まさかこの企画の二度目をするようなことになるとは思っていなかった。前回の企画の時に「これはもう二度とやらねぇだろう」と個人的には思っていたし、壁ドンされた方もさすがにこういう企画に対する不平不満が出るだろうから。
だが、僕の予想と反してあの企画は視聴者にはかなりの好評なようで公式で上げられた再生回数は今までの動画の中で一番早く百万再生を超えたと聞いた。
そして今回のターゲット五人を知らされた時は…正直震えた。特に一人だけ…確実にヤバい人がいる。やらなくちゃいけないのは分かっているんだけど、それでもやっぱり震えが止まらない。それにホロメンの方々もあの配信を見ているんじゃないですかね。
今回の一人の目はターゲットは紫咲シオンさん。
そして前と同じように紫咲さんが来るのを待って、スタジオに入ってきたタイミングで壁ドンをするという予定。今更だけど、この企画って僕に対するダメージが多いんだよな。前のターゲットの五人とはあまり話さなくなった。いや、というより避けられている感じがする。僕と会いそうになるとなぜか顔を赤らめて距離を取って来る。確実に嫌われたよ…。
そんなことを考えていると…一人の目のターゲットがスタジオにきた。そしていつものように壁ドンをする。誰でも急に壁ドンをされたら理解が出来なくてあたふたするもの。紫咲さんもその状態。
「だいすきです」
でも、紫咲さんは今の状況を理解できていなくてあたあふたしている。これはちょっと言葉で何かを言っても今の紫咲さんに言葉を理解するだけの余裕がないかも。
僕は紫咲さんの片手を僕の両手で握って…
「シオンさんのことが…僕は大好きです!」
「…え、え…な、なに……だ、だい…すき…って……///」
「シオンさんのちょっと悪ガキみたいなところも…僕は好きですよ」
「…も、もう……///」
「…本当にシオンさんって可愛いですね」
「や、やめて………///」
「…だいすきです」
「………///」
どうやら紫咲さんには効果抜群だったようで両手で顔を覆っている。反応が良いほどに後で…僕が不幸を被ることになるんだよね。
そして二人目の検証相手が紫咲さんが去ってから十分後ぐらいに来た。二人目は不知火フレアさん。不知火さんのイメージとしてはクールな感じなのでもしかしたら「何やってるの?」って真顔で言われるかもしれない。さすがにそんなこと言われたら…心に来るものが。
僕は覚悟を決めて不知火さんに壁ドンをした。
「え、なに?」
「だいすきです」
「……え…」
「フレアさんのちょっとクールなところも…女の子っぽいところも可愛くて好きですよ」
「…ど、どうしたの…?」
さすがに不知火さんには効かないようで…ずっと困惑気味な顔を浮かべている。僕もさすがにこのままで終わる訳にはいかないので、不知火さんの耳元で囁いた。
「…すきです」
「……///」
「フレアさんって本当に可愛いですよね。僕、とっても大好きです!」
「…………や、やめて…///」
「どうしてですか?僕は想っていることを言っているだけですよ」
「……は、はずかしい……///」
不知火さんの顔はリンゴのように赤く染まっていて…恥ずかしいのが見て分かるほど。
テンポは速くて三人目の検証相手は常闇トワさん。常闇さんもちょっと怖いなぁ。後でどんな報復をされるか分かったものではない。常闇さんはこういうことをされるのが…一番嫌いそうだし。でも、この企画をしている以上は嫌われる覚悟を決めてやらなければいけない。
ついに…常闇さんがスタジオに姿を現した。そこで僕は常闇さんに壁ドンをする。
「大好きです!!」
「…え、な、なに…」
「トワさんのことがとっても好きなんです!」
僕は本気で告白をする時のように頭を下げて…片手を差し出す。さながら漫画とかでありそうな告白の仕方だけど…。
「…………」
常闇さんからは何の返答もない。もしかして呆れられちゃったのかなぁと思って顔を上げてみるとそこには……顔を真っ赤にさせている、常闇さんの姿があった。
「……と、とわ…も」
すると…常闇さんは僕の手に自分の手を重ねた。
「…え」
「と、とわも…すきだよ…」
さすがにこれは僕も困惑してしまった。今まで恥ずかしがることが普通で…唯一、潤羽さんの時は市役所に連れて行かれそうになってしまったけど…それぐらいだった。
「…ぼ、ぼくもすきですよ」
