ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「絶好調だ!次のアングラビシダスの優勝はもらったぜぇ!!」
ガトーの操るブルド改が相手のLBXの首を掲げる。無法地帯ならではのパフォーマンスに歓声が上がるが、オレはすごく冷めた目をしていた。だってアレ、どう見ても
教師なんだから今頃は学校にいるだろって?残念、
「……オマエら、ちょっとここにいろ。志島、オマエもだぞ。」
「却下、私も同行—。」
「はーい、ユナちゃん確保ー。ところで都森くん、どこ行くの?」
「……ガトーってヤツと、バトル?」
「LBXバトルは無し。そこら辺ぶらつくだけだよ。」
唯一の常識人枠だと思ってた人間が裏でヒャッハーしてる姿は流石にショックだったので、流石に休む時間が欲しい。主に精神を。
幸いユウキとムツキはガトーの正体に気づいてないようだし、志島はユウキとムツキが両側からホールドしている。都合良すぎる展開だが今はありがたい。
そのまま適当な通路を探し、人気の無さそうな場所に向かう。
「おや?まさか影の暴君サマとこんなとこで会えるとはねぇ。それとも、影が薄くて今まで気づかなかっただけか?」
今日の運勢、大凶だと思うんだ。目の前の占い師(エセ)がやってもそう出るに違いない。
「いや、今日まで存在すら知らなかったよ。郷田と鉢合わせた場所がたまたまここら辺だっただけだ。」
「へぇ、郷田もいるのか。……『節制』の逆位置?なんだ、今度のアングラビシダスには参加しないのか。」
「まぁ、あまり性に合わないし。番長対決はまた今度にしてくれ。」
紹介が遅れたが、コイツの名は
LBXの腕もかなりのレベルで『箱の中の魔術師』と呼ばれるほど。ぶっちゃけ実力じゃ完全に負けてる。
「別に構わないさ。潰す順番が変わるだけだからな。……そういえば、今日は取り巻き共はお留守番か?」
「いや、アイツらも来てる。今は別行動してるだけだよ。」
「…………『戦車』の逆位置。暴走か。」
ちょっと?なんで今の流れで占った?あまり想像したくないんだけど。
「見つけたぞテメェ!!……仙道も一緒か、だがオマエはあとだ!こっち来やがれ!」
とまぁ、郷田に連れてかれて先程の場所に戻ってきたのだが、最後に見た時とは違ってスパーリング場が地獄みたいな光景に変わっていた。
「都森くん都森くん!ここ天国!」
「スパーリングでこれなら、本戦すごく期待できる……!」
ハイテンションでバトルしてたLBXプレイヤー達は、二人の悪魔によって屍へと変えられ、その場に倒れ伏していた。その中にはあの
そりゃそうよな、学校内でもトンデモ行動起こしまくる二人がプライベートまで荒らしてくるとか悪夢以外の何物でもない。
「あーあー、派手にやったねぇ……。」
「やってくれたな都森……!!」
ゴメン、完全にオレの落ち度だわ。
「ユウキ、ムツキ。アングラビシダスまでここ出禁ね。」
「「え。」」
アングラビシダスでの一件の後、オレは色んなヤツを振り切って河川敷の草原に寝そべっていた。
郷田やその取り巻きはともかく、ユウキやムツキはせめて週一、いや週三は通わせてとかしつこく交渉されまくった。せめて週三から週一に下げろよ、交渉ヘタクソか。まぁ、どちらにせよ通さないけど。
しかし、それよりもヤバかったのが志島だった。どこ向かってもついてくるし、巻いたと思って安心して振り向いたら目の前にいるし。まさか下水道を逃走経路に組み込む日が来るとは思わなかった。そもそも逃走経路なんて考えたのが今日初めてだわ。
(……もしかして、厄日がたまたま続いただけなんじゃなくて、今年が厄年だったりする?最終的にはオレが不登校になるんじゃねぇの?)
