現実では本当に理解できないようなことが起こる事がある。そして今、その一つが起こっている。
「あ、あの…」
僕のことを抱きしめている、天使はとても笑顔。
「なに?」
「…なんで急に抱き着いて来るんですか?」
天使とは…天音かなたさん。
「…マーキングをするためですよ」
「い、いや…なんでマーキングなんかしているんですか?それに天使がマーキングとかそんなことあるんですか?」
「うん!!あるよ。社員さんはボクのものだもん。誰かに横取りなんかされたくないよ!」
え、僕っていつの間にか、天音さんの所有物になっちゃったの。まだ誰のものにもなっていないはずなんだけど…。
「…え~と…どうすれば…」
「社員さんは大人しくボクに抱きしめられてればいいんだよ!」
ここで抵抗しても天音さんの力に僕が勝てるわけないし、大人しくしてようかな。それにただ抱き締められているだけなら被害を被る事はないはずだし。
「…わ、わかりました」
「そうだよ。社員さんは僕のものなんだから」
そしてそれから天音さんに抱きしめられた状態が続いていき、三分が経過した時に次の出来事が起こった。
「PP天使!!!」
「…ココ…」
「なんでおめぇが抱き着いてんだよ!」
「マーキングするためだよ。社員さんはボクのものだもん」
天音さんがそう宣言すると共に桐生さんも抱き着いて来る。だから今の僕の状態を言い表すと天音さんが目の前から抱き着いていて背中から桐生さんが抱き着いている。
「…てめぇのもんじゃねぇ!」
「いや、ボクのだよ。社員さんはボクのだって認めてくれてるもん」
え、僕ってそんなこと言っちゃってたの。
「私のに決まってるだろ!」
「いや、ボクのだよ!」
まるでこの二人のどちらかのもの見たいに話が進んじゃってるけど、たぶん、僕は誰のものでもないと思うんだけど。
そんなこんなで言い争いが続いている最中に…角巻さんが騒ぎを聞きつけてきてくれた。これでやっとどうにか事態が収束しようだ。
「なんか面白そう!」
すると角巻さんはボクの両足を抱きしめる。今度は足の自由まで奪われた。端から見たら本当におかしな光景であることは間違いない。
「あ、あの…角巻さん、一体なにをしているんですか?」
「うん?抱きしめるの。だって二人が抱き着いているんだもん。わためぇも抱きしめたい!」
「い、いや…別に抱きしめなくても…」
「ううん。わためぇも社員さんのことを抱きしめたいの」
別に抱きしめても何の得もないんですけど。
まだ天音さんも桐生さんも言い合いをしていて本当にこの事態を収束することは出来なそうにない。細い成人男性の力じゃさすがに三人を振り払えないし、天音さんだけでも無理なんだけど。
「あ、いつの間にわためぇが足を抱きしめてる!」
「あ、ほんとだ!ヒツジじゃねぇか!」
「…だって二人共、社員さんのこと抱きしめてるもん。わためぇが抱きしめても問題ないよねぇ」
本当にこの人たちは一体なにをしたいんだろう。
「ヒツジとPP天使は離れろ!」
「絶対に離れないもん!社員さんはボクの!」
「いや…わためぇのだよ」
そしてまたもや…騒ぎをを聞きつけたのは常闇さんだった。常闇さんは自分の目で見たものを疑っているようで何でも目をこすっている。
「って…なにやってるの?」
「良い所に。常闇さん、助けてください」
「え、社員さん?」
「この三人に抱きしめられていて動けないんです。どうにかこの事態を収束させてください」
すると常闇さんは三人へと話しかけ始めた。
「本当にまじで何やってるの?」
「あ、トワ」
「トワちも…抱きしめたいの?」
「ち、ちがうわ!!」
「じゃあ…どうしたの?」
「社員さんが困っているから離れてあげなよ」
「え~~ボクは絶対に離れない」
「PP天使とヒツジが離れるまでは絶対に離れない」
「わためぇは悪くないよねぇ~」
「だ・か・ら…離れなよ!」
どうやら常闇さんが言っても三人は全く聞いていないようだ。
「トワも本当は抱きしめたいんじゃないの?」
「そ、そんなことないもん…」
「そっかぁ…そうだよね。社員さんはボクのだもん」
なぜか…常闇さんの顔が少し曇ったように映ったのは僕だけかな。
「と、トワだって…」
まさかの常闇さんも桐生さんや天音さんの中に入って抱きしめて来る。僕にはなんでこんなことになってしまったのか分からない。
そして最後に騒ぎを聞きつけてきたのは…姫森さん。この流れだったら姫森さんだろうなぁとは思っていた。正直、常闇さんよりも助けてくれる可能性は低いけど、僕は助けを求めてみることにした。
「んな~~」
「あ、姫森さん…」
「こ、これはどういうことなのらぁ?」
「た、たすけてください…」
僕は必至に助けを求めるが、姫森さんは全く理解できていないようで首を傾けた。
「がんばるのら~~」
そして最終的に助けが来るまで…僕はずっと身動きが取れなかった。姫森さんは僕たちのことを見ながらお菓子を食べていたのだった。