新入社員とホロメン   作:主義

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新入社員とホロメンとカミングアウト

 

そして壁ドンの企画がそれなりにヒットしたことで…次の企画を考えられる『企画会議』が設けられた。そしてそれには僕も参加してスタッフ一同で企画を出し合って…次の企画は決まった。それは『カミングアウト』。それだけ聞くと、企画内容がイマイチ掴めないかもしれない。

 

でも、実に簡単でスタッフというか……また今回もやるのは僕です。「奥さんが誕生日なんですけど、何をあげたらいいと思いますか?」とホロメンの方々に聞けばいいらしい。そしてそれでホロメンの方々の反応を見るというもの。そんなことで何かを反応してくれるのだろうか。ただ…自社のスタッフに奥さんがいたというだけで。それにこれなら別に誰でもいいと思うんですけど…また僕。

 

 

 

 

 

今回に関してはネタバレは全員の検証が終わってからということになった。前はすぐにバラさないと色々とマズかったけど、今回に関してはすぐにバラさなくても大丈夫だろうという話になった。

 

 

 

 

一人目は宝鐘マリンさん。なんか、宝鐘さんなら本当に良さそうなプレゼントを教えてくれそうな気がしますけど。これ企画が…失敗する可能性もかなり高いんじゃないかなと思ったり。そしてこの企画の成功って一体どうなればいいんだろう。

 

今更だけど、そんなことを考えていると宝鐘さんがスタジオに入ってきた。早速話し掛けてみることにした。

 

 

「あの…宝鐘さん」

 

 

「なんですか…?」

 

 

「ちょっとお聞きしたいことがあるんですが」

 

 

「…はい。いいですよ」

 

 

「あの…そろそろ妻の誕生日なんですが、何を渡せばいいと思いますか?」

 

そしてその瞬間…空気が変わった。さっきまで眠そうにしていた、宝鐘さんの目が見開かれている。

 

 

「…え……」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

「し、しゃいん…さんって…おくさんいたの…?」

 

 

「はい、言ってませんでしたっけ」

 

 

「言ってませんよ!!!」

 

 

「結婚したんです」

 

他の社員さんのらしい結婚指輪をこれ見よがしに宝鐘さんに見せる。そして宝鐘さんは指輪に夢中になっている。

 

 

「そうなんですか…」

 

明らかに宝鐘さんのテンションは落ちてるし、一人目からマズイ気がするぐらいに落ち込んでいるんですけど。これどうすればいいんだろうと思っていると宝鐘さんはスタジオの出口へと向かっていった。

 

 

「ちょっと今日は調子が悪くなってしまったので…ちょっと近くで休んでますね」

 

そう話している時の宝鐘さんはいつも通りの笑顔のように見えたけど、ちょっと陰っていた気もしたのは気の所為かな。

 

 

 

 

 

 

 

二人目のターゲットは天音かなたさん。さっきの宝鐘さんの反応を見てみるとちょっと天音さんにやるのも怖いんですよね。

 

そして天音さんがスタジオに入ってきたタイミングで話し掛ける。

 

 

「天音さん」

 

 

「あ、今日は社員さんがいるんですね!」

 

 

「はい」

 

 

「社員さんとご一緒できてうれしいです」

 

 

「僕もです。それでちょっと天音さんにお聞きしたことがあるんですけど、いいですか?」

 

 

「はい!」

 

 

「そろそろ、妻の誕生日で何かプレゼントを渡そうと思っているんです。何か女性目線でもらって嬉しいものとかありますか?」

 

 

「…………つま?」

 

 

「はい、妻です。さすがに男性の私よりも女性方がもらって喜ぶものの方があげて喜ばれると思いますし」

 

 

「…し、しゃいんさんがしあわせならぼくは!!」

 

天音さんは目に涙を溜めて今にも抱きだしそうでこっちが焦ってしまう。

 

 

「あ、あの…どうしたんですか!なにか気に障ることを言ってしまいましたか?」

 

 

「ううん…。ボクは社員さんが幸せなら応援します!!!どんなことになっても!」

 

 

「あ、はい…」

 

天音さんが何のことを言っているのか分からないですが、宝鐘さんと同じで休んでくると言われて僕は送り出すことしかできなかった。だってどんな言葉を掛ければいいのか分からないですし。なんであんな状態になっちゃったのかも分からない。

 

 

 

 

 

 

三人目のターゲットは雪花ラミィさん。これも前の二つの例を見るとかなり不安なところなんですが、それでも企画はやり遂げないといけない。

 

雪花さんがスタジオに入ってきたタイミングで同じように話し掛ける。

 

 

