ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
アルテミス一回戦、四試合ずつ同時に行われ、現在はその最後の4組。その中で誰よりも早く脱落したのが…………今後ろでムツキとケンカしてる桐生ユウキだ。
「一撃で、やられた上……都森くんにダメージ負わせる、とか……もう、この先……引っ込んでろ、ずっと」
「あ、あんなの偶々だし!ラッキーヒットだし!!あ、アンタだって初手グレネードぐらいするでしょ!」
「オマエみたいな、ヘマは……しない」
「どーだか!アンタの方が被弾率多いでしょ!」
「さっきは……被弾率、100%だったな。一撃で……やられたから」
う・る・さ・いッ!!こっちはまだ必死にやってるのに裏でもヒートアップしないでほしい。操作忙しすぎて止めるヒマもないんだよ。
「クソッ、さっきからちょこまかと!!」
「あの見た目でここまで動くとは、パンツァーフレームは伊達じゃないか……!」
2対1、それもこちらだけLPが削れてる状況。相手は両手アサルトのグラディエーターと、ブルーバズーカ装備のクイーン。一撃と連射両方備えた弾幕に下手に突っ込んでも一方的に負けるため、逃げつつカウンターを狙う得意の戦法で勝機を伺うことにした。が…………。
(流石に世界大会……連携の隙が少なすぎる!!)
徹底したカバーによるローリスクながら最大限の攻め。被弾を避けようと距離を取り、再度詰めようとしても的確なタイミングでまた攻撃。息の合ったプレイの前に反撃の余地すらなかった。
『さぁ、残る試合はノースステージのサンダーアタックvs穿影暴破!2vs1の状況が続く中、都森マスミはまだ生きている!!しかし防戦一方、これは時間の問題か!?』
逃げ回っている内に他の試合は終わったようだ。それだけ、こちらの試合が長引いてる証拠でもある。
……初手でユウキがやられて、オレ一人にそこまで手こずる状況。動きからは全く感じられないが、内心焦っているのではないだろうか。ならば、ぎゃぬてんのきっかけはオレが一押しするだけで作れるかもしれない。
『都森マスミ選手、遮蔽物を駆使して立ち回っていたが、とうとう見晴らしのいいエリアに追い込まれてしまった!!…………なんと!?ここでドミニオンが反転、サンダーアタックに捨て身の特攻を仕掛けたぞ!!』
凄まじい馬力でキャタピラが回り、Dキューブ中央付近の開けたエリアに着いたばかりのグラディエーターとクイーンに猛スピードで詰め寄る。重装甲のLBXにしてはかなりの速度、しかしこれで怯むほどの胆力ではなかったようだ。
『アタックファンクション』
グラディエーターが前に出て弾を撒き散らす間、背後でクイーンがレッグパーツのハッチを展開する。そこに収納されたミサイルが一気に放出され、弾丸を受けてもなお走行を続けたドミニオンに降り注ぐ。
『グレイスミサイル』
『ここでクイーンの必殺ファンクションが炸裂ッ!!ドミニオンは来ない!これは勝負ありか!?』
黒煙により完全に隠れ、ドミニオンの状態が確認できない。とはいえ、もし健在なら勢いそのままに突っ込めば後隙を突くぐらいはできた。
誰もが完全に倒せたと思ったその直後、煙から投擲物が飛び出した。
『グラディエーターに向かって磁場爆弾が飛んできた!?突然の攻撃にも関わらず難なく避けたが、ドミニオンはまだ倒れていないようです!!…………アレ?煙は晴れましたが
突然の磁場爆弾に意識を取られ、双方ともドミニオンが煙から抜け出す瞬間を見逃してしまっていた。
捨て身の特攻は、ただのフェイク。好機とばかりに必殺ファンクション、それもグレイスミサイルを使わせるための陽動。爆発からしてかなりの威力を誇り、もちろん大ダメージではあったが…………ドミニオンは耐えた。ギリギリでガードが間に合ったのもあるが、それでも動きに支障が出ないほどに高い防御力を誇っていたのだ。
術中にハマり、消えたドミニオンを探そうとするサンダーアタックの二人。グラディエーターは咄嗟の回避を行ったため体勢が崩れ、若干動きが遅れており、クイーンが先に周囲を見渡そうとする。
しかし、その動作を始めた瞬間、背後から衝撃が加わる。遮蔽物の中を回り込んだドミニオンによるチャージタックルによるものだ。隠れたのは体勢を立て直すためではない。奇襲を仕掛けるための布石に過ぎなかった。
