橙色の空   作:通りすがりの猫好き

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……はい、投稿が遅れてすみませんでした。
何か色々書きたい欲が出てそっちに行ってました。
こんなペースですが付き合ってくれれば是非。


紅白戦②

「一方的になっていない、というのは収穫だけど。そろそろ1点が欲しいところね」

 

 バットを握りしめ、呟くのは石田だ。2軍先発の大下は3回を投げ終えて6安打3四球。なにぶん出塁を多く許しすぎた。先ほどの回で6番打者の田丸にライト前へ落ちるタイムリーを浴びて計4失点。今日は元々長い回を投げさせる予定は無いがこの成績ではノックアウトされてもおかしくない、それくらいの出来だった。

 

 一方の1軍先発の牧野は3回までで3安打無失点。立ち上がりのピンチから完全に立ち直っているように見えた。そして中盤に入った4回の表、ここまで劣勢だった2軍チームが反撃に出る。先頭の湖南がデッドボールで出塁すると続く最上がセンターへのヒット。5番の辰川がゲッツー崩れに倒れる間に湖南は3塁へと到達していた。

 

「よっしゃー来ぉーい!!」

 

 ネクストバッターサークルから6番打者の高橋が威勢よく打席に向かう。先ほどの打席はセカンドへのポップフライに倒れている。1アウトでランナー三塁というのは得点が入りやすいシチュエーションだ。なにぶん2アウトとは違って外野フライや内野へのゴロでも点が入る可能性がある。

 

(でも、中途半端なフライだとランナーは帰れない。……It's Difficult(難しいわね))

 

 しかし1軍の外野は固い。センターの石神やライトの近江戸はチームでも屈指の強肩を誇っており、スローイングも安定している。加えて3塁ランナーの湖南は野球選手の中で言えば鈍足の類だ。下手な距離でタッチアップするとこちらが刺されかねない。狙うなら極力レフトがいいが、当然バッテリーも詰まらせる事を狙ってくるだろう。

 

 初球、打者の手前でカットボールがワンバウンドして1ボール。キャッチャーの西が身を挺して後逸を阻止する。続いて1塁ランナーの辰川を目で牽制した。

 

「オッケーオッケー!! 見えてるよー!」

 

 2軍ベンチから声援が飛んでくる。だが訂正しておくと、高橋はきっちりボールが見えたからバットが止まったわけではない。初めからある程度ボールにヤマを張っているから動かなかったのだ。先ほどの打球はインローのボールに詰まらされて弱いフライへと終わった。故に今度は反省を活かして無理に打ちに行かず、コースを絞って確実に捉える。それが高橋の狙いだった。

 

 カウントは動いて2ボール1ストライク、打者有利のバッティングカウント。この打席で高橋はまだ一度もバットを振っていない。ランナーを気にするそぶりを見せた牧野が投球モーションに入る。

 

(来た、狙い通りのコース!!)

 

 高めに浮いた直球。それを打ち上げた。打球は外野まで伸びながらも、フェンス手前で失速する。しかし距離は充分。センターの石神が捕球体勢に入る中、湖南もじっとその瞬間を待つ。

 

(今!)

 

 ボールを捕球したのを確認して湖南がスタートを切る。送球を見る暇などない。駆ける。ただ一目散にホームを目指す。左手でホームベースをタッチしておおよそ3秒ほどしてボールが2バウンドして帰ってきた。

 

「……よし」

 

「1点目! まだまだいけるよみんなー!」

 

 勝の元気な声を皮切りにベンチから歓声が上がる。最上だけは不服そうな顔をしていたが、他の選手の表情は明るくなっていた。ホームが遠かったチームにとってはようやく取れた1点だ。和気あいあいとした雰囲気のベンチに高橋が帰ってくる。

 

「いやー、この状況で犠牲フライを打てる俺。スゴい!」

 

「あ、お帰り~高橋君。ナイスバッティング! いよっ、ミスター最低限!」

 

「……えーっと、あの、勝先輩?」

 

「ん~?」

 

「それ褒めてるんですか?」

 

「そりゃあ褒めてるに決まってるでしょ! 最低限が出来る選手ってのは大事だからね!」

 

「そうっすか……」

 

 右の人差し指を立てながら姉崎の物真似なのかふふん、と胸を張る勝。言葉選びが下手なだけで多分これは本気で褒めているのだろう。釈然としない思いを胸の内にしまって高橋はそれ以上追及しない事にした。

