ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「なっ、アイツ……ここに来て大胆なカスタムしやがった!」
「ウソでしょ!?パーツも武器種も変えてくるなんて……」
事前情報とはあまりにも異なるLBXを繰り出した都森の正気を疑う郷田とアミ。幾度も戦ってきた郷田すらも都森がショットガンやズール以外のパーツを使うところは見たことがない。
一挙手一投足が重要となるLBXバトルでは、性能だけでなくその練度も求められる。少なくとも大会という土壇場で初めて使うパーツを持ってくるなどありえないのだ。
「そうか!都森のズールはさっきのバトルで受けたダメージで、普段通りのカスタムに直しきれなかったんだ!急場凌ぎのカスタムなら、今のバンの敵じゃねーぜ!!」
「おやぁ?都森くんの怖さを知らないカワイコちゃんはだーれだ?」
楽観視するカズの真横に、ユウキの頭がヌッと割り込んできた。
「うぉわぁ!?い、いつのまにっ!?」
「たった、今……だ」
ユウキとムツキ、周囲からは都森に従順な(ように見えるだけで振り回している)舎弟二人がバン側の陣営に混ざり込んでいた。
「都森くんねぇ、確かに普段はショットガンばっかりだけど……実はアレ
「……おい、そりゃどういう意味だ。都森は今まで本気じゃなかったとでも言うつもりか?」
「いいや……本気だ。だけど……全力じゃ、ない。このバトルを見れば、わかる」
黒いズールCを前に様子を窺うアキレス。バトルが始まってからお互いに目立った行動はしておらず、ズールがブロウラーフレームを地面に踏み込ませながらゆっくりと間合いを詰めようとしていた。
(ブロウラーフレームならパワーはあっても小回りは効きにくい、ゆっくり移動してこっちの動きを見てるんだ。……でも、重そうに動いてるのはブラフだ。メインがナイトフレームだとしても、あの歩き方は
バンは以前、誰よりも間近で都森のズールを見たことがあった。ニクぬきとパテもりの絶妙なバランス。それが平均的な性能のナイトフレームながら、郷田や仙道のLBXとも渡り合える地力を発揮しているのだ。
そこに拘る人間だと知っているからこそ、見破れた。あのズールCのカブトの脚部はニクぬきされている。だからこそ、踏み込んでくる間合いもバンの想定より……早い!!
「ぐっ……!!」
「へぇ、やるじゃないか」
そこらのプレイヤーであれば様子見が順当な間合いで、ズールCは跳んできた。勢いに任せ、されどもコンパクトな振りで出されたドリルの拳がアキレスを盾の上から押し出した。
あと少しバンの反応と判断が遅ければ、そのドリルはアキレスの装甲を削っていただろう。
「だが……これで流れはこっちのもんだな!!」
左右のドリルアームが交互に襲いくる。もちろんアキレスもアクションを起こすが、盾を構えれば防戦一方、槍を突き出せば躱わされて反撃のジャブが一発。これはマズイと後ろに引けば、それと同時に詰め寄られ、左右に動けばクルリと周り、死角スレスレで拳が突き出される。
「こんな戦い方、前とは違いすぎる……!」
今回のズールCにおいて、都森はアキレスに対抗できるだけの仕上がりを見せた。しかし、覆せない課題は幾つかあった。その一つが、リーチ差だ。タイタンの武器腕にも射撃機能は搭載されているが、それのみで戦えば火力差で押し切られる。となればナックル主体で戦う必要があるが、アキレスの武器は槍であるため、こちらの攻撃が届く前に貫かれる可能性の方が高い。
そこをもう一つの課題であるブロウラーフレーム採用による機動力の低下を、ニクぬきによって補うことで意表を突くことに成功したのだ。
「お、おい、アキレスが一方的にやられてるぞ!?」
「これが、都森の本気……!」
ハカイオーのようなパワーもなく、ジョーカーのようなスピードもない。ただ一手一手を潰され、読まれ、先打ちされていく。機体性能以上にLBXプレイヤーとしての技量と戦闘センスでバンを追い込んでいく様は、郷田や仙道とは違う静かな圧を感じさせていた。
「まぁ、手数で押せてはいるけど、こういう時都森くんなら……」
「『ショットガン三発ぶち込んだ方が早い』……だな」
アミとカズとは違い、ユウキとムツキは難色を示していた。その理由に郷田は気づいていた。
「……武器の振り、か。確かにバンのペースを乱すよう攻撃を続けちゃいるが、完全に抑え込もうとしてローリターンな動きしかしてねぇ。見かけよりダメージは入ってねぇだろうよ」
都森のカウンタースタイルは近接戦においても十分な力を発揮している。しかし、リスク以上のリターンを取る気が全くないのだ。欲張った動きから生じる隙を嫌い、あくまで安定択に拘っている。塵も積もれば山となるとはいうが、この立ち回りを貫くなら都森は有利展開を維持し続ける他なく、都森本人の疲弊が先に来るだろう。
その消耗を嫌っているからこそ、武器を強く振るう必要もなく、威力も射程も優秀なショットガンの使用を都森は好んでいたのだ。
「このままじゃ互いにジリ貧だ。どうするバン、都森……!」
「ふっ……っ……!」
(流石に、対応されてきてるな……。ダメージは与えられちゃいるが、あと何発必要だ……?)
