ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「ちっ……もう、動けない、か」
「あと一機やり損ねちゃったなぁ〜……逆に言えば、都森くんの活躍が見れる!さぁ派手に行こー!!」
3vs3のLBXバトル。ユウキとムツキは普段通り2機で突っ込み、相手に損害を与えたものの無理が祟って同時にブレイクオーバー。かろうじて猛攻を免れた最後の一機とオレのズールの一騎討ちになった。
しかし、当のオレは心ここに在らずだった。
「…………」
「く、クソォ!!」
「お、おい待て!突っ込むのはマズイ!!」
流石にオレの戦闘スタイルがカウンター気味な事が知られているのか、すでにLBXをやられたお仲間が制止の声を挙げた。しかし冷静さを欠いた突撃は止まらず、相手のウォーリアーはダッシュの勢いを乗せたナックルを振り抜いてしまう。
そうして、棒立ちだったズールは地に伏していた。
『ッ……!?』
その場にいた全員が絶句していた。やぶれかぶれの一撃が命中したのだ。影の暴君と呼ばれ、確かな実力者であるオレのズールに。掠ったのではなく明確なクリーンヒットが。
「は、ハハハ!!なんだ脅かしやがって、なにが影の暴君だ!このままスクラップにしてやる!!」
「…………!」
片や自暴自棄から、片や放心状態から我に帰り、バトルが続行する。しかし、先程の一発で流れは完全に向こうにあり、オレのズールは銃を構えることもできず防御に徹していた。
「へへ、もう逃げられねぇぞ!」
攻撃を受けながらも距離を取ろうと後退し続けた結果、ズールはジオラマ内の崖を背にしてしまう。
「これで終わりだぁ!!」
ウォーリアーのナックルが迫る。と同時に、オレはズールを前進させ、スレスレでナックルを回避した。交差際に蹴りをお見舞いしながら。
これによりズールとウォーリアーの位置関係は逆転し、相手が崖を背負うことになった。
「ハァ…………」
間髪入れずにショットガンを放ち、ウォーリアーは壁に叩きつけられる。この距離であれば本来は後ろに吹っ飛ぶのだが、崖を背にしていることで距離が離れることはない。衝撃も逃げないため、この場所はショットガンの独壇場とも言える。
そのまま銃を連射する。こうなってしまえばただ引鉄を引くだけで勝利が確定したようなものだからだ。
「ま、待てよ!もう勝負はついて……!」
だからだろう。ブレイクオーバーしていたことにも気づかず、オレはショットガンで何度も
「お、オレのウォーリアーが……」
「いくらなんでも、これはねぇよ!」
「影の暴君、番長の中でも一番危険って噂はマジだったのか……!」
また尾ひれのついた噂が流れていたが、今回ばかりは否定のしようがない。他ならぬ自分の行動によってこの惨状を引き起こしてしまったからだ。自分への苛立ちからか、深い溜息が溢れる。
「ヒッ!?に、逃げるぞ!」
怯えきった不良達が急いでこの場を去っていく。……この峡谷のDキューブ、アイツらのなんだけどな。
「いやー、ビックリした。いくらやられるフリが上手いからってアレはヒヤヒヤするよ……」
「いつもとは、違った……な」
いつもは自分たちがめちゃくちゃしてるクセに、コイツらも引いてやがる。……まぁ、アンリミテッドでもないのに自ら破壊するまで攻撃したのはこれが初めてだったからな。
「帰るわ」
それだけ言い残して、オレはユウキとムツキを置いて帰路につく。二人もそれを追う事はしなかった。
「ただい……うっ!?てめっ、
家の扉を開けるなり酷いアルコール臭が嗅覚を刺激した。
「ケッ、飲もうが飲ままいがオレの勝手だよ。テメェが心配するほどヤワな身体してねぇんだ」
顔を真っ赤に染め、呂律の回らない口で言い返す。ボロボロの白衣に見事なU字ハゲ、その装いは典型的なヤブ医者そのものだった。
