ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「ほらほら、さっきの威勢はどうしたのー?」
「逃げるだけで……勝てると、でも?」
「言ってろ……!!」
普段は向けられない二機の猛攻に晒され、まともな攻撃も防御もできないズールは回避を続けるしかなかった。
ユウキのオルテガはレイピアの二刀流、ワイルド特有の跳躍力とレイピアのリーチの前ではこちらが攻撃する前にその切先の餌食になる。対してムツキのカブトは、通常とは違ってタイタンの足がカスタムされている。槍と盾ならまだ潜り込みやすいが、ブロウラーとパンツァーで構成されたLBXを前に素手での攻撃など物ともしないだろう。
(……そんなのわかりきってる。承知の上でこうしたんだろ!)
オルテガとカブトCが再度攻撃してくると同時、逃げ足から急反転。こちらも敢えて攻撃を仕掛ける。
(レイピアの突きはマズイが振りなら耐えられる。点の攻撃にだけ注意すればいい)
突きを回避し、そのまま振り抜かれたレイピアの振りにガードを合わせる。事前にパテ盛りしてあったから、腕に直撃したとはいえダメージは抑えられている。
(キャタピラなら小回りはしにくいだろ、体当たりに気をつけつつ蹴り上げる)
キャタピラの軌道を読み、こちらの方向に移動できない位置とタイミングでサマーソルトをお見舞いする。足を使った勢いのある攻撃は例え素手でも強烈であり、カブトCをのけぞらせながらこちらも後退することに成功した。
「おいおい、素手相手にこのザマかよ。腕鈍ったんじゃねぇの?」
「はぁ〜?まだ体力全然減ってないし?そっちがツラいの誤魔化してもムダだから」
「負け惜しみなら、いくらでも……聞いてやる」
「なんとでもいいな、このまま完封してやる!」
数分後、ズールの上半身は草原のDキューブに埋まっていた。
「い、いやー、余裕!余裕だったね、うん!」
「流石に、素手には……負けられない……」
そういうものの、ユウキとムツキは共に息が上がっており、多少強がっていることがわかる。目に見えるダメージとしてはお互いLPの半分も減ってないのだが、そうなるまでの攻防が長すぎた。
幾度もヒットアンドアウェイを繰り返す都森の動きを捕らえるのはそう簡単ではない。タイミングこそ計ってはいたがそれでも執拗に攻めることが多く、無謀な突撃に攻撃が噛み合うのも偶然とは言えないだろう。
都森はズールをDキューブから引き抜き、ちゃちゃっとメンテナンスを終わらせると。
「よし、やるぞ」
再戦を申し込んだ。
「早くない!?」
「あ?連戦ぐらい日常茶飯事だろテメェら、とっとと用意しろ」
「まさか……武器、使わない、のは……」
そう、これはバトルを介したオレのための特訓。素手で殴っても大ダメージは見込めないため、何度も攻撃する必要がある。もしやられても今回は全身パテもりなため早々壊れず、日頃のメンテ技術をフル活用して即戦闘。
いつものように銃を使った中距離カウンター戦法ではなく、強引に間合いを詰めて懐に潜り込む超インファイト特化。余程のことがない限り絶対にしない戦い方を、今日は敢えて行い続ける。
(近接同士の間合いと択の選び方。最適解を求めるなら一瞬で出さなきゃいけない以上、実際にやるだけでも学べることは多い)
射程が短いとはいえ、ショットガンとは違い直に近づかなければならない。そんな状況下で繰り広げられる攻防の応酬はあまり経験がなかった。
何度も攻め立て、何度も回避し、何度も返り討ちに遭う。その度に動きは洗練されていく。だが、それでも手応えが感じられない。
(クソッ、何が……何が足りない!!)
