104期がひたすら走ってるだけみたいですが、その中にちゃんと大事なことを入れてますんで読んでくださいね。
「それでは、始め!!」
一斉にスタートする。並んで走るアルミンとエレンは次々と抜かされていく。エレンは右で並んで走っているアルミンに話しかける。
「いいかアルミン、大事なのは、他の奴らを気にせずに、自分のペースで走ることだ。他の奴らはあまり見ないようにするんだ」
アルミンはコクッと頷き、前を見て腕を振り、足を回す。抜かされても、気にしないというエレンの言ったことを忠実に守る。恐らく、自分は遅いという劣等感が精神を苦しめ、身体にも影響を与えるからだとアルミンは思った。アルミンはなるべく他の人を気にしないようにしながら、自分のペースで足を動かした。
「にじゅういち・・・にじゅうに・・・」
「頑張れアルミン!」
苦痛の表情で息を切らしながらアルミンが上体を起こしては倒す。エレンはその横で2倍以上の量をこなしている。これも応援してくれているのだと、アルミンは解釈していた。
「速く終えようとしなくていいんだ。この訓練は速い奴が必ずしもいいってわけじゃない!ゆっくりでいいから、1回1回をきちんとするんだ。それは必ずお前の力になる!」
アルミンはエレンの教えを忠実にこなしていた。最もな説得力だったし、自分のために1番良いことを教えてくれていた気がしたからだ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
アルミンは息を切らしながら、不思議だなと感じていた。昨日と変わったのは、横にエレンがいるだけなのに、昨日より辛さが全然違うのだ。しかも、アルミンは昨日よりも断然速いペースで走ったという自負があった。もしかしたら、エレンには不思議な力があるのかもしれないとアルミンは思っていた。
「よしっ!いいぞ!あと半分だ!10分休憩したら始めるぞ」
「ハァ・・・ハァ・・・うん!」
「なあ、アルミン」
「どっ・・・どうしたの・・・?」
話しかけられて、アルミンは苦しそうに答える。
「あの子、名前何ていうんだ?」
エレンが後ろの小さな女の子を見ながら訊く。ああ、あの子は、とアルミンが答える。
「クリスタっていうんだよ。昨日ほぼ同時に終わったから仲良くなったんだ」
「へえーそうなのか。
おーいクリスター!」
ビクッ!
エレンが後ろを向いて、30メートルほど後ろを走っているクリスタに話しかける。
後ろからエレンをずっと見ていたクリスタは、急に1度も話したことのないエレンに名前を呼ばれてドキッとする。
「な、なにっ!?///」
「がんばれよーっ!」
ニコッと顔をほころばせて、走りながら後ろを見て、少し離れているクリスタに手を振って応援する。
「あ・・・ありがとう!!///」
(エレンに応援してもらっちゃった///これならどんなにしんどくてもがんばれるよ///)
顔を少し赤らめてクリスタもエレンに笑顔で返す。
その日、エレンは苦しそうな顔をしている人には、決まって話しかけて応援した。それは、皆に強くなって、巨人に殺されない力を身につけて欲しいというエレンの仲間に対する願いだった。誰にも死んで欲しくない。誰も殺されて欲しくない。エレンが持っていたのはそんな思いだった。
―――エレン・イェーガー・・・昨日こいつが最下位層にいなかったときと比べて今日は、最下位層のタイムが飛躍的に良くなっている。1日ではそんなに体力はつかない。
こいつにある不思議な力、人を導く強い力といったものか。それが原因なのだろう。その力こそが、反撃の嚆矢に最も必要なものだ。嚆矢はその一本だけでは意味がない。その後に何千本、何万本と続くことが大事なのだが、こいつにはその力がある!
「ラストだみんな!!!行くぞっ!!」
『オオーーー!!!!』
エレンの横にはアルミンだけではなく、クリスタを含めた多くのものがいた。
エレンは最後の500メートルを風のように翔けて、アルミンたちを置き去りにする。その背中はついて来い、とでも言いたげだった。
「アルミン、今日はよく頑張ったな!」
エレンが食堂で今日は正面に座ったアルミンの今日の頑張りを称える。ううん、とアルミンが首を振る。
「エレンのお陰だよ。エレンがいただけで、僕やクリスタや他のみんなは頑張れたんだ。ほんとエレンってすごいよ!」
「そんなことねえって。アルミンや皆が頑張ったんだろ?」
「だからエレンだって」
「アルミンだよ」
「いいや、エレンだって」
「とーーーーうっっ!!!」
カキーン!!
グフウ!!
グオングオン!
ガッシャーン!!
