「いやはや……中々面白い作戦でしたなぁ」
「いやなに。如何に相手を屈服させるかを思案すれば卑怯な手は色々思いつきますがね」
会議後の夜、将和と宮様、それに嶋野らは岸と料亭で会談をしていた。
「ですが三好大将、この先苦しいのは確かですが……あの3隻建造は……」
「分かっております。ですがこの先、あの3隻が必要なのは確かです」
岸の言葉に将和はそう返す。先程の会議で将和ら海軍は新型艦艇の建造で新たに『大和』型戦艦と『河内』型戦艦の建造を求め臨時決定されたのだ。
なお、以下のが計画であった。
マル臨計画
戦艦3隻
『大和』型戦艦1隻
『河内』型戦艦2隻
空母11隻
『雲龍』型空母8隻
改『大鳳』型空母2隻
戦略空母1隻
巡洋艦2隻
『八雲』型重巡洋艦2隻
巡洋艦(乙)4隻
『阿賀野』型軽巡洋艦4隻
駆逐艦(甲)16隻
『夕雲』型駆逐艦16隻
駆逐艦(乙)16隻
『秋月』型駆逐艦16隻
海防艦(甲・丁)60隻
『日振』型海防艦12隻
『丁』型海防艦48隻
駆潜艇60隻
『第60』号型駆潜艇60隻
給油艦(大)4隻
改『風早』型給油艦4隻
現時点では以上の計画だった。
「空母とかは必要なのは理解出来ます。しかし……」
「建造日数が長い戦艦はその分の予算も資材を喰うのは我々も理解しています。ですが、戦艦の配備が中途半端過ぎるのは我々としても看過出来ないのです」
「ムゥ……三好大将程が言うのであれば……ね」
岸は多少は納得していないものの最終的には頷いたのである。そして岸らが帰った後、将和は宮様らと会合を行う。
「それで……やる事は何かな?」
「新型機の開発配備。これでしょう」
「おや、『星一号』らはやらないのかね?」
「同時平行ですね……」
将和はそう言って書類と航空機の図面を出す。
「これは?」
「宮崎に分派した三菱さんから面白い図面を複製してもらいましてね」
「これは……『烈風』じゃないか!?」
航空機の図面を見ていた宮様は驚いて将和を見る。それを見た将和も頷く。
「えぇ、『烈風』ですが『烈風』ではありません」
「というと……?」
「発動機を換装、主翼を縮めた『烈風改』ですね」
「……成る程。確かに我々が知る『烈風』とは少し違うな……」
「この『烈風改』……どうやら甲戦でも運用可能にしているようでしてね」
「何?」
「『陣風』の後継機にさせようかなと思います」
「ムゥ、『陣風』の後継機か……。しかし、『陣風』の生産で良くないかね?」
「そう思います……ですが、発動機が『誉』ですし稼働率は此方になると低下すると思います」
「ムゥ……確かにな……」
なお、『烈風改』の性能は以下の通りであった。
十七試戦闘機『烈風改』
全幅 12m
全長 11m
全高 4.23m
翼面積 23.60㎡
自重 3,600kg
全備自重 5,100kg
発動機 三菱『ハ43-11』2400馬力
速度 658km
航続距離 1300km(正規)2200km(増槽有り)
武装 99式20ミリ機銃4挺(各250発)
3式噴進弾×8基
「三好君、機体は何とかなるとして……発動機の量産は可能かね?」
「……三菱さんが発動機1本に限定して絞れば可能だと思います」
「……分かった。その方向でいこうか」
「宮様」
「……堀越技師の執念……か……」
「…………………………」
かつて、三菱は新型戦闘機のコンペで『烈風』を建てようとしたが堀越技師が過労で倒れた事で新型戦闘機は川西に取られ局戦に切り換えていた。だが、堀越技師が育てた『烈風』は宮崎の三菱航空工場に引き渡され改良を重ねてきた。それが今、漸く報われたのである。また、この『烈風改』には発動機換装しての局戦型、同じく発動機換装しての甲戦型のも予定している。
「お連れ様がお見えになりました」
「遅くなりました」
「おぉ畑さん」
そこへ仲居が一声掛けてから襖をスッと開けると畑がそこにいた。
「向こうの陸さんと戦車等の配備計画をしていたもので……岸さんは帰りましたか」
「えぇ、向こうも忙しいですからね……」
「それで配備計画とは?」
「えぇ、何とか戦車の生産も軌道に乗りつつあるので……」
「ほぅ。どれくらいですか?」
「チハで毎月20~30両前後。チトで毎月1~8両前後ですね」
チハは将和側の戦車でありチトもそうであった。チトは105ミリ戦車砲を搭載しており初陣はマリアナ沖大海戦のサイパン島の戦いであった。そして満州のソ連侵攻に備えるために満州に送られてはいた。
「成る程。それくらいなら……」
「はい、三年後までには何とか満州もルーシからは守りきれるかと思います」
「頼みます。それと宮様」
「ん?」
「『F研究』はどうなっていますか?」
『ーーーーーッ』
将和の言葉に全員は表情を変える。問われた宮様は肩を竦めた。
「駄目だな。基礎段階に入ったばかりだ、%で表せば5%くらいじゃないかな」
「やはりそれくらいですか……まぁ各地方に複製した書類を分散していただけでも御の字ですね」
「ウム。主は理研だからな……」
「人形峠一帯は封鎖して採掘中だが……ある程度のウランは採掘している」
「なら問題はありませんね」
「それと三好君。本当に『星の屑』作戦はやるのかね?」
「……やる予定ではありますが、爆撃かもう一つかで思案しています」
「……もう一つとは?」
「……空挺隊による空挺降下で研究所職員の拉致、又は殺害です」
『ッ!?』
将和の言葉は強烈だった。先に口を開いたのは井上成実である。
「……それは中々のthrillでありexcitingね」
「だが、遅らせるのであれば手段の一つであるのは間違いない」
「that's right」
将和の言葉に成実は頷く。それを尻目に将和は三本目の熱燗に手を付ける。お猪口にトクトクと注いでグイッと飲み干す。胃に熱い日本酒が注がれて身体が暑くなる。
「ま、空母戦力も『ホーネット』『サラトガ』の2空母が修理と改装が完了して漸く戦列化するからマシにはなるか」
鹵獲した2空母は修理と改装が漸く完了した。これにより日本葦原海軍の空母戦力は増加する事になる。
「大陸戦線の縮小で徴兵した工員や工場の作業員等は優先して除隊させて現場復帰をさせている。もうそろそろ効果は出てくるだろう」
「ですね」
大陸戦線に投入されていた陸軍の部隊約50万のうち約22万は既に戦線から撤退して内地に帰還して大半は除隊していた。残りの部隊も翌年3月までに撤退予定だった。
「だがこれで大陸は四面楚歌になるな」
「ですね」
これまでは打倒葦原として国民党と共産党は手を組んでいたが葦原が撤退する事で不和が生まれるのは言うまでもなかった。
「まぁそれでも油断は出来んな」
宮様の言葉に将和ら全員は頷くのである。
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