『アタックファンクション』
タックルの姿勢から流れるように両手銃『コメットキャノン』を構える。散弾銃のためそのまま撃ってもクイーンは撃破できるが、他にも狙いがある。コメットキャノンが赤熱し、散弾ではなく熱線が放出される。
『フレイムバースト』
熱線はクイーンの胴体を貫き……同時に斜線上にいたグラディエーターの片脚を焼き切った。そのまま両手銃を上に向けることで熱線もその軌跡を描き、クイーンは胴体から頭部までを裂かれ、脚を切られたグラディエーターはバランスを崩して熱線と交差するように胴体が落ち、真っ二つとなった。
『こ、これは!?ドミニオンの必殺ファンクションが二機同時にヒット!!耐えに耐えた都森マスミの起死回生の一撃が決まったぁッ!!Aブロック二回戦の最後の切符を手にしたのは、穿影暴破となりましたッ!』
最後まで続いた試合ということもあって、観客の注目を集めていたのだろう。予想外の逆転劇にアルテミス中から歓声が響き渡る。目立つとか目立たないとかいう次元ではなくなってしまった。
「……心配ないとは、思ったが…………想像以上、だった」
「やっぱ都森くんは最高だよ!!あの状況から逆転しちゃうなんて!」
「おかげさまで
勝ったのはいいのだが、勝ち方にはもう少し拘りたかった。オレが先に落ちてユウキが最後に残れば注目もそちらに吸われる最高の形なのだが、どうせ突っ込んで早死にするため理想論。毎度のようにそうやって先に倒れるのもまぁ、千歩ほど譲ろう。
問題は初手で落ちたことだ。これのおかげで実質2vs1になるわ、見応え抜群のリスキーで派手な戦法を取らざるを得なかった。このバトルを見た者のほとんどがこのバトルを目に焼き付けたと思うと、気が気ではなかった。
「えっ……都森くんが私たちを参考に?」
「少し、照れくさい……な」
オレもこのぐらいポジティブならもっと楽に生きられるのだろうか。…………いや、ない。絶対にない。こんなバトルジャンキー共と一緒になるのだけは嫌だ。
「ところで二回戦、誰が出るんだ。ムツキか?」
二回戦は
『Aブロック二回戦、サウスステージを制したのは穿影暴破!都森マスミのドミニオンッ!!一回戦での人数不利すら覆した影の暴君の猛進は、誰にも止められないのか!?』
なんでオレが二回戦出てるんですかね。メンテナンス間に合ったからいいものを。
「都森、か………」
煌びやかなホテル、その豪華絢爛な一部屋に備え付けられたテレビにはアルテミスの中継模様が映し出されていた。そして、そのカメラは二回戦を制した都森の姿が。
「
「腕前は確かなようですが、大会の出場記録はほとんどありませんからね」
「それがアルテミスどころか、アングラビシダスにも出てきたとなると、シーカーとの繋がりもありえますな」
イノベーターの一員である神谷藤五郎、沢村宗人も都森のアルテミス出場を妙に感じていた。というのも、都森が参加したアングラビシダスでもイノベーターの策略が裏で行われていたため、それと同じようにメタナスGXの秘密を知り、シーカーの一員としてアルテミスに出たのだと推測した。シーカーであり現在Aブロック3回戦でジンとの戦いを控えているレックスならばアングラビシダス主催者でもあるため、都森とコンタクトを取る機会も少なからず存在したのも裏付けるには十分だった。
実際にはシーカーもイノベーターも全く知らない上、出場したのも自分の意思ではないのだが。
「どちらにせよ、我々の計画には何の妨げにもならん」
海道義光、イノベーターの創設者である老人は都森を脅威と見なさなかった。同じブロックを勝ち進む自らの孫、海道ジンへの信頼か。あるいは別の策がある故か。
「とはいえ……」
ステージから去る都森の後ろ姿を見ながら、海道義光はその目を細めた。
「ヤツも
機体が高スペックになったことでパワー任せになりつつ、動きに動いて意表を突く戦い方もしっかりできる。仙道がジョーカーMk-2で速度に特化させたなら、戦術の幅を広めたのが都森という対比にもしてみました。
アングラビシダス同様二回戦はサラッと流しましたが、作者の技量ではテンポ悪くなるので三回戦もカットです。というわけで次回でもうAブロック決勝に入ります。