「やはりソ連は動いた。まぁ当然の事か」
「やむを得ないな……増援は出しているが……」
「九州の防備態勢はどうなっていますか?」
「急造師団と南方から撤退したのを含めて18個師団に12個独立混成旅団に2個戦車師団と5個戦車独立旅団……関東等の増援があれば持ちこたえられるだろう」
「分かりました、陸は頼みます」
1945年(昭和20年)8月13日、三好将和大将は機動艦隊を率いて佐世保に入港していた。ソ連が突如というよりも予想していたが満州に侵攻してきたからである。そして満州の在留邦人退避のために満州には約150万の関東軍が展開していたのだ。
その為将和の艦隊は満州及び樺太、千島列島の支援に動く為に再編した機動艦隊を動かす事にしたのだ。ーー再度の再編成された第一機動艦隊は以下の通りだった。
第一機動艦隊
司令長官 三好将和大将
参謀長 草鹿龍之介中将
第一航空戦隊
『加賀』『雲龍』
第二航空戦隊
『蓬莱』『葛城』
第三航空戦隊
『生駒』『飯盛』『信貴』
第一戦隊
『長門』『伊勢』
第三戦隊
『河内』『因幡』
第四戦隊
『高雄』『八雲』『和泉』
第五戦隊
『妙高』『羽黒』
第八戦隊
『利根』『鈴谷』
第一護衛隊
『五十鈴』
第二水雷戦隊
『酒匂』
艦隊型駆逐隊
『雪風』『長波』以下16隻
防空型駆逐隊
『涼月』以下16隻
マリアナ沖の大海戦から数ヶ月であり海軍はまだ傷の回復途中だった。そのため即時出動出来る艦艇のみの臨時編成に近かった。だがそれでも、内地には山口中将率いる第二機動艦隊の戦艦『出雲』以下の予備兵力は存在していたのだ。
「艦隊は以前より少ないがまぁ大丈夫だろう」
「まぁソ連海軍相手だと……ですからねぇ」
将和の呟きに以前と変わらぬ草鹿参謀長がそう呟いた。なお、佐世保には艦隊の視察に訪れた宮様とGF参謀長に昇進した山口多聞中将、更には第五航空艦隊に航空隊を編成させるために第三航空艦隊司令長官の吉良中将も鹿屋基地に滞在していた。
「三好君、今度も頼む」
「お任せください」
そう意気込む将和である。しかし、8月14日0300。全てはそこから始まったのである。
「ちょ、大規模過ぎないかこの低気圧!?」
「こりゃちょっと不味いですねぇ……」
「まさか転覆はせんだろうな」
まさかの九州地方に突如として低気圧が接近し大量の風雨落雷を展開したのだ。流石の予報官も首を傾げるばかりであった。
そして0500、特大の落雷が落ちるとそれ以降は風雨も落ち着き0600には晴れていったのである。
「晴れたな。出撃準備を続けるか」
将和は窓の外を見ながらそう呟いたが日中に佐世保に入港してきた1隻の輸送船からの報告に将和は元より帝国陸海軍は騒然とするのである。
『帝政葦原中津国だと!?』
輸送船の乗員ーー若い女性船員らの報告に将和らは頭を悩ました。
「御伽話のようですな……」
(それ、二回も体験しているのは俺なんだけどな……)
山口の呟きに将和は内心、そうツッコミを入れる。
「ふむ、女性の海軍ですか……」
「……吉良、お前は接触禁止な」
「何でですか!?」
「お前、何かしそうだしな」
急遽鹿屋から飛んできたのにショックを受ける吉良を他所に宮様は決断する。
「直ちに現状の掌握だ。海軍航空隊……まずは九州の各地に展開している陸海軍に緊急連絡だ」
将和はそう指示を出す。幸いにも九州の各地に展開していた陸海軍とは直ぐに連絡が取れた。だが内地ーー関東、関西、中国地方等とは全く連絡が取れなかったのだ。
「……呉に行くしかないよな……」
「ワシも同行しよう」
「ですが宮様……」
「なに、沈んだら沈んだで一泳ぎすればいい。最近は泳いでなかったから丁度良い」
「……まぁその時の操艦は自分が取りますので大船に乗ったつもりで」
斯くして『加賀』を主力に護衛の『河内』『因幡』と複数の駆逐艦は佐世保を出撃し呉に向かったのである。
