「ねぇ…あくあちゃんも社員さんに壁ドンをやられたよね」
「う、うん」
「悔しくないの?」
「…くやしい…?」
「うん!だってシオンたちは社員さんに好きなように弄ばれたんだよ」
「そ、そうかな…?」
「そうだよ!シオンは絶対に社員さんのことを許さないよ」
「許さないってなにをするの?」
「ちょっとね。だからあくあちゃんも協力してよ」
「え……」
「シオンに協力してくれればあくあちゃんの好きなように社員さんをできるよ」
その言葉を聞いた湊あくあは固まった。紫咲シオンの言葉の破壊力は抜群で湊あくあの脳内には『好きなようにできる』という言葉だけが残ってしまっている。
「…ほんと?」
「うん。あくあちゃんだって社員さんのこと好きにしたいでしょ?」
「…うん、したい」
「それだったらシオンに協力してよ。してくれたらあくあちゃんにも社員さんのことを好きにさせてあげるからさ」
それから湊あくあはしばらく考える素振りを見せてから首を縦に振った。
「じゃあ…あくあちゃんも協力してね」
あくあちゃんを仲間にしてから、あやめちゃんのことも仲間に引き入れた。あやめちゃんは壁ドンをやられていなかったけど、社員さんのことを好きに出来るという言葉につられてきた。
―――――――――――
まず、社員さんを家に呼ぶ。
今日は祝日。社員さんは仕事を休んでいる。前々から今日の予定をずっと社員さんに聞いていた。さすがに家に呼びたいのにどこかに出かけてて来れないとかは最悪だしね。
あくあちゃんとあやめちゃんは昨日からシオンの家に泊まっている。
全ての準備は整っている。
そして社員さんに連絡して「ちょっと今からシオンの家に来て」と送る。地図と住所を社員さんに送って来てもらう。電話だと断れてしまうかもしれないが、メッセージであれば社員さんは断らない。これはシオンが社員さんとずっと過ごしてきて分かったこと。
連絡して少しすると『分かりました』と連絡が来た。
「来てくれるって社員さん!」
「お、おっけい…。がんばらないと…」
「それにしても本当にシオンちゃんは悪知恵が働くよね」
「あやめちゃんには言われたくない」
「いや、余よりもシオンちゃんの方が悪知恵が働いていると思う余。それにシオンちゃんじゃないとこんなこと思いつかないでしょ」
「それはたしかに」
「なんであくあちゃんも納得してるの!?」
「だ、だってシオンちゃんじゃないとまさか社員さんに睡眠薬を飲ませようなんてヒドイことは思いつかないよ」
「じゃあ、あくあちゃんもあやめちゃも睡眠薬を飲んで…無防備な社員さんのことを見たくないの?」
すると二人は急に静かになって「みたい」とだけ言った。そうなんだ。この二人もシオンも社員さんが酔わっているところを苛めて、普段は見れない社員さんの顔が見たい。
「大人しくシオンの協力して」
「わ、わかった」
「余もがんばる」
それから社員さんが来るまで待っていた。数十分もすれば社員さんはシオンの家に着いた。リビングにまで招き入れると社員さんはあくあちゃんとあやめちゃんがいることに驚いているみたいだけど大人しく座ってくれた。
「湊さんと百鬼さんも来ていたんですね」
「う、うん。ちょっとゲームしてて…」
「余も」
あくあちゃんの受け答えはいつも通りでぎこちなかったけど…予定通り。
それからシオンがお茶を用意して皆に運ぶ。そして一つだけ媚薬を入れたものを社員さんに渡す。本当に社員さんは人を疑うという言葉を知らないようで睡眠薬が入っているとは思わず、飲み始める。
その後は数分、普通に会話をしていると社員さんに異変が現れる。ちょっと息が荒くなってきて、さっきまで来ていた上着を脱いだりしているので確実に効果が表れ始めてる。
「ご、ごめんなさい。ちょっと体調が悪いので帰ってもいいですか?」
社員さんは頭を手で抑えながら苦しんでいた。そんな社員さんの様子を見るだけでとっても興奮する。こんなに弱った社員さんを見るのは初めてだし、今の社員さんならシオンの力だけでも押し倒せる。
