―――あそこで2人が13m級と戦闘中、その下に3m級。その反対側に15m級と10と14・・・
「先輩方はあそこの13m級と3m級の支援を!!オレは反対側を片付けます!!」
『了解!!』
エレンと5人は左右に分かれ、それぞれ巨人に向かう。
―――決して軽視してた訳じゃねえけど・・・これは・・・
エレンの視界には駐屯兵団のジャケットの死体が入ってきていた。その血にまみれた背中の2つの薔薇は無念を語るかのようだった。エレンには分かった。この巨人に食い捨てられた人達にはそれぞれの人生があり、死を悲しむ人だっている。
―――あの人たちにも家族や愛する人がいたんだ!勝手に奪ってんじゃねえ!
すぐそこに迫った15m級の背後に一瞬でまわりこみ、うなじを切り捨てる。すぐに建物に1度降り立ち、屋根の尾根をつたって走り、10m級の正面から角度をつける。そして2体の巨人を通り越した少し先の高台に照準して、アンカーを撃ち込み、体重移動で動きながら一気に巻取って2体の10m級と14m級を一気に討ち取る。
「人類の力を思い知ったか!」
そう吐き捨てると13m級とまだ交戦中の特別班の先輩の元へ急ぐ。
―――巨人はオレが全部殺す!!!
「34班前進!」
「行くよ!」
「進めッ!」
エレンの言葉で士気を高めたアルミンの所属する班、34班は前進する。34班は班長のエレンが抜けたため、他の班の班長のクリスタが34班の班長を務める形となった。クリスタの抜けた班はユミルが班長を務めるようになったようだ。メンバーは、クリスタ、アルミン、ミーナ、トーマス、ナック、ミリウスの6人だ。
―――エレンが言ったことを思い出すんだ!戦う意思があれば!僕たちだって戦える!
「前方10m級接近!戦闘準備!」
立体機動で並んで進みながら、クリスタが指示を出す。
「ナック!」
ナックが巨人に体を掴まれる。
「離せぇッ!」
クリスタが巨人のナックを掴んでいる腕の手首を切り落とす。
「今だトーマス!」
アルミンが巨人の後ろに回り込んでいたトーマスに伝える。
「うおおおおおっっ!!」
両手の刃を振り下ろし、手応えを感じる。巨人は倒れ、絶命したことを表す白い蒸気が出る
「やったぞ!」
「俺たちだってやれるんだ!」
「さあ、進もう!!」
「オオーーッ」
「中衛っていったらこの辺だね」
34班は立体機動で街の真ん中ぐらいまでたどり着く。先鋭はエレンの活躍によって何とか訓練の陣形を維持していた。
「奇行種だっ!」
「よけろっ!!」
「くっ!」
空中を飛んでいる最中に突然現れた奇行種が34班に襲いかかり、その巨人はそのまま後ろの高台に激突する。
「トーマス!!」
その巨人はトーマスをくわえていた。
そしてゴクンと丸呑みする。
「うわああああっ!!!」
「そんな・・・トーマス・・・」
「おい立てよ!もう一体こっちに来てるぞ!」
「戦うんだ!!!」
「うおおおおおっ!!」
「あれは34班!オレのいた班か!まずいトーマスがっ!!!」
「お、おいイェーガー!下がるな!」
―――死なせてたまるか!