そして呉では……柱島泊地にて伴天連歴1941年12月に就役した戦艦『大和』の作戦室にて頭上演習を行っていた。
「空母『赤城』に命中弾9発!! 『赤城』沈没!!」
「駄目だ駄目だ!! 『赤城』まで沈没したら作戦が成り立たない。『赤城』への命中弾は3発、小破とする」
参謀長の宇垣束少将は首を横に振る。それを見た連合艦隊司令長官である山本五十子大将は休憩を提案したのである。
「よし、此処は一旦休憩しよっか。甘い物でも食べて糖分を補充しようよ」
「しかしだな長官……」
「報告します!!」
その時、通信兵が入ってきた。
「豊後水道に侵入する艦隊を発見しました。誰何をすれば大日本帝国海軍の所属空母『加賀』との返答が……」
「どういう事だ? 『加賀』はパラオで損傷したから佐世保にいる筈だぞ」
「その向こうから会談をしたいと……」
斯くして両軍は『大和』にて会談する事になる。ちなみに日本海軍は将和と宮様の二人であるが男が普通に海の上にいる事に五十子達は驚愕しかなかったのである。
「まさか男が普通に泳いでいるのを見れるとはな……」
宇垣の呟きに誰もが頷くが将和は頭を抱えていた。
(いやぁ……確かにそういったSSがあったな。んで確か一巻購入していた記憶があるわ……)
そう思う将和だが宇垣を見て何とも言えない気持ちでありあの時の記憶が甦ってきたのである
「……此処までか」
戦艦『大和』は戦艦『モンタナ』を撃沈する事に成功するもまだ生き残ってた『ミズーリ』からの砲弾四発を耐える事が出来ず、各所で誘爆が発生していた。
「艦長、総員退艦だ」
「……はっ」
有賀の頷きに将和は一人歩きだした。その歩きに誰もがまさかと思う。将和の行き先は長官室だったからだ。
「なりま……せん……」
歩いていた将和を止めたのは致命傷を負いながらも従兵に抱えられた宇垣だった。
「長官……貴方はまだ……やるべき事が……あります……」
「……宇垣……俺は大勢の者を殺し……殺させてきた……だからその責任は負わねばならん。だからこそ俺がその責任は負わねばならんのだ」
「いけません……長官、貴方は此処で……死んではなりません」
「くどいぞ宇ーー」
長官室に入ろうと宇垣を退かし最後まで言おうとした将和だったが後方から頭を鈍器か何かで殴られて転倒した。
「長官、御無礼を……ですが長官はまだ死ぬ運命ではありません」
「うがッ……」
「長官!?」
将和を殴ったのは宇垣だった。しかも自身の短剣で将和を殴って脳震盪を起こさせたのだ。将和は直ぐに松田らに抱き抱えられる。
「宇垣司令官も……」
「俺は良い……俺が長官の代わりに『大和』に残る……俺ももうそろそろだからな」
松田の言葉に宇垣は負傷した腹を見る。包帯を巻いている腹から再び出血が起こりそれを見た松田は宇垣の最期を見届けようとした。
「宇垣司令官、最後に何か餞別を頂けませんか?」
「……こいつをやろう。三好長官を殴った短剣だ、値打ちはつくさ」
宇垣はニヤリと笑いながら従兵に短剣を渡し、一人で長官室に入る。
「長官……ありがとうございました」
そして宇垣はゆっくりと扉を閉めて中から鍵が掛けられたのである。
「宇垣ィィィィィィィーーー!!」
松田らに抱き抱えられ退艦させられる将和は閉められた長官室を見ながら思いっきり叫んだのであった。
(あれからまだ数ヶ月としか経っていないのになぁ……)
染々と思う将和であるが視線を向けられていた宇垣は首を傾げるだけであった。
「それで伏見宮様。今後はどのように?」
「それは分かりきった事だろう。葦原とは共同歩調を取るしかあるまい。まぁ我等に旨味はそれ程無かろうがな」
五十子達がいる前にも関わらず宮様はそう断言するがまぁ将和もその通りだと頷く。葦原もほぼ史実日本の工業力であり対して将和の世界の日本は+約三倍の工業力だった。それも将和の情報を元に日本が重工業の強化をさせる事に成功しつつあったからだ。その結果、日本海軍は開戦時には和製『Iowa』級の『河内』級4隻、和製『エセックス』級の『雲龍』型8隻を揃える事に成功していたのである。