 

「よくやったぞミスター最低限!」

 

「ミスター最低限……ふへっ」

 

「おいお前らのは悪意あんだろ!」

 

「はいはい、喧嘩なら試合の後ね! 今はとにかく試合に集中する!」

 

 ぎゃいぎゃいと騒ぐ1年坊主たち。幼児をあやすかのように声をかける勝はというと。

 

(フレちゃんがここにいなくて良かったな~。こんな感じだと私まで怒られそうだし)

 

 先ほどネクストバッターサークルに向かっていったもう一人のマネージャーの不在に安堵していた。

 

 その後滝野がサードゴロに倒れ、4回の表は終了する。それでも1点を奪えた事実が2軍選手たちにとって追い風になっている事は確かだった。潮目が少しずつ変わり始める。

 

 4回表終了 1軍 4―1 2軍

 

 4回の裏、一軍の攻撃。石神の内野安打と四球が重なって二死一二塁のピンチを招く。打席には第一打席で痛打を放っている近江戸。ここ一番という場面で辰川と大下の呼吸がようやく重なり詰まらせた打球はセカンドへの平凡なゴロに倒れ、このピンチを無失点で切り抜けた。

 

「ナイス大下先輩! 本音を言うともうちょっと早くその投球してほしかったっすけどね!」

 

「耳が痛ぇー話すんなよ辰川」

 

 バッテリーが軽口を交わしながらベンチへ帰っていく。攻撃に転じる二軍メンバーはバットを持ったり、声援を送ったりと様々だ。その横でガチャガチャと何かを取り付ける音に滝野は気が付いた。横を見るとなるほど、湖南がキャッチャー防具の準備をしているらしい。

 

「そういえば次の回からキャッチャーだっけ」

 

「はい。打席に入る可能性もあるのでまだ付ける事はできませんが、すぐに守備に入れるように準備だけはしておこうかと」

 

「大変だなキャッチャーも」

 

「そうでもありません……とは言い切れないですね。大変なところがあるというのも正直否めませんし」

 

「あーそう。じゃあ何でキャッチャーやってんの?」

 

湖南は作業をする手を止め、少し考えるように視線を上にやった。

 

「……夢のため、ですかね」

 

「夢?」

 

「昔は妹とよくバッテリーを組んでいたんです。その頃は二人で最強のバッテリーになると約束していました。喘息のため妹は野球を諦めざるを得ませんでしたが、今でもその夢をずっと追い続けているのかもしれません」

 

「……そういうのって普通甲子園優勝とか掲げるもんじゃないの?」

 

「それは目標であり、夢ではありません。追いつけるもの、捉えられるものに対して夢と名付けるほど、私はロマンチストではありませんので」

 

「へー、可愛くないのね」

 

「よく言われます」

 

「ストライク! バッターアウト!!」

 

「んがーっ!! あと数センチ!!」

 

 試合に目を戻すとちょうど樹が空振り三振に倒れて1軍守備が引き上げていくところだった。滝野がグラブに左の指を通したところで、湖南が彼を呼び止める。

 

「この後投げるんですよね」

 

「まぁ予定通りならそうなんじゃない?」

 

「……そういえば今は一塁手でしたね。はい、でしたら一つお願いがあります」

 

「何さ」

 

『キャッチャー湖南冬果』から目を離さないで下さいね

 

「……さては何か企んでるな? 回りくどくせずに言ってくれればいいのに」

 

「捕手とはそういうものですから。それに事前に分かるのも面白くないでしょう?」

 

「ちぇっ、教えてくれたっていいだろ。本ッ当に可愛くねーの」

 

「ありがとうございます」

 

「褒めてねーよ!」

 

 湖南の前髪がヘルメットで隠れる。湖南冬果、彼女の戦いはこれから始まろうとしていた。

 

 

5回表 守備交代 湖南 レフト→キャッチャー 辰川 キャッチャー→レフト

 

 捕手が変わる事で投手に及ぼす影響は少なからずある。ただそれに頼るほど劇的に投手が変わることなど稀である。その厳しい現実は、二死一二塁という今の状況が示していた。

 

(二死です。割り切って、攻める気持ちでいきましょう)

 

 とはいえ、片方のランナーはエラーで許したものである。それにここを抑えればという場面は捕手にとって絶好のアピール機会だ。

 

「さてと。碓氷、狙っちゃいますかね。ホームランってやつを」

 