仮に不登校になったとしてもユウキとムツキ……志島も家に来そうだな。来ないでほしい、特に
「「…………ハァ〜〜〜。」」
今後の事を考えてたらすごい溜息でた。この際思い切った行動とるか……ちょい待ち、なんか溜息重なってたんだけど。
溜息が聞こえた方向に首だけ傾けると、同じく寝転んでいる少年と目があった。
「……二中生か?」
「え?あぁ、そうだけど、なんでわかったの?」
「適当に言っただけだよ。」
三中生ならオレのこと絶対知ってるし、見かけ次第距離取ってくる。そして、その三中生がこんな夕暮れに河川敷にいることは滅多にない。
つまりは一中か二中かの簡単な二択が当たっただけだ。
「ということは、キミ一中生?」
「いんや三中。今日は色々あってこの近くに寄っただけだよ。」
あまりこういう場所には足を運ばないのだが、これも志島から逃げ切るためだ。
「近く……もしかしてキタジマ模型店?」
「キタジマって、あそこか!そういや初めてLBX買いに行ったのそこだったっけ。やっぱLBXやってたりするのか。」
「…………いや、LBXは好きだけど、母さんが許してくれなくてさ。」
「……そうか。下手に聞いて悪かったな。」
LBXは確かに大人気だが、だからと言って皆が皆持ってるわけじゃない。Dキューブが開発される前はその危険性から禁止されてたこともあって、親が許可してくれないと言った事例もある。隠れてやろうにも子供の小遣いで買うには金銭的にキツかったりする。
多分コイツが溜息ついたのはそのことだったんだろう。
「別に大丈夫だよ。そのキタジマでLBX借りれるから、当分はガマンできる……かもしれないし。それよりも、LBX買ったって何を買ったの?」
「……ほれ、触るまでならいいぞ。余計な事聞いたお詫びだ。」
黒ズールをバッグから取り出し、少年に差し出す。少年は一瞬戸惑うも、都森は一瞬引っ込めかけた少年の手にズールを掴ませる。
「これ、ズールだよね?黒く塗られてるけど、光沢がしっかりつけられてるおかげで暗く見えない!足はパテもりされてるけど、腕は両方ともニクぬきされてるのか?」
初見でそこまでわかるの?ガチのLBX通じゃん。本当にLBX持ってないんだよね?
見れば見るほど食いついていた少年であったが、満足したのかズールを差し出した。
「もういいのか?」
「うん、ありがとう。拘られてるとこ見ると、益々欲しくなりそうだからさ。」
「……こっちこそ礼を言うよ。オレのズールにここまで目を光らせたのはオマエが初めてだ。」
自分で手を加えた機体を輝いた目で見られるのは素直に嬉しい。ユウキとムツキは目の光り方が違うし、郷田や仙道とはそんな話するような間柄じゃない。とりあえず加藤先生の裏の顔見たダメージが回復した程には楽しい一時だった。
その少年との会話はそれが最後だ。軽く別れの言葉を告げてそのまま家に帰った。ちなみにあれだけ話しといてお互い名前聞きそびれたので、オレの中では河川敷の少年Aとした。
〜そして翌朝〜
「な・ん・で!!オレん家の前にいるんだよ!」
「生活習慣の情報収集、以上。今度は私から質問。睡眠時間は?起床時間は?朝食はいつで何を—。」
昨日やっとの思いで撒いた
「おはよ、都森くん。醤油いる?」
「いやいやムツキ、都森くんはソース派だから。てなわけで、はい。都森くんの分。」
ユウキが目玉焼き乗せたパン渡してきたと思ったらソースぶっかけて、更にムツキが醤油かけやがった。ふざけんな、オレは刻み海苔派だ。
ていうか何故いる厄介双子、この二年間家に来るどころか一緒に登校すらしたことないだろ。志島に便乗してきたか。
「午前8:23、都森マスミの朝食は……朝食は…………なに、それ?」
「……知らないのか?」
「これはどっからどう見たって—。」
「「
同時に喋るな同時に、志島困ってるでしょうが。いやオレのデータいちいち取られるのも困るけど。とりあえずオレは醤油とソースのかかったマズイ目玉焼きパン(※個人の感想です)を食いながらカバンを持って歩き出す。
「学校遅れるぞオマエら、早くしろ。」
醤油派ソース派でケンカしてるユウキとムツキ、ショート起こしてる志島に一応注意して先を急ぐ。それはもう現実から逃げるように。
これからのオレの朝、こんな感じだったりしないよね?
次回から原作ストーリー入る。エジプト編から絡ませ始める予定、奪われたアキレス編は未定。