三連休のある日。
30番道路、31番道路を抜けて隣のキキョウシティにまでやってきた。
輸送や移動に関してはポケモンがインフラの一端を担っていることが多いが、トレーナーではない人間は普通に自家用車を使うのが一般的だ。
徒歩で町から町へ歩いていると、やせいのポケモンと遭遇する可能性があるので非常に危ない。
故にリーグ制覇を目指すような人間でもない限りは徒歩以外の代替手段をとる場合が多い。
今はリニアが発達しているがそれも限定的ではあるので、必然的に自家用車にも需要があるというわけだ。
さて、キキョウシティだが定期的に足を運んでいる。
気晴らしにマダツボミの塔へ寄る事もあるのだが、本日開かれるキキョウジムでの公開試合の観戦が俺にとっての一番の目的だ。
鳥ポケモンが華麗に活躍して、リーグ制覇を目指すトレーナーを撃退することが本当に楽しい。
特にジムリーダーのハヤトに関しては勝手に親近感を覚えている。
だが、今日に限っては挑戦者の帽子を被った子供が前座のとりつかい達を一蹴していた。
「くそ、ハヤトさんの実力は本物だ! 俺に勝ったくらいで調子に乗るなよ!」
倒れたポッポを急いでボールに仕舞い込む姿が痛々しい。
そのとりつかいを労わるような目つきをしながら、入れ替わるようにジムリーダーのハヤトが現れる。
一つの街のジムを預かるリーダーにしてはまだ青い印象を覚える。
だが、彼の父親から鳥ポケモンを引き継ぎ立派に役目をこなしている。
そんな彼のことを、鳥ポケモン好きとして俺は勝手に推している。
ハヤトは挑戦者の子供をきっ、と睨みつけるようにボールを取り出した。
「俺がキキョウジムリーダーのハヤト!
世間じゃ飛行タイプのポケモンなんか電撃でいちころ…そう、鳥ポケモンをバカにする。俺はそれが許せない。
大空を華麗に舞う鳥ポケモンの本当の凄さ、思い知らせてやるよ!」
周りから歓声が上がる、俺も気づけばその熱気に釣られて叫んでいた。
相手の子供はそんな熱気に飲まれないかのように、無言のままボールを投げつける。
光と共に現れるのは先ほど鳥使いを一蹴した小さいワニのようなポケモンだ。名前は確か「ワニノコ」とアナウンスが言っていた。
対するハヤトはポッポを繰り出した。
ちょこんと小さく屹立する姿が非常に可愛らしいが、
流石にジムリーダーが使うだけあって、
実家で可愛がっていたポッポよりも凛々しさを感じる。
対面するワニノコと、ポッポ。
先手はワニノコであり、勢いよく口から螺旋状の水流を吐き出した。
その勢いに飲まれないようにと、
ポッポは華麗に翼を動かしてその水圧に耐えきった。
流石に訓練されている。タイプ相性的にも飛行と水ではお互いに対等。
手に乗るような小鳥、ポッポだからポケモンバトルに勝てないという道理はないのだ。
ぐるっと、急旋回した後にポッポはびしゃびしゃになった地面から泥をつかみ、ワニノコ目掛けて投げつけた。
容赦なくその礫はワニノコを襲い、まぶたに泥が入り苦しそうだ。
挑戦者の子供は、自分が選択した技のせいで状況が悪い方向に変わり流石に動揺しているように見えた。
遮二無二、ワニノコにポッポを目掛けて噛みつくように指示を出す。
しかし、先ほどの泥のせいか、見当違いな方向に攻撃を繰り出した。
そこに追撃のようにポッポが鋭い体当たりを空中から仕掛ける。
その鋭い一撃を食らい、固い皮膚を持つワニノコにも大きなダメージが入ったように見えた。
――その刹那、周りの観客も俺も周囲の温度が下がるような感覚を覚えた。
ワニノコがポッポを「にらみつけた」のだ。
大空を舞い、風に流れるように戦っていたポッポが、その殺気と体当たりの反動からよろけてしまう。
そこを見逃すワニノコではなく、鋭い爪が容赦なく振るわれた。
俺はわかりきった未来のその残酷な姿に目を伏せてしまう。
「おーーっと、先鋒のポッポがダウン! ジムリーダー、残すは後一匹だ!」