「さて、第二師団の輸送か……」
10月11日、トラック諸島に停泊する第一機動艦隊旗艦『加賀』の作戦室に将和達は集まっていた。
「第二師団の輸送には引き続き第八艦隊が担当しますわ」
「うちの艦艇もインド洋に引き裂いたからねー」
ニハハハーと笑うのは第二艦隊司令長官の近藤伸子中将でありトラック諸島に艦隊を前進させていたのだ。
「それで第八艦隊に補充艦艇はあるのか?」
「うちの二艦隊から『姫神』(元葦原『高雄』)『摩耶』を出すかな」
「しかしそれだと甲巡は『愛宕』と『那智』だけになるが……」
「大丈夫ですよ。その分、『龍鳳』もいますし二水戦と四水戦もいますから」
あっけらかんと笑う近藤に将和は前の世界にいた近藤中将を思い出す。彼自身も二艦隊を率いていたがソロモン作戦には随分と他艦隊に艦艇を差し出してやり易いようにさせていた。性格はどの世界共通なのかもしれないと将和は思うのである。
「そうなると輸送日ですが……」
「その前に、敵飛行場及び泊地を砲雷撃する必要がある」
「……ヘンダーソン飛行場砲撃ですの?」
「あぁ。二師団の上陸をよりやり易くするためにはそうせざるを得ないだろう」
「そうなりますと……どちらを使用するのですの?」
「うちの『河内』『因幡』を使おう。主砲口径も防御も2隻のが良い」
「確かにな……『比叡』『霧島』ではヴィンランド海軍の新型戦艦に立ち向かう事は出来んな……」
「まぁまだ『大和』型に『周防』型等の戦艦はまだ改装途中だからな」
改装には小型艦艇等を優先的に受けさせているので大型艦である戦艦は後回しにされていた。更に戦艦でも『周防』型『扶桑』型『志摩』型の6隻は当初防空火力と速度を向上させる予定なので改装完了は来年となっていた。だが『扶桑』型『志摩』型に関しては速度向上を諦めて防空火力の向上のみに絞る事にした。これはやはり時間を惜しんだ事が一番の要因であろう。
ただ、『周防』型と『長門』も含めた3隻だけは24時間態勢の突貫で速度向上の改装も行っていた。
「さて、そうなると艦隊編成も変えねばならないな」
各艦隊は以下の編成であった。
第一機動艦隊
司令長官 三好将和大将
参謀長 宇垣束少将
旗艦『加賀』
第一航空戦隊
『加賀』『雲龍』
第三航空戦隊
『蓬莱』『葛城』
第一防空隊
『祥鳳』
第五戦隊
『妙高』『羽黒』『鈴谷』『高雄』
第八戦隊
『利根』
第一護衛隊
『五十鈴』
第六十一駆逐隊
『涼月』『冬月』『霜月』『春月』
第六十二駆逐隊
『宵月』『夏月』『満月』『花月』
第十七駆逐隊
『浜風』『磯風』『浦風』『雪風』
第二機動艦隊
司令長官 小澤智里中将
参謀長 楠木多恵少将
旗艦『翔鶴』
第二航空戦隊
『蒼龍』『飛龍』
第五航空戦隊
『翔鶴』『瑞鶴』
第二防空隊
『瑞鳳』
第十一戦隊第二小隊
『比叡』『霧島』
第十二戦隊
『九頭竜』『筑摩』
第二護衛戦隊
『長良』『名取』
第六十三駆逐隊
『天雲』『照月』『初月』『新月』
第四駆逐隊
『嵐』『萩風』『野分』『舞風』
第七駆逐隊
『潮』『曙』『漣』『朧』
第21駆逐隊
『初春』『若葉』『子日』『初霜』
第二艦隊
司令長官 近藤伸子中将
参謀長 白石美代少将
旗艦『愛宕』
第四戦隊
『愛宕』『那智』
第七航空戦隊
『龍鳳』
第二水雷戦隊
『神通』以下10隻
第四水雷戦隊
『那珂』以下10隻
挺身隊
司令官 中瀬泝少将
第三戦隊
『河内』『因幡』
第一水雷戦隊
『阿武隈』
第三十一駆逐隊
『長波』『風雲』『朝霜』『夕雲』
第三十二駆逐隊
『清風』『妙風』『山霧』『海霧』
「中瀬、艦砲射撃は頼んだぞ」
「お任せ下さい長官」
将和の言葉に三戦隊司令官の中瀬少将は力強く頷く。挺身隊は13日に出撃したのである。そして3日後の16日夜半に挺身隊はガダルカナル島沖に接近しヘンダーソン飛行場に艦砲射撃を開始したのである。
「撃ち方始めェ!!」
「撃ェ!!」
挺身隊は約二時間、新規滑走路も含めて艦砲射撃を行い駐機していた106機中89機の破壊に成功し更には砲弾の不発弾を多数叩き込んで滑走路の早期使用を遅らせる事に成功するのである。
「「ガッデム! おのれアドミラル・ミヨシめェ!!」」
ニューカレドニアのヌーメア基地とハワイオアフ島の司令部ではハルゼイとニミッツは激怒していた。なお、後にこれを聞いた将和は笑みを浮かべながらこう答えた。
「戦い方は火力じゃない、オツムの使い方だ」
(流石ですわ三好長官……)
(えっ?)