さすがに後に引き返せない。
「……じ、じゃあ…とわたち…両想いだね…」
そう話す、トワさんは恥じらう乙女のような表情をしていて…とても可愛かった。
本当に…明日辺り…僕の命って刈り取られないかなぁと心配になってしまう。だけど、これは企画で仕事だと思い込むことで必死に罪悪感を消そうとしている。
四人目の検証者は癒月ちょこさん。癒月さんはかなり大人っぽい方なので大人っぽくあしらわれるかもしれない。逆にそろそろそういうのもいいんじゃないだろうか。今までずっと僕が押している感じでしたし。
そして癒月さんがスタジオに来たのを確認して壁ドンをする。
「…どうしたの?社員様…?」
「え…」
まるで手ごたえというものが感じられない。過去最高に手応えがないですね。癒月さんは経験豊富でこういうことにも慣れているからなのか、全然動揺しない。
「調子が悪いんだったら…ちょこが治療してあげよっか?」
「…い、いや…大丈夫です」
さすがにこの状況だと企画が失敗するかもしれない。ここは僕も恥ずかしさを捨てて本気で癒月さんに告白をするしかない。そうじゃないと癒月さんの心を動かせないと思うし。
「癒月さん!」
「…な、なに!?」
「癒月さんって…綺麗ですよね!」
「そ、そう?」
「はい!僕はいつも癒月さんの綺麗さが見惚れています。それぐらいに癒月さんは綺麗で人を惹きつける力があるんだと僕は思っています」
「…ちょこをそんなに褒めてもなにもないよ!」
「いえ、本心を言っているだけですよ。そんな癒月さんだから僕は引きつけられたんです」
「……?」
「ぼ、ぼくは…癒月さんのことが好きです!」
「…え、がち…?」
さすがに癒月さんも困惑しているのが伝わって来る。後は癒月さんの耳元で囁きながら話す。
「ガチです。なので僕の奥さんになってくれませんか?」
「……が……が…ち……///」
「はい!」
「………///」
どうやら…癒月さんを恥ずかしがらせることに成功したけど…なんか本当にこれでいいのだろうか。
やっと五人目の検証者こと……星街すいせいさんのところまで来た。本当にここが最初で最後の一番の山場。明日は命がないかもしれないという覚悟で挑まないといけない。
星街さんがスタジオに入ってきたタイミングで…深呼吸をしてから壁ドンをした。
「…だいすきです!」
「すいちゃんもだいすきだよ!」
まさか言い返されるとは微塵も思っていなくて、こっちの方が動揺してしまった。
「……すいせいさんって可愛いですよね」
「社員さんも可愛いよ」
この感じだと…ずっと言い返されて終わりな気がする。やっぱり星街さんは簡単に恥ずかしがってくれない。逆にここまで来ると意地でも恥ずかしがらせたい。
「すきです!」
「すきだよ!」
「すいせいさんってとても頑張り屋ですごいですよね。どんなことでも出来ちゃいますし、それであの歌声ですから多くの人を夢中に出来ますし」
「そうかな。すいちゃんとしては社員さんの方がすごいと思うけどなぁ」
「僕はすごくないですよ。それに僕はステージで星のように輝いている、すいせいさんを見るのが好きなんです。そんなすいせいさんだから…僕は好きになったんですよ。こんなことを言うと…ちょっと恥ずかしいですけどね…」
「……そ、そっかぁ…」
なぜか、星街さんは僕から顔が見えないようにしている。視線も合わせてくれないし。どうしたんだろうと…思って視線を合わせようとしてもやっぱり避けられて…合わせられない。
僕もちょっとムキになってしまって…星街さんに意地でも視線を合わせることにした。1分ぐらいの攻防の末にやっと視線が合った。
「え、…すいせいさん…」
星街さんの顔は…とても赤かった。それにちょっと涙目で……破壊力は満点だった。
「…し、しかたないじゃん!!そんな風に言われたら誰だって嬉しいよ!すいちゃんだってキミにそんな風に想われていたって言われて、とっても嬉しかったんだもん!」
どうやら企画としては成功したみたいだけど…この後が怖いですね。もう半殺しにされるぐらいの覚悟はしないといけないかもしれない。
「…す、すいちゃんだって…キミのこと…す、すきだし…」
そしてこの後、企画の説明をした時に…僕は星街さんから半殺しされそうになるのだった。
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