ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「ついに、この日が来たか……」
今日はアングラビシダス開催の日、期待どころかお通夜ムードでオレはブルーキャッツの前にいた。
「いやー、都森くんがここにいるヤツら全員蹴散らす姿、楽しみだなー!」
「都森くんなら……楽勝だ」
当然オレを勝手に参加させやがった双子もついてきてる。あとオレの実力を買い被りすぎだ。まず間違いなく海道ジンには勝てない。それ以外のプレイヤーなら辛勝はできるだろうが、それも仙道や郷田レベルが限界だ。くじ運が良くても準優勝が関の山だろうな。
そんなことを考えながら、ユウキとムツキと共に地下への階段を降りていく。ここに来るのは二度目だが、インパクトがありすぎて久々とは到底思えない。
「あ?……ゲェッ!?て、テメェらは!?」
「なんでいやがる!?レックス直々に出禁言い渡されただろうが!さっさと出ていけ!」
「べー、だ。私たち参加者じゃないでーす!」
「残念、だったな。オレたち二人は……ただの、応援」
おい煽るなテメェら。こんな見るからに荒くれ者なヤツらがビビってるとか、一体どこまで暴れやがった……!
ユウキとムツキが参加しないとわかると、必然的に普段見かけないオレに注目が集まり……。
「お、おい……オマエ、まさか!?」
「この二人を引き連れてるってこたぁ、間違いねぇ……!」
「「影の、暴君!?」」
息のあった大声が会場に響き渡り、あちらこちらで話に花を咲かせていたヤツらが一斉に口を閉じ、こちらに視線を集中させた。怖い。
「や、ヤツが噂の……!」
「あの双子のツラですらこりごりだってのに、親玉まで来やがるとは!」
「今日のアングラビシダスも大荒れだな……」
バカ双子のせいでとんでもない風評被害くらってるのは気のせいだろうか。阿鼻叫喚する世紀末空間とかカオスすぎるだろ。
「よう、エントリーすら子分任せとは、ロールが板についてきたようだな暴君サマ?」
「……わかってて言ってるだろ、クソ野郎が」
うすら笑いを浮かべてこちらに接触してきた仙道。どこまでかはわからないが、こちらの事情を知った上でこういう物言いしてくるのは流石にイラつく。
「安心しろよ、今日でその化けの皮ともオサラバだ。オレがこのアングラビシダスで、オマエを完膚なきまでに叩き潰すことでな。」
そう吐いて仙道は背を向け去っていく。それと同時に会場が暗くなり、照明は中央一箇所のみ当てられる。
「諸君、アングラビシダスにようこそ。」
スポットライトを浴びながら、力強さを感じる声で開幕の言葉を綴る男。その人は普段ブルーキャッツのマスターであるはずだが……何度かアングラビシダスに出場していた双子共からその正体は伝えられている。
彼はレックス、伝説のLBXプレイヤーとまで呼ばれた実力者であり、このアングラビシダスの主催者だ。
「……では発表する。運命の対戦カードは、コレだ!!」
前置きが終わり、空中にトーナメント表が映し出される。総勢16名、つまり4回勝てば優勝だ。かくいうオレの名前は一番左側に刻まれており、それ以外にも……。
「お!都森くんのブロック、仙道とバンくんいるじゃん!」
「反対側には……海道ジンが、いる。戦えるとしたら、決勝か。」
なるほど、表としては悪くない。海道はどこかでコケてほしいがそれは楽観的すぎる。対してバンと仙道はどちらかが二回戦で敗れ、三回戦で戦うことになるが、これはまず仙道が上がってくるだろう。先日は本調子ではなく押されていたとはいえ、仙道が負ける様子は想像できない。
さらに、バンの初戦の相手がヤツなら、勝てはしても消耗は避けられないだろう。
「……相変わらず入り浸ってんだな、
おあつらえ向きにバンの近くにいたようで、観客スペースで二人が睨み合っているのが遠目に見れた。……世紀末衣装を着込んだあのガタイで見下ろされてほんの一瞬だけ萎縮しているようだが、山野バンの戦意は失われていないようだ。
「まぁ、初戦ぐらいは勝たないと面目ないよな。番長関係なく。」
渋々とはいえ、参加したからにはベストは尽くす。というか、こんな大勢の中で手を抜く方がリスキーだ。こんな世紀末な場所でも来ている人間は学生か社会人、下手な真似すれば地下から出ても白い目で見られるだろう。
「テメェが都森か。子分には随分世話になったぜ……。この恨み、キッチリ返してやるからな!」
試合が始まる直前に対戦相手がそう宣言すると、観客席からものすごい歓声が上がる。あの双子がどれだけのことをやったのか詳しくは知らないが、それに関しては同情しかない。かといって、その怒りをオレに向けられるのは困るわけだが。