それまで前衛で動き回って前衛の駐屯兵団を何度も何度も救いながら巨人を数え切れないほど倒していたエレンは後ろへと急ぐ。
「くそ・・・!」
「ナック・・・すまない・・・」
2体の巨人と戦っている最中、ナックが捕まってしまい、そのまま食われてしまっていた。
「ミーナ!アルミンッ!」
さらにミーナとアルミンが2体の巨人に捕まる。残っているメンバーは2体とあって、うかつに動けない。
「ううっ・・・」
「うおおおっっ!!」
巨人が大きく口を開けた瞬間、エレンがまさに限界まで引き絞られた弓から放たれた矢の如く飛んできてミーナを掴んでいる巨人のうなじを削ぎ落とす。ミーナは何とか比較的安全な建物の上へと逃げる。
エレンはそのままのスピードで弧を描きアルミンを掴んでいる巨人の正面に回り込み、両目に刃を刺して動きを止め、柄をグルグルと回しながら刃を引っこ抜く。そして巨人の頭の上に手をつき、そのまま前転する。巨人の後頭部辺りから前転の向きで回転を速め、縦1m横10cmを下から上へと削ぐ。巨人は倒れ、アルミンは巨人の手から抜け出し、建物の上へと目指す。
しかし、トーマスを食った奇行種がアルミンに飛びかかってそのまま食おうとする。
「アルミンッ!!」
すぐにエレンは正面から少し回り込んでアルミンの方へと飛び、アルミンを巨人の口への軌道から押し出す。間一髪でアルミンは奇行種から避けて建物の上へと降り立つ。
「エ・・・ エレンッ!!!」
「右腕が!!!」
エレンは右腕が巨人に噛まれ、そのまま慣性で巨人と一緒に後ろの建物に叩きつけられる。
「ぐっ・・・ このクソ野郎がっ!!放し・・・やがれッ!!!」
空いている左腕の刃で巨人の目を刺すと、巨人は奇声を発し、エレンの腕を噛み切った。
エレンの右腕は失われたのだ。右腕の拘束が無くなったエレンは痛みに顔を歪めながら1度巨人から距離を取る。その右腕は、肘と手首の真ん中から先が無かった。血が滝のように流れ落ちる。
「そんな・・・ エレンが・・・」
「くっそ・・・!」
「エレン!早くこっちに!!」
―――片腕をなくしたらいくらエレンでも無力だ!僕のせいで・・・!
右腕から血が溢れるエレンにアルミンが必死に声を届かせる。しかし、エレンは気にせずその奇行種に向かっていく。
「このクソ野郎が!ぶっ殺してやる!!よくもトーマスを!!」
「エレンッ!!!よせ!!!」
―――自分の右腕より仲間を食われた恨みの方が勝っている・・・
エレンが剣を振りかぶって振り下ろそうとした瞬間、眩い閃光が辺りを包む。
「くそっ!なんだこいつは!俺たちを気にせずに住民のとこに突っ走って行きやがる!」
「奇行種だろ!考えても無駄だ!」
「くっ、精鋭の私たちが追いつけないなんて!」
トロスト区とローゼ内を繋ぐ門に固まっている住民を目指して、14m級がその広い歩幅で走る。それに追いつこうと後衛の精鋭数人が急ぐが追いつける気配はなく、巨人は住民まであと少しの距離まで進んだ。住民から悲鳴が聞こえる。
「!?」
ふいに精鋭たちは後ろからワイヤーが飛んでいくのを見た。そしてすぐに人影が追い越していき、巨人に追いつく。
そして、そのスピードのまま、重い斬撃をくらわし、住民の寸前で巨人は倒れる。
「・・・」
倒れた巨人の頭に降り立ち、刃を気にするミカサの目に飛び込んできたのは、荷馬車が門を塞ぎ、住民が避難できない光景だった。
「!?」
―――避難が遅いと思ったら・・・
「何をしているの?」
カツカツと住民をかき分けて荷馬車の持ち主と見られる会長と呼ばれている者に話しかける。
「住民の避難が完了しないから・・・ 私の仲間が戦って死んでいる・・・」
「それは当然の事だ!100年ぶりに役に立ったからっていい気になるな!」
「・・・人のために人が死ぬのが当然と思っているのなら・・・ きっと理解してもらえるだろう。あなたという尊い1つの命が大勢の命を救うことも・・・」
ミカサの頭には会長と呼ばれている男を殺し、荷馬車を引いて住民を早く避難させるという考えがあった。乱暴だが、この考えしか思いつかなかった。仲間の命が無駄死にになるのは避けたかった。
「やってみろ!オレはこの街の領主だぞ!お前の上にもつながっている!そんなことやってただですむと思ってるのか!」
「は?」
ミカサは首を傾げる。
「死体がどうやって喋るの?」
冷たい眼で睨みつける。その歩み寄る足は止まらない。その男は自分が本当に殺されることを悟った。
「・・・馬車を引け・・・」
荷馬車が引かれ、生命の危機から解かれた住民が急いで門をくぐっていく。その中の1人の小さな女の子がミカサの前に立ち止まる。
「ありがとうお姉ちゃん!」
「助かりました。本当にありがとうございます」
その子の母親と思われる女性もミカサに礼を言う。ミカサは刃をしまい、右腕の拳を左腕に当て、敬礼をする。そしてくるっと回って歩き出す。少女はきっと、この兵士に憧れを抱いただろう。
「流石だなアッカーマン。よく仕留めたな」
「はい。しかし・・・」
グリップを握って刃を捨てる。
「焦って刃をなまくらにしてしまいました。次は気をつけます」
―――こいつ・・・
「よしっ、住民の避難が完了したぞ!撤退の鐘を鳴らせ!」
カンカンカン!
