反撃の転生者―エレン―   作:KEIWORD

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更新遅くなって本当に申し訳ありません・・・


9―ゼラニウム―

 

 

 

 

―――この野郎・・・ よくもトーマスを食いやがったな!オレの大切な仲間を食いやがったな!てめぇなんて左腕1本で十分だ!死ねッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型巨人はわずかに飛んでいた意識を取り戻した。自分は左腕を頭の横にして、建物の間の通りにうつ伏せに倒れていた。そして左腕の下に何かあるのを感じる。それは蒸発して死んでいた巨人だった。顔はもう分からない。

大型巨人は立ち上がった。そこは小さな世界だった。小さな建物の街、小さな巨人が歩き回り、、そしてさらに小さな人間が呆然としてこっちを見ている。

すると大型巨人は小さな巨人が3体ほど近づいて来るのに気づいた。と言っても10m前後の3体ではあったが。

本能的に湧き出た殺意が、巨人を殺せと肉体を動かしてくる。それに抗うことなく大型巨人は本能に従い、巨人に腕を振りおろした。そして殺意と同時に湧いていた怒りと憎悪が、さらに大型巨人の肉体を動かす。勢いをつけて地面とともに、崩れ落ちている3体の巨人を蹴り飛ばした。3体の巨人は絶命していた。それに爽快感と喜びを感じて大型巨人はわずかに口角を上げる。

そして獲物を見つけては殺し、見つけては殺す。まるで、巨人が人間を殺すように、大型巨人は巨人を殺していた。

人間たちが呆然と見上げているのを視界の端で捕らえていたので、破片などが絶対に飛ばないよう細心の注意を払いながら一方的な殺戮を続けていた。

するとほぼ無意識だった大型巨人の大きく尖った耳に聞きなれた声が入り込んできた。

 

「エレン!聞こえるか!!?僕たちは本部に近づけなくて、ガスが補給できずに、壁を登ることができない!!!だからエレン!!!本部の巨人を片づけてくれ!!!頼む!!!」

 

それはアルミンの声だった。本部の方へ顔を向けると、聞こえてきた声の通り、巨人がわんさかと群がっていた。意識はあったのか無かったのかは分からなかったが、無意識に体が動いていた。

コクッと頷くと、建物の破片をかき分けて本部へと歩いていく。一歩歩くたびに細かな破片が砂ぼこりとなっていた。

そして本部に着くと、意識よりも本能が勝り、群がる巨人を殺しまくる。意識は彼方へと飛んでいっていた。

 

―――殺す・・・・・・

 

―――もっとだ・・・・・・

 

―――全部・・・・・・

 

―――このグズどもを・・・・・・

 

 

「殺してやる・・・・・・」

 

寝言のように呟いた口は口角が上がっていた。ハッとして我に帰り、目をしっかりと開けると、そこは戦場だったはずの光景だった。しかし、どういうことか周囲に巨人のいる様子は無かった。さらに兵士たちもいなかった。

エレンは混乱していた。記憶が少し錯乱していて、自分がなぜここに寝ているのか、なぜ周囲に巨人と兵士がいないのか、そしてなぜ自分の左腕の裾が無くなっているのか。

 

「・・・・・・なんなんだよ一体・・・」

 

少しずつ落ち着いてきて、次第に記憶が戻ってくるのを感じる。しかし、その記憶は果たして真実なのか、夢だったのかの判断がつかない。

 

―――アルミンが食われそうになったとこまでははっきりと覚えてるが、そのあとが曖昧だな・・・ 確かオレの左腕が食われちまって・・・ ちょっと待て!?オレの左腕はちゃんとあるぞ!?

 

エレンは左腕を回したり、指を曲げたりして左腕がちゃんとあることを確認する。

 

―――動く・・・ 何も問題ない・・・ それにこのジャケットの袖は・・・ それよりもこの記憶・・・・・・

 

エレンはどうしても信じられなかった。自分が何よりも恨んでいた巨人であるなど。一匹残らず駆逐すると誓っていた巨人であると。

エレンは早々と夢だと判断することにした。信じたくもない話だった。迷っている時間がもったいなかったし、何よりここは壁が破られたトロスト区の真ん中の道のど真ん中だったからだ。今は巨人が周囲にいなくても、すぐに寄ってくるのは簡単に予想できた。

落ち着きと冷静さを取り戻したエレンは立ち上がり、すぐに細かい周囲の状況を確認し、何が起きているのかを予想する。

 

