僕は社員さんなのでタレントさんは…日本のメンバーだけではなくてインドネシアのメンバーやイングリッシュの方ともお話をする機会がない訳ではない。どうしても日本じゃないと出来ないことなどがあると来日してもらうことも少なくなかったりするんですよね。
そして今回はこぼ・かなえるさんが仕事の関係上、来日している。だけど一つ問題がある。
「それで…こぼさん」
「はい!」
「日本に来ていたんですね」
「うん!!きた!」
「そうですか…。あの一つ伺ってもいいですか?」
「なに?」
「なんで僕の腕を抱きしめてるんですか?」
さっきから気になってたけど、ずっとこぼさんを僕の腕を強く抱きしめている。僕とこぼさんは数度あったことがある程度でそこまで親しい間柄ではない。それにしては距離感にちょっと違和感があるんですよね。
「え、だめ?」
「いや、別にいいんですけど…こぼさんさえよければ」
日本人はあんまり挨拶でハグをする習慣だってないですし、海外では当たり前なのかもしれない。自分の常識が周りの常識とか考えない方が良い。
「だって…こぼの彼氏だもん」
「か、かれし…?」
「うん!」
「…あの…こぼさんって『彼氏』の意味って知ってますか?」
「知ってるよ。ボーイフレンドでしょ?」
それを理解しているのなら…余計に謎としか言いようがない。僕とこぼさんはそんな関係じゃないですし、どこでそんな勘違いを生んでしまったのだろうか。
「僕とこぼさんはボーイフレンドじゃないですよ」
「え、こぼの彼氏!」
「なんでそうなるんですか…。僕とこぼさんって付き合い初めてないですし」
「うんうん。こぼの彼氏だもん!!」
なぜか、こぼさんはそこを譲る気はなくてこのまま聞いても同じやり取りを繰り返すだけ。だけど、このままの認識のまんまにしておくのはかなりマズイですね。こぼさんが変な認識のまま多くのライバーさんとかスタッフさんに話したら付き合っていないとはいえ、色々と面倒なことになるのは目に見えてますしね。
「僕とこぼさんはいつから付き合い始めたんですか?」
「半年前!」
そう言えば、半年前はこぼさんに会った。ちょっと色々とあって僕がインドネシアに行った時にこぼさんとはあった。でも、会っただけで一緒に何かをしたという記憶はない。
「いや、会いましたけど…どのタイミングでボーイフレンドに?」
「インドネシアに着いたとき!!だって、こぼのことが好きだからインドネシアに来てくれたんだもんね」
「…ち、ちがいますよ。こぼさんのことは一タレントとして大切には想っていますが、こぼさんの想っている『好き』にはなれないですよ」
これはタレントとスタッフの境界線。どうやっても越してはいけない線。もし、その線を越える時は社員ではなくなる時です。
「こ、こぼ……きらい?」
「嫌いなわけないじゃないですか。もちろん、タレントとスタッフという関係性であれば大事ですよ」
「ううん。こぼのこときらい?すき?」
なんでそんな二択を僕に突き付けて来るのだろうか。こんなのどっちの回答をしたとしても…最悪な結末しか迎えることがない。だって好きと言ったら…それはこぼさんが他の人にも言いふらすでしょうし、嫌いと言ったらこぼさんがここで泣いてしまうかもしれない。
「…答えないとだめですか?」
「だめ!」
「……す、すきですよ」
さすがにここでこぼさんを悲しませるようなことはできない。もし、これでヤバいことになったとしても後悔はないです。ここで『嫌い』と言って、こぼさんを悲しませるようなことをしたら…さすがに社員としてというか…人間としてマズイ気がしますしね。
こぼさんはなぜか、僕の服に顔をうずめる。
「え…どうしたんですか?」
「うれしくて…」
「…?」
「キミが…すきっていってくれて…」
それを言う時のこぼさんの顔はとても……可愛くてドキッとしてしまった。僕はあんまりタレントさんの言動でドキッとするようなことはないんですけど…。
「そ、そうですか…」
「ちょっとはこぼにドキドキしてくれた?」
「……どうですかね」
「え~~どきどきしてよ?」
「そうですね、正直に言うと…ドキッとしましたよ」
「えへへ…///」
口には出さないですけど、本当に可愛いですね。
そしてその日から…こぼさんは今までの日にならない位のスキンシップをしてくるようになったのだ。
感想があれば