「だめだよ」
「…ち、ちょっと……」
そこで社員さんの意識が途絶えて倒れた。
「ほんとによかったの?」
「余も…」
「今更そんな弱気なこと言わないでよ…」
さっき社員さんが苦しんでいた時は興奮したもけど、それと同じくらい罪悪感に襲われた。本当にこんなことをしてよかったのかなって。やっぱり好きな人が苦しんでいるところはあんまり見たくはないし。
でも、もう始めちゃったこと。もう後戻りはできないし。
「シオンは止めないよ」
「…シオンちゃん…」
「あやめちゃんはシオンのを見ているだけで良いってことだよね」
「そ、そうは言ってない余」
「…じゃあどっちにするか決めてよ」
社員さんのガードは高いから体に触れるだけでもかなり難しい。それに社員さんは過剰なまでに接触を避ける傾向にもある。たぶん、それはタレントのシオンたちのことを想ってのことだってことは分かっているつもり。
だけどそれを今の社員さんなら触れられるし、好きなようにできる。その魅力をあくあちゃんもあやめちゃんも分かってるはず。今だったら普段はできないようなことだって…できる。
あやめちゃんはしばらく悩んでいたけど、答えが出たようでシオンのことを真剣に見てきた。
「……やる余」
今からやることを考えるとそんなに真剣な顔をしなくていいんだけど。
「あくあちゃんは?」
「…や、やるに決まってるじゃん!」
「そうだよね。そうこなくっちゃ」
三人で話し合った結果として…先にお風呂に入ることにした。もし、社員さんが目覚めてしまった時に匂いを嗅がれてしまうような距離感で…『臭い』とか言われたら精神が持たない。特に大好きな人にこんなことを言われたらしばらく立ち直れない。
三人で交代でお風呂に入って、残りの二人が社員さんを見守る。そして公平性を保つために誰かがお風呂に入っている間は社員さんに手を出さない。これだけは約束として取り決めた。
「じゃあまずはシオンから」
「え~余もやりたい」
「あ、あてぃしだって」
「じゃあ、これを提案したのは?」
「しおんちゃん…」
「そうだよね。だとしたら普通はシオンに譲るべきだと思うんだけどなぁ~」
これだけはどうしても曲げられない。
「…わ、わかったよ…」
やっと二人が認めてくれたところでシオンは社員さんに近付く。
「ま、まずは…触るだけ…」
恐る恐る、社員さんの体を触るとそこには実体として存在していることを改めて認識する。シオンも社員さんと話すことがあっても、こんなに密着できるような距離で触れ合うことなんてない。
一度だけ社員さんの家に行ったことは会ったけど、あの時はさすがに社員さんのことを触ったりすることは出来なかった。
触った後は社員さんと同じように横になって、普段じゃ絶対に出来ないぐらいに密着している。社員さんの匂いがシオンのことを包んでくれて安心できる。
もうずっとこうやって過ごしたいと思うぐらいにいい。まじで社員さんの匂いってなんでか分からないけど安心するんよね。なにか特殊な香水でも使ってるんかなぁと思っちゃうぐらいに。
「いいにおい…」
自然と笑みがこぼれちゃう。
「シオンちゃん、ちょっときもいぞ」
「…うん」
「二人だってこうすれば分かるよ」
そしてシオンがそれからも社員さんと密着していると二人が外から色々と文句を言ってくる。
「も、もうそろそろ、あてぃしのばん!」
「余の番だよ!」
「え~~まだ~」
「シオンちゃんはもう十分、社員さんのことを抱きしめたでしょ」
「そうだ、そうだ!!余たちの番だ!」
それからあくあちゃんとあやめちゃんに「代われ」と言われ続けて、仕方なく譲ることにした。やっぱりあやめちゃんもあくあちゃんも自然と笑みがこぼれてた。
社員さんが目覚めるまでの間、三人でローテーションをしながらしっかりとこの好機を楽しんだ。