(周りに誰もいないってことは撤退の鐘がなったんだろうな・・・ この辺に巨人がいないのはオレが見てた夢なら筋が通るけど、そんなのはただの夢だし、とにかく撤退だ。このガスの量じゃ壁を登るにはギリギリすぎだ・・・ ここで補給してくか)

 

立体起動装置は異常がないことを確認してから、エレンは念のために柄に刃を装着して本部への入り口に歩いて近づいていく。すると突然、誰かの掛け声と耳が痛くなる大量の銃声のエレンの耳へと入り込む。すぐにエレンは柄を強く握り締め、すぐそこの入り口へと走る。すると中では、荷台でつるされ、銃を構えたたくさんの同期と、その下でちょうど数体の巨人へと刃を振り下ろす上位10番内の仲間数名の姿があった。その姿を捉えたと同時にエレンの体は動き出していた。もしもの場合を想定して援護に回る為である。

格納庫の入り口付近は柱が多く、障害物も多いため、走って駆け抜ける。そして比較的広い所へ出ると仕留め損なった2体の巨人めがけてすぐに引き金を引いて走りよりも格段に速い立体機動にうつる。不規則に散らばる柱を最高速度で避けていく。2本のワイヤーが忙しく出し入れされ、体重移動と回転も加えながら進む。

そして2体の巨人への一筋の道が開けた瞬間、エレンは矢となって風をまといながら2体の巨人に向けて迫り、一瞬でうなじごと首をはね落とした。

エレンは壁に足をついて勢いを殺し、地面に降り立って仲間の元に振り向く。

 

「お前ら、無事だったか」

 

少しホッとして仲間たちを見つめるエレンにその仲間たちは驚いた目を向ける。

 

「エレン!?どうしてここに!?」

 

「もう俺には何がなんだか・・・」

 

アルミンが驚いた顔をしていると、コニーは頭をおさえる。

 

「コニー、お前だけじゃねぇよ」

 

近づいて立ち止まったエレンは口を開く。

 

「ガスを補給してるってことは撤退の鐘がなったのか?」

 

「そ・・・そうだけど・・・」

 

アルミンは何ごとも無かったかのように振る舞うエレンに動揺しながら気のない返事をする。するとライナーが口を開く。

 

「エレン・・・ お前巨人だったのか?」

 

するとエレンは驚いた顔を見せる。

 

「な、何でオレが見てた夢知ってんだよ・・・ オレがでかい巨人になって巨人を殺しまくった夢・・・ よく覚えてねえんだけど、んなことあるわけねぇだろ?」

 

「私は・・・ エレンが巨人になる所を見た・・・」

 

「俺も・・・」

 

「私も・・・」

 

「じ、冗談だよな・・・?」

 

34班のクリスタとミリウスとミーナがエレンに言う。それにアルミンが付け加える。

 

「・・・冗談じゃない。エレンの左腕が食われたあと、エレンは怒りで巨人に突っ込んでいった。それも右腕だけで。エレンが刃を振り下ろそうとした時、黄色い光がエレンあたり・・・多分エレンから出て、眩しくて目をつむって目を開けたら そこには大型の巨人が倒れていた。その右腕はトーマスを食った、そしてエレンの左腕を食った奇行種を潰していたんだ」

 

「そんな・・・・・・ オ、オレは・・・」

 

頭を抱えるエレンにアニが口を開く。

 

「エレン、これはむしろいいことなんじゃないの?」

 

「・・・何だと?」

 

「あんな強力な巨人が味方なら、とんでもない武器だよ。それにあんただって巨人を殺しまくれる。まあ、生身でもあんたは巨人を殺しまくるだろうけど」

 

「それは・・・そうかもしれねえけど・・・」

 

「エレン、気にしすぎるのはよくない。あなたは巨人を絶滅されられる力がある。これだけ分かればいい」

 

ずっと眉間にしわを寄せていたジャンが頭を掻きながら言う。

 

「・・・とにかく、今はさっさとガスを補給して撤退するぞ」

 

「そうだな。話はそのあとでいい。ガスを補給して撤退するぞ!」

 

「やった!」

 

「帰れるぞ!」

 

歓声が上がり、それぞれ補給へとうつる。その中でエレンは手際よく、誰よりも先にガスを補給していた。

 

「オレは外を見ておくよ。オレが起きた時は周囲に巨人はいなかったが、すぐまた来るかもしれねえし」

 

「ありがとうエレン、助かるよ。僕らも急ぐよ」

 

「別に急がなくていいぞ。オレは仲間を殺した巨人どもを殺したいだけだからな」

 

「そ、そう・・・」

 

エレンの表情は憎悪を帯び、そして外へと走っていった。

 

―――そうだよね・・・ 仲間をたくさん食われたんだ・・・

 

 

 

 

よし!全員補給が完了したぞ!上の階から脱出するぞ!