「ふぅ、こ、これで10戦目……!」
「流石に、キツイ……か」
ただの10連戦なら余裕でこなすコイツらが息を上げている。碌な火力を出せないためにバトルが長期化していることから、普段とは1戦辺りの密度が違う。念の為に予備パーツも多めに用意していたが、
「ここまでだ。素手でここまでやれるなら上々だろ」
「いい……のか?」
「なにが」
帰ろうとするオレをムツキが引き止める。まぁ、多少疲れた程度でバトルをやめようとするヤツらでないのはわかりきっていたが。
「都森くん、すっごい冷めた顔してるじゃん。こんだけやっといて収獲ゼロ?」
「これでゼロならそっちの方が凹むわ。……いや、下手にあった分タチが悪いかもな」
問題の解決に乗り出したら、また新たな課題が増えていく。先の見えない循環に早くも辟易していた。良くも悪くも型が完成してしまっていたのか、普段の戦法以外では戦えなくなってしまったのだろうか。
「頭冷やす。しばらく絡んでくるな」
なんのアテもなく彷徨う。それだけで解決する問題じゃないのはわかっている。これはただ、逃げているだけだ。
「なにマジになってんだオレは……」
たかが遊び、オレにとってLBXなんてそんな程度のものだ。適度にカスタマイズして、楽しくバトルができればそれでいい。たったそれだけなのにどうして強さを欲しがる。
「おっ、そこのキミ。ちょっと寄っていかないかい?」
延々と悩み彷徨っていた結果、ものすごく怪しい大人に声かけられた。
「……オレです?」
「そうそう、今LBXのキャンペーン中でね。期間限定でガシャを置いてみたんだ。どうだい、回していかない?」
ガシャ……ガシャポンか。何が手に入るかわからず、ハズレを引く可能性が高いからと滅多に引くことはない。それにあからさまに非公式っぽい。こういうのはアタリが抜かれてると相場が決まっている。
「……あー、今小遣い余裕ないんで。それじゃ」
「いやいやいや、待ってくれ!キミで一人目なんだ、記念に1回……いや、5回無料で引かせてやる!」
「サービスにしては出血しすぎだろ」
もはや失血死レベルの待遇。とはいえ、流石に5回も無料チャンスがあれば惹かれはする。
「わかった、引くよ……気が引けるからもう1回分引いて金払う」
「おっ、気前がいいね坊ちゃん。じゃあ無料5回と有料1回で1000Cね」
(1回1000Cのガチャか……期待できるかは微妙なラインだな。まぁ6回引けるなら流石に元取れるだろ)
ノッポの男に1000C払い、オレは6台並んだガシャを1回ずつ回していく。そうして中身を取り出すと……緑×橙や青ではなく、全て
(なんだこれ、ハズレか?)
疑問を浮かべながらカバンにサッと閉まったところでようやく気づいた。ノッポの男含め、三人の大人に囲まれていることに。
「……タダより高いものはないってか?」
「そういうことですよ。少々大人しくしてもらいましょうか」
ノッポの男の口調が変わる。見れば格好もいつのまにか他二人と同じような黒スーツに奇妙な絵柄の白面になっている。
オレは咄嗟にガチャを踏み台にし、背の低い男の上を飛び越した。
「Dキューブ!!」
怪しい格好は伊達じゃないのか、向こうも即座に反応してすぐ追ってくる。それより早くオレはDキューブを投げた。展開したDキューブはちょうど道のほとんどを占領したことで、黒服の三人は立ち止まるしかなかった。
「おぉ、中々起点が効くッスね……!」
「感心してる場合かい!こうなったらコイツを使うよ」
黒服の女……恐らくはリーダー格のヤツを筆頭にLBXが投下される。
「デクーエース!」
「「デクー改!」」
3体とも見たことのないLBX、興味がないと言えばウソになるがここはバトルしかない。もしLBXを持ってないならDキューブを盾にそのまま逃走しても良かったのだが、今このまま逃げればLBXという小さな追跡者、それも3体を振り切るのは流石に厳しい。
もちろんバトルは1対3で、相手のLBXは全て情報のない新型機。どちらにせよ圧倒的に不利だが、このまま追ってこられるよりはまだ希望がある。
「行くぞ、ズール!」
黒いズールが峡谷のDキューブに降り立ち、赤と青のモノアイ機体達の前に立ちはだかった。
特訓による強化回……と思いきやイノベーダーの三人とバトルするという急展開。Dキューブは前回のバトルで拾ったものを有効活用しております。