落下してくるひとつの人影があった。

その影に、アルミンは希望への道が開ける予感がした。





夏休み終了・・・ヽ(;▽;)ノ
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