それはさておき、ヘンダーソン飛行場砲撃後に第八艦隊に護衛された第二師団はタサファロング泊地に上陸する事に成功。重火器の揚陸も成功しており各砲一門につき1200発の用意は成功した。(史実等川口旅団らにおける戦訓)
また、ガダルカナル島守備隊はヴィンランド軍に上陸される前から飛行場~タサファロング泊地間の道路ルートを複数作っており、兵員や重火器の輸送等は容易だったのも幸いした。
それらのルートは叩いても別のルートを走れば良いのでヴィンランド海軍も頭を悩ませていた。
そんな中、第38師団の輸送も成功し揚陸した第38師団もタサファロング泊地からジャングルの中へ消えていく。
「こうなれば決戦しかないわ、ジェニファー! どうせ奴等が総攻撃してくるのは間違いないのだから、それに合わせて機動部隊をアドミラル・ミヨシの機動艦隊に差し向けて叩きつぶしてやろうじゃないの!!」
ヌーメア基地で南太平洋艦隊司令長官のハルゼイはそう主張する。対して振られたジェニファーは頭を抱えながらも口を開いた。
「それも一理あるわフレンダ。でも、中身のパイロットの消耗が激しすぎるわ。このウォッチタワー作戦を始めてからパイロットの損耗率は62%なのよ。しかも海兵隊の航空隊も足りないからと言ってニミッツ長官は『エセックス』飛行隊までも投入してしまってるのよ」
ソロモン方面における日本・葦原とヴィンランド軍の航空戦は終始に渡り日本・葦原軍が圧勝していた。やはり日本側の零戦とそれを操作する熟練パイロットを多数保有する葦原軍が上手く交わっているからだろう。
「だからと言ってこのまま黙ってて良いわけがないわ! 既にインド洋ではナグモの艦隊が通商破壊作戦を展開してブリトンの首を締めあげているのよ!!」
ガダルカナル島の上陸前後に新たに南西方面艦隊を創設しその司令長官に南雲中将を、参謀長に草鹿少将を充てていた。そして南雲中将は出された戦力を以てインド洋に再び舞い戻り通商破壊作戦を展開していた。
南西方面艦隊
司令長官 南雲中将
参謀長 草鹿少将
旗艦『金剛』
第十一戦隊第一小隊
『金剛』『榛名』
第七戦隊
『最上』『三隈』『石狩』『熊野』
第十六戦隊
『足柄』『球磨』
第四航空戦隊
『龍驤』『飛鷹』『隼鷹』
第三水雷戦隊
『川内』
駆逐艦
『天霧』以下16隻
水上機母艦
『秋津洲』『君川丸』『清川丸』
「やっぱり戦艦は安心しますぅ~」
「ハッハッハ。大船に乗ったつもりでいるんだよ汐里さん」
なお、10月の時点で南西方面艦隊はタンカー8隻、貨物船11隻、護衛の駆逐艦7隻を撃沈。タンカー11隻、貨物船13隻を鹵獲する功績をあげている。
「だからこそやるしかないの、ここで機動部隊同士の決戦を制して状況を打開するしかないわ!!」
「…………………」
ハルゼイの言葉にジェニファーは結局押しきられてしまうのである。そして10月26日、将和の当初の予定通りに日本・葦原海軍とヴィンランド海軍の決戦が幕を開けるのである。
おまけーね
「やぁ長官、もうすぐ出撃になるな」
「小澤か」
トラック諸島に停泊する三個艦隊、そのうちの第二機動艦隊を指揮する小澤は『加賀』を訪れていた。
「どうした?」
「うん……その……」
モジモジする小澤に将和はピンと来たのか、小澤の頭を撫でる。
「ふぇッ!?」
「大丈夫だ小澤。今の小澤ならちゃんと指揮は出来る。だから自信を持っていけ」
「ッ………ありがとう長官」
心を見透かされた小澤、指揮をしていたがそれでもやはり心の中では果たして自分がやれるのか不安でしかなく何となく『加賀』に足を運んだのだ。それを将和に見透かされ褒められて表情が綻ぶ小澤。だが不意に小澤は撫でられている手を取り将和に視線を向ける。
「長官……」
「ん?」
「私……」
そう言ってそのまま小澤は将和の唇に自身の唇を合わせた。時間は10秒かはたまたは30秒か、合わせるだけのキスに小澤は顔を真っ赤にした。
「……今はまだこれだけにしておくよ///」
そう言ってパタパタと走り去っていく小澤。対して将和は突然の事にフリーズしながらも再起動をする。
「…….…ハッ!?」( ゚д゚)ハッ!
そしてそれを物陰から嶋野と宇垣が見ていた。
「………またしても……またしても増えるのですのね……」
「まぁ長官だからなぁ……」
「だったら貴女もさっさとキスの一つや二つでもしなさいな!」
「う、五月蝿いなァ!」
ギャーギャーと騒ぐ二人であった。
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