ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
Dキューブの峡谷をズールが駆け回る。それを追うようにデクーエースと2機のデクー改がそれぞれリボルバー、マシンガン、ランチャーで弾幕を張っていた。
(機体のスペックは向こうが上、それに射程も圧倒的に負けてる。高低差のある峡谷なら上手く逃げれば躱せるけど、下手したら袋の鼠で一気に詰む。厄介だ……!)
近〜中距離が適正のショットガンでは他の遠距離ウェポンに射程負けする。もちろん相手3体が遠距離で攻め立てる場面を経験してないわけではないが、今回は見るからに速そうな機体と堅牢な機体が2機。
デクーエースを追えばストライダーの機動力に翻弄され、デクー改を狙えば高耐久を盾に高火力を押し付けられるのは目に見えていた。
「チィッ、ウロチョロと逃げ回って……!」
「ですが、防戦一方のようですね」
「影の暴君だとか言われても、オレたち三人にかかればこの程度ッス!」
なるほど、オレの悪評も把握済みか。……まさかオレに恨みを募らせたヤツが差し向けた刺客だったりするのか?もしそうならその首謀者の顔を拝みたいものだ。全ッ力で土下座するから。
「……どうせワンミスでやられるなら、手法を変えるか」
ズールを上手く物陰に隠せたため、そこでオレはウェポンを変更した。
「おっと、ようやく出てき……ッ!?」
先程よりも素早い動きでノッポ男のデクー改に肉薄、すれ違い様に
「コイツ、さっきとは動きが!?」
「速い上に軌道がいやらしいッス……!」
ショットガンと盾より軽いダガーのおかげで普段より素早く動ける。加えて、オレのズールはミニマムL5とミニマムH10の両採用型。価格・サイズ共に手頃なモーターは無理なく併用でき、総出力は大型モーターにも負けない。結果としてブロウラーフレームであろうデクー改とやらにはただ動き回るだけでも圧をかけられている。
しかし、欠点は大きい。モーターが多い分バッテリーを大量に喰らってしまうのだ。
(普段は自分から動かないから気にならないけど、ここまで消費が激しいのか……!)
相手の動きを読んでショットガンを当てる。これだけなら動作も少ないためバッテリーも減りづらいのだが、今回は自分から走り回って仕掛けなければならない。となれば、その分モーターも稼働するしバッテリーも減り続ける。
別に無くなっても操作自体はできるのだが、最大の問題は必殺ファンクションに
(デクーエースとかいうのはともかく、デクー改とかいうヤツは落とし切れない。少なくとも一発ずつ……いや、それでも足りないか?)
コアメモリはギガクロックXT、小さめのパーツの中では必殺ファンクションを三つも登録できる破格の性能を誇る。いつもは今回は片手銃二つ・ナックル一つを設定しているが、どう組み合わせてもあの3体を倒し切れるとは思えなかった。
……一応、
「マズイな、被弾が多くなってる……!」
いくら動きの速いナックルとはいえ、そのリーチは短く他の武器より更に接近しなければならない。当然向かってくる最中にも攻撃は飛んでくるため、それら全てを避けていては刃を届かせる前に引かれてしまう。
必殺ファンクションによる押し込みも考慮し、多少のダメージは覚悟で突っ込んでいたのだが動きに焦りが出たからか、平均二発受けていたのが今回五発ほど当たってしまっていた。
「よぅし、これなら押し切れるよ!」
「ダガーは想定外でしたが、大した問題ではなかったようですね!」
「ぐっ……!」
深追いせずにズールを全力で引かせる。これ以上の被弾は勝ち目が無くなると踏んだからだ。その結果、最悪の場面が訪れてしまう。
「もらったッス!!」
「その程度……ッ!?し、
ランチャーが構えられる。発射されても、この距離なら回避はできる。そう、距離だけなら問題はなかった。今のズールの位置が
状況を整理する。ズールの右側に壁があり、左側からミサイルが発射される。後方からはデクーエースのリボルバーとデクー改のマシンガンが今も飛んできている。
まず一番当たっていけないのはミサイルの直撃だ。誘導も考えればダッシュで逃げるかジャンプする必要がある。だが、近くに壁があることで回避したミサイルが着弾し、爆風に巻き込まれて即死でないにせよ大ダメージを負いかねない。誘導を利用して反転ダッシュで避けようにも、後方からの弾幕の雨を浴びることになる。
(ここまで、かよ……!!)