「撤退の鐘だ。アッカーマン、撤退するぞ」
「前衛の撤退を支援してきます」
ミカサは前へと駆ける。その目の先には異様な光景が映っており、その耳には大きな音がドンドンと50mの壁の中に響きながら聞こえていた。
「お、おいアッカーマン!」
―――エレン、あなたがいれば私は何でもできる。だから、そばにいて・・・!私を置いてかないで・・・!
「ウオオオオーーーッ!!!」
体中から蒸気が出ている巨人を足元にして、30mはありそうな大型の巨人が空に向かって雄叫びを上げていた。すぐそばにはアルミンら34班が呆然と立ち尽くしていた。ほぼ放心状態にあったアルミンははっとしてから必死に思考を巡らす。
―――ど、どういうことだ!?ミーナと僕が捕まって、エレンが飛んで来て、それで、ミーナと僕をエレンが助けてくれた。でもトーマスを食った奇行種がまた飛んで来て、それでエレンがまた僕を助けてくれて、でもエレンの右腕は食われてしまって、それですごい形相のエレンが右腕を食った巨人を片手だけで殺しに行こうとしたら、エレンから黄色い光が出て、気づいたら地面に馬鹿でかい黒髪の巨人が倒れてて、その左腕は1体の巨人を叩き潰していた・・・ そしてその巨人は今こうして立ち上がっている・・・ 30mはあるだろうか・・・
「おい、アルミン!」
状況に気づいたコニーが飛んでくる。
「あの馬鹿でかい巨人は何なんだ!?」
首をかしげながらアルミンが答える。
「あれは多分・・・エレンだ」
「エレンだって!?」
「そう」
「な、何があったんだ!?」
コニーが混乱していると、ユミルも近づいてきて、34班の班長のクリスタに寄っていく。
「クリスタ、無事だったか。この作戦が終わったら結婚してくれ」
「どうしたの突然?」
「いや、何か言わないといけない気がして」
「結婚はしないよ?(エレン・・・//)」
「・・・・・・・・・それより、あの巨人は何なんだ?このデカさじゃトロスト区のどこからでも見えるぞ」
「それはね・・・」
アルミンは知っていることを話す。その間に、大型巨人は巨人がいる方へ歩いていく。
ズシン、ズシンと1本歩く度に大きな足音が響く。恐らくトロスト区のすべての兵士が30mの大型巨人の出現に気づいているだろう。
3体の巨人が大型巨人に近づいていく。大型巨人もその巨人に近づいていく。
3体の巨人が大型巨人の間合いに入った瞬間に、大型巨人は両手を組んで振りかぶり、3体の巨人めがけて振りおろした。
思わず耳を塞ぐほどの爆音と、砂埃が舞う。そして大型巨人は立ち上がり、足をふり抜いた。周囲の砂埃を吹き飛ばし、2体の巨人が赤い血をまき散らしながら低い弾道で飛ばされる。地面につくと、さらに血を地面に塗りながら転がり、止まった時には絶命しているようだった。
「なんつー力だ・・・」
「つ、強い・・・」
「なんてこった・・・ あれがエレンだってのか?」
「そうとしか考えられないよ。まず巨人が巨人を殺す事はありえない。それにあの巨人はエレンのいたところから突然現れた。さらに今、エレンはどこにもいない」
「なるほどな、こりゃとんでもねえな。人類最強が巨人になっちまうなんてな」
「しかもかなり強力な巨人だ。巨人を見る見るうちに殺していく・・・」
大型巨人は次々と周囲の巨人を殺していた。足を振りおろし、踏みつぶす。手のひらで握りつぶす。足をつまんで建物や地面に叩きつける。それはまるで殺戮を楽しんでいるかのようだった。しかし、人間には興味を示さず、逆に殺さないように慎重であるように見えた。その時、撤退の鐘がなった。
「撤退の鐘だ!」
「本部でガスを補給して戻ろう!」
「で・・・でも見ろよあれ・・・」
