ミソラ三中の番長   作:箱の中の破壊神

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闇に覗かれた男

「オイ都森ィ!!」

 

 

「なんスか加藤先生(カトセン)!もう不登校出たんスか!!」

 

 

 都森が学校に来ると、待ち構えていたかの様に担任である加藤(かとう)國秋(くにあき)が呼び止める。こんなやりとりが昇降口で行われている。

 

 

「今のとこはいないが一人できそうだ!いいから来い!」

 

 

 加藤に連れられ、階段を昇る都森。学年は階数事に分けられており、1階は都森ら三年、2階は二年、そして3階は昨日ユウキとムツキが襲った一年の教室があるフロアである。

 

 

「昨日問題児二人(ユウキとムツキ)が教師の警備掻い潜って新入生全員をLBXバトルで打ち負かした話はしたな?」

 

 

「警備掻い潜ったってとこは加藤先生(カトセン)からですけどね。マジでアイツら何やってんだか。」

 

 

「他人事の様に言うな!オマエがちゃんと見張っとれ!」

 

 

「それが出来たらお互い苦労しませんって!!アイツらに振り回されてるのは先生や下級生だけじゃないんですよ……!」

 

 

「着いたぞ、さっさと止めろ。」

 

 

「スルーですかそうですか。はいはいわかりましたよ、全くアイツらめ。」

 

 

「お、おい、誰かこっち来てるぞ。」

 

 

「え?……ってバカ!!さっさと道開けろ!『影の暴君』だ!」

 

 

 その一言を聞いただけで人だかりを作っていた一年は全員こちらを向き、即座に廊下の左右、教室の中に入って道を作る。この間なんと一秒未満。あの二人にボコられた分オレに恐いイメージ抱いてるんだろうが、オレはオマエらが怖ぇよ。

 廊下の先では、ユウキとムツキが白髪赤目の女子生徒に詰め寄っていた。

 

 

「おい、今度は何やってんだ?」

 

 

「あ……都森くん。」

 

 

「都森くんおはよう!いやー、昨日ね。一年全員とやったつもりだけど、この子欠席してて見逃しちゃってね。だからLBXバトルしようとしてたんだけど。」

 

 

 こんな朝っぱらから?HR控えてる時間帯で?

 

 

「全くオマエらは……あまり勝手な行動するなよ。」

 

 

「!ご、ごめん都森くん!」

 

 

「悪い、オレ達自分の事ばっかで周り見えてなかった。」

 

 

 オレが注意すると、ユウキとムツキは頭を下げて謝る。うん、異常。

 こんな申し訳程度の言い分で素直に言うこと聞くならこの三年間苦労してない。初徹夜がコイツらとの付き合い方で悩みまくったぐらいだ。

 

 

「ホントにごめんね!まさか都森くんがそんなに暴れたかったなんて……!」

 

 

 ユウキの一言で周囲がざわつき始める。やっぱりな、コイツら思考回路が違うもん。オレの戦う相手がいなくなることに申し訳なさ覚えてやがる、誰かれ構わずバトル吹っかけるのがダメとかいう常識がない。

 仲間意識強いのは嬉しいけど、もう少し気の利かせ方を考えてほしい。これも三年間思い続けてることだ。

 

 

「不完全燃焼だけど、番長に譲る。派手にぶっ飛ばせ。」

 

 

「番長言うな。……えっと、名前は?」

 

 

志島(しじま)ユナちゃん、って言うみたい。なんか、番長探してるって言ってたし。」

 

 

「は?なんでオレに……。」

 

 

 自分を探していたということに疑問を覚えた都森だったが、その前に一年の女子・志島ユナが口を開く。

 

 

「番長、都森マスミ。この学校で一番強いLBXプレイヤー。」

 

 

「……誰からそんなことを?」

 

 

「桐生ユウキ、桐生ムツキ。」

 

 

「オマエら何吹き込んでくれてんの?」

 

 

 話が大体読めた。恐らくこのバカ二人は志島ユナに勝負を吹っかけたところ、ここで一番強いヤツと聞かれてオレの名を上げたらしい。

 ……まぁ、コイツら変なとこ真面目だからウソは言わないんだが。

 

 

「え、事実じゃん。」

 

 

「都森は強い。控えめに言って最強。」

 

 

「控えてねぇだろソレ。……とりあえずオマエ以外の一年全員倒したコイツらが言うんだから、それなりの証明にはなるんじゃないか?さ、わかったら教室に戻って—。」

 

 

「……私と、戦え。」

 

 

 いやオマエからバトル申し込むのかよ。

 

 

