ミソラ三中の番長 作:箱の中の破壊神
「下校してるだけなのに、なんか落ち着かないな」
学校の帰り道、オレこと都森マスミは妙に浮き足立ちながら歩いていた。いつもならあのイカレ双子がオレを挟んで賑やかに話していたし、最近つけ回してくるアイツもいない。揃いも揃って用事があるとかで速攻帰った。双子に関しては予鈴なる前に教室飛び出してた。
というわけで、今日の帰路は静かなものだ。他の下校中の生徒達もオレを見るなり談笑やめて道の端に逃げ込んだりしてるが静かったら静か。
「…………ゲーセンにでも行くか」
もはや気まずさまで感じ始めたオレはコッソリとゲーセンに向かう。向かうと言いつつ足を運びたくないという気持ちも半々だが、生憎三中の付近にゲーセンはない。まぁ、端でひっそり遊べば目立たず時間も潰せるだろう。
その楽観的な考えによってまた面倒事に巻き込まれる辺り、本当に厄年なのかもしれない。
「「あ?」」
「は?」
店に入るなりLBX構えた番長二人と鉢合わせました。なるほど、どうりで空いてるなと思ったら……もうちょい危機感持って生きろという教訓なのかもしれない。
「フッ、これはこれは暴君サマじゃないか。戦いの匂いを嗅ぎつけてくるとは、取り巻きに似てきたんじゃないか?」
「……そういや
「…………またこのパターンか」
いつからだったか。ここのゲーセンの権利をかけて、番長間で小競り合いが起きた。形式はオレ・仙道・郷田の三人でバトルロワイヤル形式のLBXバトル。うんざりするほど回数を重ねたが、未だに勝敗はついてない。
正直な話、普通に逃げたい。この二人を同時に相手するのは面倒なのだ。では何故戦うのかって?逃げたら不戦勝扱いになってもっと面倒なことになるからだ。主にあの双子が首突っ込み始めるだろうから。
「チッ、揃いも揃ってちょこまか逃げやがって!」
「ノロマなだけだろ木偶の坊が!」
「仙道みたいにヒョロイ機体使うなら正面から相手してやるよ」
「ならお望み通り真正面からぶった斬ってやろうか……!」
「正面……と見せかけて後方斜めだろ。郷田の方に飛ばそうとするのマジやめろ」
三つ巴のLBXバトル。その様は激しくもどこか停滞していた。まず目立つのは郷田の『ハカイオー』、棘付きの大剣『破岩刃』を片手で軽々しく振るうブラウラーフレームの機体はパワーに満ち溢れている。当然、そんなヤツとまともにやりあうわけもなく距離を取って安全な間合いを維持する。
一方で、仙道の『ジョーカー』はストライダーフレームながら大鎌『ジョーカーズソウル』を振るうスピード型。トリッキーな動きでDキューブ内を駆け回るヤツにまず手出しはできない。
そしてオレの『ズール』、多少改造して黒く塗っただけの市販機。武器はいつもの『ショットガンSG3』と『ソリッドシールド』。パワーもスピードも平均値のナイトフレームなので操作ミスったら普通にやられます。……なんか、オレだけ迫力無さすぎでは?