少し高台にある本部を見ると、多数の巨人が群がっていた。とても近づける状況ではない。
「おい!あれは何だ!?」
ジャンやマルコ、アニたちも集まってくる。104期の多くは少しだけ安全な建物の上にいた。そして、34班の生き残った4人はそれぞれにエレンのことを説明する。それを聞いた者は決まって驚いた表情をする。
「しかしそれよりも補給班のやつら・・・ 補給の任務を放棄して籠城なんてあり得ねえだろ・・・ 案の定巨人が群がって近づけやしねえ」
「オレたちはみんな壁を登れなくて死ぬだろうな・・・」
「僕たちは何の為に死ぬんだ・・・」
「大丈夫ですよ皆さん。私が先陣を引き受けますから・・・ みんなで行けばきっと行けますよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
104期の目はほとんど諦めの目だった。サシャの言ったことも、ほぼ無理だと諦めていた。
すると、後衛の方からミカサがやって来た。そしてアルミンに話しかける。
「アルミン、エレンはどこ?そしてあの大型巨人は何?」
「ミカサ・・・」
壁に寄り添って座ったまま近づいて来たミカサを見上げる。今その瞬間も、大型巨人は巨人を殺し続けていた。
「信じられない話だけど聞いてくれ・・・」
アルミンが話す。
「じゃああの大型巨人がエレン・・・?」
「そう・・・」
「エレンが巨人になったなんて・・・話が通じればいいのだけど・・・
とにかく、この状況は大体呑み込めた。本部に巨人が群がってガスを補給できないで、どうすることもできない・・・違う?」
「それだよミカサ!」
「え?」
「エレンに頼めばいいんだ!」
アルミンは立ち上がり、エレンの近くまで飛んでいく。そして、自分のできる限りの大声で叫ぶ。
「エレン!聞こえるか!!?僕たちは本部に近づけなくて、ガスが補給できずに、壁を登ることができない!!!だからエレン!!!本部の巨人を片づけてくれ!!!頼む!!!」
すると大型巨人はこくんと頷き、本部の方に歩いていく。104期から歓声が上がる。
「やった!」
「あのエレンならあんな巨人ども楽勝だ!」
「あの巨人の後に続け!」
30mの大型巨人の歩幅はかなり広く、立体機動のほぼ全速力に匹敵した。
「ここで1回待機しよう!」
アルミンたちと本部の距離は約70m。大型巨人と本部の距離は約20m。大型巨人は1歩踏み出し、軸足を踏みしめ、二体の巨人を蹴りとばす。
そして、次々と本部に群がる巨人を蹴散らしていく。
「今だ!本部に突っ込め!!」
「うおおおおっ!!」
ガラスの割れる音とともに、104期のほとんどはたどり着いた。
「やった!本部についたぞ!」
「・・・・・・てめぇら 補給の班だよな・・・?」
机の下にうずくまる人影は訓練兵団のジャケットで、数人には血が付着していた。
ジャンは怒りをあらわにし、机の下の1人の胸ぐらを掴んで引きずり出し、右拳で殴る。
「てめぇらの仕事を勝手に放棄してんじゃねえよ!」
「格納庫に巨人が入ってきたの!仕方なかったの!」
「何が仕方ねえだ!!それを何とかするのがてめぇらの仕事だろ!!オレの班の仲間たちは命を賭して戦ってたんだ!!それをてめえらときたら!!!」
ジャンが怒鳴っている間にも、外では大型巨人が次々と巨人を倒していた。
「とにかく、格納庫に巨人が入ってきたなら、そいつらを倒さなければ僕らはトロスト区から出られないってことだ」
「・・・戦わなければ勝てない。そして、勝てば生きる」
「行くぞ!」
「待ってくれ!」
「なんだアルミン?」
「提案があるんだ」
「確認したら、格納庫の巨人は8体いる。エレンがいるから、増えてることはないと思う。
