新入社員とホロメン   作:主義

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新入社員とホロメンと幼児化

朝早く一番に出勤するとおかしな薬が自分のデスクの上に置かれていたら…飲むべきなのか、飲まない方がいいのか。前にもこんなことがあった気がする。でも明らかに薬らしき液体の色は人間が飲んでいいものの色じゃなければ少し離れているのに匂いもかなりキツイ。

 

 

 

そして自分はこういう時になぜか飲むという選択肢を取ってしまうんですよね。僕は深呼吸をしてから一気に飲み干した。なんか変な味がした気もするけどそんなことは気にせずに流し込む。

 

 

 

飲み干した直後はなにかが起こった感じしなかったので…少し油断したその瞬間に体が熱を帯びる感覚を帯びて動けなくなって、床に倒れてしまった。

 

 

 

 

どんどん息も苦しくなってきていき…頭がぼんやりしていき、意識が途絶えた。

 

 

 

―――――――――

 

 

ポルカはちょっと早く事務所に着いた。今日は事務所で打ち合わせとかサイン書きとか色々とやることがある。だから遅れる訳に行かなくていつもより早く家を出ちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所に入るとなんか小さな声が聞こえて来る。

 

 

 

 

「え…だ、だれ…!」

 

 

でも今は朝だし、幽霊なんて出る訳ないよ。ポルカは自分にそう言い聞かせて聞こえない振りを決め込んでいても明らかに声は聞こえて来る。

 

 

数分しても声は途切れることなく聞こえて来る。でもその声は大人って感じじゃなくて…子供。

 

 

 

 

 

「おねえちゃん~~」

 

小さな子供がポルカの方に向かってきて抱き着いた。さすがにポルカもすぐに反応ができなかった。なんでこんなところに子供がいるのかも分からないし。

 

 

 

 

 

そして数秒してやっと頭で整理を始める。事務所に来たら子供が来て抱きしめられる。

 

ううん。整理しても全然理解できないし。

 

 

「お、おねえちゃん!!」

 

 

「ぐは…っ…」

 

純粋過ぎてポルカは耐えられなかった。こんな無垢な瞳に『お姉ちゃん』なんて呼ばれたらポルカの心臓が持たない。

 

 

「おねえちゃん?」

 

 

「…も、もう……だぁめ…かも」

 

もう吐血しちゃいそうなほどの衝撃。

 

 

衝撃的過ぎて全然気づけなかったけど、この子の首に社員証が掛かっている。

 

 

「ちょっとごめんね。それをお姉ちゃんにちょっと貸してくれないかな?」

 

 

「これ?」

 

 

「うん。それをくれたらお姉ちゃんが好きなものを買ってあげるよ」

 

すると男の子はとても物分かりが良くて、社員証を取ってポルカに手渡してくれた。その時の男の子は天使のような笑顔の所為でポルカは目を合わせることが出来なかった。いや、目を合わせるというよりも顔を俯いたまんまで上げることはできなかった。

 

 

 

貰った社員証を確認してポルカは体も思考も止まってしまった。だってそこには社員さんの名前があった。社員さんがこんなに小さいわけない。でもそれなら社員さんの社員証をなんでこの子が付けていたんだろうか。それに誰がこの子を会社に連れてきたのかなっていう疑問も残るし。全ては謎だらけ。

 

それからポルカはまず…休憩室までこの子と手を繋ぎながら行った。他のスタッフさんとか社員さんが来るまでは大人しくしておくのが一番の得策だと思うし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからほとんどの人が出社しても社員さんは来なかった。不思議に思って、社員さんのデスクのところにまで行くとそこには空の瓶が置いてあるだけで特段変わった感じはしなかった。でも…ポルカには見覚えがあった。

 

「まさか……」

 

ポルカはすぐに心当たりのあるホロメンに電話を掛けると三コールぐらいで出た。

 

 

「こより?」

 

 

「はい。こんこよで~す」

 

 

「こよりって変な薬作ってたよね」

 

 

「変な薬って……すごい薬って言って欲しいですよ!これはこよりじゃなくちゃ絶対に作れなかったものなんですから!」

 

 

「うん、すごいすごい。それでその薬って誰かに飲ませたりしていない?」

 

 

「……の、のませてませんよ」

 

明らかにこよりの様子が変わった。

 

 

 

それからこよりを問い詰めると社員さんのデスクに薬を置いたことを認めた。そしてその薬の効果は一定時間幼児化してしまうものだということも。

 

 

 

 

 

 

 

 

ってことはこの小さな子は…社員さん。確かに言われてみれば面影はかなりあるかも。

 

「おねえちゃん…どうしたの?」

 

 

「ううん。なんでもないよ」

 

たぶん、この子には記憶がない。それに記憶があればポルカを『ポルカ』って呼ぶことはない。いつも尾丸さんって呼ぶし。

 

 

「あれ、おまるんじゃん」

 

 

「獅白」

 

さすがに獅白も社員さんの方に視線がいった。

 

 

「その子だれ?」

 

 

「これには色々と事情があって」

 

それから要点だけを掻い摘んで獅白に説明した。信じがたいような話だけど、獅白は真剣に聞いてくれた。

 

 

「ってこんな感じ。だから今の社員さんは幼児化しちゃったみたいなんだよ」

 

 

「へぇ…じゃあ今の社員さんには昔の記憶はないってこと?」

 

 

「ないと思う。あったらポルカに状況を説明したりすると思うし」

 

 

「そうなんだ」

 

すると獅白は幼児化した社員さんのことを抱っこし始めた。

 

 

その様子は端から見るとお母さんのようだった。まるで手馴れていてもう何度も子育てをした人みたい。

 

 

「獅白って子育てしたことあるの?」

 

 

「ないよ」

 

 

「それにしては上手すぎじゃね」

 

なんか子供の社員さんのことを抱いている姿も様になっているように感じるし。

 

 

「ただ抱いているだけ」

 

 

「そう?」

 

 

「じゃあ逆におまるんも抱いてみたら」

 

そう言って獅白はポルカに社員さんを渡してきた。でもさすがにポルカも深呼吸をしてから…震える両手で受け取る。今の社員さんは子供。もし落としてしまったら…怪我をする。小さな命を自分が抱っこしていると思うと余計に怖くなってくる。

 

 

「おまるんはちょっと強張り過ぎよ」

 

 

「し、しかたないじゃん。子供とか抱くとこうなっちゃうの」

 

 

「子供は抱いている大人の顔を見てるからさ。なるべく笑顔とか余裕のある感じじゃないと子供はそれを敏感に感じちゃうから、なるべく脱力した感じで」

 

獅白ってすげぇと改めて感じた。

 

 

 

なるべく獅白のアドバイスに添うように笑顔で子供を抱くようにすると…赤ん坊も笑顔を見せてくれるようになった。

 

 

「ほんとだ。やっぱり笑顔だと赤ちゃんにも通じるものなのか」

 

赤ちゃんはポルカに笑いかけてくれる。まじで『天使』。世の中にはこんなに可愛くて、人に勇気を与えてくれる生物が存在するのだ。

 

 

「おねえちゃん!」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「おねえちゃんのことすき!」

 

 

「…す、すき……///」

 

 

子供とはいえど、社員さんに言われていると思うと…恥ずかしさが込み上げて来る。それからも事あるごとに子供の社員さんは『可愛い』とか『好き』とか言ってくるので心臓が破裂する思いをした。

 

 

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