脱衣所と浴場の間の扉をぴしゃっと開けて、コニーが走り込み、浴槽にダイブしようとしたところを、ジャンが木製バットで打ち返し、コニーを扉の向こうにかっ飛ばす。てけてけと扉からコニーが現れ、ジャンに話しかける。
「何すんだよジャン〜」
「お前って学習能力無いの?」
「エレン、明日からは僕、一人で頑張るよ!今日で、なにかすごい大事なものをもらった気がするし、それがあれば僕は頑張れるよ!」
アルミンが頭を洗いながら横で身体を流しているエレンに言う。頭の泡を流す。
「そんな大層なことはしてねえって。まあとにかく、一人で頑張れるなら、そっちの方がアルミンにはいい。でも、辛くなったらいつでもオレを頼れよ?」
「ありがとうエレン」
――――――――――――――――――
「始めっ!!」
訓練兵たちが風を起こし、砂ぼこりが舞う。その中で、飛び抜けて速いのがエレンだった。列の真ん中ほどにいたエレンは、瞬く間に前の者を抜かしていき、あっという間にトップを走るようになった。そして、ペースは全く落ちず、他の者の視界から消える。その日の訓練は1日目とほぼ同じように終わった。ただ違っていたのは、全体的に、特に最下位層のタイムが、大きく伸びていたことだった。これはエレンの『人を導く力』の影響が大きい。教官は、今年は例年より良い兵士が多く生まれると予想していた。
―――僕はエレンがいなくても大丈夫だ。辛いけど、頑張れる!エレン、僕は君についていくよ。いや、並んで歩けるようになるよ!
エレンに教わった通りに走りながら、アルミンは決意をしたのだった。
「ハア・・・ハア・・・」
3回目のコースを息を切らして走るクリスタは、エレンのことを考えていた。
―――エレンに少しでも近づけるように私も頑張ろう!アルミンも頑張ってるし!
アルミンとクリスタの位置関係は変わらなかったが、2人とも大きくスピードが前進していた。
―――エレンがいつまでたっても見えない・・・やはりエレンは速すぎる・・・
あっ・・・いた・・・!
最初の10キロを走り終えると、そこでエレンが、腕立てをしていた。
「おうミカサ、速いな」
近づいてきた足音の方を見て、エレンがミカサに気づいて、話しかける。そのまま、腹筋に切替える。
「エレンに比べたら全然・・・」
エレンの少し横で、ミカサは体幹から始める。エレンは30回を5セットではなく、150回を1度にしている。
約5分後、エレンは地面に手をつき、立ち上がった。もう次の10キロへ行くようだ。
「ミカサ、頑張れよ!」
そう言ってエレンは走り出し、あっという間に見えなくなった。
―――何だか最近、エレンがどんどん離れていくように感じる・・・傍にいたいのに追いつけない・・・
ミカサは少し寂しかった。あまりにもエレンが凄いので、置いていかれているような気がしたからだ。
―――でも私は、あの日から決めている。エレンには一生かけても返せないほどの恩がある。それを少しでも返すには、ここで必死にエレンについていこうとすること。さっきもエレンは応援してくれた。頑張ろう!
――――――――――――――――――
エレンは2週間、トップであり続けた。あの2日目を除いて。
訓練兵団を全体的に見ると、ひと回りたくましくなったようだ。
そして、2週間の終わりの男子風呂・・・
「とーーーーうっっ!!!」
ボールハトモダチ?ナラトモダチハボールダロ?ッテコトデクラエボレーシュート!!!
バコン!!
グエッ!!
ズドーン!!!
ジャンが飛び込んできたコニーをボレーシュートで扉の向こうへ追い返す。すぐにコニーが走って戻ってくる。
「いやー今日はナイスだったなジャン〜」
「何がナイスだ!?このくだり何回やるんだよ!?」
「この二週間でかなり力がついた気がするよ」
「ああ、アルミン頑張ったからな!」
「そうだね、ありがとう!
エレン、明日からはどんな訓練なんだろうね?」
はいっ、と横のエレンに石鹸を渡す。
「さあな〜?お前が予想できなかったらオレも出来ねえよ」
石鹸を受け取って泡立てて体を洗いながら、エレンが言う。
「まあ、何が来ても頑張ろうぜ」
「そうだね、考えても一緒だもんね」
泡を流し、浴槽に浸かりに行く。
「本日より2週間は、30キロのマラソンを行う!道は分かるな?昨日まで走っていた10キロの周回コースを3周だ。終わった者は、解散してもよいし、残って筋トレをしていても構わん。希望する者には、これからの立体機動において必須である、三半規管の強化のトレーニングを先駆けで行う。それでは、位置につけ!」
整列を崩さないまま、スタート地点に並ぶ。
「始め!」
一斉にスタートする。思わず憂鬱が顔に現れている者もいるが殆どはやってやる、という目つきをしていたのだった。
―――ウソ!?後ろからエレンが来てる!今僕は2週目の真ん中あたりだから、もう3週目なのか!