 

死を当然とされた兵士たちは生きて帰れるという奇跡を受けて思わず喜びが溢れていた。

 

「エレン!撤退だ!」

 

「・・・ああ」

 

暗い表情のエレンは10m級のうなじを削ぎ落とし、地面に立って返事をした。

 

「流石としか言いようかねえな・・・」

 

本部の半径50m程の中には、十数体の巨人の死体があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよこの状況は・・・」

 

「エレン・・・」

 

撤退する兵士の一番後ろにいたエレンとミカサとアルミンは壁を越える際に駐屯兵団に呼び止められ、壁の端へと包囲されていた。壁の上からは固定砲が向けられていた。包囲している兵士たちは銃をエレンの方へ向けていた。その顔は酷く怯えが感じられた。すると、役職が高いものと思われる、背の高い、髭の男がエレンらに遠くから大声で問いかける。その顔からは冷や汗が読み取れた。

 

「率直に問う!貴様は巨人か!?人間か!?」

 

―――は?何言ってんだコイツ・・・んなもん決まってる。

 

「人間です!!」

 

エレンはすぐに質問に答える。しかし、質問の答えはエレンが決めることではなかった。

 

「誰が信用するか!多くのものが見たと言っている!貴様が巨人になった所を!」

 

(えーオレが答えた意味ねえじゃん。いや、今はそんな呑気こと言ってる場合じゃねえか・・・ 殺されるかもしれねえんだよな・・・ オレはこんなとこで死ぬ訳にはいかねえんだ!)

 

エレンが返す言葉を探していると、横でアルミンが口を開く。

 

「否定はしません!彼は巨人になることができます!しかし、その攻撃対象は我々人類ではなく、巨人です!彼を殺すことは人類の希望を失うことです!

それに、巨人化の力を使えばこの街の奪還も不可能ではありません!」

 

「アルミン・・・」

 

「僕が説得して見せるよエレン」

 

―――エレンに助けてばっかりじゃダメだ!あの時決めたじゃないか!エレンと並んで歩けるようになりたいって!

僕の得意なことで勝負するんだ!

 

しかし、長身の髭の男は屈しない。

 

「黙れ!!貴様は人類の敵!!それ以外の何者でもない!!」

 

「いいえ!私たちが彼をどう認識するかは問題では無いのです!

先程、彼が巨人になるところを多くの方が見たと聞きました!ならば見たはずです!巨人が彼に群がっていくところを!

つまり、巨人は彼を我々と同じ捕食対象とみなしました!我々がいくら考えを巡らそうと、この事実は変わりません!」

 

「そ・・・そういえば・・・」

 

「奴は味方かもしれんぞ・・・」

 

―――うっ・・・ これはもしかしたら本当に・・・

いや、だがっ・・・

 

駐屯兵団の兵士らがアルミンの言葉に正当性を感じていると、キッツの横で防衛戦の前にミカサを呼び止めた駐屯兵団の男が囁くように声をかけた。

 

「しかし隊長、彼、エレン・イェーガーは並の兵士の7千人分と等価もしくはそれ以上に値すると聞きます。さらにそいつが巨人化の力を持っているとなると、ここで殺すのは人類にとってあまりに大き過ぎる損害です」

 

「っ!?」

 

「さらに、あいつ、ミカサ・アッカーマン。俺たちと後衛につきましたが、彼女の力も本物です。こちらも人類にとって大損害に成り得ません」

 

「・・・」

 

隊長と呼ばれた男、キッツは迷っていた。果たして自分がこいつらを殺して責任は問われないだろうか。

 

―――どうするべきだ・・・ どうするべきだ・・・

 

「隊長!早くご決断を!」

 

「隊長!」

 

―――殺すべきか、殺さないべきか、私に責任はこないか!?あ、頭が・・・

 

ボンッ!バタッ!