序盤から上手いことカウンターを決め続けてダメージを稼げてはいたが、アキレスも動きが洗練されて最小限の動きをするようになった。これでは今までやってきた動きにも多少のリスクが生まれてくる。
ならばと、次のカウンターは少し大振りにした。ダメージレースは有利だが、このままではズールより先にオレがバテる。
しかし、どうやら向こうは隙が広がるのをずっと狙っていたらしい。
「今だッ!!」
腕を振り抜くより先に、大型の盾によるタックルがズールCの機体を捉える。槍ではなく盾の攻撃であるため、ダメージは少ない。……が、ここで脚部をニクぬきした裏目が出る。総重量が軽くなったことで、このタックルにより後退する距離も増えてしまったのだ。
「これで決める、Vモード起動!!」
『アドバンスドVモード』
アキレスの身体が黄金に輝く。話には聞いていたが、実際に目にするのはこれが初めてだ。
「いっけぇぇぇ!!」
「
だからこそ、対策は練ってきた。アキレスの突撃に合わせ、ズールCの右腕を勢いよく振り抜く。このバトルが始まって初の豪快な振りによって、右肘に隠れるように搭載されたグレネードが火を吹いた。
(よし、直撃だ!虎の子の
ヒートグレネード、それはアンリミテッドレギュレーションでもなければ許されない程の強力なアイテム。当てれば対象のLBXをオーバーヒート状態、簡単に言えば攻撃を始めとした行動に大幅な制限をかけられる。
Vモードが制限時間付きの形態であることは断片的な情報からでも読み取れた。ならば攻めの手だけでも封じればやり過ごせる。一つしかないため確実に当てる必要があったが、そのために徹底的なインファイトとその最中に見せた
大技の必殺ファンクションでは間に合わず、普通に攻撃しようにも余裕のある間合い、この二つを満たせば必ずVモードを切ってくる。その読みは見事に当たった。
ここで想定外が起きた。アキレスの槍が勢いを落とすことなく突き出されてきたのだ。
「なんっ!?」
元々防御姿勢を取っていたことから致命傷は避けれた。しかし盾もない武器腕で受けたため、無視のできないダメージが入ってしまう。
(外した?いや、確実に当たっていた。回避や防御も間に合うはずが……
一回戦の段階ではガトーの使ったスタングレネードで身動きが取れなくなっていた。もし今回スタングレネードが通じてないだけなら、何かしらの対策をしていたで済む。だが、恐らく初見のはずのヒートグレネードが意味を成していないのは何故か。一回戦の時と条件が違うとすれば、それはVモードだ。
都森どころかバンもたった今知ったことだが、Vモード中のアキレスは相手による状態異常の類いは全て無効化する。この耐性の前に、都森の切札はあっけなく防がれたのだ。
「なんつーLBXだよ……!」
愚痴の一つも言いたくなるほどの理不尽。だが、都森はまだ勝負を捨ててはいなかった。パワーもスピードも向こうが完全に上回り、被弾も多くなった。それでも一手先をなんとか見切り、耐えに耐えていた。
(とはいえ、Vモードがこのまま続くようならこのまま削り取られる。さっきとは立場逆転だな……!)
Vモードが時限式であることは読めている。問題はどこまで続くか。ヒートグレネード直後に受けた一撃でズールの耐久力は半分以下にまで落ちていた。そう長くは受けきれないため、勝ちにいくならどこかで仕掛ける他なかった。
一方で、バンも内心危機感を抱いていた。ズールにダメージを与え続けてはいるが、恐らくズールを倒す前にVモードが終わってしまうと見ていた。もしズールに少しでも体力が残ったのなら、先程のようなラッシュに持ち込まれて今度こそやられかねない。負けないためにここで削り切るのが得策だった。
決着の時は近い、先に動いたのは…………。
(ここしかないッ!!)