(嘘だろうな)

 

 ここで打席に入るのは9番打者の碓氷だ。口では大それたことを言っておきながらもバットを短く持っている事を見るに、恐らく軽打狙い。パワーは無いが転がせば厄介、それが碓氷に対する湖南の評価である。

 

 ―――故に、三振狙い。それがバッテリーの狙いだった。少なくとも先ほどエラーしたサードの所へは飛ばしたくない。初球、2球目と速球で押し込み、3球目に変化球を混ぜる事で空振り、2ストライク目を奪った。

 

(……さて、ここから)

 

 ランナーはこれ以上溜めたくない。よってフルカウントは避けたい。とりあえず1球高めの釣り玉を挟む。が、碓氷は振らず。次で決める。湖南が構えたのは左打者の外角低めいっぱい。サインに頷いた大下が腕を振り抜いた。

 

「おっと」

 

 詰まらせた当たり。だが飛んだコースが良かった。打球はちょうどサードとショートの間を転がりレフトへと転がる。

 

「ホームッ!!」

 

「こんのぉっッ!!」

 

 この回からレフトに回った辰川は浅い位置にいた。彼女からワンバウンドで返球されたボールはそれてホームベースからかなり離れたところで湖南がボールを捕球する。

 

 だが湖南のプレーはそれだけでは終わらなかった。しゃがんだままの姿勢からそのまま一塁へと送球する。

 

 ―――閃光に近しい何かが、うなりを上げた。

 

「え」

 

 わずかに一塁ベースをオーバーランしていた碓氷が短く声を上げる。それすら言い終わるより先に、ファーストミットは。確かに彼女の脇腹を捉えていた。真白が口角を上げてつぶやく。

 

「いいね、よく見えている」

 

「あ、アウト!」

 

「え、え―――……マジですか」

 

 唖然と立ち尽くす碓氷と、淡々とした表情でベンチへと引き返していく湖南。対照的な二人の行動は先ほどのプレーを象徴するかのようだった。

 

 ベンチで防具を外す湖南の頭をグラブが小突く。そのグラブの主は先ほどの送球を捕球した滝野であった。

 

「ナイス送球、湖南」

 

「そちらこそ良いタッチでしたよ、滝野君」

 

「で、実際のところ狙ってたのか?」

 

「狙っていましたが、偶然に近いです。辰川さんの送球が逸れたこと、そしてそれを碓氷先輩が見逃さなかったこと。碓氷先輩の走塁意識が高かった故の事故のようなものです」

 

「流石捕手、俺が投げる時も頼むよ」

 

「それは滝野君の調子によりますが」

 

「そこはもっとさぁ。『任せてください』とか言えないの?」

 

「そうですね、すみません。……ですが、私も負けるつもりはありませんので」

 

「なんだよ、そういうこと言えんじゃん」

 

「では私は打席がありますので」

 

「打ってこっちの事を楽にしてくれよ」

 

「…………」

 

「何か言ってくれよ! ……はぁ、俺らの代はつくづく個性的な奴らばっかだな」

 

 無言でバットを持ってベンチを出ていく湖南を尻目に、滝野はため息を漏らした。

 

 

 6回表 守備交代 牧野 ピッチャー→山木 ピッチャー、キャッチャー交代、田丸 ショート→セカンド

 

 1軍先発の牧野は5回を投げ終えたところで降板。4安打1死球1失点と上々の成績を見せた。そして代わりにマウンドに上がったのは同じく3年の山木である。チェンジアップを主体としたピッチングで先頭打者、そして3番の湖南をあっさり打ち取った。

 

 しかし4番の最上には直球を狙われライト前へのヒットを許し、5番の辰川を迎える。辰川がバットを二度、三度とインパクトの瞬間で止める動きを見せて右のバッターボックスに入った。

 

(去年見た時からそうだったけど、やっぱりちょっと個性的なフォームだなぁ)

 

 真白の頭にまず一番に浮かんだのはそんな感想だった。日本における大抵のバッターはバッターをある程度傾ける、もしくは立てるフォームが一般とされている。そんな中で彼女はバットを肩に乗せるようににし、姿勢を少し低くして構えている。

 

(あれをいい意味での異質と呼ぶか悪い意味で浮いているかどうかは彼女の活躍次第だけど)

 

 山木とは初めての対決。代わりばなの投手にどう対応するか、それが注目されるポイントだ。

 

 

