ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
二回戦を勝ち進み、続く三回戦のためにメンテナンスをしに向かう。次は三対三となるが、流石にユウキのオルテガも直っているため人数で遅れを取ることはないようだ。一回戦の様に初手でやられなければの話だが。
「都森!そっちも順調そうだな!」
「アレが順調に見えるか……?勝ち進んでるのは事実だけどな」
声を掛けてきた山野バンの近くには、レックスチーム。つまり郷田がいた。なるほど、そっちの応援に来てたのか。
「精々良い気になってろ都森。決勝で白黒つけてやっからよ」
「オレも今からメンテだよ。テメェのに集中してろ」
郷田も二回戦で戦っていたため、三回戦に出るためハカイオーを調整していた。次の郷田の相手はあの海道ジン、一人での出場だが人数差をモノともせず異名通りの秒殺をやってのけている。
対するレックスチームはレックスと郷田の二人。三回戦は三対三だというのに、一対二という奇妙な構図となるだろう。
「実力は認めていたが、ここまで来るとはな」
逆に郷田に参加させたため、メンテナンスの必要ないレックスが声をかけてきた。レックスとの関わりは深くも浅くもない。というより、あの双子が出禁になるまでアングラビシダス会場に通い詰めたのでオレもブラックリスト候補であってもおかしくはないだろう。
「アングラビシダスでも見せた応用力を新たな戦術にも向けるとなれば、オレ達も楽には勝てないだろうな」
「そりゃあ、都森くんですから!相手がジンでも郷田でも、レックスであっても余裕で決勝行きますよ!」
「なんなら……全員まとめて、蹴散らせる」
相変わらず無理難題ふっかけるなコイツら。別に負けてやるつもりもないが、ジンやレックスに勝つビジョンが見えない。参加者の中でも頭一つ……いや、三つ分は抜けてるレベルだろう。郷田?アイツは一対一でもまだなんとかなるレベル。確かに強くはなってるが、二人に比べれば遥かにマシだ。今回はレックスと組んでるのもあって余計に当たりたくはないが。
「……こんなもんか。ユウキ、ムツキ、行くぞ」
「ちょ、ちょっと!?もうメンテナンス終わったの!?」
「さっき始めたばかりだよな……!?」
山野バンのサポートメンバーの……えーと、紫髪の女子の方わかんないな。もう片方のドレッドヘアが青島カズヤなのは覚えてる、レアなLBXの持ち主だし。とにかく二人を皮切りに周りが驚いた反応を見せていた。レックスまでちょっと目を開いてるし。
「いや……ズールの時よりは遅いぞ?まだ使って日が浅いし、特にパンツァーフレームの脚部は複雑だしで」
「都森くん、普通におかしいからね?」
「むしろ、ガタが来ないか……心配、だ」
「……お前らに正論っぽいこと言われるの腹立つな」
さて、そんな調子で三回戦を迎えたわけだが…………なんとあっさり終わった。これまでの戦いで相手が3体ともオレにばかりマークを付けて動き追ってたら、隙を見つけた双子が突っ込んで相手がぐちゃぐちゃになった。あとは適当にショットガンブッパして的確にLP削って終わり。ぶっちゃけ一番楽だった。
「で、次の相手は……海道ジンか」
Aブロック決勝はオレ達と、レックスと郷田を下したジンとのカードが確定した。ジ・エンペラー……今はエンペラーM2だったか、そのインパクトカイザーを必殺ファンクション抜きで相殺したとアルテミスMCが実況した時は思わず振り返りそうになった。試合中なので流石に踏みとどまったが。
そんなレックスが負けたのは驚きだが、それ以上に海道ジンが一枚上手だったのだろう。
「いや、やっぱり……レックス、
「う〜ん、変だよねぇ。あそこであんな動き、意味があるように見せかけてるのがもっと怪しい……」
「そこ、深読みしてないで次の用意しとけ。オレ達が戦うのはレックスじゃなくてジンだぞ」
試合のリプレイを何度も見返してた双子を画面から離させ、自身の使用LBX『ドミニオン』に目を向ける。
「小回りや応用性じゃズールに少し劣るだけで、コイツのスペックは高すぎる。でも、向こうのエンペラーはそれ以上だ。使用者の操作スピードも段違い。一対一じゃ勝ち目はまずないだろうな」
「えー、そんなことないと思うけどなぁ?」
「仙道から、少しスピード抜いて……攻撃と防御が、強くなった程度……だろ?」
「口で言ったならヤバさに気づけよ?強いんだよソレ、シンプルイズベスト過ぎるんだよ」
硬い速い火力高い、これが全部揃ってるLBXなんて雑に使っても勝ててしまう。それを使いこなすプレイヤーなら完璧の組み合わせだ。
「まぁ、硬さだけならこっちのドミニオンが上か…………おい、バカ二人」
「ん、なに?」
「なにか、考えが……あるか?」
「…………バカ二人で普通に返事する鋼のメンタルか鈍の頭脳かは置いといて、今からものすっっっごくバカな提案するぞ」
「じゃあ、都森くんもバカお揃い!?」
「やかましい、黙って聞けバカ」
昨今の小学生でもやらないようなバカが飛び交う会話だが、実際オレの頭にはかなり無謀な戦術が浮かんでいた。これが通用するなら世も末だろう。
「お前ら、次の戦い……
『ついに来ました、Aブロック決勝戦!対戦カードは、海道ジンチーム対穿影暴破!!たった一人で勝ち上がった秒殺の皇帝と、圧巻の勝利で突き進んだ影の暴君!奇しくも互いに初参加であり、王の異名を持つ者同士の対決となりました!!果たして最初のファイナルステージ進出はどちらになるのか!?』
観客が盛り上がる一方で、当事者の片割れはものすごく小っ恥ずかしい思いをしていた。この異名のせいで海道ジンとほぼ互角に見えるのやめてほしい。実力差歴然だぞ?