「雪花さん」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

「雪花さんに一つ頼みたいんです」

 

 

「…ら、らみぃにですか?」

 

 

「はい!」

 

 

「社員さんからお願いならなんなりと」

 

 

「それでは、そろそろ妻の誕生日で。なにか良い贈り物はないかと探しているんです。女性目線からなにかもらったら嬉しいものってありますか?」

 

 

「…え、ど、どういうこと?」

 

 

「いや、さすがに誕生日にいらないものを送るぬも悪いですし、本人に聞くわけにもいかなくて」

 

 

「社員さんの妻はラミィでしょ!!」

 

いや、急に変なことを雪花さんは叫び始めた。さすがに僕も後ずさってしまったが、それでも逃げるわけにはいかない。

 

 

「僕と雪花さんは結婚もしてなければ付き合ってもいないですよ」

 

 

「違うもん!!ラミィは社員さんと結婚するだもん!!!」

 

 

「それは違いますって」

 

 

「ちがわない!!社員さんはラミィのものだもん。他の誰からのものになるなんてラミィは認めない!!」

 

 

「違います」

 

 

今の雪花さんに僕の声が届く感じではなくて自分の殻に閉じこもってしまった感じがする。だからここで僕が何を言ったとしても雪花さんにそれは聞こえていない。

 

「社員さんはラミィのフィアンセだし!!」

 

それからラミィさんは何やらぶつぶつ喋りながら去っていった。

 

 

 

 

 

 

四人目のターゲットはロボ子さん。雪花さんのことを考えるとロボ子さんがどんな風になるのか、まるで想像がつかない。それに今のところ普通にプレゼントを考えてくれた人が一人もいない。この企画が何を目的しているのかは分からないんですが、本当にこれでいいのだろうかと疑問符が付く。

 

ロボ子さんがスタジオに入って来たので話し掛ける。

 

「ロボ子さん」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「ロボ子さんに聞きたいことがありまして」

 

 

「ロボ子が答えられる範囲のことだったら答えるよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「それでお聞きしたいことというのが、妻の誕生日プレゼントについてなのですが」

 

僕の問いに対してロボ子さんを首を傾げたまんま。

 

 

「僕は結婚していたんです」

 

 

「……そ、そうなの…?」

 

 

「はい、言ってませんでしたけど」

 

 

「そっかぁ……じゃあ、ロボ子のものにするには寝取るしかないんだね」

 

 

「え…」

 

 

「ロボ子は社員さんのことが好きだから。どうしても社員さんのことを手に入れたい。その望みを叶えるには社員さんを寝るしかないってことだよね」

 

ちょっとロボ子さんの目が怖すぎて後ずさってしまった。だっていつものロボ子さんの目じゃないですし。

 

 

「いえ…そういうことじゃなくて…」

 

 

「ロボ子のものにする」

 

それから色々と大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

五人目のターゲットは博衣こよりさん。なんかこの企画ってなんでやってるんだろうという疑問が湧いてくる。このまま続けても何も良いことが無さそうな感じがしますが、それでもあと一人ですしやりきらないと。

 

そしてそんなこんなで博衣さんがスタジオに入って来たので話し掛ける。

 

「博衣さん」

 

 

「社員さん?」

 

 

「ちょっと博衣さんにお聞きしたいことがあるんですが?」

 

 

「こよにですか?」

 

 

「はい」

 

 

「なんでですか?」

 

 

「そろそろ妻の誕生日なのですが、そのプレゼントを悩んでいまして。なので女性にどういうものを貰えば嬉しいのかをお聞きしたいと思いまして」

 

 

「…え、つま?」

 

 

「はい、あんまり話したことなかったんですが、僕は結婚しているんです」

 

分かりやすいように左手の薬指にはめてある指輪を見せる。

 

 

「こよに嘘を付こうとしてるの?」

 

 

「いいえ、これは本当ですよ」

 

 

「そっかぁ…こよのこと騙そうとしているんだぁ~~」

 

なぜかその言葉にちょっと背筋が寒くなる感覚を覚えた。なにか今の博衣さんの目は僕の知っている優しい感じじゃなくてコヨーテの本能が目を覚ました後みたいな感じ。

 

 

「いや、そんなことは」

 

 

「こよは社員さんのことなら何でも知ってるんだよ。社員さんは一人暮らし。最近はゲームセンターに行くことにハマってて、最寄り駅の近くのスーパーで買い物をしたりしてますよね。高校生の頃は数ヶ月だけ付き合った経験がある」

 

怖い。素直に思った。だって博衣さんの言っていることは正しいんだ。分かる訳ないことまで当たってる。僕の全てを知っているのかもしれない。

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