「チッ、涼しい顔で処理しやがって」
それ涼しいってより疲れで目が据わってるだけだと思うな。遊びに来ただけなのになんでこんな目に遭わなきゃならんのか。また長引くだろうし、もう雑談吹っかけて相手の集中力削いでみるか。まぁこんなの盤外戦術にも入らんだろうけど。
「そういえば郷田、あの件は残念だったな」
「バトル中に聞くことか?舐めるのも大概に……!」
「
「っ!?」
郷田の表情が険しくなったが、オレの目線はしっかりDキューブに固定されているので気づかないまま雑談を続ける。
「あぁ、そういえばいまはミソラ二中の生徒が持ってるって聞いたけど……オマエのお気に入りか?」
「て、テメェ、まさか……!!」
明らかに動揺した様子を見せる郷田。その直後、ゲームセンターに6人の少年少女が足を踏み入れた。神経質になった郷田はその僅かな物音すら拾って、その方向に目線を逸らしてしまった。
「ば、バン……!」
そして、その隙を箱の中の魔術師が逃すはずもなかった。
「余所見とは、舐めた真似をしているのはオマエの方だったな郷田!」
「しまった!?ハカイオーッ……!」
ハカイオーのボディに深い切り傷が刻まれ、前のめりに倒れる。その低くなった頭を、勝ち誇るようにジョーカーの頭が踏みつけた。
「あ、アイツら、まさか……!?」
「カズ、知ってるの?」
六人の内の半数は郷田の舎弟であるギンジ、テツオ、リコだ。もう半数は見慣れない顔で、その内の一人はオレと仙道を見て目を見開いていた。
「ミソラ一中を仕切ってる仙道に、ミソラ三中を支配してる都森だ……!郷田とずっと張り合ってて、この間の双子の不良も都森の手下だって噂だ」
だいぶ聞き捨てならないんだが。支配どころかその尖兵の手綱握るのに必死こいてるだけなんだが。噂の一人歩き良くない。
「く、クソォ……!」
拳を握りしめて項垂れている郷田。……まさか、マジで集中乱せてたとは思ってなかった。どうしよう、急に罪悪感湧いてきた。
「隙だらけの地獄の破壊神とは傑作だな。逃げ腰の都森にいいようにされるぐらいなら、オレに引導を渡される方が幾分かマシだったろ?」
「……なんとでもいいやがれ。負けは負けだ」
あの会話のどこの何が作用したのかはわからないが、流石に可哀想になってきたのでフォローを入れようと口を開く。
「郷田、悪k「あれー?カッコつけてるけど、ハカイオー倒したのアンタが最初じゃないから」
それに合わせて紫髪の少女が煽り文句を被せてきた。あまりにも間が悪いが、その言葉で以前白いLBXを探していた時に郷田のハカイオーが負けたという話を思い出した。
「なるほどね?なーんでアンタが白いレアもの持ってるかと思ったら」
「合点が、いった」
「うわ!?お、オマエ達は!?」
一人の少年の両肩に手をおきながら、聞き覚えたくない声が聞こえた。アイツら今日用事あるとか言ってなかったか?
「やっほー、桐生ユウキと」
「……桐生、ムツキ」
「そしてこの子が、郷田を倒した白いレアLBX持ち!」
「うわっ、ととっ……!」
ユウキとムツキが少年の背中を勢いよく押した。あまりの勢いにつまづきかけている、ごめんなウチのバカどもが。
「……オマエ、名前は?」
「…………山野バン」
仙道に臆することなく名乗ったバンという少年。なるほど、郷田を倒しただけはあるようだ。さぞLBXの腕もあることだろう。
「ほらほら、さっさと始めた!」
「都森くんを、待たせるな……」
外野のヤジもあってバンはLBXを取り出す。ならほど、確かに見たことがない白いLBX。今日はこれを見れただけでもまだ幸運なのかもしれない。
Dキューブの中に白いLBX『アキレス』を出撃させようとするバンだったが、一瞬だけその手が止まる。
「あの黒いズール……まさか!?」
「どうした、怖気付いたのか?」
仙道に煽られながらも、バンはアキレスをDキューブの大地に降り立たせた。しかし、オレじゃなくてオレのLBXを見て驚くヤツは初めてだな。ここ付近でLBXバトルをするのはそれこそこのゲーセンだけだが、その時にでも見かけたのだろうか?
兎にも角にも、こうしてミソラ一・二・三中の三つ巴の戦いが、再び幕を開けることとなった。
急にダンボール戦記の熱が再燃したので投稿。久々すぎて話やキャラの矛盾生まれてないか心配ではある。
都森くんがどのくらいの強さなのかは次回でなんとなくお分かりになると思います。