「さて、私達の世界を話すとするか」
「お願いします」
五十子の頷きに将和は口を開く。将和の日本がどのようにアメリカと戦い、そして漸く和平を結べたかである。
「開戦時に正規空母14隻に軽空母4隻を保有!?」
「しかも一時的に真珠湾の封鎖に成功!?」
「ふわぁ~凄いなぁ……」
驚く宇垣と渡辺を他所に五十子は純粋にそう呟いたのである。
「まぁ最後はマリアナ沖で大海戦をやってな……『大和』を始めとした多くの艦艇を喪失したがそれでも我等が生き残れる事は出来た。そして8月15日に大まかな和平条約が締結をされる予定だったが……こうなったのはさっきも話した通りだな」
将和はそう言って締め括ったが五十子達は俄に信じられそうになかった。だが時折『大和』の上空を『加賀』から発艦した艦上戦闘機『陣風』が上空警戒をしていたので強ち嘘ではないのは確かだった。
「葦原も生き残れるかなぁ……」
思わず呟いた五十子。それに将和はつい反応してしまった。
「無理ダナ」(・✕・)
「な、何だと!?」
将和の言葉に宇垣が敏感に反応して椅子から立ち上がる。それを見た将和はやっちまったの表情をするも口を開いた。
「……簡単な事だ。我々が生き残れたのはカンニングをしていたからだ」
「カンニング?」
「そう、カンニングだ」
そして将和の口から語り出すのは自身の人生が大きく変わる出来事をである。
「タイム……」
「スリップ……」
「そんな事が……嫌でも目の前に事例はあるから何とも……」
「だが俺達はそのカンニング行為によって俺達は約30年程の内政をする事で開戦時までに戦える戦力を揃える事が出来たんだ」
「……………」
将和の言葉に五十子は黙っていた。だが、将和の語る言葉に五十子は惹かれてはいた。
(この人と……この陸海軍ならもしかすれば……)
淡い希望だろう。だがその淡い希望は現実に思えたのである。
「そう言えば……今は何月何日かね?」
宮様がふと思い出したように訊ねる。それに答えたのは五十子だった。
「今は4月10日です」
「4月10日? 待て、それは昭和……じゃない光文17年の4月10日か?」
「う、うん……」
五十子の頷きに将和と宮様は表情を変えた。
「イカン!?」
「それなら帝都空襲が8日後……4月18日に発生する筈だ!!」
『帝都空襲!?』
将和の言葉に五十子達は驚愕するがそれに反論したのは宇垣であった。
「そんな馬鹿な事があるか!? いくらヴィンランドだって帝都空襲なんぞ……」
「俺らの世界でアメリカ……ヴィンランドの奴等は空母に双発爆撃機を載せて航続距離限界まで接近して発艦、その後帝都空襲後の爆撃機は大陸に逃げる」
「……それなら有り得るね。着艦は兎も角、発艦だけなら有り得る話だよ」
「……宮様」
「ウム。直ちに佐世保に打電して第一機動艦隊を出撃させるのだ」
「第一機動艦隊?」
「俺の艦隊だ。まぁマリアナ後は空母6隻の寂しいものだがな」
だがこの世界では非常に強力な艦隊だった。将和は五十子に視線を向ける。
「山本」
「五十子でいいですよ」
「フム……五十子。直ちに本土の航空隊にも警戒警報を発令させるんだ。俺の艦隊は敵機動部隊の側面に躍り出て空母を叩く」
将和の言葉に五十子は頷いたが反論ではないが口を挟んだのは宇垣だった。
「待ってくれ」
「何だ?」
「……俺はまだあんたらを信用出来ねぇ。悪いがあんたの艦隊に乗せてくれ」
「……(成る程。監視役も兼ねたか)良かろう。俺の艦隊をとくと見てくれ」
斯くして日本軍と葦原中津国軍は敵機動部隊撃滅に動き出すのであった。
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