―――初等教育ではじめに教わることは、ポケモンを持たずに草むらに入らないこと。
これは国語算数理科社会に同じくらい必須の学問、ポケ学から学べることだ。
なにせ、命に関わる。
地域にもよるがポッポやコラッタみたいなポケモンではなく、
リングマやキテルグマと言った物がいきなり襲ってくることもある。
故に田舎暮らしや、地方暮らしの人ほど色んな意味で逞しい。
秘境ほど、やせいの強いポケモンが現れることが多い。
例えば稲光と共に現れるいわゆる伝説ポケモン等は、秘境でしか発見報告がない。
そうしたポケモンを捕獲したいと思う者は多い。
金目当て、名誉目当て、はたまた―――
何にせよ危険な山奥に入ったりトレーナーも命がけである。
そういったポケモンに重きを成した価値観を持った者も多いので、
メディアや雑誌でポケモンの姿を見ないことはない。
ポケモンだいすきクラブなどといった活動も多く行われている。
そんな俺は秘境とは程遠い、ジョウト地方のしぜんこうえん近くで生まれ育った。
むしとり大会がよく行われていて、近所のお兄さんがカイロスを捕まえたとか近所では噂になったものだ。
そんなお兄さんはその時の優越感が忘れられなかったのか、
虫ポケモンのブリーダーとして名を馳せることとなった。
持ちポケモンが自身の将来や位置を決めるほど、社会ではポケモンという存在は認められている。
子供の頃、俺の家ではピジョンを飼っていた。
母親が道に落ちた雛のやせいのポッポを保護して、そこからの付き合いだ。
最初の頃はびっくりするくらい警戒をしていたが、どんどん懐いていき、
最終的には手のりポッポになった。
手の上にいるポッポを撫でてやるとすごく嬉しがり、
気づけば俺は鳥ポケモン推しとなったのだ。
中学生くらいの時に進化して、流石に室外飼いとはなってしまったが。
そんなこんなで気づけば社会人になってしまい、
全国転勤のある会社だったので、ヨシノシティの支社配属になった。
ワンルームではポケモンを飼うことは難しく、仕事に慣れないこともあり、そんな余裕もなかった。
子供の頃に憧れたポケモンマスター等は、遠い話。
セキエイにて行われる華々しいポケモン使いの話は新聞で見るばかりだ。
「ランチ、手羽先でも食いに行くか?」
ポロンと、社内チャットにて同僚からのメッセージが飛んでくる。
鳥ポケモンの事を思っていた時になかなか皮肉めいた話だなと思いつつ、
胡椒たっぷりのそれを思い出し、俺は昼食までのラストスパートを終えた。