エレンは1週抜かしにする度にその人に声をかけていた。
「教官!三半規管の強化というのをやりたいのですが!」
半分以上の者を1週抜かしにして1位でゴールしたエレンが教官のもとに駆け寄り、新しい訓練に目を輝かせながら、許可を要請する。
(やはり来たか、エレン・イェーガー。いくら精神力と肉体が強くても、三半規管は関係あるまい)
「許可しよう。こっちへ来い、エレン・イェーガー!」
「ハッ!」
新しい訓練に嬉々とした態度で教官の後ろを歩くエレンは、この後地獄を見ることなど、想像もしていなかった。
「き、きょうかん〜これはあとどのくらいつづけるのでしょうかあ〜?」
気の無い声を発しているのはエレンだった。傍には、走り終えたばかりの5人ほどがエレンを見てクスクスと笑っていた。
エレンは適正判断の際に使った器具に吊るされ、その横で、キースがハンドルを回し続けている。どうやら、そのハンドルが吊るす紐と繋がっていて、それを回すと、対象者が回るようだ。そのスピードは意外と速く、エレンはすっかり目を回してしまっていた。
「後30秒だ」
「ううう・・・おえ・・・」
30秒やっただけで既に目が回っているエレンである。残りの30秒と、その後数分間の間、エレンは地獄を見た。
「なあアニ、お前何であの訓練で目が回らなかったんだ?」
食堂で前に座ったアニに、あの後、長く目が回っていたエレンがそのあとにやって、全然目が回っていなかったアニに訊く。
(エ、エレンに頼られた・・・//)
心の中で喜ぶアニ。
「ちょっとしたコツがあるんだよ。教えて欲しいなら教えてやってもいいけど?」
アニは内心とは別に無表情のまま答える。
「そうなのか!?あれにコツがあるなんて!教えてくれ!」
声のトーンが上がるエレン。
「あんたさ、もう少し人にものを教えてもらう態度ってものがあるだろ?まあいいけど。
まあそのコツってのはね、まず、遠くの一点を選んでそれを見つめる。そして体は回っていても、ギリギリまでその点を見つめる。で、頭を回す時には一気に回して、またその点を見つめる。それを繰り返す。あとは慣れるしかないね」
淡々と語りながらも、アニの鼓動は速かった。もちろん、エレンには知る由もない。
「なるほど、そのコツと、後は練習って訳だな。ありがとうな、アニ!」
ニコッと笑うエレン。アニは思わず顔を赤らめ、それを隠すために横を向く。
「べ、別に大したことはしてないよ・・・お礼なんていいって・・・///」
「いや、すごいなるほどなって思ったよ。ありがとうな」
「わ、分かったから!」
アニは食器をのせたお盆を両手で持って立ち上がり、せかせかと食器を返しに行った。エレンはよく分からないと、首をかしげていた。
「お、エレン、もう今日のやつやってるのか?」
「ああ、アニにコツも教えてもらったしな」
就寝前、エレンはアニに教えてもらったことを意識しながら部屋の真ん中で自分の足でまわっていた。
「ああ、気分が悪くなってきた・・・」
「程々にしとけよエレン。そういうのは地道にやるのが1番だぜ?」
「だから地道にやってんだよ」
(その量で地道なのか・・・)
もはや呆れられるエレンだった。
――――――――――――――――――
―2週間後―
「エレン・・・今日何キロ走ったんだ?」
ジャンが明らかに自分より多く走ったエレンに訊く。ちなみに、ジャンを含めて、上位15人程は40キロ走っていた。
「50キロだけど?」
「・・・・・・」
もはやジャンは声も出なかった。
「よしっ!じゃあライナー頼む!」
「任せろ!」
ライナーがハンドルを全力で回す。ギュンギュンと風を切って吊るされたエレンが回る。周りから見ると、速すぎて残像しか見えない。
「エレンすげえええ!!!!」
その後、エレンはライナーの腕が限界に達するまでの10分間、そのスピードで回り続けた。
―――エレン・イェーガー、調査兵団を希望か・・・これは3年後に彼の翼が壁外に羽ばたく時が楽しみだな。キースにはもっと彼の牙を磨いてもらうように言っておこう。
キースから104期にものすごい奴がいると聞いて、一目見ておこうと物陰からエレンを見ていたのは調査兵団第13代団長、エルヴィン・スミスだった。
少数派になるんですが、私はエレンとクリスタが好きなのでエレクリが好きなんです。だから早くもこうなっていますが、エレクリものではないです。
アニも同様です。
ミカサも同様です。
原作では食堂ではお盆使ってないですけどお盆ないと大変ですよね。
ってことでまたどうでもいい設定を入れました笑
このままだと訓練兵団編が長くなり過ぎて人類の反撃が始まりそうにないので、あと2、3話程でまとめようかと思います。まあ、書きたいことが思いついたら、4.5話とかで後から入れるかもしれませんが。