 辰川の頭に浮かぶのは、守備での苦い記憶。リードしては初回から3点を許す展開を作り、先ほどのプレーでは湖南の機転に救われたもののあわや悪送球でさらに傷口を広げるところだった。今日の試合において、辰川は結果を残せていない。いや、それどころかマイナスもいい所だ。

 

 だから、取り返す。マイナスからゼロへ。ゼロからプラスへ。ここで逃げているようでは、ここに来た意味がない。何よりも支えてくれた人に顔向けが出来ない。

 

 その初球。低めに制球されたチェンジアップを掬い上げた。姿勢の低さが功を奏したか、角度のついた打球がセンター後方を襲う。

 

 センターの石神が途中で足を止める。辰川が右手を突き上げて一塁ベースを回ったのと、打球が着弾したのは、ほとんど同時だった。

 

 

「ナイスホームラン!」

 

「ありがとうございます。あ、それと。湖南!」

 

「……はい?」

 

 ヘルメットを脱いだ辰川が湖南を真っ直ぐに指差す。指差された当人はわけも分からずただ首をかしげるだけだ。

 

「これでさっきの借りは返したからな!」

 

「???」

 

「何で『ちょっと何言ってるか分かんないです』みたいな顔してんだよ! だーもういい! ともかくアタシはアンタに負けるつもりはねーから! 覚えとけよこんにゃろう!」

 

 頬を膨らませてずかずかと去っていく辰川の姿を、やはり湖南はよく分からないという顔をして見送っていた。

 

 6回表終了 1軍 4ー3 2軍 

 

 2点差まで詰め寄った試合は、いよいよ中盤から後半へと移ろうとしていた。

 

 

 6回裏 守備交代 滝野 ファースト→ピッチャー 橙山 ショート→セカンド セカンド交代→ショートへ 辰川 レフト→ファースト

 

 6回の裏、マウンドには2番手の滝野が上がる。気合は充分、投球練習で湖南のミットに気持ちのいい音が響いている。

 

「さて、ここから上位打線。きっちり打ち取って攻撃のリズムに繋げましょう」

 

 湖南がサード、ファーストへとハンドサインを出しながら声を出す。意識するのはテンポの良さ、守備から攻撃のリズムを上手く作っていくことだ。そのためには投手の制球力次第ではあるが、基本的にストライク先行で行きたい、というのがバッテリーの思惑で会った。。

 

 その先頭の石神との対決。初球を狙われるも直球の球威が勝り投手への弱いゴロで1アウト。続く関にはカットボール主体に追い込んで最後はワンバウンドするスライダーで空振りを取り三振。

 

 そして二死、ランナーなしの場面で姉崎と対峙。直球でストライクを先行させるも、そこから姉崎が粘りを見せ、速球を3球連続でファールにする。続く直球が高く外れ、左打者の外角に逃げていくシンカーを見逃しこれもボール。フルカウントとなったが最後のボール、インローにえぐりこんでくるスライダーに手が出て空振り三振。

姉崎がネクストバッターサークルに立っている近江戸の肩を掴みながらベンチへと引き上げていく。

 

「ナイスピッチです」

 

「おう」

 

 湖南に応えるように滝野が拳を突き出す。少し躊躇気味の様子を見せた湖南だったが、同じように拳を突き合わせた。

 

 滝野真吾、上位から始まる好打順を無安打2三振。見事に相手打線をシャットアウト。上々の高校デビューを果たす。

 

 

 7回の表、二軍の攻撃はあっさりと三人で終了。この回先頭打席に立った滝野が短いキャッチボールの時間を終えてマウンドへと向かう。

 

 打席には4番、近江戸が入る。初球、ボールを放るタイミングで近江戸が大きく左足を上げた。

 

((上げた!!))

 

 ボールはリリースポイントが遅れてワンバウンド。近江戸は悠々とボールを見逃し1ボールとなる。

 

(……今ので正解です、滝野君。無理に力勝負に出ずとも、ここは丁寧に仕留めていきましょう)

 

 湖南が低めへの投球をジェスチャーで伝える。それに呼応するように滝野も首を縦に振った。そこからはボールを外しつつも低めを意識して2ボール1ストライク。苦しくも1ストライクを取ってみせた。しかし湖南の表情は浮かない。

 

(狙いが分からない)

 

 この打席、ここまで近江戸は一球も手を出していない。それどころかバットを出そうとする気配すらない。その事実が一層彼の不気味さを際立てていた。

 