「……別に良いけど、あまり人に見られたくもないからな。放課後、人気の少ないとこでやろう。」

 

 

「わかった。」

 

 

 そう言って志島ユナは教室へ戻っていった。それにしても、ユウキやムツキが目を付けた相手とやるのは完全に想定外だった。目ぼしい相手やオレに直接噛みつこうとしたヤツら全員倒してくし。

 さっきみたいな勘違いやストレートにLBXバトルしたいと言わないとまともに戦えない環境は間違ってる。戦闘狂でも何でもないから全然構わないけど。

 

 

「都森マスミ、このエリアで一番強い()。ヤツを倒せば私は、私だって……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、ここまで足を運ばせて。代わりと言ってはなんだが、ユウキもムツキも見張ってくれている。存分に戦えるぞ。」

 

 

 約束通り放課後に志島ユナを迎えたオレ達は、広く、なおかつ防音性能に優れた場所に来ていた。すなわち、空き倉庫だ。空いてるとこばっか使ってるなオレら。

 

 

「Dキューブは?」

 

 

「ムツキから借りたのがある。」

 

 

 小さなサイコロの様な物に付いてるスイッチを押し、そのまま手元から転がり落とす。すると、そのサイコロもどきはたちまち形を変えていき、正方形のフィールドとその中に広がるジオラマを作り出した。

 これがLBXの主戦場、強化ダンボールによって作られたDキューブである。草原や地中海遺跡など色々なジオラマがあるが、今回はコンビナートだ。

 

 

「行け、ズール!」

 

 

「マスターコマンド。」

 

 

 都森がズールをコンビナートに投下すると同時に、志島ユナも自身の機体を繰り出す。そのLBXは、今まで聞いたことも見たこともないものだった。

 

 

「えっ、何そのLBX!?ドコ製?」

 

 

「……やれ。」

 

 

「うおっ!?そうだなもう始まってた!終わってからじっくり聞かせてもらう!」

 

 

 マスターコマンドが手にしているのはシューターSR34Cという両手銃。こちらは市販の物なので都森もその性能はある程度知っていた。

 両手銃の中でもクセが少ないAMライフルであり、その中でも更に纏まった性能をしている。両手銃の熟練度が低くてもある程度使いこなせる武器の一つであるが、志島ユナの動きから性能頼りでないことが垣間見える。

 

 

(うわ、強いな。いきなりトップ狙うだけのことはあるか。でも—。)

 

 

「アイツらに比べたら緩い。」

 

 

「ッ!?」

 

 

 遮蔽物から飛び出し、ダッシュ・ステップ・ガードなど様々な方法を使って一気に距離を詰める。一切怯えのないその突撃に、志島ユナは少なからず動揺を覚えたのか射撃の精度がブレ始める。

 

 

「よし、吹っ飛べ。」

 

 

 ズールが盾と一緒に装備していたのは片手銃にして、散弾銃にカテゴライズされるショットガンSG3。銃というには射程が短いが、その分威力は折り紙付き。近距離で喰らおうものなら体勢を崩すのは確実と言える。

 両手銃のため盾を持たない、持つことができないマスターコマンドは散弾銃の一撃を防ぐことが出来ず、機体を仰け反らせて地面に倒れてしまった。

 

 

「くっ!」

 

 

「はいストップ。」

 

 

 機体を起こしてなんとか離れようとしたマスターコマンドであったが、その前にズールの散弾銃が火を吹いた。ゲームの様なダウンや回避時の無敵なんて存在しない。こうなってしまえば弾が切れるまで攻められ続ける。

 

 

「さて、パワーが売りのブロウラーフレームっぽいけど、弾切れまで持つかな?」

 

 

 淡々と追いやる都森。しかし、バトルに集中しすぎているのか、志島ユナの様子がおかしいことに気づいてはいなかった。

 

 

「あ……あっ……。」

 

 

(負け、る……?やっぱり、失敗作だから(・・・・・・)?また、捨てられる?……嫌、イヤ……!スてラレたくナイッ!!)

