こんなことになるんだったら…今日は仕事を休んだ方が良かったかもしれない。そう考えずにいられないほどに非常に酷い惨状。
「社員さんはこよと一緒の!!」
「違うでござる。風真とでござる!」
「いやいや、私とに決まってるじゃない!」
「ルイ姉まで何言っているの!!社員さんは沙花叉と一緒なの~~」
「お前ら、こういう時は総帥である吾輩に譲れないのか!」
こんな言い争いの渦中に僕がいる。
争いが起こる少し前に時間は戻そう。
―――――――――
今日もいつものように出社をした。そして今日はとても忙しい日になるのは来る前から分かっていた。何故ならば、今日はホロライブ6期生の打ち合わせがあるから。本来であれば僕がその打ち合わせに関わる事はないはずだったんだけど、急に昨日の夜にえーさんから『明日のホロライブ6期生の打ち合わせなんですが、社員さんも出て頂けませんか?』という感じのメッセージが来た。
そしてえーさんが言うには僕の上司の人には話を通したようだった。それって肯定的な返事以外って出来るのかなぁと思いながらも僕は『はい。出させていただきます。明日はよろしくお願いします』と送った。
そして打ち合わせは問題もなく全てが恙なく終わりを告げた。それにしても何でえーさんが僕のことをこの場に来させたのが未だに分からない。
「あの…えーさん」
「どうしたんですか?」
「なんで僕のことを呼んだんですか?」
「あ、そのことですね!それは後少しすれば分かると思いますよ」
あと…少しで分かる?でも、もう打ち合わせは終わったし、あとは帰るだけなんじゃ。
「今日の打ち合わせお疲れ様でした。皆さんには揃って頂けて良かったです。これからも配信やその他の活動も頑張っていきましょう!」
「「「「「はい!!」」」」」
「良い返事ですね。それでは…約束通りに社員さんをどうぞ」
どうぞ?
するとえーさんは立ち去っていき、さっきまで打ち合わせに参加していた人がどんどん帰っていく。そして最終的に僕とホロライブ6期生だけが残された。僕が困惑している間に全員が消え去った。
「え、どういうこと…」
「…社員さんは売られたんですよ」
「売られた?」
「はい。私たちが今回の打ち合わせを行うのは決まっていたんですけど、元々はリモートでやる予定だったんです。だけどこよたちがダメ元で「社員さんと会わせてくれませんか?」って聞いてみたんです。そしたらえーさんが「大丈夫ですよ」って」
あの人…僕のことを……。
「それにしても何で僕なんかに会いたかったんですか?別にホロライブ6期生の方々とはあまり接点を持っていないと思いますし」
「…吾輩たちはデビューする前から社員のことを知っていた」
「え?」
僕を知るような機会ってないと思うんですけど。
「あったでござるよ。社員殿って一回だけ配信に出たことがあるでござるよね」
それを言われて僕は全てを察した。そうだ…僕は一度だけある。戌神さんから配信に出て欲しいという強い要望と上司の「出ていいよ」っていう軽い返答のせいで僕は一度だけ配信に出ることになった。僕的には今でも非公開にして欲しいぐらいに恥ずかしい。
配信をする前ってあんなに緊張するんだと初めて知った瞬間でもあった。
「…た、たしかにあったね…。もう思い出しくもないような思い出だけどね」
「それを見て、沙花叉や皆はそこで社員さんのことを知ったんだぁ」
「それで珍しくてあってみたかったって感じかな」
これは絶対にからかわれそうだ。えーさんやまどかさんのように話術がある訳でもないし、正直あの配信のコメントは全然読んでいない。だって絶対に批判されているようなものを自ら見たくないもん。案外、僕は豆腐のようなメンタルだから。
「違いますよ。私たちはそこで社員さんに一目惚れをしたんです」
「………?」
「だ・か・ら、吾輩たちは社員に一目惚れをしたんだよ!」
「い、いや…どうやったらそんなことになるんですか?人に惚れられるようなことをした覚えはないですよ。逆に声がうわっつたりしたりもしたし、色々とミスをしたのを今でも覚えているんだよ。そんな僕に一目惚れなんて何かの間違いじゃないですか」
「ううん。風真たちは一目惚れをしたでござる。それに社員殿が考えているよりもよく出来ていたでござるよ。とっても面白かったし、もう一度やって欲しいでござるよ」
「絶対に嫌です。どんなことがあったとしてももう二度とやる気はありません」
それにもう一度見たいなんていう物好きはそんなに多くないと思いますし。
「こよも一目惚れだったんだ。声も一瞬で好きになって…社員さんがやっている配信が他にないか調べたけどあの一回しかなかったので社員さんが喋っていることを全て暗記してしまうほどに見ましたから!」
博衣さんはドヤ顔をしているが…そこはドヤるところではないですよ。
「それなら沙花叉もたくさん見たよ!!こよちゃんにも負けないほどね」
そんなところで争わないでくださいよ。別にそんなスゴイ事ではないのに。見てくれたのには嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが交互に沸き上がって来る。
「それじゃあ、吾輩と行くぞ」
すると急にラプラスさんが僕の手を掴んで引きずっていく。急なことに反応も出来ずにただ引っ張られることしかできない。
「ダメだよ。ラプラス。社員さんは私と」
「違うよ~こよと行くんだよ」
「沙花叉とだよ!」
「いやいや、風真だよ」
そして話は一番最初に戻るのであった。ホロライブ6期生はなぜか急に喧嘩のようなことを始めてしまって止めようがない。止めようとしたら一斉に「社員さんはそこに座ってて」と言われてしまった。
「沙花叉は後でもいいでしょ。最初はこよに譲ってよ!」
「なんで…こよちゃんに譲らないといけないの。こよちゃんこそ沙花叉に譲って」
「風真の方が社員さんのことを見ていたでござるよ。だから風真が最初に!!」
「いろはが社員さんのことが好きなのは分かるけど…それよりも私の方が絶対に社員さんのことを考えていた」
「お前らは大人しく総帥に譲れよ。吾輩がこの中で一番偉いんだぞ」
こんなやり取りが最終的に2時間以上も続くのであった。