(ここはスライダーでいきましょう。あのボール、初見なら打たれる可能性も低い)

 

 構えたのはやはり低め。滝野が頷き、ねじるようなフォームからボールを繰り出す。コースは完璧に近い。ストライクを取れると思ったその時。

 

 暗転。そして快音。

 

 打球は失速せず、レフトの頭をゆうに越していった。男近江戸、これまでの不満を一拭する一発が炸裂した。

 

 

 滝野が崩れたのか、それとも1軍打線が流れにのったのか。5番の阿久留が四球で出塁すると、続く田丸がセンター前へと抜けるヒット。ホームランを打たれて以降、流れが完全に傾いてしまっていた。たまらず湖南がタイムを取ってマウンドに駆け寄る。と同時に内野陣もマウンドに集まってきた。

 

「……すみません、さっきのホームランはこちらのミスでした」

 

「いや、そこからズルズル引きずったはこっちのミスだ」

 

 二人とも言葉に詰まる。それほどまでに先ほどの近江戸の一発には空気を変える力があった。

 

「謝罪合戦してる場合かお前ら! 今は後回しでいいだろそんなの!」

 

 二人の肩を樹が叩く。

 

「樹……」

 

「不安ならこっちに打たせてこい! こっちだって打撃の鬱憤がたまってんだよ、一気にアウトとってやらぁ!」

 

「そうだそうだ! 内野守備なら俺らに任せとけ!」

 

「たった一点取られたくらいでしょげてるわけねーよな湖南。アタシなんてリードして4点取られてんだぜ?」

 

「……そうですね、切り替えていきましょうか。とりあえずはゲッツー狙いで打たせていきましょう。ここはバックを信じて、それでいいですね滝野君」

 

「ああ。飛ばすからちゃんと取れよ樹」

 

「任せとけ!」

 

 再び一人となったマウンドの上。滝野の表情は先ほどよりも鋭く光っていた。続く8番打者に対して3球連続でストレート、球威で完全に詰まらせてセカンドへのポップフライで打ち取ってみせる。

 

 1アウトを取ったところで一軍には代打が出される。その初球、直球狙いの打者に対して芯をずらすカットボールで程よく勢いを殺された打球はサード・高橋のところへと転がっていく。

 

「よっしゃ、橙山!」

 

 ボールは高橋からセカンドへのカバーに入った樹へ。グラブに収めてベースを踏む。そして、跳躍。体をひねらせながらファーストへと送球した。ワンバウンドしたボールを辰川が上手く掬い上げ併殺完成。

 

「っしゃー!!」

 

 併殺に関わった高橋、樹、辰川がたまらずガッツポーズする。特に樹は送球した体勢からショートの体にもたれかかりながら吠えるレベルであった。

 

 ともかく傷口を最小限で抑えた滝野がグラブを手でたたきながらベンチへと走って戻っていく。

 

「な、ちゃんと守ったろ?」

 

「……まぁ、そうだな」

 

「オイ橙山、お前ちょっと格好つけてジャンピングスローしたろ。捕るのアタシじゃなきゃ危なかったぞ」

 

「いてて、肘でつつくなよ辰川。っていうかいいじゃん反省は後で、アウト取れたんだし」

 

「それはそれ、これはこれだ!」

 

「勘弁してくれ~」

 

「……彼らは賑やかでいいですね」

 

「湖南も混ざればいいんじゃない?」

 

「私にあのノリはちょっと」

 

「だろうね。俺もそう」

 

 重苦しい空気から解放され、ようやく滝野の表情に笑顔が戻った。

 

 

「さてと、後輩たちが頑張ってるんだし私もいいところ見せないとね!」

 

 ところ変わって一軍ベンチ。キャッチボールを終えた少女が体を伸ばす。試合もあと二回を残すのみ。

 

7回裏終了 1軍 5ー3 2軍

 

 勝負はいよいよ終わりに近づこうとしていた。

 

 

 




選手紹介

辰川寅緒(1年)
ポジション:キャッチャー、レフト、ファースト
右投げ右打ち

強気なリードと長打力が光るキャッチャー。
特に長打力は高く、男子にも力負けせずしっかりと飛ばす力を持っている。
気が強く男勝りな性格が災いして相手を委縮させてしまう事もあるが、本人は結構優しかったりする。
反面自分には妥協したくないという思いが強い。

中学時代は地元で通り名があったらしいが……?


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