デクー改による詰みの一手、ランチャーの砲撃は……放たれる前に
「……!?このLBXは……!」
「何をしてるの」
Dキューブに降り立つLBXに背後からの声、そのどちらもオレには馴染みのあるものだった。
「ゲッ、ユナちゃん!?」
「なんでこんなところに!?」
オマエらも顔見知りなのかよ。ただでさえ志島ユナがどこか普通ではないことから全力で目を背けていたのに、こんな輩とも繋がりがあるとは知りたくなかった。なんなら使ってるLBXも似てるとこあるし、厄ネタの火薬庫かオマエは。
「……何をした、都森マスミ」
「…………えっ、オレ?!」
どうやらオレのやらかしの結果でこの状況になったと思われてるらしい。こんな怪しいヤツらに自分から関わるほどバカじゃねぇよ。…………まぁ、ガチャに釣られたのは迂闊ではあったが。
「話すと長いから、一つだけハッキリ言う。ケンカ吹っかけたのは向こうだ!!」
「えぇ!?い、いや違うんスよ、ユナちゃん!?」
「これは、ですね……」
「問答無用」
マスターコマンドのシューターSR33によるビーム射撃が前に出ていた2体のデクー改を追い立てる。その勢いに押され、後退していった2機は更に後方にいたデクーエースと衝突してしまう。
「ちょ、ちょっとアンタら、押されすぎだよ!?」
「……ここしかない、必殺ファンクション!!」
『アタックファンクション』
ズールのショットガンに青い光が集まり、球状となって打ち出される。固まったデクーエースとデクー改に
『トリプルエネルギー
片手銃の必殺ファンクションの一つ『ハイパーエネルギー弾』、それを三発同時に打ち出す。もちろん威力は分散されており、一発当てたところでデクーエースはともかくデクー改は落とせない。
しかし、
「なっ、そんな隠し玉を……!?」
「
「やかましいよ!!」
デクーエース、デクー改は必殺ファンクションの集中砲火で爆散。まさに薄氷の上の勝利だった。
とはいえ、志島の支援が無ければそのまま押し切られていた。素直に礼を言おうと隣を見ると。
「都森マスミは……私、の……フフッ」
あ、これヤベェ。志島の様子がおかしくなると同時に、マスターコマンドから緑のオーラが立ち昇り始める。一難去ってまた一難どころか、状況が悪化したらしい。
『サイコスキャニングモード』
「ハハッ、アッハハハハハハハ!!」
マスターコマンドのコードが触手のように暴れ狂う。以前は対応できたのだが、今回は随伴機ということもあって距離が近すぎた。
「うっ!?まずい、武器が……!」
回避に移る前に触手の一つがショットガンに当たってしまい、叩き壊されてしまう。よりによってオレのメインウェポンを落とされたのは負ったダメージ以上に痛すぎる。
「うわぁ!?ユナちゃんがおかしくなったッス!?」
「精神状態が不安定とは聞いていましたが、これほどとは……!?」
オレ以上に事情知ってそうなヤツらでもコレ初見なのかよ……。
「言ってる場合かい!?こうなった以上、アタシたちでなんとかするしかないよ!」
「オレの肩掴みながら言うのやめてくれません?」
さっきまでオレを標的にしてた大人がなんかこっちサイドについたんだが。
「仕方ないだろ!?アタシらのLBXもうないんだから!壊した責任取ってもらうよ!!」
「頼みましたよ……!」
「頑張るッス!」
「簡単に言ってくれるなよ……!」
敵対したままリアルファイト持ち込まれるよりはマシだが、それはそれとして鬱陶しいので引き剥がす。
しかし、ショットガンがない以上ズールには盾とダガーしか残されていない。ちなみにグレネードは後ろの三人に全部枯らされた。ズールの動きには翻弄され続けていたが爆弾処理だけはやけに上手かった。
(一発で決めるなら、近づいて殴りかかるしかない。でも無策で突っ込んでも被弾する可能性の方が高すぎる……!)
不規則に振り回され続ける幾つものコード、その動きを読むことはまず不可能。近づいて攻撃しなくてはならないのはショットガンでもダガーでも同じことだが、接近戦だからこそショットガンとダガーの射程距離の差は大きい。
「アハァハハ!!……すけ……ないで」
「……あ?」
「
狂いながらも発された悲痛な声。それを聞いてしまった次の瞬間には、オレのズールはマスターコマンドに向けて一歩踏み出していた。
「……どいつもこいつも」
「ちょ、ちょっと!?」
「このまま突っ込むつもりですか!」
「正気じゃないッスよ!」
暴れるマスターコマンドにズールを走らせたオレを咎める声がする。だが、聞こえてくるのはそれだけじゃない。
『都森くん、決める時ちゃんと決める男だからね。おかげで私たちは好き放題暴れ放題!』
『影の暴君は……伊達じゃ、ない』
『あぁ?オレの名前なんざ聞いてどうする。テキトーに呼べ、テキトーに』
『ごめんねマスミ、どうしても外せない用事があって』
『大丈夫だ、帰ってきたらちゃんとお祝いしよう。約束するよ』
ここに存在しない、
「どいつもこいつも……!」
ズールがマスターコマンドの射程圏内、暴れる触手群の中に踏み入る。一度喰らえばただでさえ少ないLPは、次々襲いかかる攻撃によりなし崩し的に削り切られるだろう。
それでも、今のズールの行進に迷いはなく。
『たす……けない、で……』
コードの一本がズールの左腕を抉り潰す。体勢は崩れても倒れはしない、後退もしない。ただ真っ直ぐ突っ込んだ。
「好き勝手」
『アタックファンクション』
思い切り振りかぶった右手が光る。それをマスターコマンドにぶつけようとするズールの姿は、まるでオレの中から湧き上がっている激情を体現しているかのような威圧感を放ちながら—。
「言ってんじゃ、ねぇッ!!」
『パワーナックル』
全霊の一撃をマスターコマンドの顔面目掛け振り抜いた。
ギャグ控えめシリアス多めを意識して書き進めたら、なんかカオスな状況が生まれました。今回はズールのカスタム構成もそれなりに開示しましたが、多分ここで書かないとしばらく機会に恵まれなさそうなので……。
志島ユナ(暴走)の意味深なセリフの意図は引っ張らずに次回明らかにさせます。