『三好in山本五十子の決断』   作:零戦

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ソロモンで終わる事はなかった


第十五話 戦略転換前編

 

 

 

 

 

 

「まず、撤退すべき地域を先に申し上げる。それはソロモン・ニューギニア・ギルバート諸島・マーシャル諸島の四地域です」

「馬鹿な、ニューギニアもだと?」

「そうです」

 

 驚く寺内に将和は四地域の兵力を分けていく。

 

「ソロモンの兵力はラバウルに。ギルバート、マーシャルの兵力はマリアナへ。ニューギニアの兵力は比島及び南方に」

「南方にだと?」

「その通り。まぁ先ずは順に説明しましょう。ではギルバート・マーシャル諸島から」

 

 将和は指揮棒を持って両諸島をトントンと叩く。

 

「この両諸島は約2万4000程の我が兵力が点在しています。ですが、ヴィンランドが反攻作戦を開始すれば瞬く間に全滅するので今のうちに引き揚げてマリアナーーサイパン島やテニアン島に転進させます」

「フム……ではソロモンは?」

「ソロモンの兵力は半分はラバウルに、残り半分はトラックに駐屯させるのが手ですな」

「ではラバウル以降南南東には再進出はしない……と?」

「その通り。ガダルカナル島には戦艦5隻を主力とする艦隊が張り付いているのでこのまま続ければ泥沼化は避けきれないでしょう。なので此処は撤退です」

「まぁ……海軍さんが撤退を主張するのであれば構いませんな」

 

 寺内はそう納得する。寺内ら陸軍側からすればガダルカナル島の戦いは海軍の不手際から始まったという認識であった。だがこのガダルカナル島に投入した戦力が消耗しないのであれば陸軍としても文句はなかった。

 

「しかしニューギニアは……」

「ニューギニアも撤退ですな。残念ながら持つという想定はしないのが正しい」

 

 将和はそう言いながらトントンとニューギニアを叩く。

 

「だが、ニューギニアの兵力はまだ健在。ポートモレスビーも此方側……だがそれが駄目なんだなそれがァッ!!」

 

 将和はそう叫びバキッと指揮棒を折る。いきなりの行動に南条らは驚くが宮様ら将和を知る者達はのほほんとお茶を飲んでいた。

 

「ポートモレスビーを抑えてのニューギニア……ソロモンを抑えてのニューカレドニア……両方を抑えての豪州屈服……これは破綻した。ならばどうするか? 撤退しかあるまい!! だからこそラバウルから下は捨てる!! そうして、ラバウルは自給自足に移行させる!!」

「捨て石ではなく奴等を出血させる為……」

 

 杉山はポツリと呟く。捨て石だったら杉山は反対する気だった。だが将和はラバウルを絶対死守としたのだ。

 

「ニューギニアの戦力は半分ずつにしもう半分はマリアナへ、もう半分は比島行きにして決戦に備える……その為に寺内大将、貴方にも出席頂いたのですよ」

「成る程。確かに比島は南方地帯の要……分かりました、お任せ下さい。『その時』が来たら我が命に換えても……」

 

 将和の言葉に寺内は力強く頷く。その時、スッと手を挙げた閣僚がいた。南条改造内閣で新たに商工大臣に就任した岸信介だった。

 

「三好大将、聞きたいのだが海軍のFS作戦は破綻した……こういう認識で良いかな?」

「えぇ。我々が想定したFS作戦は破綻しました」

「うぅむ、そうなるとニッケルの入手に困りますな……ニューカレドニアはニッケルの採掘量はかなりのモノと聞いていましたからな」

「それについては申し訳なく思います。ですがニッケルの場所については代わりがあります」

 

 将和はそう言って福留から指揮棒を貰いーーインドネシアをトントンと叩いた。

 

「インドネシアのスラウェシ島にはニッケルの鉱山が複数あります。これは史実でもありました故そこを重点的に輸送するべきです」

「成る程……ですが我々がいた世界ではそこまで発展はしていなかったような……」

「あの世界ではFS作戦が成功しましたからな。ニッケルの輸入も必然的にニューカレドニアを優先したからでしょう」

「成る程。それなら合点がいきますな」

 

 岸は納得したように頷くが更に口を開く。

 

「ではそうなりますと南方からの輸送は是が非でもやらねばなりませんな」

「……………」

 

 岸の言葉にお茶をしばいていた清は眉を潜める。

 

「内地への輸送は完璧の筈ですが……?」

「いやいや……南方からのヒ船団はよくやってくれてますよ。それでですよ、南方の輸送がかなり重要視にナンだなと……私はそれを申しているのです」

(戦線の不拡大か……流石は『昭和の妖怪』か……)

 

 笑顔の岸に将和は眉を潜める。岸は政府側として戦線の不拡大を暗に主張していたのだ。なお、それ気付いていたのは三好側の人間と南条一人だけだった。

 