このだらしない男こそ、幼いオレを引き取った現保護者……なのだが、未だに名前は知らない。それっぽい呼び方でもしてろとのことだったので、それなりの付き合いになった今ではヤブ医者かジジイ呼びだ。
「ったく、性懲りもなく酒瓶散らかしやがって。たまには自分で片付けろよな」
「へいへい、わかったわかった」
いい大人が次もやらかすガキの物言いするな。
「そうだ、オマエこういうの興味あるか?今日拾ってきたんだ」
「ギリ中学の青少年に
「なんでい、
「ぐっ……!」
気の遣い方が下手なクセに、人の悩みに気付けるほどにはカンが鋭いのがこのジジイの食えないところだ。
「強さの限界が見えてきたとか一丁前なこと考えてんじゃねぇぞ?限界なんて来て当然なんだよ、それ以上はねぇ。だが、そう思っちまう内は視野が狭いだけだ」
「視野が狭い、だって?」
顔を赤くしたまま真面目な表情でジジイがもっともらしいことを話し始める。
「人は何かを選択して生きる。だがな、誰しもその何倍以上にもやってることがあるんだ。わかるか?」
「……謎かけなら付き合わないぞ」
「ちったぁ付き合えよ…………正解は
シンプルだが確かな答え。オレの事例に当てはめるなら、オレはLBXも武器も戦術もほぼ全部決まったものでしか戦わない。その分内装の改造で誤魔化しているが、それ以外の使用を全くと言っていいほど試さない。なんせ、これまでそのやり方で勝てていたから。
「今になって悩み始めたのは、その選ばなかった領域に踏み入ったからだ。失ってきたものの多さに今更気づいて途方に暮れてるのさ」
……確かに、足りないものは沢山ある。
「ま、解決したいならその分足掻くしかねぇってこった。どれだけ小さなきっかけからでもいい。それでダメなら……今度イイ店にでも連れてってやる」
「一人で行け節介ジジイ」
「というわけでテメェら、久々に相手してやるよ」
「やったー!都森くんとのバトル!!」
「そういえば……ここ最近は、やれてなかったな」
翌日、早速オレはユウキとムツキに声を掛けた。なんだかんだ言ってオレの無茶振りに付き合わせるにはコイツらが適任だった。後草れも遠慮も後悔も罪悪感も抱かないし。
「ところで……質問いいか?」
「なんだムツキ、珍しい」
目の前に人参垂れ下げた馬のようにバトルにがっつくヤツが、このタイミングで口を挟むことは早々ない。そんなムツキはオレのズールの普段と違う一点を指摘した。
「武器、どうした」
今のズールの武器は、いつものようなショットガンと盾のセットではない。というか……なんもない。強いていうならナックルだ。それも、後付けではない
そう、今回のオレのズールは武器を捨てた素手で戦うつもりなのだ。
「あぁ、コレね……オマエら相手にはこれで充分、とか言ったらどうする?」
「あっははは、やだもぅ都森くんったら〜」
「フッ……」
煽りに対してユウキとムツキは軽く流し、三人揃ってひとしきり笑った。その後ユウキはふぅ、と一息ついて。
「ナマいってんじゃねぇよ。しばくぞワレ」
「轢き潰す」
二人は煽りに対しては寛容な方である。しかし、手抜きをされることには我慢ならなかった。素手という舐めプは見事に双子の地雷を踏み抜いた。
青筋立てて目を見開いてる二人と同時に、オレもLBXを構える。こうして新たな境地に踏み入るため、バトルを仕掛けたオレの心境は……。
(マジギレしたこいつらコエェェェェッ!?しかも、二人同時!?タイマン2回の予定だったのに!誰か助けてぇぇぇぇぇ!!)
内心めちゃくちゃに及び腰だった。もう自分の軽率な行動に後悔抱き始めている。そんなことは梅雨知らず、ユウキのアマゾネスとムツキのカブトは、いつにも増して荒々しく攻撃を仕掛けていた。
今までの描写では共闘(?)ばかりでしたが、次回は都森vs桐生双子のバトル回です。ヤる気マシマシの二人に対して都森くんは素手のズールで相手しなければなりません。勝ちに徹するなら逃げてグレネード投げまくるボマー戦術一択ですが、果たしてどう立ち向かうのか……。