ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「さて、どうしたもんか……。」
第二回戦を終えて帰ってきたズールには左腕がなく、両足も傷だらけで今にも取れてしまいそうだ。最後の最後に放たれたグレネードの内一つが想定外の動きで飛んできたために、回避も間に合わずモロに受けた結果がコレである。ギリギリでブレイクオーバーこそしなかったものの、これでは次の試合には出られそうにもない。いや、本来であればこれぐらいならパーツを取り替えるだけでもなんとかなる。左腕諸共飛ばされたとはいえ、シールドが防いだおかげで上半身はほぼ無傷で内部のコアパーツにも損害は見られないからだ。
問題は別にある。それも至ってシンプルなもの。……修理用の予備パーツを持ってきていないのだ。塗装やカスタムまではされておらずとも、市販品のズールのパーツであれば誤魔化しは効く。しかし、急遽参加が決まった大会にそんな準備ができるほどオレも用意周到ではない。
(……待った、この状況はむしろ都合がいいんじゃないか?)
ここでオレの脳内に電流が走る。確かにオレのズールは治せれば次のバトルにも出せる。しかし、治せないなら当たり前だが不戦敗となる。つまり、戦闘不能なズール(修復可能)を抱えてさっさと大会から抜け出せるというわけだ。アルテミスへの出場権だって別に欲しいわけじゃない。このアングラビシダスにすら元々参加するつもりもなかったし、続ける義理ももうないだろう。
「あ、都森くん!二回戦お疲れ様!」
「最後のさえ、なければ……完封だったのにな、ドンマイ。」
来やがったな元凶ども。まぁ、欠場するなら先にコイツらに話通した方がいいか。この大会の手続きのやり方とか全く知らんし。
「あー、残念だけど……パーツの替えがなくて修理できないんだ。推薦を受けた身で悪いとは思うけど、今回はここまでで……。」
「え、パーツ?余ってるのあるよ。」
やっぱ何も言わずに立ち去っとけばよかったかもしれない。
「……次の相手は、やはり勝ち上がって来やがったか。」
二回戦の試合が全て終了し、トーナメント表に残るのは4人の名前……準決勝の組み合わせが確定していた。郷田はバンの次の相手を見て、目を細めていた。
「都森、ミソラ三中の番長……郷田や仙道と同じレベルってなると油断できないよな」
「イノベーダーの刺客……かもしれない事を考えれば尚更ね」
当の本人はイノベーダーのイの字も知らない全くの無関係なのだが、思わせなぶりな態度をしてしまったことで誤解が広まっていた。
「マスミの使うズールはナイトフレームの中でも性能が良い……けど、郷田のハカイオーや仙道のジョーカーみたいに尖った強さはない」
「そうだ、アイツの真の強みは機体性能をフルに活かす操作テクニックと状況把握によるカウンタースタイル。遠距離主体の相手でもなければヤツから仕掛けることはないだろうよ」
郷田と仙道、その双方を一度に相手にしても目立ったダメージを与えられぬ程の立ち回り。普段はイカれた取り巻きが派手に暴れる様を高みの見物をするように佇んでいるが、それは都森が攻めた行動をあまりしないことも示唆していた。
郷田だけでなくカズやアミから聞いた噂、ユウキやムツキと戦った経験とゲームセンターで実際に見た動きからも都森の戦闘スタイルを把握できるほどに情報は得られていた。
「でもアキレスの修理は間に合ってるし、いざとなればVモードもある。接近戦にさえ持ち込めれば、勝機はある」
先程の仙道との戦いで、これまで暴走するしかなかったVモードがバンの意思で制御できるようになった。これを利用すれば多少の実力差があろうと十分に勝負をひっくり返せる。
「そうだ、と言ってやりたいところだがな……」
(ヤツが何の対策もなしにアキレスと戦うか?)
イノベーダーの刺客であろうとなかろうと、都森はアキレスとのバトルを望んでいた。加えて、都森は2回戦でほぼ大破しかけたズールの調整を行っている。その時間があまりにも長いと郷田は感じた。都森が自身のLBXに細かいカスタムを施すことは付き合いの長さで知っているが、それでも長すぎる。
その違和感はバンも抱いていた。以前見た都森のズールのカスタムはバンの目から見てもかなりの腕前、そんな彼がただの修理やカスタムで苦戦する姿は想像できなかった。
「いや、深く考えすぎても空回りするだけだ。オレもオレにできる最高のカスタムで戦うだけだ!」
「……だな、相手の出方を疑うだけなんざオレらしくもなかった。漢なら真っ向勝負!都森なんざぶっ倒してやれ!」
「ふぅ、なんとか間に合ったか」
新しくパーツを加えたズールを隅々までチェックする。自分で言うのもなんだが、オレはLBXのカスタマイズは得意だ。本来であればパテもりやニクぬきによる動きのブレなども見たかったが、そこまでの時間は取れない。いつもとは条件が異なる形だが、それを抜きにしても自分にできる最高のカスタムができたと自負している。
「おっ、もう仕上げたの?さっすが都森くん!」
「そこらで、ウロついてた……郷田の舎弟どもを追い払った甲斐は、あったな」
「……今は追い払っただけで済ましたと思ってやる」
どうせLBXバトルに発展したに決まっているがこれ以上気にしてたら試合への集中力が持たない。カスタムしたズールとCCMを携え、準決勝の場へと赴く。
(ま、参加すること自体マイナスでしかないと思ってたが、少しはプラスの要素もあるか)
LBXを豪快に破壊される可能性はあるわ目立つわでオレが好む要素はアングラビシダスにはなかった。しかし、対戦する相手は別だ。
「よぉ、白いLBX使いの二中生」
「っ……都森」
不敵な様子で話しかけてきた都森を警戒の目で睨むバン。不気味さという観点では、仙道以上のものなのかもしれない。
「先日はウチのバカどもが悪かったな」
「……舎弟の仇撃ちか?」
「まさか、返り討ちに遭わせたならヤツらにも良い薬に……は、なってない、かもな……」
嬉々としてリベンジマッチを申し込む姿が頭に浮かんでしまったため、さっさと話題を変える。
「正直嫌々だったが、オマエと戦えるなら悪くはない」
「やっぱり、狙いはアキレスか……!」
「そりゃあ、な」
口角が自然と吊り上がる。
「そんな珍しい機体晒しとして、興味持たない方がおかしいってもんだろ」
オレにとってこんな楽に楽しめるホビーは他にない。あの双子に振り回されるまでもなく、バトルはそれなりに好きな方だ。見たことのない、全く新しい機体を前に、オレは初心に戻っていた。
「いこうか、ズール」
Dキューブにオレのズール……いや、細かくいうならズール
脚部はガッシリとしたブラウラーフレームのカブト、そして両腕はパンツァーフレームのタイタンの腕……いわゆる武器腕が装備されていた。これまでのバトルからは想像できないほどの重厚なズールを前にバンも驚きを見せるが、それも一瞬のことだった。お互い集中力のほとんどがバトルに向けられているようだ。
「いくぞ、アキレス……!」
バンが細かく呟くと同時に、決勝進出をかけた戦いが始まった。
対仙道でバンがハカイオーの腕をアキレスにつけたように、手足おじゃんになったズールが魔改造されました。パーツの調整どころか黒塗装まで抜かりなくされていたり。
というわけでバンくんとの初バトルです。原作準拠するなら結果は見えてるようなものですが、その分過程を白熱させられたらと思っています。