 

「隊長っ!?」

 

キッツは考えすぎで頭が爆発して倒れ、呆れ顔のリコがイアンに向かって言う。

 

「イアン、悪いが指揮してくれ。あんたの判断にしたがうよ」

 

「そ、そうか・・・」

 

エレンたちも昂った緊張が解け、眉間にシワを寄せている。イアンは考えを巡らす。

 

―――こいつらを殺すなんて人類の勝利を殺す様なもんだよな・・・ こいつらを殺してどうやって人類は巨人に勝つというのだ。迷うことはない!

 

「総員銃を下ろせ!」

 

エレンらを包囲する駐屯兵団の兵士たちは、一瞬、銃を下ろすことを躊躇するが、すぐにイアンの判断に従い、銃を背中に背負い、敬礼する。

 

「イアンよ」

 

イアンは後ろからの年季の入った太い声に気づくと、すぐにキリッと振り向き、敬礼をする。その先は、駐屯兵団の最高司令官のドット・ピクシスが少しにやけながらたっていた。

 

「お主の判断基準を聞こうかの」

 

どうやらイアンを試しているようだ。全くこの初老で酒好きの変人はこんな状況でも変人なようだ。この状況を楽しんでいるかのようにも見える。

イアンは敬礼を戻し、自分の考えをピクシスに話す。

 

「彼らをここで殺すのは人類にとって大損害であると判断しました。そしてあの訓練兵はこういいました。エレン・イェーガーの力を使えばトロスト区の奪還も可能であると。迷う必要はありませんでした」

 

「なんと・・・」

 

ピクシスは驚いた顔を見せる。そしてエレンの横の訓練兵、アルミンに向かって言った。

 

「穴を塞ぐことが出来るのか・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地上より50m。風の音に交じるのは巨人によって家が崩れる音と、負傷した兵士の痛さを堪えきれない声や、戦死を遂げた兵士の死を嘆く声。ここは現在の人類の活動領域の最南端、トロスト区とウォール・シーナを繋ぐ門の上である。

そこでピクシスを含む駐屯兵団の上層の数名とエレン、ミカサ、アルミン三人がトロスト区の地図を囲んで、アルミンがトロスト区奪還の考えを話していたところだった。

 

 

「戦闘の必要が無いと言うのは?」

 

「はい。巨人は通常、より多くの人間に引き付けられるはずですから、兵士たちは集団で巨人を街の隅まで引きつけ、エレンはこの辺りの岩への最短ルートから岩へ向かうのです。

ですか、彼を無防備にするわけにもいかないので、少数精鋭の班で彼を守るべきだと思います」

 

アルミンは用意された地図を指さして考えた作戦を説明する。

 

「・・・ですが、これはあくまでエレンが岩で穴を塞げることを前提とした作戦です。エレンが穴を塞げないとなると、この作戦は全く持って無意味になります・・・」

 

アルミンがチラっとエレンのほうを見ると、ピクシスが隣のエレンの肩に手を載せる。

 

「まあ全てはうぬ次第ということじゃ」

 

「・・・承知しています。必ず穴を・・・塞いで見せます!」

 

エレンが頷くと、ピクシスが立ち上がって作戦会議を閉じる。

 

「よう言ったの!主は男じゃ!今すぐ参謀を呼ぼうぞ!」

 

「え!?もう実行に移すのですか!?」

 

「新兵、この作戦はスピード勝負だ。今も尚巨人が街に入り続けている中で、後から作戦を実行するのは失敗のリスクが高まる。リスクが低いに越したことはない」

 

「それに、戦闘の必要は無いといっても、少なくない犠牲は出るだろう。犠牲は最小限に留めたい。だからな、イェーガー」

 

イアンはエレンの肩をガシッと掴み、真剣な眼差しを向ける。

 

「頼むぞ」

 

「・・・はい!」

 

―――オレのこの手に・・・ 全部かかってるんだ・・・

 

 

 

「現在壁の下に待機任務を課せている兵士らに作戦の内容を説明、実行し、我々の作戦決行は1時間後だ」

 

―――やっとだ・・・ やっと人類の反撃が始まる・・・

 

どこから種が飛んできたのか、一輪のゼラニウムの花が、エレンの決意を表すように、アルミンの想いをのせる様に、壁の上の傍らで風に吹かれて揺れていた。






ゼラニウムの花言葉は友情、決意、真の友と言ったところです。まさにこの話のエレンとアルミンにぴったりだなーと思ったので題名につけました。
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