ミソラ三中の番長   作:箱の中の破壊神

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壁に突き当たる男

「さーて、どこにいやがるあのヤロウ」

 

 

 通路を辿り目的の人物を探す。すでにここを去っている可能性も考えたが、先程の試合からそう時間は経っていないため捕まえられる可能性も高いと踏んでいた。むしろ決勝を控えたタイミングで出ていこうとするならば少しは目立つはずだ。

 そう思って早めに動いたはずなのだが……。

 

 

「……都森マスミ、ここで何をしている」

 

 

「!!???」

 

 

 鉢合わせになったのは海道ジン。え、準決勝は?……そういえばコイツ毎試合ソッコーで終わらせてたわ。秒殺の皇帝の恐ろしさをこんな形で味わったのは後にも先にもオレだけだろう。

 

 

「……あー、連れを探してる。白髪の、ちょうどお前ぐらいの歳のヤツ。だから今は用はないぞ、秒殺の皇帝」

 

 

 他に目的があることを告げ、敵意がないことを示す。とはいえ、コイツも山野バンと同様レアなLBXの持ち主。いずれバトルしたいとの意も込めた。

 

 

「今は、か…………一つ警告しておこう。キミは関(・・・・)わらない方がいい(・・・・・・・・)

 

 

 かなりハッキリ断られた。まずい、そういえば準決勝終えて決勝控えてるんだったな。なら神経質になってても不思議ではないか。ここは刺激しないように……。

 

 

「そうか、なら今回は引き下がる。決勝頑張れよ」

 

 

「……今後も無闇に近づくのは自重してもらいたい。でなれけば、命の保証はできない」

 

 

 なるほど、命が惜しければもう寄ってくるなと。短時間で好感度の下がり方がえげつない。……そういやオレ、そもそも評判悪い側の人間だったな(主にユウキとムツキのせい)。そりゃ第一印象マイナスから始まってもおかしくはない。

 本気でイメージ回復に取り組むべきかと考える内に、ジンはその場を去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(都森マスミ、間違いない。彼はイノベーターの存在(・・・・・・・・・)を知っている(・・・・・・)……!?)

 

 

 自身の情報網を駆使して都森マスミのことは調べていた。総じて普通の学生であると判断したが、あの短い問答でジンは都森への警戒度を急上昇させた。足早に去ったのもこれ以上探りを入れられまいと内心思ったからだろう。

 

 

(都森マスミにイノベーターを追う動機がないわけではない。もしそれが原因で動いているなら、見逃すこともできない)

 

 

 ジンの収集した情報から推測する都森の動機。それが当たっているのなら、都森はイノベーターにとって無視できない存在になるだろう。

 

 

「釘は刺したが……都森、キミはその名前だけでも危険だ。イノベーターだけでなく、キミ自身にとっても」

 

 

 

 

 

 

 

 

「都森マスミか……」

 

 

 アングラビシダスの会場、その全貌を一目に見れる特等席に座る今大会の主催者であるレックスこと檜山蓮はある選手の名を口にした。

 

 

「アイツのバトルを直に観るのは初めてだが、あれほどとは」

 

 

 都森マスミの事は知っていた。いや、イヤでも知っていた。主にその舎弟がアングラビシダスで暴れ散らかしたからだ。無法にも限度はあるため出禁にはしたが、今度はその親玉が出場するとなっては流石のレックスも一瞬肝を冷やした。郷田から双子が特におかしいだけと知らされていなければ胃薬でも飲んでいたところだろう。

 

 

「バンとアキレスを相手に急場凌ぎのカスタマイズと、得意の中距離ではなく近距離での戦闘スタイルを強いられながらも善戦。適応能力に関してはこの場にいる誰よりも秀でている」

 

 

 準決勝の都森にはあまりにも不利な要素が多かった。カスタムしたLBXも戦闘スタイルも急拵え、相手は万全の状態の最新鋭機を使い戦闘経験も豊富。何よりVモードという破格の強化を自在に扱えるようになるなど。その上で山野バンと五分以上の勝負をやってのけたのだ。

 事前情報のない機体とスタイルという点ではメリットもあるとはいえ、この場にいる殆どの人間が都森の実力が噂以上のものだと認識しただろう。

 

 

「だが、その一方で欠けているものも多い(・・・・・・・・・・)。それに気づけないようであれば……それまでの男だな」

 

 

 都森についてそう結論付けたレックスは、まさに運命の一戦となる決勝の舞台へと意識を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、オマエでもこんなとこに来るんだな」

 

 