 

 

「あ、ア……ああアあアあアaアアaアaaあアアアアアッ!!」

 

 

『サイコスキャニングモード』

 

 

「なになになに!?なんで急に叫んだの?」

 

 

 志島ユナが発狂すると共にCCMからそんな音声が聞こえた。次の瞬間には、マスターコマンドは緑色の光を発し、志島ユナの赤い目はドス黒く染まった。

 

 

「ア……アッハハ、アハハハハハハハ!」

 

 

「ちょっ、タンマタンマ!この距離で喰らって平然としてるのおかしいって!うわなんか頭から伸びてきたぁ!?」

 

 

 すごい勢いで近づいてきたマスターコマンドに散弾銃を放つが、全く怯まずたまらず逃げ出す。意地でも捕まえようとしているのか、マスターコマンドの頭部からコードの様なものが触手の様にうねって都森のズールに襲いかかる。比較的入り組んでるコンビナートでなければ確実に捕まっていたと断言できる。

 

 

「都森くーん。今どんな感じー?」

 

 

「もしかして、押されてる?」

 

 

 見張りをすっぽかしたのかユウキとムツキが倉庫内に入ってくる。普段ならなにやってんだと思うところだが、これはしめた。流石に一人じゃ収拾つかな—。

 

 

「えー、その一年まさかの大当たりかー。やりたかったなー。」

 

 

「今は、都森くんの番。また今度やろう。」

 

 

「オレもうオマエらと同じ人間であることが恥ずかしくなってきたよ。」

 

 

 こんなのが人間として形を為しているのならオレは犬とかその辺りにでもなりたい。異常事態なの目に見えてるのにただ見てるだけとかマジなんなの?

 

 

「アハ、アハハハ……す……ないで……。アハハハハ!」

 

 

『アタックファンクション』

 

 

「いっ!?必殺ファンクションかっ!」

 

 

 志島ユナのCCMから聞こえた言葉に一層警戒度を上げる。LBXや武装の限界を超えた挙動を可能にする必殺技、アタックファンクション。必殺ファンクションとも呼ばれるそれは、まさに致命傷を喰らわせる絶技。

 マスターコマンドの持つシューターSR34Cにエネルギーが集まり、球状となって放たれた。

 

 

『バスターボール』

 

 

「うおぉ!?」

 

 

 かろうじて避けはしたものの、その一撃はコンビナートジオラマを破壊するほどの一撃であった。逃走の要とも言えた地形が焼け野原となり、都森は不利な状況へと追い込まれた。

 

 

「アハハアハハハハハハ!」

 

 

 頭部のコード伸ばしながらズールへと接近するマスターコマンド。しかし、ズールは動くことなく待ちの姿勢を取っていた。

 そうしてある程度近づくと、マスターコマンドの足が何かを踏みつけ、爆発にその身を包まれた。

 

 

「アハァ!?」

 

 

「おー、サークルマイン決まったねー。」

 

 

「必殺ファンクション、避けたと同時に設置した。抜け目ない。」

 

 

 LBXには武器の他に、使い捨てのバトルアイテムを持たせることができる。都森がズールに搭載したのはサークルマイン。平たく言えば地雷である。

 バスターボールを避けたズールは落とす様にサークルマインを設置し、自身とマスターコマンドの対角線上になるよう位置取りした。両手銃を持っているの関わらず距離を詰めようとしたことから思いついた作戦である。当然これで終わりではない。

 

 

「これでやられるほどヤワじゃないだろ。本命はコッチだ!」

 

 

 爆発によって生じた煙を突っ切り、マスターコマンドに接近する。サークルマインによる爆発は視界を隠し、より安全に近づくためのものであった。

 十分に距離を詰めたズールが取った行動は、散弾銃による銃撃……ではなく盾によるカチアゲだった。

 

 

「頼むからこれでくたばってくれよ!」

 

 

『アタックファンクション』

 

 

 都森のCCMからも必殺ファンクションの発動を知らせる音声が鳴る。ショットガンSG3を上に向け、宙に浮いたマスターコマンドへと照準を合わせて引き金を引いた。

 

 

『ライズショット』

 

 

「ア……アハ、アハハハハ……ハハ…………。」

 

 

 あまりの火力に弾丸そのものが燃え、最後の一発には爆発が起こった。地に着いたマスターコマンドはもう動くことはなく、戦闘不能を示す光が弾けた。ブレイクオーバー、すなわち都森が勝利した証である。

 それと同時に志島ユナは力尽きたかの様に倒れてしまう。

 

 

「都森くんやったね!流石は影の暴君!」

 

 

「名づけ親として、鼻が高い。」

 

 

「それ広めたのオマエらだったのかよ!?いや言ってる場合じゃない!大丈夫か志島!とりあえず、保健室まで運ぶぞ!」

 

 

 制御不能の取り巻きに闇が深い後輩。頑張れ都森!ミソラ三中の明日は明後日の方向に向かっているぞ!入学した時からずっとだけど!




 ミソラ三中を馬車で表すなら御者が都森で、馬がユウキ&ムツキ。それ以外はただの客。
 2頭とも暴れに暴れるから当然馬車の中も揺れまくるけど、それを抑えることができるのは都森のみ。この二年間よく廃校どころか学級崩壊も起きなかったな。
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