都森だった。
「あの動きは……!」
ズールの左腕が勢いよく振り抜かれる。そのモーションは、先程右腕からヒートグレネードを切り離した時と良く似ていた。……しかし、何も起こらない。ズールはただ左腕を思い切り振っただけなのだ。これ以上の隠し玉はもうない。それをバンが知る由もない。攻撃の
ズールの右腕、タイタンのドリルがアキレスのボディに接触する。
「捉えた!このままカチ上げてやる!!」
ドリルを回転させながら、そのまま腕を振り抜いてアッパーに派生させようとする。空中に打ち上げれば、更なる追撃でアキレスのLPを削り切れる。
豪快なフェイントによる完璧な戦術は……バキリという音ともに瓦解した。
ズールの首がフィールドに転がり落ちる。それが元あった場所には、アキレスランスの切先が置かれていた。
「……オレらしくもない博打要素に無理なカスタマイズ。そりゃ下振れ引いても納得だな」
もしVモードにヒートグレネードが効かないことを知っていれば他にやりようがあったろうが、通常のグレネードは二回戦の誘爆から抵抗があり、スタングレネードは向こうが一回戦でやられているので対策されている可能性もあった(そもそも持ってないが)。
「……都森」
思考にふけているとバンがこちらに歩み寄ってきた。
「良いバトルだった!またやろう!」
無法の大会には似合わない純粋な称賛。最初の嫌疑的な態度とは正反対の行動に面くらったが、こちらも視線を合わせて言葉を返した。
「二中の……山野バンだったな。
背を向けて立ち去る。さっきのバンの表情でようやく思い出した。前にも見たことがある。
「……あの時のLBXオタクがここまで来るかよ」
河川敷からの奇妙な縁がまた巡ると見越して、ズールの予備を持っておくことにしよう。
「やったなバン!仙道に続いて都森までぶっ倒すとは!」
「一時はどうなることかと思ったぜ……ヒートグレネードまで持ち出してくるもんな」
見事に勝利し、準決勝へとコマを進めたバンを仲間達が迎える。近くにいたはずのユウキとムツキはいつのまにか姿を消していた。
「それでバン。さっき都森と話してたけど、もしかして……」
「うん、都森もイノベーターの刺客じゃなかった」
バンはアミの問いかけにハッキリとした答えを出した。イノベーターの刺客、それがアングラビシダスの場に紛れていることしか知らない。故に都森も刺客である可能性はゼロではなかった。だからこそ、先程の戦いでバンは確信を持てた。
「アイツはここにいる誰よりもLBXバトルを楽しんでた。そんなヤツがLBXを悪用するイノベーターに加担するはずがない」
「都森くんおつかれ〜。いやー、急場凌ぎで都森くんがあそこまで戦えるのビックリしちゃったよ!」
「オレ達の目に……狂いは、なかった」
オレを出迎えたユウキとムツキは、二人して腕組みながら頷いた。そんな双子に近寄ったオレは……。
「フンッ!!!」
「「ブッ!?」」
互いの頭を引っ捕らえてぶつけ合わせた。
「テメェら、オレに言ってないことあるよな?」
デコを抑えて悶絶する二人を見下ろす。今になってようやく違和感に気づいた。というのも、準決勝開始前の山野バンがヒントになった。アレは明らかに、誰かを……いや、もっと大きな何かに警戒している様子だった。
「今やってる大会に普通じゃ考えられない何かがある……っていうのはこの際どうでもいい、関わりたくもない。問題は、それと似たようなことが起きてないかってことだ」
「「ギクッ」」
わかりやすい反応を他所に、淡々と推理を進める。
「まずオレがアングラビシダスに出るのは普通にありえない。逆に通いまくってるどっかの誰かさん達に勝手にエントリーされなきゃな」
あまり荒事を好まないオレにとって、アンリミテッド主流の大会など眼中にない。すでにエントリーが完了していたこともあって渋々出場したが、アルテミスへの切符がかかっているだけあってオレの参加は周囲にとって納得できるものだっただろう。問題はそのアルテミスだ。
「それに、いくらアルテミスの出場権がかかっているとはいえ、わざわざアングラビシダスに狙い絞るのもおかしな話だろ」
参加者の数に比べれば破格の賞品ではある。だからといって、わざわざオレだけをアングラビシダスに送り込むとは思えない。むしろオレ含め三人で出れる大会を探して暴れ散らかす姿の方が納得できる。この双子の主導でないこともハッキリした。
「つまり、オマエらにオレをこの大会に参加させるよう唆したヤツの狙いは、アンリミテッドレギュレーションでの連戦にオレがどこまで対応できるか知ることだ」
第三者の存在、それが加われば腑に落ちる。ユウキやムツキを利用してオレを間接的に参加し、人の多いこの場でソイツは姿を眩ませ悠々と観戦できる。
「となれば……まだここにいる可能性はあるな」
まわりくどい手を使ってきた主犯を暴くため、観客席をしらみつぶしに探し始めることにした。
バトル描写もあってだいぶ長くなってしまった……。当初はゼロ距離ヒートグレネードで互いにオーバーヒート、耐性を積んでいたズールCが僅かに早く回復し、手痛い一撃を喰らわせるといった流れを想定していましたが、ファイナルブレイク失敗以外ではオーバーヒートにならない事に気づいたので手直ししました。
都森くん、実はナックル武器もやれないこともないことが判明しましたが、普段は片手銃を使っていることから熟練度は低めです。キャラ付けのために基本ショットガンですが、別武器を使う機会も増やす予定です。