気まずさを感じながらも、オレは無言でズールをスタンバイさせる。
「チッ、だんまりか。ならバトルで悲鳴を上げさせてやる!ナズー!」
オレのズールと相手のナズーが南極のDキューブに降り立つ。相手は水陸両用のブロウラーフレームで、武器腕が特徴のLBX。接近戦ではまず敵わない。なので、オレはいつもの如くショットガンと盾のセットだ。
しかし、ただ逃げ回る上ではこのフィールドは相性が悪い。バトル開始と共に、ナズーが牽制で武器腕から射撃を行う。盾を構えながら横にズールを走らせるが、攻撃が盾に当たる度に体勢が崩れかける。足の踏み込みが効いていないためだ。
「こりゃ儲けものだ!まさか氷対策をしてねぇとは!影の暴君だなんだ言われてるが、大したことねぇじゃねぇか!」
そう、南極のフィールドである以上、足場は全て氷で出来て滑りやすいのだ。特定の機体でないなら、適応するためのカスタマイズをしなければ動きに支障が出る。オレのズールにはそんなカスタムは施していないため、足が滑る状態で戦いを続行しなければならない。
「へっ、だったらチマチマやらずに速攻でケリをつけてやる!」
ナズーが猛ダッシュでこちらに迫ってくる。向こうはカスタマイズを怠ってはいないようで、氷に足を奪われることなく走っている。
迎撃のためにショットガンを構えようとするが、慌てた動きであったためか足を滑らせて転倒、尻もちをついてしまう。
「一発で仕留めてやる!!」
ナズーのクローアームが走ってきた勢いのまま振り下ろされる。それが当たる直前で、オレはズールを右側に転がらせて回避する。
「チッ、だが一度避けたぐらいで……なっ、コレは!?」
ズールが回避したことで外れたクローアームは氷の地面に深々と突き刺さっていた。仕掛けられていた
「うおぉぉ!?」
一直線上に爆発が起こり、ナズーの機体は上空に打ち上げられる。仕掛けたタイミングは、慌てたように見せかけて
そして、ウォールマインによって真上に打ち上げられたナズーは元々の重さに地形適応用のカスタムの重量が加算され、より落下が速くなっている。
『アタックファンクション』
その落下に合わせて、真下から高威力の技をぶつけてやれば、ブロウラーの硬い装甲でも耐え切ることはできず—。
『ライズショット』
必殺を告げる機械音声と共に、ナズーは爆発。上半身と下半身がお別れしたことで、オレの勝利は確定した。
「そんな、オレのナズーが……こんなやられ方を!?」
「やったー!さっすが都森くん!」
「見事な……ワンショット、キル。」
オレの勝ちを祝うかのようにユウキとムツキが駆け寄ってくる。側から見れば楽勝のように見えるが、実は最大の負け筋がオレにはあったのだ。
それは、水中戦。確かに南極といえば氷の大地だが、その周囲は大海原。Dキューブはそれも再現して、水中エリアもところどころに存在する。もしナズーに水中付近で立ち回られていたら、苦戦は免れなかった。だから地上戦を誘うため、あえて地形に不利なカスタムをする必要があったのだ。
「終わってるのはオレだけみたいだな。」
大人数が参加する大会では、基本的に複数のDキューブを用いて一度に試合を行うことがある。ブロック毎に行われるため今回は四試合を同時に進行しており、早くに決着のついたオレは遠目に他の試合を眺めることができていた。
「……なるほど、バンとかいうヤツ。あの時とは大違いみたいだな。」
「おぉ〜、やっぱやるじゃんあの子。」
「でも、腕が壊れた状態で仙道は……ムリだな」
スタンが解ける瞬間に破壊された右腕は、当然バトルが終わってもそのまま。次の試合までに直す時間もないだろうし、アキレスがレアなLBXであることから替えのパーツもないはずた。万全な状態で望めななら仙道に勝つことは苦しいだろう。
「さ、そろそろ次の試合の準備でもするか。」
他人にばかり気を向けて己の準備を怠るのは笑い話にもならない。ほぼノーダメージだったとはいえ、メンテナンスはしっかり行うべきだ。
そうして迎えた第二回戦、ズール同士の対決で始まった戦いは終始順調に進み、難なく突破できるかと思いきや—。
「このままやられるぐらいなら、大枚叩いて勝ったこのグレネードで!……あっ。」
「は?」
続く二回戦、その決着は大量のグレネードが誤爆し、互いのLBXが巻き込まれたことで終わった。
原作の方でもここら辺の戦いは相打ちで終わってた気がするので爆発オチにしました。片方のズールはなんとか原型留めてるので、バンくんは原作と違って決勝前にもう一戦やることになります。