選ばれた戦闘力の高い8人以外をこの散弾銃を装備してこの荷台に乗って、格納庫の中央へと降ろす。その時、8人は天井裏に隠れておく。通常種なら大勢の方に引きつけられるはずだから、散弾銃を構えた僕たちに寄ってくる。そして出来るだけ引き寄せてから散弾銃で視界を一斉に奪う。
ここからが1番大事だ。天井に隠れていた8人が飛び降りて、それぞれ1体ずつを仕留める。幸い、僕たちの全員のガスを全部入れれば、8人全部のガスを4分の1ぐらいまで補充出来るし、これなら確率はかなり高いと思うんだ。でも・・・ごめんね、全員の命を背負わす形になってしまって・・・」
「問題ないね。失敗したら全員死ぬのは同じだから」
「アルミン、すごい案だよこれは!」
「そ、そうかな?」
「そうさ!きっとこれ以上の案は出ないよ!」
「そうと決まれば行こう。早くするのに越したことはない」
「そうだね」
ミカサ、ライナー、アニ、ベルトルト、ジャン、コニー、クリスタ、サシャが巨人を討伐する8人だ。
「弱点は分かってんな」
「縦1m横10cm!」
「もしくはこいつを腕ごと100年以上洗ってねぇ奴らのくせぇケツにぶち込む!肘まで入れば奴らは絶命する!弱点はこの2つのみ!」
「何だと!?そんなくっそきったねえ方法があったのか!?」
「・・・・・・・・・・・・」
「私も今初めて知ったよ・・・」
「ライナー、それがお前の最後の言葉になっちまえ」
「同意」
カラカラとワイヤーが巻かれて歯車が回る音とともに、アルミンらが乗った荷台が格納庫へと下っていく。すぐに人間が入ってきた事に気づいた8体の巨人が近づいてくる。その振り向きざまと何とも言えない不気味な表情は捕食対象の人間を恐怖に陥れるのに十分だった。
「う、うわあああ!!」
「落ち着け!もっと引き寄せるんだ!」
格納庫の薄暗いという状況が四方に銃を構えた兵士たちの恐怖をさらに掻き立てる。そして恐怖と戦いながら、計り知れない緊張感を持って、発砲のタイミングを待っていた。
「まだだ・・・ もう少し・・・ 引き付けろ・・・」
そして、巨人の手が届くまであとコンマ数秒の時。
「撃て!!!!!」
一斉に引き金を引き、大量の発砲音とともに、銃弾が発射される。その銃弾は撃った瞬間に広がり、より広範囲へと放たれる。格納庫内には大量の発砲音と目を潰された巨人の悲鳴が響きわたる。
「今だ!!」
ライナーの声で、天井に隠れていた8人は同時に飛び下りる。誰がどれをターゲットとするかは3年間の阿吽の呼吸といったところだろう。
―――誰も・・・ もう誰も死なせたくないなら1発で決めるんだ!!
8人はそれぞれ自分の得意とする形で腕を振りかぶり、ターゲットのうなじを斬撃する。
8体の巨人は、2体だけを残して倒れる。サシャとコニーがしくじったようだ。
「サシャとコニーだ!!」
「援護ォ!」
「う、後ろから大変・・・失礼しましたァ!」
アニとミカサがそれぞれ援護に回ろうと1本踏み出した瞬間、灯りのついていない格納庫に光をもたらしていた入り口から立体機動の際の音が入ってきた。そしてミカサたちが立体機動の人影を捉えたと同時に、その人影は障害物の多い格納庫内で巧みにそれをかわしながら2体の巨人に迫り、ミカサとアニが飛ぶ前に2体ともうなじから首をはね落とす。首を落とされてうなじを大きく損傷した巨人は倒れる。
人影はそれを確認すると、柱に足をついて勢いを殺し、地面に降り立って104期の元に駆け寄ってくる。
「おい、お前ら大丈夫か!?」
「エ、エレン!!?」
薄暗い格納庫の中で姿を表したのはエレンだった。そのジャケットの右腕は肘と手首の真ん中から先が不自然に破れていた―――