「無論、岸大臣の懸念もありましょう。ですが、海軍としては戦線の拡大は一部を除いて基本的には守勢に回る立場になります」

「ほぅ、海軍さんには珍しい事ですな」

「珍しい事ではありません。ヴィンランド軍は少なくとも二年後には大反攻作戦をすると予測しています」

「大反攻作戦かね?」

「はい、兵力的にも正規空母20隻、改造空母200隻、戦艦10隻を主力に航空機4000機、陸軍約100万とされています」

『なッ!?』

(ほぅ………)

 

 将和の言葉に南条や寺内らは驚き岸は目を細める。

 

「で、デタラメじゃないのか!?」

「いえ。史実は元より……我々の時でもおおよそはこの形でした。だからこそ今、守勢に回る必要があるのです」

「ウーム……」

「しかし……陸海軍が本当に手を取り合いをしたら……一部的な勝機もあります」

『えッ?』

 

 将和の言葉に南条らは元より宮様や五十子達も驚いた。まさかこの男、まだ勝機はあるというのか……?

 その視線を受けながら将和は『加賀』の長官室で急いで作成した三冊の作戦計画書を机に出した。

 

「これは……」

「『星一号作戦』『カ号作戦』『星の屑作戦』……?」

「えぇ……とある物語にヒントを得ましてね……」

 

 将和はそう言って世界地図のある場所ーーハワイ諸島に艦隊を置いた。

 

「『星一号作戦』これは陸海軍が共同してハワイ諸島を1943年5月に攻略する」

「ハワイ諸島……」

「攻略……」

 

 将和の言葉に嶋野と五十子はポツリと呟く。そして全員が驚愕した。

 

『ハワイ諸島攻略!?』

「如何にも」

 

 驚愕する全員を他所に将和は喉を潤すためお茶を啜る。なお、五十子は自身の構想であったハワイ攻略に興奮して身を乗り出そうとしていた。

 

「ちょ、ちょっと待ちたまえ三好大将。ハワイを……攻略するのかね? それが一部的な勝機になると?」

「いえ、ハワイだけでは一部的な勝機とは言えません。これは後に続く『カ号作戦』『星の屑作戦』と関連しています」

「フム……では『カ号作戦』とは?」

「『星一号作戦』はハワイ攻略……『カ号作戦』はサンディエゴ攻略及びパナマ運河攻撃です」

「何!? ヴィンランド本土の一部まで占領すると言うのか!?」

「はい。ただし、これは一時的です」

 

 驚く南条の言葉に将和は頷く。

 

「一時的とは? まさかヴィンランドが和平停戦を行うまでと言うのか?」

「いえいえ、それは絶対に有り得ない事です。『カ号作戦』が完了したら『星の屑作戦』に移行します。ところで宮様」

「ん、何かな?」

「『連山』はどのありますか?」

「『連山』? 『連山』なら鹿屋の基地に20機程度は……待て、待て待て待て三好君!? まさか君は……」

 

 宮様は『星の屑作戦』を全てを理解した。即ち『星の屑作戦』は……。

 

「はい、宮様が思う通りです……『星の屑作戦』ニューメキシコ州ロスアラモスにあるロスアラモス原爆研究所を爆撃して破壊する事にある!!」

『ッ!?』

 

 将和の言葉に南条達は再度驚愕するが将和はそこまで言ってニヘラと笑う。

 

「とまぁ……物事が全て上手くいけば成立する作戦ですがね」

「……何だ冗談かね……」

「四割は冗談ですがね」

『…………………』

 

 残り六割は本気であるとの事であった。

 

「しかし、もし仮に『星の屑作戦』までいけばだが……連山隊は通常爆撃かね? 原爆の爆風でやられないかね?」

「宮様……マリアナ沖大海戦で連山隊は何を搭載していました?」

「……そうか!? 『枝垂桜』か!!」

「『枝垂桜』? 何ですのそれは?」

 

 聞き慣れない単語に嶋野は将和に視線を向ける。

 

「『枝垂桜』は我々の世界で開発装備した無線誘導の四式空対艦誘導噴進弾の事だ」

「噴進弾!?」

 

 『枝垂桜』は史実のイ号一型甲無線誘導弾を元に開発されている(それでも弾頭は1トン)がエンジンは特呂二号原動機を搭載しており速度750キロで約12キロの航続距離があった。

 

「こいつは元々は対艦攻撃用の噴進弾だから建物への貫通力は十分ある」

「……三好大将」

 

 そこへ声をあげたのは南条だった。

 

「もし……これらの作戦に勝機があるとすればどのくらいかね? 具体的に数字を出してほしい」

「……まだ作戦に関しては詳細を詰めていません。ですが守勢のも同時平行に行う場合、勝率は半分です」

「……………………」

 

 将和の言葉に南条は一旦眼鏡を取り目元を抑えて再度付ける。

 

「……分かった。御上にも奏上しよう」

「閣下!?」

「良い寺内……ワシも腹を決めたよ……。どの作戦になろうとも陸軍は海軍と共同して当たる」

「……御英断、真に感謝致します」

 

 将和は南条に頭を下げるのであった。斯くして葦原・日本は新たな道に入ろうとするのであった。

 

 

 

 

 

 

 




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