今日もいつものように仕事に励んでいると急に頬をつままれた。誰だろうと思って後ろを振り返るとそこには……猫耳の紫色の髪色をした女の人が笑顔を浮かべて立っていた。
「ふ~ん。キミが……」
「!!」
「キミのそういう顔が見えてボクは満足だよ」
「猫又おかゆさんですよね?」
「うん。そうだよ~」
「僕たちって初対面だと思うんですが、どこかで会いましたっけ?」
僕の勘違いだったらとても失礼なことになってしまうけど。
「たぶん、ないんじゃないかな」
「やっぱりそうですよね……初対面にしてはかなり距離感が狭く来たのでどこかで会ったことがあるんじゃないかと思ってしまいましたよ」
「そうかな~~ボクは別にそんなに詰めてないよ~」
あれで距離感が近いと言わないのかな。もしかして猫又さんの中ではよほど近くないと距離感が近いとは言わないのかもしれない。僕の基準で言っていいのならかなり近い部類に入るんだけど。
「あ、そういえば、挨拶がまだでしたね。僕は四月からここで働かせてもらっている者で…」
「言わなくても分かってるよ。それを知っているからこそここに来たんだしね」
「どういうことですか?」
「フブキちゃんと食堂で話してたでしょ?」
たまにだけど、白上さんが収録に来ていたり、打ち合わせで事務所に来ている時に一緒に食堂で食べていたりする。
「は、はい」
「その時のフブキちゃんがとても楽しそうに話したし、それ以外にもキミのことを気になった理由はあるんだけど、そこは後でいいかな。まあ、簡単に言うとキミのことが気になったから見に来た感じかな~~」
「僕は普通の人間ですよ。そんなすごい事とかできませんよ」
「すごい事を見に来たんじゃなくて…普段のキミを見に来たんだよ、ボクは」
「普通の僕?」
「うん。だからいつも通りに仕事をしてもらって大丈夫だよ~ボクは少し離れたところでこっそりとキミのことを見てるからさ」
そんな風に言われると気になってしまう。それに自分のことを見ていると先に宣告されるのは初めての経験かもしれない。
「……は、はい」
そして猫又さんは僕のことを離れたところからずっと観察していた。正直、そのせいで仕事にはちょっと集中できなかったりしたけど。そんなこんなで時計を見るといい時間になっていた。
「どうでしたか?猫又さんの望むような姿でしたか?」
「うん!今日は無理を言ってごめんね」
「これぐらい大丈夫ですけど……」
「それじゃあ、ボクはもう帰るね~」
「はい、それでは」
結局、猫又さんは何を見たかったのだろうか。いつも通りの僕を見て何か得ることがあったのかな。まあ、猫又さんが満足の行くような結果が見れたのであればそれに越したことはないけど…。
「あ、そうだ。僕も帰る支度を整えないと。今日は早く帰らないといけないんだった!」
僕も帰り支度を整えて急いで帰路に付くのだった。