 観戦スペースから一歩引いた人気のない場所。かえって浮いてもいたが周りの観客は決勝戦に釘付け、誰も彼女に気づいていなかった。ソイツだけを探していたオレ以外は。

 

 

「……その問いは不毛。私に辿り着いた時点でわかっているはず」

 

 

「なら本題に入るか。よくも勝手に参加させやがったなテメェ、オレはアンリミテッドも大会もノーサンキューなんだよ」

 

 

 歓声に掻き消されぬよう目と鼻の先まで近づく。白い髪と赤い目の少女、忘れようもない。オレの日常に更なる刺激をプレゼントしたにっくき後輩、志島ユナだ。

 

 

「でもアナタは勝ち進んだ」

 

 

「外聞気にしてんだよ。適当にやって適当に敗退すれば誰の印象にも残りづらい」

 

 

 この場で下手なマネをすれば袋叩きにされかねない。それが面倒だから参加して戦わざるを得なかった。影の暴君なんて異名もなければ事故に見せかけて初戦敗退も考えていた。二回戦が終わった時なんてフェードアウトする絶好のタイミングだった。余計な事を言ったりされなかったりすればの話であったが。

 その先が志島ユナにとって不可解だった。

 

 

「準決勝の時だけは本気で勝ちを狙っていたように見えた。勝てば決勝、目立ちたくないというアナタの目的とは相反する」

 

 

「目をつけた相手と戦うチャンスだった。それをふいにできるほど冷めてもいない」

 

 

 戦うしかなくなったのなら、自分のささやかな欲望に従うことがせめてもの抵抗だ。見たことのない最新LBXに、強化モードというこれまでになかったシステム。それと一戦交えられたのは不幸中の幸いだった。

 

 

「まぁ、負けたこと以上にオマエの思惑通りになったのはものすごく癪だけどな」

 

 

「データは十分に取れた。都森マスミのアンリミテッドレギュレーション、それも連戦でのポテンシャルがどれほどのものなのか」

 

 

 志島ユナの目的は変わっていない。都森マスミに勝つためのデータ収集に、アングラビシダスが絶好の機会だっただけだ。先輩である双子に賄賂という名のレアなウェポンを渡してまで行った計画は、見事に完遂された。

 

 

「確かにアナタは普通のLBXプレイヤーより数段上の実力を持っている。飛び交う噂もデタラメではないと確信できるほどに」

 

 

「その噂さえなければオレは満足なんだけど……」

 

 

「けど、それ以上のプレイヤーに届くビジョンが見えない」

 

 

「……あ?」

 

 

 眉間に皺が寄った。

 

 

「ローリスクハイリターンを忠実に行う戦闘スタイル、その一番のメリットは楽に勝てるということ。目立ちたくないアナタは労することを嫌っているからそれを好む」

 

 

 観察のためだけに手の込んだマネをした甲斐あって、その分析は正確だった。目立ちたくない、疲れたくもない、バトルにも勝ちたい。その傲慢な願いが形になって凝縮されたのがオレの戦闘スタイルだ。

 

 

「今のアナタに決定的に欠けているのは勝利への執念。準決勝の時は山野バンと戦えたこと、それだけで満足してしまっていた。私はそれが敗北に繋がったと考えている」

 

 

 勝ちたいというエゴはある。だが、それは絶対と言えるほどじゃなかった。実際に準決勝の場に赴くまで、オレは後ろ向きだったから。もし勝利を狙いに行くなら、自主退場なんて選択肢にも入らない。

 

 

「今で満ち足りてるというのなら、構わない。……けど、少なくとも私は」

 

 

 そうこう話している内に、アングラビシダスの決勝戦が終わりを告げた。Vモードと必殺ファンクション、持てる全てをぶつけたアキレス。しかし、ジ・エンペラーには及ばず、ハンマーの必殺ファンクション『インパクトカイザー』を構える。

 そこでバトルは終わった(・・・・・・・・・・・)。そう、インパクトカイザーは放たれなかった。ジンの操作に追いつかなかったCPUがシステムエラーを起こしたことで、ジ・エンペラーは沈黙してしまったのだ。

 

 

「私は、遠くない内にアナタを置いていくことになる」

 

 

「……………」

 

 

 続くセリフは心なしかハッキリと聞こえ、何故かオレは立ったまま動かなくなったジ・エンペラーの姿から目が離せなかった。




 都森くんがアングラビシダス出場することになった原因は志島ユナの暗躍でした。直近めっきり出番なかったのも伏線だったり。
 アングラビシダス編は終わり、次はどのシナリオで原作キャラと関わることになるのか……。
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