そんなわけで決勝の舞台、城砦のDキューブを挟んでオレ達と海道ジンは睨み合う形で並び立っていた。
「都森マスミ、キミの狙いもやはりメタナスGXか」
バトルが始まる前にジンが話しかけてきた。メタナスGXが狙いかって?元々アルテミスに参加するつもりもなかったのだから狙うも何もないだろう。しかし……。
「まぁ、ここまで来ちまったからな。手に入るなら貰って損はないだろ。アレが手に入れば、文字通り世界取れるしな」
ただでさえ世界一が決まる大会なのに、その優勝者のLBXにメタナスGXが組み込まれるとなればもはや無敵だろう。オレみたいなレベルのプレイヤーでもそんなCPU積めれば負ける気はしない。
……まぁ、優勝したところで使うかどうかは別だけどな。そもそも参加権取ってきたのこの双子共だし、全然譲ってもいい。大事どころか乱雑に扱う気しかしないけど。
「……どうやらボクは、キミのことを見くびっていたようだ。全力で止めさせてもらうよ」
なんだか知らないけど、実力を認められた……のか?流石にブロックの決勝とはいえ、世界大会でここまで勝ち進めるヤツも早々いないが…………そんな中でさっき思いついた戦術やったら注目されるどころじゃないな、普通に戦って普通に負ける方が何千倍もマシだ。
「止めるだって?都森くんを?誰が?」
「逆に、秒殺してやるよ……都森くんが、な」
でもコイツら巻き込んでまで適当やって負けるのは、ほんのちょっとしかなくてもプライドが許してくれない。腹を括るしかないようだ。
「都森マスミ、キミの狙いもやはりメタナスGXか」
イノベーターの影を追う都森マスミがアルテミスに出場することは予想がついていた。海道邸でシーカーを一網打尽にした際に都森マスミが不在だったことから、シーカーには属していないようだ。もし協力関係にあるなら、その場にいなかったのは罠だと見破られていたことになるし、それを伝えないのも不自然だからだ。
だからこそ、探りを入れる必要があった。彼が何故イノベーターを追うのか、何を目的に動いているのか。
「まぁ、ここまで来ちまったからな。手に入るなら貰って損はないだろ。アレが手に入れば、文字通り
その返答は……ボクの予想を遥かに超えていた。
(世界を、取る……だって!?)
メタナスGX。その真の価値を知り、奪い合うのがシーカーとイノベーターだけだと思い込んでいた。介入する第三者は純粋に優勝やメタナスGXの性能目当ての参加者だけだと思っていた。
(都森マスミ、まさかキミもエターナルサイクラーを狙っていたとは……!)
エターナルサイクラー。LBXの産みの親である山野純一郎が開発した無限稼働機関、つまり幾らでもエネルギーを生成できる永久機関のことだ。その設計図が封じ込められているのが、プラチナカプセル。そしてその解読コードが仕込まれているのが今回のアルテミスの優勝賞品、メタナスGXだ。
プラチナカプセルは山野バンのアキレスに組み込まれており、この大会で優勝しつつアキレスを倒すことができれば、エターナルサイクラー開発に必要な鍵を同時に入手することが可能だ。
イノベーターもそれを狙ってボクを、海道ジンをこの大会に出場させている。だが……都森マスミは何だ?シーカーでも、イノベーターでもないのに、エターナルサイクラーをその手に収めようとしている。イノベーターやシーカーでもない第三の組織がまだ裏にあるのか、あるいは……。
「ッ…………」
心なしか、目の前の相手の像が巨大に見える。掴みどころのない上に重圧を感じさせる様は、
「……どうやらボクは、キミのことを見くびっていたようだ。全力で止めさせてもらうよ」
だが、ハッキリしていることはある。シーカーにも都森マスミにもエターナルサイクラーは渡さない、それを手にするのはイノベーター……お爺様だ。ならば相手が誰であれ、容赦も臆する必要もない。
「エンペラーM2!」
アングラビシダスでのシステムエラーによる敗北、それを糧に更なる改良を施したジ・エンペラー改めエンペラーM2が、そのアングラビシダス決勝と同じ城砦の舞台に降り立つ。都森マスミのドミニオンとその相方のオルテガとカブトCもほぼ同時にスタンバイが完了していた。
『Aブロック決勝戦、バトルスタート!!』
開始と同時に、ドミニオンが迫ってくる。漆黒のボディに紅いランプを輝かせ、邪魔者を打ち砕くと言わんばかりの勢いで。
流れに任せて書いてたら、海道ジン視点の都森マスミが一人でエターナルサイクラー揃えようとしてるヤベーヤツになってしまった……。ジンなら都森の本質見抜けるとか、そこまで斜め上の想像しないとか解釈違いあるかもですが、色んな要素が噛み合ってこの作品ではそういう考えに至ってしまったということで。……なんか強いヤツほど都森くんへのイメージひどいことになってる気がするな。